昭和49年(1974年)3月末――。
奥原なつは、18年間勤めた東洋動画を退社します。
表情を確認するために使っていた鏡はじめ、ありとあらゆるものを片付けて。
泰樹の渡してくれた懐中時計をジッと見つめます。
脳裏には、さまざまなアニメが流れていく。
これは公式サイト特設コーナーで振り返ることができます。
あらためて見返すと、圧巻です。
モノクロからカラー。そして画風の変化。
そこにはジャパニメーションの歴史が凝縮されています。
得意の飴ちゃんや!
なつの後任作画監督である堀内から、花束を受け取るなつ。
「なっちゃん、これからも頑張れよ!」
「お世話になりました!」
「お世話になりました!」
チーム全員が深々と頭を下げ、この偉大なる先輩を見送ります。
メンバーの中には女性アニメーターもおりますね。
しかしひとりだけ、素直になれない関西男がおります。
あの荒井さんやで。
顔を逸らしつつ、こう言うのです。
「わしもこれで定年や……なっちゃんと最後まで仕事できて、ほんま楽しかった」
荒井さんはええなぁ。
この髪の毛がポマードでギッチギチしている感じ。今日も派手な服装。
「きつかった、では?」
なつがそう言うと、最高のあの言葉が発せられます。
「アホ! それが楽しかったってことやないか!」
ここでずっとサングラスをしていた荒井は、むしりとってその目を見せます。
ええね、このアホ。これやで。
関西人の、愛がみっしりつまったアホやないの。
「よし、荒井さん得意の飴ちゃんや!」
出た。待ってました!
関西人がポケットやカバンから出してくる飴ちゃんやで。
◆なぜちゃんづけ?大阪の友達の輪「飴ちゃん」について調べてみた
「どうして飴に“ちゃん”をつけるのですか?」
「そもそもどうして飴を持ち歩き、人に渡すんですか?」
アホやな……関西人だからや。
それでええんやで。
阪神タイガースや。飴ちゃん配るで。納豆? あんなもん人間の食い物やない。
そういうことです。
それにしても、NHK東京の方が関西愛に満ちているのはどういうことでしょうか?
去年の河内弁といい、今年といい。ネイティブの関西弁が素晴らしい。
あの橋本さとしさんだもんな。
この、別離で初めてサングラスを外す関西男って、去年もいましたよね。
秋風先生やないの!
半分、青い。81話 感想あらすじ視聴率(7/4)焦げたトーストを明るいキャンパスに変えてNHK東京が関西モチーフにした方がおもしろそうって、意味が全くわからん!
いや、そういうものかな。
『真田丸』が結果的に一番魅力的な西軍描写に成功していたし。
何が起きているんだ?
※『天地人』あたりより、こっちのほうが三成の魅力がわかるもんな……
脳内ゴングが鳴ったらキックしちゃう
なつは花束を抱えたまま、別室へ。
そこには、山川、仲、井戸原、佐藤がおりました。
佐藤は嘆いています。
「我が社にとって、大変な痛手です! 私のあなたへの敬意は、これから先も変わることはありません!」
佐藤は握手を求め、突如、なつに喧嘩を挑み……ではなく『キックジャガー』のスパーリングの真似をするのです。
ゴングの音も鳴り響きます。
これもあるあるですよね。
アニメの真似をする――『あしたのジョー』から、『北斗の拳』から、『ドラゴンボール』から、『ONE PIECE』から。
んで、大人に叱られる。
必殺技名を叫びながら、襖や障子を破壊して怒られる。
◆「アンパンチ」で暴力的に? 心配する親も…メディアの暴力シーンは乳幼児にどう影響?
※教室内で「九頭龍閃」は危険だよ
暴力云々というか。
まぁ、必殺技名を叫びたい欲求とか、いろいろとあるでしょう。
そういう意味でも、佐藤はいい奴だったなぁ。
がっしり握手して「お見事!」と言い、拍手する。
すごく何気ない描写のようで、とてもいい。
というのも、漫画やアニメ好きでも男女分断を強調されるわけじゃないですか。
あの「アンパンチ」にせよ、それは親のしつけのせいだとベテランコメディアンが言ってましたけど。
あのですね、その親がかつて「ペガサス流星拳!」と叫びながら花瓶を破損していた可能性は思いつきませんかね?
※小宇宙(コスモ)の炎は、男女関係ないしさ
育児は親(おもに女親)に丸投げ! アニメは男が独占!
そういう論調はもう不要です。
メディアの影響は大きいんですよ。
この場面は、大人の心の中にも子供がいること。そしてそこに男女は関係ないことを、端的に示した場面だと思います。
親はそこまで万能じゃないし、子供、人間は、社会全体が育てるものでしょう。
そうやって親のプレッシャーばかりあげて、それを賞賛していいこと言った気になって、一体何がしたいのでしょうか。
本作というメディア自身がこのあたりを描くあたりに、誠意を感じるのです。
東洋動画を忘れない
井戸原はこう励まします。
「東洋動画出身だということを忘れるな」
なつは、お世話になったことに感謝し、深々と頭を下げつつこう言います。
「ありがとうございました!」
「なっちゃん……」
仲は感無量です。
「仲さん、ありがとうございました!」
「きみをこの世界に誘ってよかったんだよね?」
「仲さんに出会わなければ、私は、私にはなれませんでした」
この師弟ならではの会話です。
仲は生真面目で、なつの進路を常に気に病んでおりましたね。面接の時も結果に驚いていました。その冤罪で咲太郎から襲撃されてましたっけ。
ひとりの人生に、強い影響を与えてしまったこと。
それはそれでよかったのかどうか?
彼は常に悩んでおりました。
なんて誠意ある師匠なのでしょう。
弟子をいじりたおし、セクハラしまくって、恋愛事情を推察し、家族総出で笑っていた。
そんな極悪ネトゲ廃人画伯とは違いすぎる。思い出したら目眩がしてきた。
山川もこう来ました。
「奥原なつさん、多大なる貢献に、心の底から感謝します」
「こちらこそ、ご恩は一生忘れません!」
なつは頭を下げるのです。
脳裏には、18年間の思い出が駆け抜けていきます。
モモッチ、仲、下山、井戸原、堀内、茜、そしてイッキュウさん……大事な人たち。
泣く白娘、駆け抜ける牛若丸、サム、ヘンゼルとグレーテル、キックジャガー、番長。
仕事仲間たちも、アニメの中のキャラクターも。
全員が生きている。
素晴らしい世界です。
なつは、帰り道で優に走ろうかと声をかけています。
「よーい、どん!」
それは、彼女自身の新しいスタートでもあるのです。
自分の幸せは、自分で決めなさい!
そして家では。
イッキュウさんと優とともに、転職祝いです。
「長い間、ご苦労様でした!」
「ご苦労様でした!」
「ありがとう!」
「それじゃ、かんぱーい!」
なつがしみじみと、幸せな日々だったと語ります。
イッキュウさんは【作品を成功させたからだ】と言いますが、そういう意味ではないとなつは返します。
出た、残念なイッキュウさんだ。
「そういうことじゃない」
なつは返します。
確かに、興行的失敗の詰め腹切らされたイッキュウさんよりは、円満退社ですけれども。
そうじゃないってば!
「作品は、残っている。私の幸せを、みんなが感じてくれた」
自分のことのように送り出されたのだと、イッキュウさんも理解します。
「ママはとっても幸せ……」
「優も幸せ!」
それにイッキュウさんが同意すると、優がすごいことを言いだしました。
「自分の幸せは、自分で決めなさい!」
「どこで覚えてくるんだ、そんなこと……」
娘のセリフに、愕然とするイッキュウさんです。
やりやがった!
マジかよNHK東京ッ! やりやがったッ!
思わず机をぶっ叩きそうになった。
だって、これって、【もらい感情でルンタッタ♪】が教義だった前作****教団へのドラカーリスじゃないですか。ルンタッタ? ランタッタ? まあいいや。
んで、いつも言っている男女逆転装置でもあると。
「あなたの幸せは、私の幸せですぅ〜〜!」
と、ヒロインが言ったら? 夫唱婦随、理想像じゃないですか。
それにダメ出ししてきた。
****教団員は今もNHK東京朝ドラを否定する儀式、マントラのようなハッシュタグ投稿をしておりますが。
その気持ちはわかりますとも。
こんなドラカーリスされたらムカつきますよね。
何をしているの、NHK朝ドラ班?
関ヶ原なの? ねえ、関ヶ原なの?
※1:00あたりからどうぞ
なんで朝ドラ見ながら関ヶ原気分なんだよ!
※続きは次ページへ
確かに、大阪では飴に「ちゃん」をつけることがおおいです。しかし、飴を持ち歩いていて、周りに配るのはほとんど女性。男性が飴を配るのを私は見たことはありません。私の周りにいなかっただけかもしれませんが。男性が喉飴を持っているのは、自分の調子が悪いときののど飴くらいと思います。