昭和50年(1975年)3月、なつのために上京した富士子。
彼女は、父・泰樹のことを語ります。
なつは、優の上履きに名前を書いているところです。
さんすうセット……ウッ!
出た、親泣かせの名前書きだ。
そういえばここでの富士子は、老眼鏡も使っていますね。
誰も老眼鏡を断固として使わない。そんなドラマもありました。
なつは、「そういえば父さん(剛男)もl 泰樹が穏やかになったと語っていた」と、そんな寂しさを感じております。
彼ももう90過ぎです。医者にいくように勧めてもうまくいきません。
亡妻の病死もあってか、医者嫌いなのだとか。
頑固だからのぉ。こういうときは、とよに説得させるといいんでないかい。
「もう充分だって」
富士子も寂しそうにそう語るものの、あのじいちゃんのことだから中々しぶとそうだと言うのでした。
本作の総大将コンビは、本当に強くてたくましいので、気持ちはわかりますとも。
でも、残り時間はどうしたってあるのです。

坂場一直先生は、空気を読めない
4月、坂場優の小学校入学式です。
この記念撮影も、面白いんですよね。
富士子は和服。この時代ならば、それはそうでしょう。
十勝から送ったのか、運んできたのか。着付けも、自分でできる世代です。
和服のデザインや着付けも、違和感はありません。
所作も綺麗で、和服を松嶋菜々子さんが着こなしていることがわかります。
イッキュウさんは、彼にしては珍しいスーツ。
なつは普段着。
そして優ですが、口を開けてしまうし、ポーズがおすましでもないのです。
のびのびとした性格なのでしょう。千夏と比較すると、わかりやすいですよ。
光子が引率していたら、かしこまるのかもしれませんね。
なつはどうして普段着なのか?
休めないのです。
入学式から慌ただしく戻った、坂場家の皆さん。ここで富士子が、イッキュウさんの親が送ってきた百科事典はどうするのかと聞いてきます。
イッキュウさんは、そのままでいいと答えます。
入学式の写真と手紙を名古屋のおじいちゃんとおばあちゃんに送ろうね。そうなつがフォローしているのですが。
何か引っかかりませんか?
「なんでそんな忙しい我が子と孫に、よりにもよって百科事典を贈るのさ?」
これはあの、一度出てきただけで濃厚だった、祖父・一直のセンスでしょう。
・当時、百科事典はステータスシンボルでもあった
→ここまでは、わかりやすいと言えばそうです。
・学究肌なので、書物から知識を得ることが楽しくて仕方なかった。それを孫にも味合わせたい
→イッキュウさんもそれを引き継ぎました。だから、喫茶店でモモッチに出会っても読書続行するのです。だからこそ、彼は生き字引状態なのです。
・一直、空気を絶望的に読めない
→送りつけることで、我が子がどれほど面倒くさいか。そこを想像できないのです。
これは彼のセリフの端々にも現れて、考古学学界ですら浮いていることが伝わってきました。
「坂場先生の理論は、話が飛びすぎておかしいぞ」
「坂場先生は、優秀だけどなんだか変だ」
「坂場先生は、この分野にある、暗黙の了解がわからないんだよな……」
「坂場先生って、全然、仕事仲間の飲み会に来ないんだ……」
そう言われちゃう系です。
・イッキュウさんは、そんなお父さんそっくりです
→イッキュウさんの濃くて変なところは、父親からの遺伝かつ先天性です。教育やトラウマ由来ではありません!
一直はあの場面しか出てきませんでしたが、彼関連の描写はものすごく大事です。
関根勤さんが演じて、本当によかったと思います。
坂場の父・一直は、結婚生活云々よりも考古学語りを一方的にしています。

優も、ちょっとそんなところが出ているのかな、と感じます。
さて、百科事典はこのへんで。
なつもイッキュウさんも、慌ただしくマコプロにまで戻ります。
外注まで、もう徹夜ばかり。それでも自信があればこそ、持ちこたえている。
「イッキュウさん、絵コンテ今日中に!」
そう飛ぶセリフからも、緊迫感が伝わってきます。
彼らの奮闘もあって、『大草原の少女ソラ』は人気番組になっておりました。
番組はついに佳境を迎えていて、皆、必死で作業を続けています。
千遥からの入学祝い
「上手! もうひとつ!」
富士子は、優の書き取りを見ています。
こういう勉強を見ることも、実は夕見子相手にはできなかったかもしれません。
ほらあいつ、性格的に指導を聞き入れずに、黙々と勉強していそうじゃないですか。
富士子と夕見子との会話にも、娘の向学心に困惑する気配がありました。
でも、それもありのままの夕見子。生まれつきの軍師で、柴田家の教育に問題があるわけじゃありませんからね。
そしてこれも、泰樹譲りです。

ここで、ブザーが鳴ります。
千遥でした。
「姉からお見えになっていると聞いたので」
そう語る千遥は、すっかり柔らかい表情になっています。再登場時の険しさは消えましたね。
ここで千夏を見て、富士子はこうです。
「あーれー、本当に、昔のなつにそっくりだわー!」
出た。道産子ぽいべさ。
高畑淳子さんの演技が大げさという、道産子を理解する気のない薄情者ゆえの、そんな叩き記事がありました。
そでないんだわ。これぞ道産子だべさ!
千夏はちょこんと頭を下げます。
千遥は、柴田牧場訪問のことと、ワンピースのお礼を伝えるのでした。
「なんもさ。そんな水臭いこと、言わなくていいの」
今朝も出た、「なんもさ」。
「なんも」のバリエーションをきっちりカバーしてくるなぁ!
千遥は、重箱を持ってきました。
入学式祝いなのだとか。
「うれしーわー! なつもイッキュウさんも喜ぶわー」
そう富士子は喜んでいます。
「柴田さんも、いつかお店に来てください」
千遥はそう告げます。千遥は言葉遣いが丁寧で、仕草も美しい。元芸者かつ女将という人生が出ています。
これは千夏も似ております。
千夏と比べると、優は天真爛漫なのです。しつけは光子がおりますし、これはありのままの優なのでしょう。先天性です。
千夏はスカート。髪の毛は結わない。
優はパンツルックでおさげが多い。ちゃんと個性がそこにはあります。
髪を結うことは、ただのおしゃれではなくて、よく動き回るということでもある。
なつと夕見子も違いましたよね。
ここで富士子は、距離をもっと近づけます。
がしっと千遥の手を握りしめ、感無量の顔になるのです。
「千遥ちゃん、ほんとうによかった。じいちゃんも喜んでたわ」
仕草から、言葉から、富士子の感慨が伝わってきます。
風よ、朝日よ、そのにおいよ
なつとイッキュウさんが取り組んでいるのはハイライトシーンです。
レイがお父さんに、夢を語るシーン。
空の丘で星を見ながらだと、イッキュウさんが説明します。
なつはこう返します。
「それは何時頃? 寝る前? 朝の搾乳前?」
イッキュウさんは、考え始めます。
確かに時間帯によって、光がまるでちがう。
新天地をめざすソラの一家に、川から救われたレイ。
いつからか、ソラとレイはほんとうの家族のようになっていったのです。
そんなレイは、馬の死をきっかけに、獣医になる夢を見つけます。
そのためには、遠い町へと行かねばならない。その決意を、レイがお父さんに語るのです。
十勝で庭を見つめる泰樹。
考え込むなつの姿。
ソラなのか?
レイなのか?
現実とアニメがつながるように交錯します。
夜か?
夜明けか?
彼らの出した結論は、夜明けでした。
話し終えた二人の前に、太陽が登ってくる――そんな希望に満ちた別れにする。
なつは思い出しています。
かつて、自分も夜明けに励まされたことを。
なつよ、その目に映るものすべてに魂を込めよ――。
そう父の声が語りかける中、頬にそっと一筋涙がこぼれるのでした。

このことを、背後で聴いている神っちもすごい。脚を偉そうにパカっと開いて、興奮を伝えてきます。
そして今日もドヤ顔で、割り込んで来る。
彼だけでなくて、下山も描きつつマグカップを置く仕草があります。
本作は、セリフがない時も、背景にいるだけの人物も、しっかり世界観を構成していて完成度が高い。
「開拓者を励ます朝日か!」
「風と朝日で、においを感じさせる」
イッキュウさんは、本作が得意とする五感表現論法を繰り出します。
「ちょっと! 変えるならすぐに動いてよ!」
ここで、マコが突っ込む。
そうそう、この総大将がいないと、現場が崩壊するからね。本当にマコさんは優秀だなぁ。
陽平は、夜明けを天陽と見たことをしみじみと思い出しています。
あの風。あの光。
それを絵で表現することに、何かを感じているようです。
レイは、馬の死をきっかけに夢を見出す。
陽平も、なつも、天陽を知る人は彼のことを感じている。そんな優しさがあります。
神っちを理解できるモモッチ
モモッチはここでどうするのかと聞きます。
彼女がマコプロで楽しんでいることがわかります。服の配色が高度!
自分の着せ替え人形にして、毎日エンジョイしているのでしょう。
神っちは、ここでドヤ顔アドバイスします。
光線によって、色彩は変化します。夜と夜明けで同じ色の影にしたら、リアリティが出せません。
「影の色を勉強しとくといいよっ!」
「ありがとう、神っち」
「モモッチは才能あるんだから」
神っちは、センスは抜群ですからね。
いろいろと問題山積みですが、そこはすごく頼りになるんです。
神っちか……こういうセンスがある人間には、道徳心や空気を読むセンスもあると、人は信じたくなるものです。
しかし、そう甘くない。神っちは変な奴だし、隣にいたらすごく大変だ。
マコさんはいつも疲れた顔じゃないですか。
※ジョブスとか、周囲は大変だったそうで……
「忙しいのに、なんかいい感じね」
茜と下山は、そこに気づきました。お、そう来たか!
モモッチと神っち。納得感はあります。モモッチは寛大です。イッキュウさんが目の前で本を読んでいても、嫌いにならなかったくらいです。
この二人は服装のセンスも結構強烈ですので、それを受け入れ合う相手でなければ、難しいものがあるとは思います。
かつて神っちは、アニメに賭けて独身を貫いたと、上杉謙信じみたことを言っておりましたが。
「世界があっと愕くような映画を作る! そのために独身を貫いて、仕事をやってきたんだ!」

嘘ですよね?
自分の濃さについていける相手がいなかったんですよね?
よかったね、神っち。モモッチがいたよ!
これも本作のよいところ。
神っちは、若さや容姿でなくて、モモッチの才能を認めています。
そのうえで、その性格に惹かれつつあるとわかります。
そんな微笑ましい奥で、険しい顔をしているのが総大将マコです。
「忙しいのに、これで何枚増えることやら……」
カメラワークも抜群で、演じる貫地谷しほりさんもいいんですよねぇ。ピントがあっていないのに、顔が険しくなっている。セリフで彼女の焦燥がわかる。
こんな貫地谷さん、初めてだ!
新機軸でしょう。やっぱカッコいいわ!
※続きは次ページへ
イッキュウさんの親の話が出て来てホッとしました。
前コメントしたように優の誕生の時などにも出てきてもらえたらもっと良かったですが、そこは残念ですが、
全く出てこないで最終回にならずすんで、このドラマがあるファンとしては良かったです。