なつぞら151話 感想あらすじ視聴率(9/22)実直に開拓を描き続けている

開拓者への恩返し

富士子は帰宅したなつに、千遥の料理を見せます。

これまたおいしそう!
本当に食べたくなるから困る。罪作りなドラマだねぇ。

しかも、北海道グルメとは違う美味しさです。浅草の味ってやつだ。
なつは仕事する前に、それを慌ただしく食べるしかありません。

そんな娘を心配する母。

「体壊すよー。壊さない方が不思議」

ブラック労働礼賛に突っ込みかねない本作ですが、理由はあるのです。

「じいちゃんにも届けたい。じいちゃんに、少しでも元気になってもらいたいのさ」

「なつ、心配してるんだね……」

「じいちゃんだけでなく、じいちゃんのような、開拓者に恥ずかしくないものを届ける。私にできる恩返しは、それだけだから」

なつはそう語ります。
泰樹は永遠に生きられるわけではない。生きているうちに、どうしても見て欲しいものがある。

滅びない何かを、残すために。なつは走っているのです。

なつぞら140話 感想あらすじ視聴率(9/10)圧巻の北海道開拓史

お前はお前の、夢を守れ

陽平は星空を描く。開拓者の見た星と空を。

神っちは、ロケハンで見た開拓者たちの顔と風景を思い出しながら描く。

マコプロの全員が、開拓者の物語を描いています。

じいちゃんのように、開拓したい。
なつがそう訴えたあの夜。泰樹は励ましました。

「それでこそ、わしの孫じゃ! 行ってこい! 東京を耕してこい、行ってこい!」

そんな開拓者に届くのか……。

あのシーン放映日です。

坂場家でも。柴田家でも。テレビの前に家族が揃っています。
空の丘、星の下で――。

レイはお父さんに訴えます。

牛や馬を、命を救いたい。
その勉強をしたいから、遠くの町に行く。

「ごめん、ぼくはどうしても獣医になりたいんだ」

そう訴えるレイに、空を見るよう促すのです。

そこにあるのは、明けの明星。
朝の口にいる神と呼ばれているのだと。

それはアイヌの伝承です。
ニサッチャオッカムイ (朝の口にいる神)と呼ばれています。

ちゃんとアイヌの信仰も入る。それでこそ、北海道開拓史だべな。

あの神に誓ったのだ。
そうお父さんは語ります。

「よく言った、それでこそ、この私の息子だ。お前がいなくとも、牧場は守る。お前はお前の、夢を守れ」

風が吹いて、父の帽子を飛ばします。

その場面を、泰樹はじっと見つめています。

目には、涙が滲みます。

レイの中にも、そのお父さんの中にも。なつも、彼自身もいるから。

なつぞら67話 感想あらすじ視聴率(6/17)ずしりと重い芯からの悲しさ

彼の肉体はもうそう長くはないけれど、魂が物語の中で生きていくのです。そう、永遠に。

なつよ、どうやら風はここまで届いたようだ――。

奥原家の父が、そう語りかけるのです。

『永遠のニシパ』が放送されます

本日は、アイヌの星の名前が出てきました。
こちらもどうぞ。BS4K放送です。

松浦武四郎と、彼が救いたかったアイヌ。彼らを抜きにして、北海道の歴史はありません。
本作とあわせて、このドラマが作られることに、大きな意義を感じます。

◆永遠のニシパ公式サイト

参考 松潤ドラマ永遠のニシパ主人公・松浦武四郎が蝦夷地を探検→北海道と名付ける武将ジャパン

助けて、助けられる物語

本作は「何を描きたいのかわからない」と突っ込まれたりしますが。

これぞ開拓だべな!

開拓というテーマで、終始一貫していると思います。

助けること。助けられること。
相互理解と協力あってこその、開拓でした。

アイヌと和人。

屯田兵と移住者。

動物と人間。

男と女。

親と子。

この国の国籍を持つ人とそうでない人。

ソラとレイ。

どちらが上だとか、支配するのだとか。そういうことはあったのか、ないのか。

曖昧なまま、支配することもなく、されることもなく、広がる空と地の間で生きる物語であったと思えるのです。

北海道は「食の歴史」も過酷そのもの~米豆の育たぬ地域で何を食う?

明治時代の北海道開拓はとにかく過酷!敗者、屯田兵、新選組、囚人、ヒグマ

本作の難解な部分は、モデル像も特定しにくいところです。
分割し、それぞれの要素を統合しているから、モデルを知ることにそこまで意義があるとは思えない。

この作風は、『大草原の少女ソラ』にも通じるものがあります。

あのアニメの人物には、複数の人間の要素が入り混じっているのです。
作り手の意識も、濃厚に込められていると思います。

アニメにせよ、ドラマにせよ。
挫けそうになって、もうこの世界そのものから飛び出したいと思ったときに。

「でも来週の続きが気になるから、まだ生きなくちゃ……」

そう支えてくれる、元気付けてくれる力があるはずです。

そんな経験はありませんか?

それこそ、作品の持つ力だ。そういう信念を感じました。

ここまで風が吹いてくる

本作が大嫌いな人はいると思います。
見ているだけで、説明できない不快感やモヤモヤを抱く人がいるかもしれません。

強いリーダー像についていけば、それでなんとなく安心できる心理はあるのです。
もらい感情って、楽なんですよ。

これぞ人類の叡智です。リーダーについて農耕なり労働をして、生きてきたからには、それが最適解ではある。

犬ぞりを思い浮かべましょう。
ともかくそりの上の人間なり、リーダー犬にくっついて駆け抜ければ、ゴールが見えてくる。

そういうストーリーにホッとしたい人はいるもの。

そういうニーズを満たすもの。それが企業創設者モデルドラマです。

成功するゴールがあるとわかっている。なんだか主人公はすごそう。
受信料による宣伝だと気にしないで、モデル企業の製品を購入する。

日課はファンアート投稿、ハッシュタグめぐり、ネタバレを読む、萌え〜。そういう空気に、ものすごくホッとする心理です。

でも、野生動物めいた人間もいます。
群れを作らず、一人でズンズンとどこかに突っ走って、空気を読めないと悪口を言われるタイプ。

そうやってタイプが異なる場合。
【放置】と【不干渉】が最善です。

でも、それだけでないんだわ。

理解し、歩み寄ってみると。
なんだか面白いこと、いいこと、素敵なこともあるかもしれない。

「あれはどうかしてんな。いてもいなくても同じだべ」

「せっかく仲良くなれると思ったのによ」

「吹雪よりも冷たい奴。牛や馬のほうが、まだ理解できっぺ」

「空気を読めねえ奴だ」

「あいつは、なまらやばいべな」

そう言いたくなる気持ちはわかるけど……ちょっと待って。

空気を読むって、何ですか?
皆に都合のいい人間になって、本音を隠せってこと?
口を封じられても従って、愛想笑いをしていろってこと?
感情をもらって、幸せを他人に決めてもらえってこと?
目上の相手には逆らわないで、自分の夢なんか守らず捨てろってこと?

それが本当に正しいとは限らないべさ?

空気を読めない、なまらやばいあいつ。
そんなあいつを理解してこそ、得られるものもあるんでないかい?

『アナと雪の女王』のエルサだって、空気を読むことに疲れ果て、ありのままに生きようとした。
そんなエルサをアナが理解した。

それこそが究極の愛でしたよね。

エルサのモデルである、雪の女王は悪役でした。
でも、彼女は悪いだけの存在じゃない。そう示されました。

そういう受容と理解が、2019年に目指すべきものなのでは?

「きみには僕の気持ちはわからないよ!」

「あなたが悲しいことだけはわかるわ」

なつぞら143話 感想あらすじ視聴率(9/13)マコプロの福利厚生

◆『凪のお暇』原作者が語る、空気を読みすぎるあなたへ

この作品からは、そういう優しさを感じるのです。

これは『半分、青い。』から続く風だと思います。
あの鈴愛にせよ、律にせよ、ともかく性格が執拗に叩かれた。

スパロウリズムは、空気を読まなかった。

半分、青い。総評(9/30)人生に深呼吸を与えてくれた

それが作り手の誠意だと思います。

どこかずれちゃった、そういう人を理解してみない?
そう呼びかける、そんな風がNHK東京からは吹いていて、私の元へも届いています。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

1 Comment

匿名2

イッキュウさんの親の話が出て来てホッとしました。
前コメントしたように優の誕生の時などにも出てきてもらえたらもっと良かったですが、そこは残念ですが、
全く出てこないで最終回にならずすんで、このドラマがあるファンとしては良かったです。

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