スカーレット78話あらすじ感想(12/28)喜美子と八郎のズレ

ジョージ富士川が工房にいる――。

えらいこっちゃ!
と、思わず出てきてしまう喜美子。

「なんでもどってくるん?」

喜美子のための特別実演会やで! 八郎と照子が励まします。

滋賀県生まれの人徳を出す

あるだけのバケツで特別実演会をする。
そうハキハキと語るジョージ富士川。もう、ほんまに生きた仏様やな。

川原喜美子と申します――そう名乗る喜美子。

ジョージ富士川は、その言葉を受け流すわけです。
大物という感じがある。これは演じる西川貴教さんが素晴らしいことは当然ですけれども、周囲もそういうカリスマを出すために努力をしているのだと感じます。

喜美子は、彼との縁を語ります。

大阪で、彼が講師を務める美術学校に通おうとした。中淀のものだとジョージも納得。それなのに、信楽に戻って、実演会も行けなくて。お会いすることはないかと思っていたのに、会えるなんて!
そう感激しています。

これもそこだけ切り取ったら、ただの主婦の自分語りで終わりなんですよね。
喜美子に感情移入して、ジョーの学費強奪のあれやこれやを思い出せるからこそ、感無量になるわけです。

本作はおっとろしいと思う。

大久保さんもそうでした。

喜美子もそうなりつつあるんですよね。
なんやお茶持ってくる、ただのお姉ちゃんおばちゃん。地味などうでもええ人。そうなってもおかしくない。

ミッコー撮影時のような例外をのぞけば、喜美子は服装も地味です。

おばちゃんの人生なんてどうでもええ。いわばモブ。
そう思っていたかもしれない……と気づいてドキリとしてしまう。そんな魔力があるのです。

聞いているジョージが存在感抜群です。といっても、怒鳴るわけでもいばるわけでもない。

アカン方のジョージ。あとフカ先生の前任者。
彼らはわかりやすくて、威圧的で咳払いしたり、ふんぞりかえって話聞かないオーラすら出しかねないところがあるわけです。

フカ先生ですら、喜美子は女の子だからとちょっと、うっすら、なめとったところはありますよね。

エエ方のジョージは、こういう偉そうな感じが一切ない。

どんな人の話でも聞くで!
そういうあたたかみが、なんだかほんとうに尊い。

滋賀県枠、滋賀県プッシュをしている方にこの役を割り振る理由はわかる。

出番の多さだけが問題じゃない。
短い出番ながら、圧倒的な人徳が出ています。滋賀県へ行かなくちゃ!

自由不自由禅問答

さて、庭で実演会!

庭に敷いた紙を前にして、何を描いたらいいか、わからなくなっている喜美子です。

ジョージは理解を示します。
自由になんでも描け言われても、大人は特にかたくなってしまう。

八郎は信楽の土の説明をしています。長石が粗いもんから細かいもんまで入っているってさ。

ジョージは、子どもたちにはジョージ富士川の目や鼻や唇がついているという。

「それつけてたら見えへん色も見えるようになるんや! 好きに描け! おもいっきり描け!」

何気ないシーンですが、八郎もドツボに陥っていたことがわかる気がする。

子どもに長石のことが理解できるのか?
できませんよね。

そういう話がおもしろいのか?
おもしろくないと思う。

八郎は、相手が興味ないことでも長々と説明する悪い癖がある。理詰めのドツボですね。そこは反応を確認しような。
イッキュウさんとその父も、同じようなことをかましてたな。

そういう理詰めではなくて、感受性で弾けていこう!
芸術家の言葉を出す仏のジョージです。

こういう、芸術家だけではない、一般人の目線もここでは出てくる。
照子のお手伝いさんは、お嬢様が服を汚すと心配する。照子は「汚れてもかまへんよ」と許します。

「こうしろという決まりごとは一個もない。自由は不自由や! そのまた先に、自由がある。自由ってなんや!」

そう語り、バケツに足を突っ込んで歩き回るジョージ。喜美子も汚れを気にせずでんぐり返しをする。子どもみたいな顔で笑う。

「いくでいくていくでー!」

ジョージはそう自由気ままに描きます。
煮詰まっていた何かを解きほぐし、いつの間にかふっと消えるジョージ。ほんまに仏様のようだった。

そのあと、八郎は猛然と作品作りを始めました。

喜美子はそんな八郎にお茶をいれ、持って行くのでした。

喜美子も、自由に作ってみたいと思いました。

けれども……。

まだ何か足りないらしい。

栄誉が始まるとき、何かが終わる

八郎は、春の陶芸展でついに金賞を受賞しました。

ぎこちない笑顔で、シャッターを浴びせられる八郎。
そうそう、こういうとき笑顔が作れないんやろなぁ。信作が「ちゃんと笑わんかい」と促します。

滋賀県枠で、ちょっと不器用な笑顔が魅力的な林遣都さん。
彼も大事で難しい役だなぁ。信作は、八郎の理解者だから笑えないことを指摘できるんやろなぁ。

丸熊陶業の元同僚だった、商品開発室の二人も褒めているわけですが。普通はこういうふうに褒めるだけですよね。
八郎に対して、信作は接し方が特殊です。

その信作は、役場からこう言われているようでして。
喜美子にお願いして来ます。役所の入ってすぐの飾り棚に、八郎の受賞作を置きたいってよ。

「信作くん、そらないわ、あきまへん!」

ここで敏春が止める。

「窯業研究所に飾らしてもらう!」

柴田所長も譲れない。

「飾りまへん。うちで預からせてもろて高値で売らせてもらいます」

美術商の佐久間がここでカットイン!

故ジョーが見ることがなかった、一個五万円時代の到来や。

ここで喜美子は、お茶を置いたお盆を持って後退してしまう。
なんだか嫌そうというか、唖然としているようにも思える。

「ダーリンは売れっ子陶芸家ですぅ〜!」という浮かれた様子はない。

ここも、圧巻でした。
八郎の作品に群がる様は、まるで『蜘蛛の糸』のようにすら思えた。

お釈迦様が、地獄に落ちた悪人カンダッタという男を救おうと、蜘蛛の糸を垂らす。彼は悪人だけれども、蜘蛛を助けたことがあったのだ。
けれども、糸に悪人が群がるから、カンダッタは俺のものだと蹴落とす。そこで蜘蛛の糸はフツリと切れてしまう――。

※あかんな、悲しいなぁ……

八郎は誰にも渡しません。
工房に置く、平和的解決や。喜美子は八郎さんらしいと笑います。売って儲けろ、ではないと。

そこで八郎はこう言い出すのです。

ジョージ富士川に会って以来、喜美子も作りたいはず。そう思って待っているのに、なかなか作らへん。

「僕の方はもう落ち着いたからな。喜美子の番や」

そう語りかけるのですが。

「自分の作品、作りぃ」

そう言われ、喜美子は?
父の絵皿が見守る中、彼女は作品作りに向き合います。

これも、昨年の放送事故と比較してすごいと思った。

あれは、セクハラ画伯の作品について語るとき。値段ばかりだったんですよね。
何十万円にもなるからすごい。そう顔をギラつかせて語る教団幹部どもは、ゲス顔そのものだった。

画伯本人も、特に心の痛みはないでしょうね。
教団に取り入るため、おべんちゃらのために武士の娘を綺麗に描いてドヤ顔していたわけですから。

芸術性を換金することへの葛藤が、清々しいまでにないドラマだった。
そういう性根でないと、一企業の広報ドラマなんて作れないのかもしれないけれども……つらかったんやろなぁ。

百合子、そして信作について考えようか

川原家では、ごく当たり前の光景が繰り広げられています。

武志はカレーだとはしゃいでいて、そこへ百合子が帰ってくる。
納品先でお義兄ちゃんのことを言われたって。そして、父のことも聞かれた。去年の秋に、そういった。最近、やっと泣かんで言えるようになった。

マツは思い出すたびに泣いていたと娘を気遣います。

はい、ここは大事ではある。
川原家の三姉妹には、三種類の感情の出し方がある。

長女・喜美子:抑圧、自制的

二女・直子:先延ばし、現実逃避型

三女・百合子:抑圧しないで素直に出す

ここが大事なんや!
今後の展開にも関わるし、じっくりと考えていきたいところやで。

喜美子は抑圧型。
彼女は主人公なので、あとで考えるとしまして。

ここは百合子から。

百合子と信作の関係って、ちょっと変わってませんか?
美男で「信にい」と慕っているにも関わらず、結構言っていることがきついし、信作からのアプローチにドキリともせず、さっさと映画に行く。

冷たい? かわいくない? せやろか?

この態度は、イッキュウさんとなつでもありましたし、イッキュウさんのご両親もそういうところが出ていました。
イッキュウさんの母は、何かを悟りきった顔でしたね。

なつはイッキュウさんがアイスをこぼしても冷たいだの、搾乳を止めて薄情だの、文句を言われたわけです。
なつを冷たいと思う方が、もしもイッキュウさんタイプとつきあったらどうなるのか?

【信作と女たち】エンドの可能性が高いです。

水バシャ、ハンドバッグ殴打やな。こいつもめんどくさい枠や。

信作はええ奴ではある。

葬儀のあと、百合子に寄り添う姿はほんまに素晴らしかった。心が清いんだろうとは思う。信じられるからこその信作や!

でもこいつは変ですよね。
子どもの頃はいじめられていた。それがそもそもモテるようになった理由が、伊賀の祖母の死により精神的な垣根を乗り越えたってよ……。

いや、描き方がうまいから納得できたけど、お前……。

甲賀と伊賀の血を引くとはいえ、そんな忍者みたいな理由で、お前……。

八郎と同じ枠ゆえに、なんだか理解しあえていると。
この二人は似たところがある。信作は八郎のように理詰めで長くガーっと語りません。

が、いちいち愛情を好悪の割合で測るような、変な理詰め癖があるのです。そこを理解されないまま、失敗してしまう。

信作が交際相手が好きでないというのは、嘘ではないと思う。
相手のアプローチに流されて交際するものの、【ズレ】がバレる。それで問い詰められるなり、吹っ切るなりして、ハンドバッグ殴打よ。人間関係の断捨離がどこかぶっ壊れとるんやろなぁ。

モテるで! 食い散らかすで!
それができれば苦労はせん。できないのよ、信作は。

じゃあどうすればええのか?
※続きは次ページへ

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