明治35年(1902年)京都。
日本一の「ゲラ(笑い上戸)」娘ことヒロインのてんは、父・儀兵衛の取引相手をもてなすホームパーティを、笑いで台無しにしてしまいます。
怒った父はてんに「わろたらアカン」という笑い禁止令を出したのでした。
どうしたらいいのか悩むてん。
祖母のハツや母のしずは、「笑わなくなって辛気くさくなったら嫁のもらい手もいなくなる、しかし儀兵衛は頑固やからなあ」とボヤいています。
そこへやって来たのが、兄の新一です。
自分が話す用事もあるし、父の機嫌のいい時に話してみると提案します。この新一はかなりの好青年のようです。
それを聞いて丁稚の風太がその通りだと大笑いしていると、ヌッと儀兵衛が顔を出して緊張感が走るのでした。
このあと丁稚の風太が、「笑いそうになったらほっぺを引っ張ればよい」とてんに助言します。それは根本的な解決ではないとは思いますが、子供の考えることですからね。
「父に嫌われているのではないか」と心配なてん
爽やかなテーマソングを経て、また本編へ。
ハツはてんの赤くなった頰を見てあきれます。
しっかりと女のたしなみを身につけさせることで、笑い禁止令をとくという方法を考えるハツ。そこでてんに茶道、華道、琴の特訓を受けさせることにしました。
それまであまりお稽古に真剣ではなかったてんですが、笑い禁止令のために頑張って取り組みます。
しかし琴の稽古を父が見張っている時に限り、音を外してしまうてん。だんだんと疲れてきてしまうのでした。
てんはハツに「父に嫌われているのではないか」と、こぼしてしまいます。
ハツはそんな娘に、儀兵衛は幼い頃親元を離れ、厳しい丁稚修行を耐えてきた苦労人だからこそ、我が子にも厳しいのだと説明します。
儀兵衛は現在も、夜ドイツ語の勉強に励んでいるそうです。無愛想なりに頑張ってホームパーティをしましたし、彼は努力家なのです。
寝込んで休学してしまった新一 この病弱さは……
『あさが来た』でもそのあたりが描かれていましたが、儀兵衛は維新の混乱経験者です。
あのころは藤岡屋も危機であったことでしょう。
彼の商売人のキャリアはこの維新の大波をくぐってきたわけで、苦労も多かったことでしょうね。漢方薬だけではなく西洋医術も取り入れる、そんな柔軟性もあります。
儀兵衛は夜中まで、ドイツの製薬会社に手紙を書いていました。
どこまでも熱心な父の背中を見守るてん。するとそのとき、別の部屋から咳の音がします。新一がぜんそくの発作を起こしていたのでした。
新一は寝込んでしまい、休学して療養することになります。
将来的には留学を目指し、ドイツ語通訳もこなせる新一。しかし、この病弱さはネックとなりそうです。
ハツは兄の離れに行ってはだめ、お前につられて笑ってしまうから、と、てんに言い聞かせます。
落ち込んだてんは、
「やっぱりお父ちゃんの言う通りゲラでいいことはないんやな」
と言うのでした。
ハツは、てんのゲラは新一がぜんそくになったころだ、と語ります。
母が看病でかかりきりになり、家が暗くなった時から、てんは笑い始めたと。一番寂しい思いをしているてんが、明るく笑い始めたと。ハツはてんの笑いが持つ力を語り聞かせるのです。
てんは「おてんとうさま」のてん、太陽のように明るく照らす人になって欲しいと願いを込めて名付けたとも言い聞かせます。
「お前の笑顔を見ると、僕も元気になるさかい」
てんはそれでもこっそりと新一の見舞いに行きます。
笑わないように頰をひっぱるてん。
「わろうてや。お前の笑顔を見ると、僕も元気になるさかい」
新一のそんな言葉を聞いて顔を輝かせるてん。
新一はぜんそく、勉学、稼業をつぐこと、父の期待を考えると不安で仕方ないのです。
そんなときでも笑っているてんを見ていると、しっかしなくてはいけないと頑張れるのだと。
そんなとき、祭り囃子が流れてきます。
てんは兄の快癒を願い、「くすり祭り」に出かけて行きます。薬祖神祠(やくそじんし)のお祭りで、毎年11月開催だそうです。
伝統的な日本(大巳貴命、小彦名命、大国主命)、中国(神農)の神様に加えて、ギリシャのヒポクラテスも祭られているという祭りだとか。
この祭りに、てんの運命を大きく変える男がやってきます。
二日連続、顔を見せる彼の正体はいつまで引っ張られるのでしょうか。
今回のマトメ
第一週はヒロイン周辺の紹介。
今日は兄・新一がクローズアップされました。それと同時に死亡フラグが立った気がします……というのも朝ドラは「良い人ほど早死にする」んですよね。
ろくでもない家族とは山あり谷ありの和解のドラマができますが、こういう出た時からできた人でしかも若いとなると、ドラマになるのは退場するタイミングというわけです。
新一の場合、さらに「ヒロインの笑顔が元気を与えてくれる」と動機付けてもいるわけで、これはもう早期退場確定ではないでしょうか。
長男が早期退場確定となると、てんの今後にも影響があります。
長女として婿を取り、家を継ぐプレッシャーが彼女の肩にかかってくるわけです。
明るく天真爛漫な少女時代でありながら、名家のお嬢様だけに、将来への布石が今からある。
そんなてんの人生です。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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