はつとともに車を曳いていた栄達は、新次郎に見られたのがいたたまれないのか逃げ去ってしまいます。
汚れた顔を隠すかのように、はつは俯いてしまいました。
ここで新次郎は蕪を手にして「おいしそうなかぶらはんや」とにっこり微笑みます。
新次郎のノホホンとしたところ、本当にシリアスな展開では癒やしになります。
少年時代、父に世界地図を見せられて
一方であさは雁助とともに、五代友厚の開いた洋式の寄合所へ。
豪華なテーブルと椅子、糊の利いたテーブルクロス、帆船模型、銀のティーポット、そして世界地図。
明治らしさあふれる、素晴らしい洋館ロケです。
丁髷頭の大阪商人がぞろぞろと洋館に集まる姿はなかなか面白い。
こういう明治初期の面白い絵を見られるのは眼福ものです。
ここで背景の世界地図について五代が語ります。
彼は少年時代、琉球交易係を担当していた父に世界地図を見せられました。
興味津々の五代は二枚複写し、一枚を藩主に献上、もう一枚を手元に置いて眺めていたそうです。
ボーイの頃からアンビシャス、エーンド、グローバルなビジョンを持っていたんですね。
天秤棒を担いだ惣兵衛
新次郎は栄達の放置した車を引っ張りますが、まるで動きません。
なぜここがわかったのか?
と、訝しむはつに、新次郎は適当に歩いていただけと答えます。
こういうとき、この人は本音を言いませんからね。
広い大阪を闇雲にふらふらして見つかるものでもないと思いますが、どうなんでしょう。
顔の広い新次郎だから、調べていたような気もします。
新次郎はせっかく会えるなら、あさから荷物を預かればよかったと言います。
しかしはつは、百姓のもとで世話になっているからときっぱり施しを断り、さらにあさには会ったことも居場所も言わないよう口止めします。
そこへ天秤棒を担いだ惣兵衛も来て「加野屋はまだ無事なのか?」と新次郎に話しかけて来ます。
憑き物が落ちたようにすっかり口調が明るく、新次郎に酒を奢ってくれとまで言う惣兵衛。
商人の時より農夫姿も似合っていますね。
どん底の眉山家で唯一救いがあるとすれば、惣兵衛の閉ざされていた心が、ありのままに解放されたことでしょうか。
今すべきことは商売なのはわかってる
寄合所であさは、新次郎のほつれた着物を縫いながら参加。
五代は意識の高いプレゼンをするのですが、その意識の高さが災いしてか、商人に通じません。
薩摩の侍出身というのも印象が悪いようです。
五代がルー大柴語であるのは明治初期には翻訳語が未整備という仕方ない部分もあります。
しかしビッグもカンパニーも、この時点でちゃんと相当する日本語があるわけで、もうただの五代の癖にしか思えません。
五代さん、イギリスでプレゼン技術は学ばなかったんですね。
休憩時間、紅茶を飲む五代にあさが「大丈夫ですか」と話しかけます。背景に謎の銅像があるのがちょっと気になります。
あさは五代に「クソくらえ」の一件を謝りますが、五代は「来てくれておおきに」と御礼を言います。
あさは姉の苦境と、そのせいで商売のことなんて考える気にはなれない、でも今すべきことは商売だと五代に打ち明けます。
新政府の政策ミスを陳謝する五代。
あさは新政府の政策を「なんでどす!」と五代に問い詰めるのですが、お目付役の雁助の制止でやめます。
五代は、新政府の政策で衰退した大阪再生こそ使命と熱く語ります。
英語でも「それが罪滅ぼしなのだから」と言うのですね。
思い出すのは『八重の桜』の山本覚馬です。
彼は戦乱に巻き込み荒廃した京都復興を願い、知事の元で働きました。
実家は、さらなる商売拡張のため東京へ
店に戻った雁助は、五代の大阪再興に賭ける情熱は本物であると正吉に報告します。
正吉も五代の情熱に触発されているようです。
そんな折、あさの元に実家の今井家から手紙が。
新政府の仕事を正式に請け負うことになった今井家は、さらなる商売拡張のため東京への移転を考えているとのことです。
梨江もはつのことを探し、何故助けなかったかと悔やむばかりとも。
あさは姉妹の懐かしい思い出を回想します。
この回想シーンからまだドラマ放映から一ヶ月経っていないんですよねえ。
あの無邪気な姉妹がこうも対称的な運命となるとは。わかっていたけれど、辛いものがあります。
ここで今井家、史実では三井家の東京移転についてちょっと補足を(続きは次ページへ)。
本放送の頃はじっくり観られませんでした。今、録画でゆっくり観ていますが、好感の持てるドラマは総じて、人物の描き方がうまいと思います。
宮崎あおいさん、実はあまり好きなタイプではありませんでした。ですが、はつ役がなんてしっくり来るのかと、目から鱗の思いです。