時は明治。
日本一の「ゲラ(笑い上戸)」娘ことヒロインのてんは家を捨て、船場の米屋・北村屋の長男藤吉のもとへと嫁ごうとするものの、藤吉の実家で姑の啄子からは認められません。そうこうしているうちに、藤吉が詐欺に引っかかり北村屋は倒産。店も家を失います。
三人は売れない芸人が集まる通称「芸人長屋」に引っ越します。
藤吉とてんは、てんの実家藤岡家から五百円(現在の貨幣価値で五百万円)を借りて、亀井という男から寄席小屋を買うのでした。
さて、いよいよ夢の寄席の始まり始まりでぇ~ございます!
入場料を取るにはあまりに貧相な演目リスト
人手不足の寄席だけに、芸人も裏方を手伝い、てんが甲斐甲斐しく働くことで回っています。
初日は呼び込み効果もあって、そこそこの客入り。
ここで、昨日てんが特訓した、茶子として客の間に座布団を滑り込ませるための場面があるのですが。
「すんまへぇ~ん!」
練習で失敗した通りに客にぶつかり、あえなく撃沈です。
今までさんざん失敗してたのが、本番でうまく行くわけないやろ……。
大体、お客さんに横からガッツリぶつかるって失礼ではないでしょうか?
できるだけ客への摩擦を小さくして、自然と席を詰めさせるのが得策では?
歌子がフォローに回りますが、本当にダメな子でがっかりです。
肝心の寄席の演目は?
・万丈目のうしろ面
・怪力岩男
・舶来亭キースの西洋トーク
・アサリの百面相
これで入場料を取ろうというのですから、いや、もう、厚かましいにもほどが(´・ω・`)
エンタツが学ぶのは西洋史ネタじゃなかろうて
ダントツで駄目なのがキースでした。
舶来亭って何だろう?
と思ったら、ワシントン、リンカーン、ナポレオン、マリー・アントワネットら西洋史の人物をネタにしたトークのようです。
観客が元ネタを知らんもので笑いを取れると、なぜ思った?
なんだか、明治時代の芸人が考えた芸ではなく、現在の脚本家がテキトーに考えた感じが露骨に見えて、正直キツイものがあります。
藤井隆さんの芸は、『当時は、こんなんで通用してたのかぁ……』ぐらいのものですが、キースは現在のピン芸人の漫才に寄せているようで、どうしても今と比べてしまうんですね。
おそらくや、キースのモデルとなったエンタツが「アメリカで巡業してきたという経歴」を“舶来かぶれ”ということにしたのでしょう。
しかし、意味が全然違うのでは?
エンタツが学んだのは西洋史ネタではなくて、アメリカのコメディアンのやり方だったんじゃないですかね。
もちろんこの時点でのキースは「笑えない芸人」だから、成長過程であり仕方ないのかもしれません。
それでも、普段、あれだけ笑いに自信満々な姿が痛くなってしまい……朝から、テレビ画面の前で、見ている私の方が辛くて恥ずかしくて、悶絶しそうになりました。もうヤメて><;
勝負は三日目からや! と言われるが……
そこへ、やっと遅刻していた和泉屋玄白が来ます。
しかし、前座のお寒い芸で冷え上がった客は、クスッとも笑いません。
玄白は「三日目くらいからならよくなる」と慰めます。
流石に藤吉は焦りますが、てんはニコニコしながら「焦らなくてもなんとかなるでしょ!」と言うばかり。
いや、焦ってください。本当にてんが残念な子過ぎます。てんの笑顔は癒しどころか真剣味の欠如に見えるんです。
この惨状を目の当たりにしながら、よくもまあヌケヌケとこんなことを言えるものです。
二日目も改善せず。むしろ悪化。
三日目はますます駄目。てんは途中で帰った客を追いかけ、
「最後まで見れば笑えます!」
と言います。
無理やろ! 相手にしてみりゃ「入場料返して」でしょ。
怒った客は本物の寄席が見たいと、「文鳥」と書かれたチラシを突きつけ、帰って行きます。
ここは、てんとしても、ゴリ押しして引き留めようとするのではなく、どこが悪かったかを丁重に聞いてフィードバックしなくちゃ。
誰も客のいない寄席に伊能栞がやってきて
玄白はついに「マネージメントと前座のカス芸人がアホやから落語ができへん!」と激怒。
明日からは来ないと吐き捨て出て言ってしまいます。
四日目。ついに客は一人だけに……。
その客も途中で帰ります。何度も同じ芸人が出て来るんですから当たり前です。見ている方がつらすぎる。
というか、この場面で万丈目がてんのことを「ごりょんさん」と呼んでいるのですが、藤吉と正式に籍も入れていない、寄席もこんな状態で「ごりょんさん」はおかしいのでは?
大阪(船場)商人の女将さんに対する敬称「ごりょんさん」を軽々しく扱っていると、怒られそうです。
そこへ、伊能栞が登場。
週の半ばに恋のライバルであるリリコ、風太、栞を投入するルーティンですかね。
高橋一生さんをもってしても挽回できそうもないのが、かえってすごいと感じてしまいました。
伊能は一人で何やら意味ありげに舞台を見ています。
明日は、彼からヒントを貰ったりするのですかね。
もはやそんなレベルではないような気もするのですが……。
今回のマトメ
本作を罵ってばかりの私ですが、いいと思うところもあります。
・三味線や太鼓の演奏
・寄席の雰囲気
・小道具
・衣装
・用語解説
・演目名表示
そういうところは、当時の芸能の雰囲気作りに繋がっていてなかなか素敵だなと思います。
それと今日は万丈目歌子さん。
きびきびした動き、自然な大阪弁。実にいいですよね。
でも、それ以外はなぁ……。
今日は視聴者が感情移入できたとは思います。
てんと藤吉と芸人たちではなく、観客と玄白師匠に。
観客が怒って出ていくところ、玄白が「カス芸人」「こんな端席」と罵るところは、「そうだそうだ!」と賛同したくなりました。
寄席が始まったら面白くなるかと期待した人もいたと思いますが、トドメを刺された気分というか。
藤吉のお友達だけの内輪ノリで金取って、そんなのは失敗するってわかっていたはずですよね。
「カス芸人」と罵られただけあって、揃いも揃って駄目です。
仮に友達を雇いたいなら雇いたいで、芸の改善をするとか、あるいはナゼ、友達枠以外も連れて来なかったのでしょう。
それって席主としての業務を放棄してません?
アンタが考える笑いって何なんや!
吉本せいが生きていたらそう言われても仕方ない、というか小屋を譲った亀井も呆れてしまいそうです。
マズイ料理になるとわかっている材料を、何の工夫もなく調理して、それを客に押しつけて「最後まで食べたら美味しくなります!」と店の外まで言いに来るような。そういうレベル。
本作は「悪役・意地悪役扱いされている方がまとも」というパターンが繰り返されてきていますが(啄子、楓、リリコ等)、今日もこんな寄席を見限る方がまともに見えました。
それなのに「なんで笑ってくれないんやろ」といじめられたような顔をするてんに、腹が立って仕方ありません。
本業の寄席運営に対して、何ら努力の痕が見られないんですよね(´・ω・`)
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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