茜と下山は、ビラを配ろうとしているなつとイッキュウさんに、こう言い出しました。
「私じゃダメ?」
めいちゃんと優はもう仲良し。人生初のお友達です。
しかもその母が茜ですから、安心して任せられる。
6千円のベビーシッターとして、この上ない条件でした。
下山夫妻とあいつが助けてくれる
茜に預ければ解決というものでもないと以前書きましたが。
・雇用条件を確認する
・互いの理解がある
・一方的な押し付けではない
こういった条件を満たしているのですから、これはよいことですよ!
あまりにタイミングがいい。こういうとき、ナレーションで偶然であることを主張しないのが本作です。
下山夫妻は、なつが作画監督になったことは承知のうえでした。
背景に、彼がいたのです。
そう、神っち!
昨日、休憩室でなつと話し、ブルース・リーみたいに鼻をこすっていたあいつですね。
なつぞら127話 感想あらすじ視聴率(8/26)そもそも少年誌に垣根無し神っちは、自分なりの責任を感じていた。
作画監督をやることも含め、仕事をしろと背中を押したのは俺だぞって。
だからこそ、救いたいとは思っていた。
それをこういうかたちでやる神っちは、紛れもなく熱くていい男ですよね。
なつは、感極まった顔になります。
「それだったら、本当にバカだよ神っち……感謝しかない」
神っちは、こうも言い切りました。
イッキュウさんをくすぶらせていたら、日本のアニメの損失である――。
カッコいい。
これはモデル通りではあるのですが、行き先を神っちが作るのではなくて、遠隔後方支援になっているところがミソ。
あの大御所は、マコと神っちに二分裂しているようにも思えるのです。
それに、神っちはあくまで自分がやりたいことではなくて、支援することに積極的でもある。カッコいいじゃないですか。
そこで女帝マコが、こう宣言します。
「それで二人は決めた!」
なつとイッキュウさん。
二人を一度に世に出すことを申し出た、そんな茜と下山に感謝して、こうきました。
「ありがとうございます!」
「一緒に頑張ろう!」
「よし、マコプロにようこそ」
きっちりと、ここで6千円と言い切るところもいいと思います。
知り合いだからと値切るわけでもなく、正規できっかり渡します。
子供を預けるということ
かくして新年度――。
優を預けて、なつとイッキュウさんは出社することになります。
大量の荷物を持って、茜のもとをめざすなつとイッキュウさん。
大げさなことでもなく、このくらい必要なんです。
茜の前で、その内訳をきっちりと示します。
・おむつ
・着替え
・ふとん類
・粉ミルク
・哺乳瓶
・コップ、スプーン、食器
・離乳食(ジャガイモと鶏ミンチ)
子供はよくも悪くも素直で、我慢ができません。
チクチクする服が耐えられない。哺乳瓶だって好みがある。
決まった食器でないと泣く子もいる。離乳食は言うまでもない。
昔はアレルギーだのなんだの、そこまで細かくなかったとは言われる話なんですが。
育児とは、日々進歩しています。
それは人間そのものへの理解が進んでいることでもある。
昔も、アレルギーで亡くなった人はいたと思います。
何かを食べた途端、健康だった若殿が急死したなんて記録もしばしばあるじゃないですか。
そういう状況で毒殺を疑われたと文献にある場合、私はどうしたってその可能性を考えたくなるんですよね。
その辺の事情は、歴女医まり先生に聞きたいなぁ。
→参考リンク:まり先生の歴史診察室
そんな歴史考察はさておきまして、あまりに重みのある荷物描写に、鼻の奥が思わずスンッとなってしまいました。
本作のスタッフは、育児に真剣に向き合っているんだなぁ。
荷物を並べることに意味はあるのか?
ありますとも。育児はこういうものだ、大変だとわかる。
下山は、イッキュウさんと一緒に出社するために待っていたと笑顔です。
なつは、優の迎えになるべく早く来ると言い聞かせようとします。
優ちゃんが、演技でなくてありのままそこにいる乳児そのもので、ほんとうに眠そうなんですよ!
どういう演技指導?
いや、子役の使い方なの?
色々と不思議になってくるほど。
なつの、愛おしくてたまらない表情も、演技とは思えないほど。
「ごめんね、ママ、すぐ帰ってくるからね」
そう言い聞かせても、優は泣く。そりゃそうだよ。
イッキュウさんもハラハラしています。
こういうときは早くしないと、きりがない。迷惑がかかるって。仕事モードスイッチが入ったのかな。
でも、怒鳴ったり声を荒げないところが、いい夫であり父だとは思います。
「ごめんなさい。ちょっとだけ……」
「きりがない」
ここで、茜がきっぱりとこう言います。
「なっちゃん……なっちゃんが頑張らないと」
「はい、茜さん、すみません」
なつはなんとか我が子と別れ、マンションの前でじっと佇んでいます。
イッキュウさんが声をかけます。
「大丈夫か?」
「遅れるから、先行って」
「いつまでだって待つよ」
そう心配するイッキュウさんに、なつはこう返します。
「もう大丈夫!」
そしてなつは振り向かず、決然と歩いていくのです。
こういう強い歩き方をできる広瀬すずさんはお見事です。
これぞ、朝ドラ百作目のヒロインだ!
女帝マコは環境を整備する
「遅くなってすみません!」
「作画監督、おはよう!」
堀内が出迎える中、なつは東映動画に入ります。
さっそく優の似顔絵を見ながら、仕事です。
一方でイッキュウさんも、マコプロに出社。
『三代目カポネ』の企画に入ります。
カポネの課題は、明るさが足りないことでした。
とはいえ、暗黒街が舞台ですからね。
カポネといえば「血のバレンタイン事件」をはじめ、そりゃもう悪い人。
ああいう暴力抗争を映画化していいのか、って話でもあります。
※イタリアンマフィアといえば『ゴッドファーザー』ですね
ついでに言えば、当時の日本はヤクザが激しく暴れていまして、治安も格段に悪かったものなのです。
白昼堂々射殺もありえる時代じゃけえ。
※時代背景的に『仁義なき戦い 頂上作戦』あたりですけえのう……
そこをアニメで流すのですから、明るくすることは必須条件。
クリアしないと、話になりません。
「三代目は、根は善人。下山さんみたいにひょうきんにする……」
イッキュウさんはそう言い出しました。
ハードボイルドを意識しすぎじゃないか、という指摘です。
※続きは次ページへ
赤ちゃんの演技がすごい。朝から泣かされました。最年少天才子役、ですね!
まこプロで話していた、
三代目、のハードボイルドでひょうきん者とは、
ルパン3世のことかな?
優ちゃん役の赤ちゃん、
なつに甘え、
茜さんでは泣く。
保育園1日目あるあるを、
見事に再現していて、すごい!!
お布団、オムツ、お着替え、
ものすごい荷物になるところの
再現も、ちゃんとしていて、
すごいと感心しました。
かみっち、マコさんが出て来ると、ほっとします。
もし、このドラマが先で、「あさが来た」が後だっら、あの、取ってつけたような、あさの育児に対する態度や思春期の娘とのバトルも入れなくてすんだかもしれないと思いました。
ヒグマ駆除の件、大いに賛同します。
勝手な雑音のなんとひどいことか。ヒグマの生息環境の回復・整備はもちろん図るべきですが、人里では絶対に共存はできないのに。
当局には雑音に屈せず、住民の安全を図ってもらいたい。
戦前の三毛別のヒグマ獣害事件のことは、私は吉村昭氏の小説『熊嵐』で知りました。あまりの内容に、その晩は眠れなくなってしまったほど。
野性動物をあなどってはならないと思います。