昭和28年(1953年)春――。
信楽の子である川原喜美子は、6年ぶりに日本の中心にして故郷である大阪へ戻りました。
どんな新生活なのか? 気になるところです。
新しい世界には新しい服、そして下着
喜美子はたった一人で大阪に戻りました。
そのころ荒木商事では社長のさだが奮闘中。
デザインセンスがないと嘆く彼女に対し、女性社員は「目の付け所はまちがってない、自信もち」と励ましています。
ここでさだ、ちょっと悩む。
「ん〜、今日何か用があったような……」
忘れたんかーい!
そのころ、喜美子は待ちぼうけです。
約束の待ち合わせ場所に来ない。道ゆく人に聞いても、忙しいと断られる。辛い大阪初日かな?
一方、荒木商事ではせっせと皆で下着を制作中。
ミシンをカタカタ踏んでいます。
おっ、NHK大阪、得意分野回帰?
『カーネーション』と『べっぴんさん』を踏まえているからには、洋裁は得意中の得意ですもんね。
若い子向けにはおリボンがええ――そう語るあたり、面白いですね。
女性下着のリボンはナゼあるのか現象。かわいいからや。
さだみたいな方が、おリボンをつけることにしたと。そういう謎解きやね。
機能としては無意味ですから。
最近は、むしろ上の世代らしさをアピールします。昭和30年前後に若かった、喜美子世代がストライクゾーンですね。
女性下着をせっせと描く方は、このあたりご注意ください。
ここで、警察官がやって来ます。
「失礼します、こちら荒木商事さん? 荒木さださんいう社長さんおりましたか?」
ここでさだは思い出す。
川原喜美子という女の子を、迎えに行くはずだったことを。
そうか、きみちゃん、警察官のお世話になったか。
ええ機転や。喜美子、到着です。
「せやった! せやせや!」
でた、「せやった」。
「せや」の過去形、関西弁ネイティブでないとちょっと難しいやつ。
親切な警察官によって、喜美子は無事到着します。
ええんか、初日がこれで。さだは忘れっぽいのかな?
実のところ、さだは、下着ショーで頭がいっぱいでした。早速下着がお披露目されます。
その下着とは?
ちょっと前までは乳バンド。ブラパットを入れる。それは今、ブラジャーと呼ばれるようになりました。
朝ドラでブラジャー!
セリフでざっくりと服飾史が入ります。
戦後の当時、洋装が普及しておりました。
時は1947年、ディオールがボディラインを見せるニュールックを発表。それまでは第二次世界大戦の影響で、肩パッドを入れたミリタリールックが流行しておりました。
平和が訪れた世界の女性は、女らしいボディラインを見せたい。そう切実に願う中での流れです。
それが日本にも到達やで。
※2:30くらいから、1940年代から1950年代の流れが参考になります
そんな女性のボディラインを見せる。
新時代を美しく着こなすための下着作りしているのです。
まず、体のラインが綺麗でないと、そこから始めないといけないのです。ファンデーションですね。
「これもなコルセットいうの〜」
喜美子は、下着のデザイン画を見せられて唖然としています。
信楽にはない流れ。照子様とてご存知ない。
これが日本の中心、ファッション最先端か――。
「お茶どうぞ〜。まだちゃんと挨拶も終わってへんのに」
ここで、女性社員がお茶を出します。
「あ〜そやねん、もう下着ショーのことでうっかりしてたんよ!」
うっかりしてたんか〜い!
荒木商事はモデル募集中?
そう断ってから、さだは社員を紹介します。
まずは片腕の二ノ宮京子。
「自信もち」とさだに言えるほどの方ですね。「二ノ宮さん」と紹介されて、名前でええと言います。
次は縫製の千賀子と麻子。
『なつぞら』のマコさんに次ぐ麻子さんじゃないですか。
なんと、この麻子は洋裁の学校に通っているそうで、モデル兼縫製だそうです。
麻子はモデルもつとめると言われ、ギョッとしています。そしてこう。
「千賀子さんがやるんやったら……ほな、うちもやります〜」
千賀子がやると堂々と言うから、麻子もやるんですって。
「以上、荒木商事の面々よ〜」
荒木商事は、さだの両親死後、下着会社を目指しているのだそうです。
女の遊びやろなんてと言われようともここから頑張る、と。上下関係があまりない、自由な社風だとか。
すごく、すごくいい。
そういう心意気のさだ中心とした面々が、女性をファッションから解放すると意気込むこの流れ、すごくいいですよ!
ここで荒木商事の面々は、喜美子は何をするのかと気にし始めます。喜美子は、和裁ならばおかあちゃん……でなくて母から習ったと言うわけですが。
きみちゃんもええなぁ。
「おかあちゃん」を「母」と言い換えるあたり、背伸びした十五歳らしくていいと思う。
「んもぉぉぉ〜おかあさんてばぁぁあ〜〜〜!」
と、いい歳こいて勤務先で喚く、そんな不愉快なNHK大阪前作ヒロインとは違うのだ。
でも、母譲りの和裁を生かす道はないようです。
「ここは試着品だけで、縫製は人でが足りてます」
「ほな何するん?」
「まさか!」
「えっ……!」
「わかりました。下着のモデルですね。ブラ。ブラジャーですか? こうですか? こうですかっ!」
喜美子、またも大暴走。セーラー服の上からブラジャーを当てて、真剣になっております。
いやいやいや、ジョーカスだっていくらなんでもそんなことは頼まないでしょ。
ここで、さだが喜美子受け入れの経緯を語ります。
ジョーはいとこだと言っていっておりましたが、母方の遠い親戚で、お互いよく知らない。
無理矢理つてを頼ってきたのだとか。
ジョーよ……。
一体どういう手を使ったかわかりませんが、彼なりに頑張ったんですね。
懇願回想シーンが入ります。
何度も頭を下げるジョー。しまいには土下座までして、強引に頼んだのでした。
うん、ほんまに床舐めそうやったんやね。
ジョーの出番はこれだけですが、いいですよね。
酒癖は悪いわ、オラつくわ、暑苦しいわ。割とろくでもないとは思いますが、嫌いになれない魅力があります。
本作、これはもう、北村一輝さんの代表作になりますわ。
でも……大阪編では朝のジョーカスタイムがなくなるんか。悲しいなぁ。
『なつぞら』で泰樹の出番が減った以来の寂しさやわ。
ジョーカスタイムは終わりまして。
さだはジョーの懇願に負け、荒木荘の下働き、つまりは女中として雇ったとか。
「そうでしたか。よう話わからんときてしもて。こんなすてきなデザイン会社、どうしようかと思っとって。お茶おいしかったです、ありがとうございました!」
喜美子はそう言います。
情報過多で戸惑いつつも、がんばる喜美子。戸田恵梨香さんが抜群にいいですね。
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