魔法の葉書と魔法の手拭い
そこにあるのは、謎の布でした。
「臭っ、くっさ、何?」
荷物の中に謎の臭い布。嫌がらせかっ! そして手紙と葉書です。
母・マツからでした。
喜美子へ。
余計なこと言うなと言われてるので、要点だけ書きます――。
そこにあるのは住所と名前が書かれていて、そのまま送ればお母さんに届く魔法の葉書。用意したのは、陽子さん達でした。ブラウスとスカートと、届けてくれたのです。
信楽の優しさに感動するマツに、頑張っているきみちゃんをみんなよう見てきたからこそ、応援していると語られたのでした。
信楽でのきみちゃんの日々。
洗濯、薪取り、子守。
「きばりや〜」
そう声をかけつつ、生きてきたきみちゃん。
喜美子、どんなことでも一生懸命やってたら誰かが見ててくれるんやな。母はそう語りかけます。
もひとつ、あの手拭いは「わざと洗っていない」お父ちゃんのものだと明かされます。
臭うて腹立つさかい、負けるもんやと思うはずや――。
お父ちゃんの働く汗に臭いがしみた、魔法の手拭い。そうマツはまとめます。
ほな体に気ぃつけてがんばるんよ。お母ちゃんより
マツも、陽子さんも、いいと思います。
これは泣いてもしゃあない。
んで、ジョーカスの励まし……高度すぎて若干意味不明のようで、それはそれでええ話に着地しているとは思います。
重〜い火鉢をぎょうさん運んで、汗を吸ったそんな手拭いや。
「くっさ! ああ……臭い、臭い〜!」
父の汗を吸った手拭いを鼻に当て、臭いと言いながら泣くヒロイン。
本作、どういう世界観なんや……。
フォースの関西面に堕ちたのか
あかん。
本作、フォースの関西面に堕ちたわ。
こんな鼻くそだの、くっさ! だの。
小学校低学年レベルの語彙をうれしそうに散りばめる。ドツボのアホワールド。
NHK大阪は、ありとあらゆる何かをふっきって、本作にぶつけているようです。
でも、いいと思うし、何よりやさしい。
いじりといっても、ブスだのなんだの、本当に人の心を傷つけるようなことはしたらあかんはず。
そのへんがどうも最近危うかった。
大坂なおみ選手に漂白剤だのなんだの、そんなの笑いでもいじりでもネタでもない。そんな方向に吹っ飛んでいって心配ではある。
本作は、蝿が鼻くそだの。お父ちゃんの汗が臭いだの。そのレベルで笑いを取りにいくから、安心できると思います。
鼻くそを女優に言うな、言わすなって?
ええやん、このくらい。
それに戸田恵梨香さんが「かわいい」と「綺麗」枠から外れて、脱皮するチャンスを作ってこそ、朝ドラでしょう。
朝ドラは新人女優の登竜門とされる。
それだけではなくて、中堅以降をさらに伸ばせると『なつぞら』で示されたのです。
NHK大阪の育成は最近ちょっと不調でしたし、女優だけではなくて、作り手も脱皮をしたいのでしょう。
応援しとるで!
臭い連呼されたジョーカスも、ええと思う。
お父さんが娘に臭いと言われるとか。
パンツを別に洗濯されたがるとか。
父親だけでなくて兄弟もそんなもんでしょう。
異性の家族との距離感、ウザいけど愛おしいくらいで、健全じゃないですか。無闇にファブリーズで消さなくてもええ。
そこで終わりにすればただの感動話なのに、臭い連呼するところにむしろ健全性を感じたのでした。
いじりあうことで深まる家族もあるのだから。
皿問答の奥深さよ
のぶ子の皿問答。これには驚きました。
そうなんです。
これは今までも突っ込んだ覚えがある。
料理は愛情だのなんだの言うけれども、食べる側からすればそんなものはわからないはずなのです。
じゃあナゼ愛を込めると特別だと、特に女は言われ続けるのか?
一種の洗脳とちゃいます?
愛情の問題でもない気がする。
妻や交際相手がクックドゥを使うと文句を言う心理は、「手間暇かけて俺に尽くせ」という屈服要求ですわ。
家族が介護をすべきだとか。それも同じでしょう。
家族の愛という目に見えないものをかざすことで、サービスを家庭や女性に押し付けてきた。
のぶ子がその人生を捧げてきたシャドウワーク――その仕事を隠し、誰にでもできると馬鹿にしたのは、誰なのかという話ではある。
のぶ子はシャドウワークという概念を知っているはずがない。
じゃあ、概念がない従事者が疑問を抱かないでいたのかというと、それは違う。
昔の母親は文句を言わずに家事育児をこなしてきた……本当に?
文句を言えなかった。
言ったところで、聞く耳を持たれなかった。
それだけのことではありませんか?
『なつぞら』には、偏見を克服した別世界の美しさがあった。
それに対して、『スカーレット』はその構造や偏見に切り込む姿勢を感じさせます。
そこに優劣はない。
どちらも素晴らしくて、意義がある取り組みです。
そして本作は【NHK大阪えろうすんませんキャンペーン】じゃないかと思ってしまう……すみません、私が勝手に名付けました。
大久保のぶ子は、NHK大阪前二作を全力でぶっ潰す、インパクトのあることを言ったと思うのです。
「笑えば幸せになるんやで〜」とヒロインがヘラヘラ笑い、それをポスターにしようが、そんなことは嘘でしかない。
史実からすれば、ヒロイン周辺が目指していたのは幸せではなく利益の追求でした。それを突き詰めれば、害悪のあるいじりにすらなりかねない。
「発明家だ!」
「画家なんだ!」
「だから復興支援だの、戦災のあとでの助け合いだのしなくていいんだー!!」
こんなクリエイターどもが、我こそはカースト上位、汚い雑用はやらないと言い切っていたNHK大阪前作。
とってつけたように、
「人と世のためになることなんですぅぅぅう〜」
と言い切ろうが、結果的には自分たちの利益と名声追求でしたよね。
一方で武士の娘やらヒロイン姪に、大量のシャドウワークをぶん投げる。
「私は飯炊き女ぁ〜」
と、最悪のセリフを言わせる。
なめとんか?
あの人数の衣食住管理をあれだけの人手でできるわけないやろ。
そういう縁の下の力持ちを踏んづけながら、自分たちの利益と名声だけを追い求めた地獄。
それに対して、本作は「えろうすんません」をしているんやなぁ、と痛感するのです。
いいぞ!
いいぞ、いいぞ、もっとやれっ!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
統括の内田ゆきさんって、カーネーションやごちそうさんにも携わっていますね。東京、大阪というより担当人の属性によるのかも。人事異動もあるでしょうしね。
ヒロイン交代で、
夜BSドラから、朝BSドラに戻しました。
朝からさわやかです。
楽しみです。
主題歌がまたいい。
家事育児なんて誰にでもできる!なんて、やったこともないくせに言う人間は、未だに山のように居ますからね。
大阪には拍手喝采です。