デイリー大阪で、試しに働くことにした喜美子。
彼女は、猪突猛進ぶりを発揮するちや子の働きっぷりに驚くばかりです。
ふと気づいたんですが。恒例の月曜以外でもOPがロングバージョンではありませんか?
それなのに、嗚呼、それなのに……中身はミッチミチです。
これはあれやろ。
関西弁ネイティブ演者同士でセリフが早く回りすぎて、尺が余っとるんやな。
【旅のお供】はなかなかのもの
ちや子が編集室を出て、外へ駆け出していく。
残された喜美子は、雪崩が起きそうな荷物整理と、お茶を淹れて欲しいとヒラさんに頼まれます。
ここでヒラさんは【旅のお供】こと信楽焼のかけらが大学の先生から戻って来たと話します。
割れているかけらなので、なんぼつくか価値云々ではありません。
どれだけ古いか?
室町時代のものだとか。
「それはそれでなかなかのもんちゃう?」
確かにこれはなかなかのものですわ。
織田信長あたりと戦った忍者が、火薬調合をしていて割った――そういう歴史あるものかもしれません。ロマンがあるなぁ。
喜美子も嬉しそうです。
「そうですねえ。大事に持っときます。ありがとうございました!」
ここで同僚のタク坊が、ちや子は鉄砲玉だと言っております。
ヤクザものの、命知らずで復路はない暗殺者のイメージがありますが、もちろんそういうことではない。
※当時はヤクザの抗争が非常に激しかった。ちや子たちもきっとその取材を……
ヒラさんはこれを聞き、こう言います。
どこぞの男の二倍は働く!
ブンヤの誇りも二倍!
信じ切っておりますね。
「せやからきつい……」
ぼそっとぼやくタク坊。
ストレートに褒めるのではなく、こういう茶化しを入れる関西ノリです。
方言だけの話ではなくて、会話のテンポや合いの手の入れ方が関西にシフトしていますね。
では、ブンヤの誇りとは何か?と、喜美子が聞くと、ヒラさんは指で埃を拭う動作をしてからこう来ました。
「この埃やないで」
わかっとるわ!
ちや子、そのブンヤ伝説
ブンヤの誇りは、新聞記者としてのプライド。好きやから疎かにせん。最後まで責任もってやってのける――。
ここからヒラさんが語るちや子伝説です。
『なつぞら』の明美と信哉のようなジャーナリストの師弟関係ですね。
しかしそこは関西、しかもデイリーだから、もっとワイルドと言いますか。
衝撃的な事件取材も一番乗りや!
事件現場では、関西弁で驚き語るおばちゃん複数名が、サザエさんパーマなんですね。大仰な関西弁としぐさといい、この髪型といい、ええ仕事をしておりますわ。
サツ回り(※警察の取材)も女一人。押しのけられても負けてへん!
「緊急出稿マルトクで!」
そう電話ボックスに駆け込む場面もあります。
このさりげない一瞬の場面でも、動態保存した当時の車が走っていると。
どんだけやる気を出すつもりだ!
ここでヒラさんのアップになります。
「挙句に、そのうえ……」
「ふぅ〜へぇ〜ほぉ〜!」
喜美子はそう驚いています。
ちや子姉貴への敬意がぐんぐん育っている様子です。
雄太郎は喜びを分かち合いたい
そして約束の時間に「さえずり」へ。
雄太郎が席を勧めて来ます。
そこにあるものに喜美子は恐縮してしまいます。
「アイスクリーム? うちっ、そんな!」
ほんまは食べたいやろ。それでもハイテンションで否定すると。
『なつぞら』のとよにも、テンションが高すぎるというしょうもない叩きがあった。本作の女性もテンションは高いと思う。
それも道産子や関西のノリを再現すればこうなるだけのことであって、ブリッコしている暇はないだけのことです。
「ええね、ええね」
出た……言いたいことは二度繰り返す関西人や。
雄太郎は寛大に流します。
喜美子は興奮気味に、ちや子伝説を語ります。
「もうすごかった。男の人に負けんとうお〜と出て行く。一生懸命働いとって、草間流柔道でいうと……」
「草間流柔道で喩えんでええ。柔道もちや子もおいとけ」
本作ってこの、脱線しそうなときに「おいとけ」と軌道修正する流れがうまいんですよね。関西や。
毎日午前中は関西にいるような気分になってきて怖いです。本作のことを考えただけで、脳内大阪に旅立ってしまうんだなぁ。罪深いわ。
はい、私もおいとこ。
喜美子は「いつでも歓迎や」と言うてもらえたと上機嫌です。今後はちや子と相談してじっくり決めるとか。
そしてこう付け加えることを忘れません。
「大久保さんに嘘ついたのはあれですけど……」
「ええ、人生にはそういうことも必要や」
出た。あれやそういうこと。そらそうよ。そういう「あれでそういうことや、わかっとるやろ」という理解を前提とした話し方や。
ここでマスターがコーヒーを持ってやってきます。
そこにいるだけで、今朝も存在感があるマスターです。
雄太郎は、自分にも嬉しいことがあったので、おごると言うてのです。
「喜びをわかちあおうや! 喜びをわかちあったてぇ! わかちあってくれたらええな!」
よほど大事な主張なのか、そう繰り返す雄太郎。
関西人あるあるですが、そのまんま再現すると冗長になりかねないから、脚本としては再現しなくてもいいと思う。しかし、本作はやると。
雄太郎は語り出します。
「決まったんやて!」
「何が決まったんです?」
「決まったんやて!」
くどいわっ!
こういうくどくてしつこくてテンポが早い流れを、ありのままの関西にしたいからこそ再現する。そんな本作です。
この軽くて味のあるテンポと比較すると、NHK大阪一昨年と昨年は……。
関西弁で喋って笑いをとりにいっても、納豆の糸じみた、何かしっくり来ない粘り気があった。
関西風という看板で、真っ黒い汁のうどんが出てくるような。
そういう偽りはもう終わったんやな。
ついに銀幕デビューや!
はい、さてどうなったか。何が決まったんや?
荒木荘で発表されます。
なんと『大阪ここにあり』での銀幕デビューが決まったそうです。声量と度胸で決めたという、映画俳優への道です。歌上手いもんね。
大久保はこうだ。
「お腹痛い言うたんちゃうんかいな……」
喜美子はなんとか話を逸らし、ごまかそうとします。こういう細かいところにおかしみが宿るのです。
いつから俳優を目指してたのか。熱く語る雄太郎。黒澤明の『生きる』が脳天を突いたそうです。
「そこ乳首やん。脳天ここですよ」
圭介が突っ込む。
そうそう。
なんでか知らんけど乳首に刺激を受けたポーズなんですわ。
※1952年の作品、市役所の形式主義への幻滅が背景にあるわけです
雄太郎はさらに語ります。
元々、芸事に興味はあったそうです。亡くなった親父が自分みたいな二枚目だったって。そこでさだが軽く突っ込むと。
「ようしゃべるな。お腹痛いのに」
「すっかりようなったみたいで!」
不思議がる大久保。ごまかす喜美子です。
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