スカーレット42話あらすじ感想(11/16)まずは絵付けを極めんと欲す

決めた、うちはフカ先生の弟子になる――。

娘・貴美子がそう力強く語るその頃。
父・ジョーは赤提灯の飲み屋で、おしぼりをちくわに見立てて爆笑しておりました。しょーもなっ!

隣にはフカ先生。さぁどうなる?

お茶とおはぎで語り合う【女性編】

赤提灯「あかまつ」はまだ先としまして。

喜美子は家族を前にこう宣言します。

これから頭下げてフカ先生に頼む。そんでお父ちゃんにも。
あかん言われても、やらせてもらう。何回も何回も頭下げてな。

最初に頭下げなあかんのは、お母ちゃん、直子、百合子。喜美子はそう言うのです。

当時の三姉妹長女の悲哀がよく出ていると思う。
川原家に長男がいればまたちょっと違ったことでしょう。

「わがまま言うてごめん。これから朝晩のこと少しできひんようになるようになるかもしれん。ちゃぶ台かてうちのせいで何回ひっくり返されるわからん」

【諸悪の根源はジョー】やん。
ちゃぶ台返しで妻子がダメージ受けとるやん。

そう謝る姉に、直子はこう突っ張ります。
うちも東京行く。わがまま言うてええ。

わがままなようでいて、自由気ままに振る舞い、姉を自由にする。ありのままに振る舞ってええと示す。
そういう直子なりの思いやり。ちゃぶ台返しも慣れているって。

百合子も、ちゃぶ台返しは慣れていると同意します。おいジョー、全然きいてへんで。

百合子は、うちのこともできることが増えたそうですが、ただし……
「ごはんはなるべく喜美子姉ちゃんに作ってほしい、その方が美味しい」
と、たまらない可愛らしさがあります。

そうそう、ごはんを作ってもらうときは、おいしいくらい言わんとな。
その方が楽だの、当たり前だの言われると、相手のやる気も低下するのです。

喜美子がマツに迷惑かもしれんけど、そう念押ししますと、マツはフカ先生の物真似をしてこうきました。

「ええよぉ〜」

それに直子が「似てへんわ!」と突っ込む。
百合子は聞いたことないのになんでわかんのかと姉に突っ込む。

直子は真似をします。

「ええよぉおお〜、や!!」

「なんやそれ!」

けらけらと笑い出す川原家の女性たち。
本作には、どんな状況でも笑いに変える、そういう力があります。

そしてそれは女だけでもないんやで。
男の場合、ジョーの場合を見てみましょう。

酒とおしぼりちくわで話し合ってええの……?【男性編】

さて、物真似をされたフカ先生は?

時系列がシャッフルしてはおります。
川原家のシーンが前で、「あかまつ」が後。なかなか高度なやり方だと思います。

ジョーは、おずおずと絵付け火鉢について聞き出そうとします。

フカちゃんでええよぉ……と相手はそう返しますが、オゥちゃんはハラハラしております。

なんでも大野家の陽子も絵付け火鉢が欲しいんだとか。
お花の絵が描いてあるものが欲しいんだって。

愛妻家やなぁ〜。
調べてるんやなぁ〜。

このあたりにもジョーの残念さが出ているかもしれない。
オゥちゃんと違って、ジョーは情報収集をあまりしていないらしい。丸熊でも作っているんでしょ! って、突っ込んだら負けや。

ここで「あかまつ」経営者の赤松が口を挟みます。

「えらい儲かってますやろ」

儲かる仕事――金の話になると急に目の色変えるジョー。
あかん……まぁ、これは娘にも受け継がれているけど。

「今、信楽いうたら絵付け火鉢や」

赤松さんは有能です。昭和の飲み屋のええ主人です。
料理をちゃちゃっと作り酒を出しつつ、常連さんに絶妙な合いの手を入れる。

こういう役どころは、説明セリフを入れても違和感がないので便利です。

ミステリなんかだと、重要な証言を提供できる系。
令和のチェーン店とは違うんだな。同じ街並み一つとっても、昭和と令和はちゃうもんなぁ。そう思わせるドラマです。

地域差もある。
『なつぞら』の十勝・柴田家のような環境ですと、駅まですら車で移動するため、外での飲酒がなかなかできません。
昭和は飲酒運転が今より大目に見られたものですが、北海道だと帰路凍死しかねませんので……。

ジョーは理解が曖昧です。
絵付け火鉢? お花の? 頭がパヤパヤしたまま、ちゃちゃっと描いて……と言ってしまう。酒入ってるしな。

フカ先生はそうそうと言いつつ、真顔でこう返します。

「できるかい」

そして続けます。

なかなか難しい。
弟子は二人。一人はものになるのに三年かかった。

そしていよいよあの弟子志願者の話題へ。

「この間やりたい子現れてな、これ珍しい女の子や」

「女の子て、それ……」

ここでピンときて、ジョーさんが暴れたら止めなあかん、そう思うオゥさん。
極めて有能です。軍隊時代からいろいろあったんやろな。

「あれもあかんやろうな。三年も辛抱できるわけないやん。男でもよう続かんことをなんで女の子ができる。華奢な子やで。こんなん、こんなんや。おはようございますぅ〜」

箸を女の子に見立てて、お辞儀させるフカ先生。
もうこんなん、私がオゥさんなら胃に穴が開くわ。

「ははは、力もなさそうやし、弱音吐くで!」

ここでジョーの本音爆発です。
いろいろ間違っているような気がするのですが、まぁ、ええよぉ。

「吐くかいな。そんな根性なしちゃうわ。一人で大阪行って、三年の間働いて、盆も正月も帰らんと頑張っとった。他のヤワなもんとうちの娘を一緒にすんな!」

一通り言い終え、我に返って「しまった!」と言う。

フカ先生は気付き、こうだ。

「ほう、おたくの娘さんか」

「ちゃう、ちゃうちゃう、ここの娘、これ!」

ジョーは慌てて、一人息子しかいない大野さんの娘にしようとする。
オゥちゃんは「ジョーさん、ジョーさん!」と止める。

昭和の男女差やろなぁ。

当時、一般の女性が外で酒を飲むことはありえない話でした。
だから、おはぎを食べつつ、腹を割って本音を出し合った。それが川原家の女性です。

で、ジョーとフカ先生ですが。
彼らは酒が入った上で、狙ったわけでもなく、本音を剥き出しにしてしもうた。
酒瓶で殴り合いにならないだけ、マシかもしれへんよぉ。

言動でやらかしたとき、酒のせいにされます。
これはあかん。通用しない。

酒というのは素面ではごまかしている本音を出してしまう。腹の底ではそう思っている。そういうことですわ。

そしてこの場面では、フカ先生の【残酷な本音】と、ジョーの【カスじゃない本音】が出ました。うまいと思う。

川原家の女性たち、そして視聴者も感動していたフカ先生。
それでも腹の底では喜美子を侮っている。

連日のカスっぷり、ちゃぶ台返しを繰り返していた、どうしようもないジョー。
その腹の底には、深い愛情、意地と誇りがあった。

「ジョーさんには感動したっ!」と、ええ話にするのは何か違うとも思う。

素面でも愛を認めろ。
娘を認めろ。
なんやねんもう……。

今朝も朝ドラ地獄や。昭和のおっさんの悲哀がみっちみちや。
おしぼりをちくわと間違えて食べるパフォーマンスをするジョーを見て、こちらとしても悩みます。笑ってはいるんですけどね。

【朗報】ジョー、酒の勢いで喜美子の決意を認可、ツケもなし!

翌朝、喜美子は水を汲み、漬物を切っています。
戸田恵梨香さんの家事をする動作はスムーズで、彼女自身の練習も演技指導もしっかりしているのだと思います。

そんな娘の背を見る、父のジョーです。
正面切って顔を見て、愛を示せないこの悲哀よ……。

喜美子はそんな父に気づきます。

「昨夜、飲んできたんやろ。なんぼつけてきたん? 今帳面つけてんねん。なんぼやった?」

「払てもろた」

「誰に?」

「行くわ」

フカ先生に払ってもらったのかな?
しかも朝食は抜く。喜美子は戸惑っています。その理由を聞かれるとこうだ。

「うっさいなもう! いらんもんはいらんねん! 行ってくる!」

でた。いらんもんはいらん。あかんもんはあかん。関西弁の理屈を吹っ飛ばす用法や。
喜美子は飲まんで帰ってきて欲しい、話したいことがあると訴えます。
※続きは次ページへ

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