とはいえ、さしもの雄太郎も姉にすら言っていない。
一人前になるまでは言えないとか。しかもノーギャラぽいんだな。
喜美子は、俳優はお金がもらえないのかと驚いています。
すかさず圭介が「もらえるよ」とフォロー。もちろん一人前になればの話です。
売れたら一軒の家建つくらいやと、舞い上がる雄太郎。さだも、家どころやないとワクワクしています。
そうそう、昭和の芸能界ね。今よりもっと黒かったと言いますか。
ヤクザの宴会で歌うとか。親が子のギャラを搾取して借金まみれになるとか。
クスリがパンツから出てくるとか。際どい話があったものです。
未成年の飲酒喫煙も、当時はさして問題になっておりませんでした。
そこには一攫千金という憧れもあった。
今の若者は、芸能スカウトよりもYouTuberに憧れる時代ですもんね。
雄太郎は目をキラキラさせつつ、こう来ました。
「今は金より夢や。お金より大事なもんみつけた!」
さだはこう言います。
「圭ちゃんが医者になるのが早いか、雄太郎が有名になるのが早いか」
「並べられた……」
ちょっとショックを受ける圭介です。
そしてまたも、ボケとツッコミ。
「脳天貫いたる!」
「そこ乳首や!」
いくらエリート大学生だろうが、ええ男だろうが、彼も関西人だからノリがいい。
それにしても、二回も乳首て。男の乳首とはいえ、二回もポーズつきて。どういう世界観なんや……。
本作の女性出演者を性的にジャッジする――そういう記事は出てきます。
そういうゲスな見方を、おっちゃんの乳首ポーズで先回りする。相変わらずクレバーな本作ですね。
もう、乳首といえば雄太郎、雄太郎といえば乳首です。
シレッと真顔で、
「朝ドラでBLを描きたい、そういう欲求に応じましたわ……乳首サービスや!」
くらいのええボケを、むしろ言って欲しいかもしれない。
なんせ大阪には、吉本新喜劇に「乳首ドリル」という定番ギャグがあるぐらいですからね。
はい、肝心のセリフは何でしょう?
雄太郎は再現します。
「うわ〜! うわぁ、あ〜!」
「うわ〜ばっかりやん」
これが雄太郎さんの演技力…🤔#スカーレット pic.twitter.com/YN1XRrFOv5
— 朝ドラ「スカーレット」第4週 (@asadora_bk_nhk) October 21, 2019
さだが突っ込む。あの、鉄砲玉にやられる側の役とか?
夢を追う三人
その夜、大久保は喜美子のストッキング修繕を認めます。
それから台所を見て、点検も終了するのです。進歩してますね。
「ほなこれもって行くで。また次のも頼むわ」
喜美子はここで、休みを取ったときのおむすびのお礼を言います。
「あんたまだお給金安いさかいな、おむすびくらい」
「ご苦労様でございました。おやすみなさい」
押しつけがましさがない。
道産子なら「なんもさ〜!」で済むかもしれないけれども、そこはもうちょっと説明する関西人です。給料が安いことはちゃんと認識しているようで。
その日、ちや子の帰りはいつにも増して遅いのです。
うとうとしていた喜美子は、ちや子の夢を見るのです。
とやあ〜!
夢の中、ちや子は草間流柔道で男を投げとばしていく。
って、なんちゅうことをしてくれんねん!
アクションに強い――そんな香港電影にまで認められた、日本屈指のアクション女優である水野さん!
朝ドラではそのアクションはさすがに無理かな……と諦めていたら夢の中という形で出してきおったーーーー!!
そしてなぜか、雄太郎と圭一も出てくる。
「映画俳優になるで!」
「医者になるで!」
「とやあ〜!」
指摘するのはちょっと残酷ですが、ちや子と比べると、他の二人はちょっともっさりしているんですよね。
水野美紀さんが抜群なだけですので、それはもう仕方ありません。
こうまでして水野さんのアクションを見せるんか。ええ意味で、正気を疑うわ……。
喜美子は、目が覚めると色鉛筆を取り出し、絵を描き始めました。
そしてちや子が、深夜に帰宅。
「お帰りなさい」
起きてたと告げる喜美子に、ちや子は驚きます。
「何してたん?」
そう聞かれつつ、喜美子はお茶漬けやお茶を用意しようとします。それをちや子は断ります。
そんなちや子を自室に招き入れ、絵を見せる喜美子。
目が覚めてしまったのだそうです。
それでなんとなく思いつくままに、花の想像みたいなものを描いていた。
「描くのが好きやねんな」
「楽しい!」
「わかったから、早よ寝なさい」
喜美子は、雄太郎の映画出演決定を語ります。
「いやいや、今は人のことはええよ。試しに働いてきてどやったん?」
話の脱線をおさめつつ、明日へ。
喜美子を通して描く関西
今朝も濃すぎてちょっともうついていけないようで、食いついていきます。
セリフ周りが定石破りをしてまで、関西らしさを追い求めています。
繰り返す、くどい。しつこい。大袈裟。ボケとツッコミが分かれている。
失礼に踏み込みつつも、どうしたって突っ込む。
脱線修正。
これは方言で語彙を整えるだけではなくて、関西のテンポを理解していないとできないこと。
喜美子を描くだけではなく、喜美子を通して関西を描きたい。そういう気持ちを感じます。
テンポといえば、信楽時代とも違う。
関西弁も地方によって違うわけでして、信楽はおっとりしているんだなと改めて感じました。
荒木荘の面々、ヒラさんやマスターが濃いのはわかる。
それどころでなくて、背景に映るだけの名もなきおばちゃんすら濃厚。
15分という放送時間の限界にまで、ミッチミチに詰め込んでいて、誰か倒れていないか本気で心配になってきました。
いろいろあったんでしょうね。
『あまちゃん』で、ユーモアあふれる朝ドラの座をNHK東京に奪われて。
『半分、青い。』で、河内弁罵倒をNHK東京に奪われて。
『なつぞら』で、飴ちゃんをNHK東京に奪われて。
一昨年は、吉本興業創始者を大阪でなく京都出身者にされるわ。
昨年は福島県出身者を、よくわからない関西人枠にされるわ。
これは大変なことやと思うよ。
そういう不満の蓄積を、一心不乱にぶつけているんだろうな。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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