スカーレット31話 感想あらすじ視聴率(11/4)朝ドラ版太閤記やね

ジョーは、気を取り直して喜美子にこう言います。

「も、もう戻らんでええ。大阪戻らんでええから」

荒木荘のさだには電報を打った。詫びの電話も入れる。あとは残りの荷物も送ってもらばええ。
どうやら、直子が火元のようではある。

ジョーはすっ飛ばしつつ、続けます。
信楽で新しい仕事を見つけるから、家のことをやれ。以上!

「何が【以上】やのん! またそんな一方的に言うてえ!」

ここで、ダシにされたお母ちゃんが出てきました。
しかも、まだお玉を持っている。

はい、ここでネタばらし。
嘘ついた。寝てるフリしろと言われてん。

「そうか、よかったわ、何ものうて」

喜美子はホッしますが。ジョーはこうだ。

「感動の再会中悪いけどな、まぁそういうことや」

だから、どういうことやねん!
関西人のあかんムーブというか、話がまとまっていないのに、ちゃちゃっとまとめる状態になってもうた。

こうなると、関東もんあたりは呆れるかガチギレして、最悪一悶着になるかもしれんけど。

ジョーは、ここで順番を間違えつつ、マツが体調悪いのはほんまだと言います。
そうそう、病弱設定ではありますね。夏に倒れたそうです。

そういうわけで、身体頑健かつ真面目な喜美子がいないと、家が回らないらしい。百合子も喜んではいます。

直子は、まぁ、直子なので仕方ない。

喜美子は全く納得できていません。

「無理や。戻るで」

「あかん!」

「戻るで!」

「あかん!」

この父娘の「あかん!」「戻るで!」ラッシュ。
何度言いましたっけ?

回数を指定しないで、
「ともかくちゃちゃっと、言い合って!」
ぐらいの指導かもしれませんね。

それでも父娘らしく、噛み合って、バッチリ熱気を出す。
関西弁を話せて、現場の空気が良くて、演じる側も演じさせる側も楽しい。そういう掛け合いです。

だからこそ、本作にはリアリティがあるんでしょう。

【速報】昭和のおっちゃんども、飲んで騒ぐ

そしてその夜、おっちゃんどもは酒を飲んでいます。

「急に帰って来よったん、いきなりや!」

「うれしいてたまらんやん〜」

「喜美子ぉ、喜美子ぉ〜」

「目の前にいやります」

「喜美子ぉ、酒、酒!」

あかん、酔っ払って語彙力が下がりきった、昭和のおっちゃんのダメさが炸裂しとる。

貴美子はもういただいたのしか残っていないと言いますが、ええからええからで流される。
遠慮のう飲む。なんやこのカオス。

そんな喜美子を見て、おっちゃんどもは言う。ジョーは返す。

「大人やな〜」

「子供や、子供や!」

ここでそっと、陽子は夫の忠信を促します。

「あんた、うちらはぼちぼちと」

「行きますか」

そこをジョーが止める。

「オゥちゃん! これからやけ! 喜美子ぉ、喜美子ぉ、喜美子ぉ、はよぉ〜!」

そして画面が切り替わると、潰れてうつ伏せで寝ているジョーが映ります。

それにしても、ジョーのカスっぷりに安定感がありますな。

喜美子が帰って来た理由を捏造する。見栄を張る。自慢しつつ、子供だとダメ出しする。

ここに『なつぞら』の軍師・夕見子を乱入させたらどうなることやら……。

あの軍師は、実家で男が会話をし、女が食事の支度をする様子を見てダメ出しをしました。
昭和あるあるでしたが、あれすら相対的にマシに見える『スカーレット』のカスっぷりがたまらない!

この状態で吐いてしまうと、危険なのでそこは注意や。
マツはそっと毛布を掛けます。

そんなジョーカスの背景で、貴美子は皿を洗っています。
帰った早々、疲れただろうと労るマツ。喜美子の手際の良さに感心しています。

大阪から信楽について、疲れているだろうに。労るどころか、自分たちは酒を飲んで盛り上がっている。
おっちゃんどものカスっぷりが清々しい。楽しいのあんたらだけやろ。

これがなー……名目上と飲んでいる側は【きみちゃんを労う会】、つまりきみちゃんに気遣ったつもりだったりするから、闇が深いで。

喜美子は、マツに明日帰ると言います。
荒木荘を放り出せない。そう宣言するのです。

ここでそんな健気な喜美子に、マツは好物の肉じゃがを作ってあげたかったと言います。
肉入ってへん肉じゃがだけど。

そう母が言うと、貴美子は何かを察知します。

「なんで肉入ってへんの? うちの仕送りどうしてんの? 毎月送ってるやろ。肉買えへんわけないやろ。 オート三輪は買うたの? 借りたの?」

喜美子、やはり賢い。
子役時代から、賢さは伝わって来た。演じる戸田恵梨香さんも、喜美子には演説する才能があると悟ったそうです。

喜美子は年齢の割に賢くてリアリティがないとは言われている。
それは生まれつき賢いからだと思う。

悪ガキを倒すにせよ、一旦戻って凶器であるホウキを用意していた。
その悪ガキの逆襲の時も、気を逸らして逃げた。

担任の先生も、大久保はじめ荒木荘の面々も。
それに草間宗一郎も。
喜美子の賢さにはピンと来ている。

こういう抜群の賢さを持つ貴美子が、女性で、貧しくて、学歴が低いから、アホな子扱いされる。
そういう不平等を、見ていかんとあかん。

世の中には、喜美子みたいなおばあちゃん、おばちゃん、お姉ちゃんも大勢いるってことでもある。

彼女には嘘は通じないってことでもある。だからマツは、話を逸らそうとするのです。

もう休みぃ。そう言い、汽車のことで話を逸らそうとします。
お金はあるのかと聞かれると、喜美子は「ある」と即答。それどころか、金を置いて行こうかとまで申し出ます。

「お母ちゃんがやっとくさかい、休みぃ」

そうごまかそうとしますが、喜美子は騙せない。

大阪にいる間に、川原家に一体何があったのでしょうか。

そうナレーションが告げる中、明日へ。

大阪には家康の墓と『太閤記』がある

大阪には、家康の墓があります。

◆‪徳川家康は大坂の陣で討ち死にしていた!?~堺・南宗寺にある墓の謎 | WEB歴史街道

こんなん……謎いうより、大阪の人がどんだけ家康嫌いかってことでええやん。

関西が誇る国民的作家である司馬遼太郎氏も、作品の端々から家康への悪意を感じますし。

こっちから話を振っていないのに、ギャラでドラフトを食い荒らす巨人軍の卑劣さを語り出す阪神ファンとか。

関東のうどんの汁が真っ黒けと、嬉しそうに語り出す関西人とか。

「納豆? 人間の食い物やないやん」と言い切る関西人とか。

誤解のないように言っておきますが、これは私の経験による話であって、ネタでもない。

そしてここが大事なんですけれども、関西人は根性が悪いとは思っておりません。
彼らはみんなええ人で。飴ちゃんをようもらいましたわ。

プライドやろなぁ。

雄太郎がオーディションを受ける映画タイトル『大阪ここにあり』にせよ、『大阪五人衆』にせよ。
大阪のプライドをひしひしと感じる。

その象徴が太閤はんこと豊臣秀吉であり、アンチとして誇りをぶつける対象が、徳川家康(と、巨人軍あたり)なのでしょう。

NHK大阪が、そんなプライドをぶつけるとして。その雛形を求めて『太閤記』にたどりついたのかな? そう思えて来てしまった。

喜美子は、朝ドラ版秀吉のように思えて来る。

『なつぞら』の夕見子と比べてみてください。

同年代でも、周囲に理解があって、名門校に進んだ夕見子。
今よりずっと女性の発言権が弱いとはいえ、彼女が北大卒だとなれば、道産子は皆「なまらすごい!」と尊重せざるを得ない。そういう存在ではあった。

いわば彼女はエリート軍師なのです。

一方で、喜美子はどうか?

その賢さを草履取りに使うしかない。頑張って進もうにも、家庭事情で阻まれる。
いや、家庭事情があるぶん、むしろ藤吉郎より自由度が低いかもしれない。妹・直子は絶対に豊臣秀長(秀吉の弟)タイプではない。

そういう、裸一貫から天下取りに向かう。
『太閤記』のようなストーリー性を感じる。

名門のお嬢さんドラマでも悪くはないけれども。エリートを目指すドラマでも悪くないけれども。
泥の中から立ち上がり、強気で駆け抜ける。
どんな状況でも、才知を隠せない。

これぞ大阪のヒロインや!

そういうところまで、本作は目指しているんじゃないかと思う。
貴美子は今週も大変そうではありますが、くじけないでしょう。

緋色の天下取りを、喜美子だけでなく、本作チームにも期待しております。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

2 Comments

管理人

>しろばにあ様
ほんとそう思います。しなやかに強いって感じですね。
ときどき毒々しい感じにもなりますが……。
本、ポチりました♪

しろばにあ

関西の庶民は逞しいんですよね。
「戦乱と民衆」(磯田道史他)を読んでいるとギョッとするような、よく言えばエネルギッシュなエピソードが山ほどあって唸らされます。

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