スカーレット39話あらすじ感想(11/13)自分のために泣いた圧巻の号泣

ここ、本当に残酷だと思うんです。
世のお父ちゃんの後頭部をぶっ叩きかねない残酷さじゃないですか。

「そうかそうか。お父ちゃんの気持ちが伝わって反省したんやな」

何も知らないでそう思っていたところ、全然、自分のあずかり知らないところでの反省や心理ゆえだった――そのことに気づかないで自己満足してしまう。

怖いな。
下手なホラーより本作は怖い。

しかもコメディセンスもあるからね。
笑わせつつブッ刺しに行く、そんなスキルがあるんですね。

もしも、家庭内でこのドラマを見て、笑っているのはお父ちゃんだけとか、そうなっていたら……おそろしいぞ、本作!

アホやし酒と水の区別つかんやろ

喜美子は直子に、こう声を掛けます。

「早く沸かすやりかたあんねん。教えたる。見とき?」

直子は気になって尋ねます。

「絵付けて何? どんな仕事?」

「忘れた。宿題見てるしあとでな。ほんで、そのほつれたるところも直したる」

話をそらしつつ、こうだ。
そうそう、直子は服がほつれておりました。これも世の妹が悶絶しかねないセリフ。お姉ちゃんはお見通しで、服のほつれまで気がついてる。あーもう、勝てへん。そうなってしまう人もいることでしょう。

「ほんでその酒の瓶な、水入れるわ。底の方に三滴ほど残ってる。水入れて薄めたる。酔うてたらわからへん。酒も水も一緒や」

喜美子はそう言い切ります。
酒を水で薄める。古典的とはいえ、流石にばれるんちゃう?

「いや、ばれるで」

「ばれへんばれへん」

直子が戸惑うのに、喜美子は水をざぶざぶと酒瓶に入れてしまいます。

「入れすぎやん」

「はははっ大丈夫や。心配するな」

「これでわからんかったらアホや」

「アホや」

姉妹はそう笑い合います。ものすごく微笑ましくて、楽しい場面です。
ただ、これも残酷だと思うよ。

昭和のお父ちゃんの一面を、これでもかと暴く本作、あかん……。
百合子も既に父への冷たい目線を身に付けつつある。姉二人は言うまでもない。

父はアホや。
そう言い合ってケラケラ笑いながら、どうやってごまかして騙すか考えている。

このおだてつつ、裏ではバカにしている。

「これだから女は陰湿なんや〜!」
そう怒りたくなる気持ちもわかるのですが、連日ジョーのカスっぷりやら、信作の浮かれぶりやら、しょうもなさを描いてきているわけでして。

しかも、彼らのあかんところって、大仰に誇張したわけでもない、地に足がついたカスっぷりなんですよね。
あるあるカス。そこにあったカス。ありのままの昭和カス。それでいて、ぐうの音も出ないほどのカス。

「あのカスっぷりならば、そらアホやと思われるやろ」

そう先回りしているから、もうどうしようもないんですよね。

照子、卒業式後懇親会には参加しなかった模様

丸熊に照子が卒業式からすっとんで来ました。

照子ちゃん……高校生活を惜しむ親睦会的なもん、なかったの?
そっか、友達おらんもんね。すまんかったな。

絵付けはやめるのかと照子から言われて、喜美子は悟り切った顔です。

工房からは、フカ先生の邪魔にならんよう、弟子たちが出てきます。

「なんで?」

照子がそう言うと、口を押さえる弟子たち。

「しーっ!」

「あれか、産みの苦しみいうやつか」

照子はそう言う。
この人は出てくるだけで、マイペースでおもろいなぁ。

やかんをそっと交換してくると言う喜美子に、照子が再び話しかけます。

「あっ、うち、四月から京都の短大や!」

「知ってる」

「女子寮入るねん!」

「知ってる」

なんだ、知ってんの。そっけないなぁ。そうキューンとしていそうな照子に、喜美子は微笑みつつこう言います。

「京都行く前に、もう一回会うか」

ズキュウウウウン!

喜美子ぉ! 照子といるときの貴美子は不思議だ。乙女ゲー宣伝に出てくるイケメンかっ! そう言いたくなるほど、イケメンスマイルにええアルト。
キュンときそうなことを言いますよね。喜美子はええアルトの戸田恵梨香さんでつくづく大正解です。

『なつぞら』のイッキュウさんもズレてたし、本作の圭介と信作はアレやし。

『なつぞら』で若手俳優を差し置いて一番カッコ良かったのが泰樹。

で、『スカーレット』では一番のイケメンが、喜美子の気がしてきた。
ええんちゃう。最高ちゃう。関西といえば宝塚やし。宝塚の男役はイケメンの中のイケメンやし。

思えば一昨年は、小林一三の業績から宝塚をすっとばしたからね。
あれは関西への挑戦だと思った。許されんことやと思っとった。

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照子はそんな喜美子スマイルにきゅんきゅんしております。
これは恋した顔ですわ。喜美子と話している時の照子はほんまに綺麗でかわいい。

「貴美子がどうしても言うなら、しゃあないなあ!」

「ほなまた」

照子が浮かれる一方。
喜美子は絵付けへの未練を捨て去ろうとしていました――。

そうなん? さあどうなる? 怒涛の第7週後半へ。

Vやで! NHK大阪朝ドラ

朗報です。

◆‪スカーレット:視聴率21.7%で番組2位の好記録 4回連続で20%の大台超え

視聴率はひとつのバロメーターといい、高い方がええもんではある。
それに、注目したいのは右肩上がりということです。

宣伝や提灯記事が出る。
企業とのタイアップ。
関連番組。
そういうもので視聴率はあがるもの。

序盤の数字は前作の反動や影響もあるものですから、本当の評価が出てくるのが今の時期かと思います。

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そこでじりじり右肩が上がりということは、ぐっと掴まれる人が出てきている証拠だと思うんですよね。

本作は地味だのなんだの言われておりましたが、噛めば噛むほど味が出てくる。
そういうスルメ系名作になりそうです。

それだけでなく、王道と見せかけて実は痛烈で斬新でもあるんですよね。『なつぞら』とはある意味で真逆で、もっとおそろしいと思う。

泰樹は孫の嫁としてなつを手元に置こうとして、大失敗しました。
結果、なつの生み出した夜明けをアニメで見て感激していた。

そういうおじいちゃんが失敗しつつも、理解して手放すことで、ハッピーエンドを迎える。そういう話でした。
あのドラマの男性は妥協しつつ、わがままを通さず、女性に対して譲歩し分かり合えたからこそ、素晴らしい何かを得ていたわけです。

教訓としてうまい。北風と太陽の太陽です。

「#HeforSheだべ。こうすれば、なまら素晴らしい世界になっぺよ!」

 

そういうメッセージが全ての視聴者に伝わったのか?
いや、そうでない人もいると。

「何いうとんねん。女のわがままに付き合わんで昭和はうまくいっとったでぇ〜」

そう伝わらんかった人を、容赦無く追い詰めるような残酷さが本作にはある。

昭和のおっちゃんは、必ずしも尊敬されとったわけでもないし。

昭和のおばちゃんお姉ちゃんが、不満もなく我慢していただけでもないし。

むしろ男女間の意思疎通ができない結果、いくつもの不幸が渦巻いていた。

ちや子は「橋と箸」をひっかけていい気になって奴をアホちゃうかと軽蔑する。

百合子は父の暴虐に、膝を抱えて泣く。

直子は父を軽蔑し、そんな父を見ると目が腐ると言う。

陽子とマツですら、ジョーの酒癖に呆れ果てている。

八重子や緑は夫の陰口を茶飲み話で愚痴りまくる。

そして喜美子は、あかんと号泣する。

あの号泣を見たあと、何も知らないでウキウキしているジョーを見ると、視聴者は凄まじい苛立ちに襲われます。
そういう苛立ちが、かつて喜美子のような目に遭った人たちを、救う何かになると思う。

そしてこれぞ、朝ドラの王道ではありませんか。

『おしん』が世界各地で感動されたのは、虐げられても生き抜くヒロインの健気さがあればこそ。
最近疎かにされがちだった原点へ、NHK大阪は戻ってきたと思えるのです。

Vやで!
このまま十年後まで名を残す、勝利への道を爆進や!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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