スカーレット105話あらすじ感想(2/5)陶芸家・川原喜美子です

「僕にとって喜美子は女や。陶芸家やない、これまでも、これからも。危ないことせんといて欲しい」

八郎がそう語りかける中、喜美子はどう返すのか?
少し考え、彼女はこう言い切ります。

「心配してくれてありがとう。うちはハチさんに出会うて陶芸教えてもろて、やりたいこと見つけて、見つけられて……ほんまに幸せです。幸せやから、作品作りたいねん。作りたいんです。うちは陶芸家になります」

陶芸家・川原喜美子の道が続いてゆくのです。

必勝祈願、出陣じゃ!

マツ、百合子、直子、鮫島。川原家の一族が揃います。喜美子、七回目の挑戦です。

ここで直子が、借金だらけになっているとマツに問いかけると、マツは優しく笑うだけです。

呑気だと呆れる直子。穴窯を建てる時こそ怒ったものの、もう別会計だとそこはあまりこだわらないようで。

百合子はしみじみと語ります。

「お母ちゃんいんかったら、こんなんできひんかったな」

ここで喜美子が、目覚まし時計と狸の置物を持って来ます。武志も後からついてきました。

「ほな、七回目、炊かせてもらいます。お願いします!」

「成功させるぞ!」

「おー!」

かくして七回目の挑戦が開始されます。

喜美子の胸には、草間と慶乃川のことが浮かんでいます。

「小さな焼き物だけど、敬意を表して」

「敬意を表して」

草間の言葉を思い出しながら、喜美子は薪を投げ入れるのです。

それぞれに支えられて

朝、鮫島の番です。

「おはようございます!」

「頼むな」

「こうですよね!」

鮫島、薪を投げ入れるモーションをする。十五分で一束だと確認します。

しかし毎回半端ないな。
出番が決して長くないのに、きっちり存在感と明るさを出している。

鮫島はムードメーカーだと思う。無茶苦茶賢いとか、頼りになるとか、できるとか。そういうタイプではないけれど、そこにいるだけで周囲が明るく和む。欠かせない人になりつつあるんだな。

直子が鮫島と結婚した理由もわかってきたかも。ジョーと似たギャンブル商売野郎のようで、そこまで男だ、家長だと威張らない好人物です。
典型的な、関西のええおっちゃんやな! まだ若いけど。当然、野球は阪神タイガースが好きでしょ。

このあとは直子。直子も薪を投げ入れる。

「ただいま〜」

武志が帰って来ると、好奇心旺盛な甥っ子を危ない、もう触らんでええと制しています。

「鈍臭いなあ」

「うるさいなあ! もうあっちいっときぃ!」

そんな甥っ子と叔母さんの会話ですが、これもなかなか味があります。桜庭ななみさんは、ぞんざいでぶっきらぼうな直子を魅力的に演じています。

直子の才能も、夫同様わからない。
けれども、彼女なりの役割があって身についてきた。すぐ怒り、すぐ笑う。そういうところがやっぱり場を和らげる。

マツはノートを手に取り、じっと時計を見る。

百合子は新婚の夫・信作に言います。

「穴窯やってる間、実家に入り浸ることになって、そっち帰ってへん、ごめんな。ほやけど大丈夫?」

信作はこう言います。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫」

そんな夫を見て百合子が去ると、こうだ。

「……じゃないよぉ! 新婚やのにさみしい、さみしぃぃい!」

おぉもう、信作よ……視聴者もそう思っていると、喜美子が来ました。

「……おぞましい言葉が聞こえたんやけど、気のせいやろか」

喜美子はん。
その、曹操というか、斎藤利政(斎藤道三)みたいな登場やめよか。

ギョッとしている信作に、喜美子はこう言います。

「悪いな。手伝ってもろて。助かります」

信作もこれには、ええよと返すしかない。

寂しさは胸に秘めましょう。公式サイトでも、福田麻由子さんと林遣都さんのインタビューが公開されました。

どうやって恋愛していくか。悩んだ過程がおもろい。お二人の役作りも、脚本家・水橋氏の策士ぶりも最高でした。

そしてそこへ、三人目の幼なじみもやってきます。照子や。

「火の番してくれるん?」

「しいひんわ、そんなこと」

そうムッとしつつ、差し入れを持ってきます。

敏春の配慮だってよ。

「すんません、ありがとう」

「うちやない、敏春さんや」

背後から敏春が姿を見せます。

「終わったら(照子のこと)構たってください。ほなまた」

この二人もええ夫婦になって。見ようによっては、照子がリードしていて敏春が尻に敷かれているようでもある。
それの何が悪い? ええと思う!

照子だって、喜美子を見守りたい。
けれども、あんだけ叱りつけた経緯があり、意地もある。そこで敏春が助け舟を出したのかな。最高の夫婦じゃないですか。

新婚時代のキュンキュンしていた照子。カッコいい有能社長の敏春。

そんな社長夫妻から、ちょっとギスギスする間柄となり、そして今はどこか抜けたところ、愛嬌やゆるいところも見えて来る。

夫婦の深みがあると思いました。そして、そこまで辿り着けないこともあると……。

夢が叶うとき

二週間目を迎えました。

喜美子は薪を入れ、蓋を閉める。そしてノートを手にして、書き込み、考え込む。

戸田恵梨香さんは鋭い目をじっと向けているだけで、作品として出来上がってしまう。

ぶっきらぼうで勇猛果敢な仕草。雰囲気。集中力。
炎を見る目が、抜群に美しい。

『麒麟がくる』で、織田信長を演じる染谷将太さん。過去の信長役者と比較され始めていますが、私としてはこの戸田恵梨香さんが、2020年最大最強のライバルとみた!

ポイントは集中力と眼光です。
目の前のことだけを見ている顔ですね。

染谷さんは、キャストビジュアルの時点で、集中しすぎて三白眼になっているので大丈夫だと思います。

喜美子も、この場面は無言で座っているだけ。これを一枚の絵として説得力を持たせるのですから、すごいと思う。

しかも朝から。
すごいな! これを朝からみてよいのか!

パチパチと爆ぜる音、雄弁な音楽。そしてここで、マツの声がします。

「火事やぁー!」

窯の上部から炎が噴き出したのです。しかし、喜美子は水より薪だと言い切る。

もっともっと、火焚くんや!

窯の上を覆い、薪をもっと入れるのです。

これでええ。これでええんや。

もっと燃やす。もっともっと、燃やすんや!

そう燃やし続ける喜美子を前にして、マツは水を持ったまま立ちすくんでいます。

かくして七度目の挑戦が終わり、喜美子は青空の下で窯を開けました。ゴクリ……。

カケラが映る。
この色に近いものができているのか?

中を見た喜美子は、中から陶器を取り出します。

そこにあったのは、青空を溶かして焼き付けたような、不思議な色をした作品。

あの色が、ついに出ました。

夢が叶いました。

喜美子は笑い、そして洟をすすっています。

ここで喜美子は、ちや子に手紙を書きました。

ちや子さん、いつかこの道を選んでよかったって、笑える日が来ますように。

そう手紙に書いたこと、覚えていますか。

どうなるかわからん道を歩き出すのは、えらい勇気がいりました。

勇気を出したあの時の自分に見せてやりたいです。

ええ色が出ました。

誰にも負けん、うちにしか出せん自然の色です。

ちや子さん、取材に来てください。大きく取り上げてください。

信楽の小さな工房にいます。

陶芸家・川原喜美子です――。

普通の人が何の気なしに毒放つ

手紙を読んだちや子は、さっそく陶芸家・川原喜美子の元へやって来ます。

「きみちゃん! 飛んで来たで!」

「ありがとうございます」

喜美子は応じます。これはちや子の願望が叶ったことでもある。

かつてちや子は、八郎と結婚した喜美子に、八郎以上の作品が作れるかもしれないと投げかけていました。

喜美子はその時、否定していたっけ……。

自分自身でも気づかないことがある。

喜美子は絵が好きだった。荒木荘でもペン立てを作っていた。絵付け火鉢も頑張って弟子入りした。陶芸も好きだった。

コーヒー茶碗だって、先に橘に見出されたのは喜美子のほう。

それなのに、結婚して妻となり、男と女のままでは、才能が埋もれてしまう。

個展で、綺麗な着物を着て挨拶しろと言う。才能があっても、八郎の妻だから甘く見られているだけだと言われる。ただの陶芸好きのおばちゃんだと言われる。

それを全部打ち壊し、ここまで来るには、八郎とその愛を穴窯で燃やすしかなかった。

喜美子の紙芝居をろくに見ないでいたジョー。

女だから絵付けの修行はもたないと思ったフカ先生。

喜美子の入賞と絵への情熱を、自分たちの学歴と賞歴で口を閉じさせた一番さんと二番さん。

そして八郎――。

八郎は悪くないとは言う。

確かに悪くない。むしろ彼らはよい人、せいぜいが普通の人。

しかし普通の人が毒を放つ。傷つける。
そしてそういう悪意を描いたところが、むしろ本作の限界突破を見た気がする。

人間、自分が悪人だなんて思いたくない。「私は善良」アピールはさんざんされるもんです。それを疑うお前がひねくれていて悪いってさ。

でもそれはどうでしょう?
そこまで考えさせる本作はおっとろしいで。

普通じゃない人もいるのです。

男と女という単純なものでもない。

家のことで忙しい喜美子がどうやってあんな絵を描くのか。そう思っていた信作。

喜美子を女性陶芸家と呼んだ雄太郎。

喜美子の原点回帰に関わった草間。

そして慶乃川も……。思えば彼は、女の子である喜美子にも陶芸の良さを語り出していた。女の子の夢はお嫁さんだと彼は決め付けていなかったのです。

『なつぞら』は、泰樹筆頭にそういう側の男性が多かった。だからこそ【ありえないことを本当のように描く】ドラマでした。これぞ【#HeforShe】の極みでしたが。

それが出来ないと燃え盛ると証明する。それが『スカーレット』なのでした。

※燃やすで!

高校生になった子と、天下取りを果たした母

昭和53年(1978年)――。

信楽の町を、高校生が自転車で行き来しております。

「今日行くいうてたやん!」

「知らんし!」

「約束やでえ」

わちゃわちゃはしゃぐ、そんな三人組。武志は高校二年生になりました。

学という短髪の少年は、お米持参です。宝田学くんだってよ。

おっ! 宝田さん、お米屋さんの……。
細かいなあ。ジョーカスが勝手に喜美子の見合い相手にした、あの人の家やんか。

本当に細かいですね。
人物関係図を、水島氏が細かくミチミチと作っている姿が想像できるで。『なつぞら』もこのあたり抜かりがなかったな。
※続きは次ページへ

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