スカーレット58話あらすじ感想(12/5)素焼きが始まったでぇ~

ほな喜美子、呼んで!

つきあってください――。

きみちゃん衝撃の宣言に、果たして八郎は?

 

八郎の夢

八郎はここで、否定でも肯定でもなく、こう返します。

「夢の話したん覚えてます?」

そうそう。この前、喜美子としてましたね。

◆その一
誰かにとって大事な大事な宝物を作ること

◆その二
そういう作品を作り、陶芸展で賞をとる
世の中に認られる陶芸家となって、第一歩を踏み出したい

そして……。

◆その三
好きな人と結婚すること

兄や姉の生き方を、八郎は見てきました。
結婚、戦死、離別、いろいろおる。幼いころから、家庭を持つことを考えてきたのです。

「女だてらに」と言われながら、商売をやってる姉貴もおる。
彼女は結婚なんてつまらん言うてる。けれども、弟はそうは思わない。

ただいま言うて、帰ってきたらお帰り言うて迎えてくれる。好きな人相手でのそういう生活。つまらんなんて思わん。
だから結婚したいと思うてる――。

ひゅーっ、ロマンチックやな!

直球のロマンチックですが、何度でもこれを指摘したいと思います。

八郎が女の子で。
喜美子が男だったら?

あるあるかもしれへんよぉ!

言い切って照れたのか。
八郎は時間があるので作業を進めされてもらうと告げます。

透き通ったピアノの音色が響く――そんな中、喜美子は無言でその場を立ち去りました。しかし……。

八郎もあんなことを言いつつ、作業が手につかない。

戸を閉め、その場から去ろうとして、立ち止まり、戻る喜美子。
八郎も追いかけようとして、戸を開けた喜美子に驚きます。

「びっくりした!」「びっくりした!」

「おりました」

「入りぃ、見てもええですよ」

「ええのん?」

そう招き入れつつ、八郎は謝ります。
なんや話がおかしな方向にいってしもうた、すいません。喜美子も変な方向に話が言ったと謝ります。

つきあってくださいと言ったら、結婚が出てきた。

結婚いうんはよくわからへんし。
つきあった先に結婚いうんがあるもんなんですか?
もれなく結婚がついてくるもんなんですか?

そう問いかけられ、八郎は真剣な眼差しで返します。好きな人ができたら、結婚したい――。

「ああ、ほやけど、うちは結婚いうんは考えられません」

BGMが静寂というか、心の動揺を埋めるように入ります。

「ほな川原さんで、川原さん、十代田さんで」

「あ、う〜ん、う〜ん、そやな……うんほな、川原さんで」

これでとりあえず決着がついたみたい。

この一連のやり取り、喜美子がかなりおかしくて無責任に思えますよね。

八郎がずーっと喜美子を好きでいるとも限りません。
相手が好きで、つきあいたい。でも自分の人生で結婚はまだ早いかな? 準備できたら結婚しない? 交際と結婚、セットでなくてもええやん。

はっ倒したくなるほど自分勝手に思えるかもしれませんが、こういう理屈って男女逆転させるとあるあるじゃないですか。ドラマでも、現実でも。

八郎は怒るのか?
それとも、つきあいたいならええことして捨てたるでぇ! そういう悪だくらみをするのか――どちらでもありません。

 

入ってもええよ

彼は部屋に招き入れます。見てもええと許可します。

そのかわり、誰かに何か言われたら僕にすぐ言うように、僕から言い返すとキッパリと言うのです。
毎日朝夕二時間いたら、なんやかやいう人が出てくる。

喜美子は毎日来てもええと言われてウキウキしています。嫌な思いをするかもしれないと気遣う八郎に、うちから頼んだことだからと喜美子は気にしておりません。

そして、こう宣言する。

「うちが言い返す!」

「僕が言い返す!」

「うちが……」

「ほな二人で! 二人で戦いましょう、よろしくおねがいします!」

これはもうあれですわ。素焼きの段階でしょ。

部屋に招き入れるということは、作劇上意味があるとはよく指摘されますよね。
白雪姫は留守を守れないからああいう目に合う。吸血鬼は招かれないと入れない。

部屋に招くということは、心に入ってもいいですよ、という象徴でもあるのです。

※「私を中に入れて」という原題の『モールス』

朝ドラでもこういうお約束はある。

『半分、青い。』では、鈴愛が笛を吹いて部屋にいる律を呼ぶ。自分の世界から私を助けてくれと呼び出す。鈴愛がその笛を秋風先生にぞんざいな扱いをされて激怒しました。そんな彼女を師匠を怒る非常識なバカ女扱いをする感想もありましたが……。

作劇のお約束を踏まえますと、あの笛は心と愛の象徴でしょう。
ぞんざいな扱いをされたら、そりゃ怒るでしょうよ。

『なつぞら』では、イッキュウさんがアニメの話をするためになつのアパートへやってくる。思えばあの時点から、もう二人は心理的に接近していたとも思えるのです。
「めんどくさい枠」東の横綱・イッキュウさんは自分自身ですらそこがわかっていなかったのですが。

閉鎖性や空間の特性も大事ですよ。
誰が見聞きしているかわからないのに、ロックオンした女がいるからと職場フロントデスクで誘う。そういうあかん男にはロマンチックのかけらもないんやで。

ロマンチックでガードが固く、なかなか人と受け入れないようにも思える八郎。
彼が喜美子と一緒に作業をするということは、二人で窯に入ったちゅうことです。

いわば素焼きや。

このあと、装飾をつけて、絵付けをして。また焼かれるでぇ〜、それでできあがりやでぇ〜!
そうなっていくのでしょう。

 

商品開発室所属・陶工のお仕事

そんな八郎の仕事ぶりがここで出てきます。

テストピースを焼いています。
宝石みたいに、ずらりと並んだ陶片。様々な色合いの釉薬がかけてあって、グラデーションを作っています。

商品開発室の同僚は、これではあかん、もうちょっと濃くと言い合う。
そして八郎のことを褒めています。

◆八郎のここがええ!

なかなかたしいたもん
釉薬の使い方がいうまい
若社長が見込んだけのことはある

◆八郎のここがあかん!

丁寧だけど、遅い
雑でも早して
まぁ、雑はあかんけどな

そんな評価のあと、八郎はコバルト増やしてみましょかと言うのですが……こういう短い会話で、八郎の職業上の特性を表すのが巧みだと思います。
それでやっぱり、東西めんどくさい横綱は仕事への取り組み方が似ているとわかるわけです。

イッキュウさんも、神っちともども予算と締め切りがあることに動揺していた。
自分の理想実現にこだわりが強すぎて、いろいろやらかしました。マコも困り果てていました。

八郎は商品開発室最年少で折り合いをつけているから、イッキュウさんほど大惨劇はもたらさないでいます。
上司や若社長の手腕もあるのでしょう。

ただ、だからこそ抑えきれない創作欲を朝夕二時間にぶつけているわけでして……これは注目ですよ。

 

持ってけ泥棒! 閉店セールの後には

大野雑貨店は閉店セールを迎えております。

その宣伝ポスターを見る忠信には哀愁があります。ポスターも、看板も、小道具担当者のええ仕事ですわ。

最近あるドラマで、毛筆を使った掲示の筆跡がどちゃくそ下手くそでびっくりしたんですわ。
誰もが達筆ではない。それはそう。ただ、掲示物ともなればある程度しっかりした字でないといかんでしょ。

こういう細部に、かけた手間隙が見えるもんです。その点、本作は、ええ受信料の使い方してはる。

はい、忠信と違って陽子はハイテンションです。

持ってけ泥棒〜!
そう言いながら叩き売りをしています。

「長いことご贔屓いただきましてありがとうございました。カフェになったらまた来てな〜! 美味しいコーヒーのみに来てな〜!」

そんな妻の横で、夫はしみじみとこう言います。

「もうしまいやなぁ、うん……」

そこへ、感傷を打ち壊すあいつがやって来ます。

「やっと在庫処分始めたんかいな! おうおう!」

安定のジョーカスです。
店の中に飛び込んで、おもちゃのピストルを持ち出して大野夫妻につきつけてはしゃぐ。

それからオゥちゃんに抱きついています。

「これなんぼ? これ? あかまついこ! ええんか、処分されるでぇ!」

なんか無駄にぐるぐる周りだしそうな、おっさんず・ハグ・イン・ザ・商店街、やめーや。

昨年の褌男どもでBL路線はちゃうんやろ?
本音は既婚おっさんのよろめきやろ?
そういうよくわからん波動を出していると、陽子が何かに気づきます。

「ちょっとぉ!」

直子でした。

帰ったで。
草間さんともども信楽へ戻ってきたのです。
※続きは次ページへ

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