キスはいつする?
そう顔を近づけてくる八郎に対し、喜美子はこう答えます。
「お花の絵……コーヒー茶碗の中に描くわ。ええなあ。今ひらめいた」
「ええなそれ」
そしてついにキス――。
青空が映り、喜美子のコーヒー茶碗を焼く場面になります。
電気窯の蓋を閉め、手を合わせる二人。
「うちのコーヒー茶碗、うまいことやけますように!」
「よろしゅう頼みます!」
さて、二人のコーヒー茶碗はどうなるのでしょうか?
絵付け師は花を描く
喜美子が作ったコーヒー茶碗が焼き上がりました。
お花の描かれた茶碗。
手にとってみると、やはり二個割れてしまいました。
原因究明はあとにして、仕上がりを見ること。八郎がそう言い、二人で並んで見ます。
「上手にできてるやん。あのお花もかわいいな、そこは流石絵付け師や。ようがんばりました」
そう八郎は褒めて、喜美子の頭をポンポンと撫でます。
これもすごい。絵付け火鉢はこの先がないわけです。
ただ、こういうワンポイントをつけられるとすれば、その付加価値が唯一無二となるわけですよね。彼女の人生が反映された作品です。
挫折だらけの喜美子ですが、ちゃんと生かされています。
喜美子は、無駄になった体験でもきちんと使いこなせるからすごいと思う。
強いし、ほんとうに賢い女性です。
『半分、青い。』の漫画家挫折とか。
『なつぞら』の酪農ではなくアニメとか。
そういう挫折を「何がしたいかわからない!」という叩きはありました。
彼女らは、そうした経験をバネにしていたのですが、見る側が飽きるんですかね。
そういう意見に対し、挫折は無駄じゃない――そうやってきっちり打ち返してきた感があります。
納品、そして価格交渉
二人は「カフェサニー」に納品へ。
忠信は、八郎のコーヒー茶碗の持った感じがええと喜んでいます。
これも大事なところですよね。
いくら見た目が綺麗でも、持ったバランスが悪いと、いつの間にか使わなくなってしまうものでして。
一方で、陽子はそろばんをパチパチ弾いています。それを喜美子が見つめています。
「原価に色つけて、これでどうえ?」
「こんなん多いわ! もらえません!」
「そら少なすぎるわ!」
「ええ、それでも多いわ!」
二人でそろばんを弾きあいながら、価格交渉です。
そろばんで、こうできるというあたりに、年代らしさが出ております。
そしてオープンに値段交渉するあたりが、関西のええところですね。
お金の交渉はきっちりやる。
品がないとか、そういうこと言わずに堂々とやる。
交渉を前提としているので、いきなりそのまんま通すと「いやそんなん……」と相手も驚くかもしれませんので、そこは慣れが必要かもしれへん。
「よっしゃー、ここは俺が奢ったるわー」
「マジすか? ならごちそうさまでした!」
「えっ……ちょちょちょ、待ちィ!」
みたいな流れは、ちょっと想定外かも。
気をつけてな。
こういう値段交渉は長引く。じゃあどうするか?
忠信がみせてくれます。
「コーヒーいれるでぇ〜」
はい、とりあえず話は終わり。
陽子は喜美子のコーヒー茶碗を褒めます。
「お花ええ感じやん! 飲み終わったら見えるしな、気に入ったー!」
これですよね。飲み終えたら見える。びっくり。
コーヒー茶碗だからこそわかるおもしろさ。喜美子はセンスあるなぁ!
かくして納品終了のようです。
「開店したらまた来てな」
「改めてご馳走させてもらうわ」
そう見送る大野夫妻。
本作屈指の人格者のようにも思えてきます。幸せそうだ。
NHK東京に雪月あらば、NHK大阪にカフェサニーありよ!
行きたい。ほんま行きたい。NHK大阪に再現するなら行くで。
陽子はええ人ですが、信作にとってはどうでしょう。
信作と13人の女て……
陽子は、信作がお見合い大作戦のよし子に去られたと来ました。煮え切らない態度でまたフラれたそうです。
しかも、陽子が知っている範囲でも、高校から数えて通算13人目だそうで。
お母ちゃんにふられる人数カウントされる……どんな悪夢や。どんだけ視聴者に大暴投をするのか。おっとろしいわ。
帰り道、はしゃぐ二人です。
「信作と13人目の女! 映画のタイトルになるわ!」
八郎情報では、信作は意外と厳しいそうです。
理想が高いとか。なんだろう、このカスの予感は。本作は、どんだけ関西出身俳優からカスパフォーマンスを引き出すつもりなのか。
喜美子はなんぼいただいたのでしょう?
封筒を差し出され、八郎も驚いております。これはめおと貯金に回すってよ。
「アッハハすごいな!」
「うちのコーヒー茶碗がお金に化けた! ほなこれは貯金しとこな。やったなぁ。うれしいなぁ〜コーヒー茶碗で稼いだでえ! やった、うれしい! あーうれしい、うれしい、うれしい!」
「声大きいわあ、回るな、どこ行くんやー!」
喜美子は大はしゃぎで、路地をくるくる廻り始めるほど。
八郎がそんな喜美子を追いかけます。
ジョーの計画が見えすいている
喜美子は自宅へ戻ります。
出品作品のことを聞かれ、マツにできたと答えている。
「うまく色が出てくれるとええんやけど……」
これ、ほんますごい話だと思うんですよ。
喜美子の二個割れるカップとか。見ただけでこれはあかん、これはええとわかるとか。そういう陶器をちゃんと作るわけですから。
焼く過程が入るだけ、すごいことだと思う。
本作を見ていると、陶芸を地味だという先入観なんてただの無知だとハッキリわかる。
ここで出かける喜美子を前に、ジョーが何か言い出します。
「すぐ帰ってくんの? お前、ゆっくりしてこい」
マツの話もあわせると、百合子もともちゃんと草津へ映画を観に行っているそうです。
喜美子は荒木荘に行くまで、映画を見たこともなかった。
世代と経済状態の変化を感じます。ちょっとよくなってますね。
しかし、そんなジョーに喜美子は不信感を募らせる。
「なんで今日に限ってそんなこと言うの?」
ジョーは苦しい言い訳をする。
賞を取れないなら短いつきあいで終わるからだとよ。もう二人がキスをしていることを踏まえると、こんなん笑うわ。
「なんかおかしいな。なんか隠してる」
「隠してへんわ!」
ジョーは誤魔化しつつ、入選発表はいつかと聞いてくる。
三月末と確認すると、こうです。
「ほな、結婚は秋ごろか……賞を取ったらの話や」
「結婚はするで。四月にする」
そのあとどこに住むつもりか。ジョーがそう問いかけると、喜美子は丸熊の寮だと答えます。夫婦ならええってよ。
ジョーは動揺を隠せない。
川原家に入ると言ったはずや。そうだとしても住めへん。どこに部屋があんねん。
喜美子に問い詰められる困り果てるジョー。
……口が回るようで、弁舌スキルがなさすぎるやろ!
怪しまれるし。
住宅のことだって喜美子の理屈にまるで勝てないし。
「はよう行けアホ! 行ってこい!」
万策つきたら、お決まりのセリフを出すだけ。罪深い本作は、関西おっちゃんの「アホ!」がその証拠だと見せてきます。
嫌な予感しかしないジョーの計画とは?
喜美子が去ると、ジョーは電話の前に座ります。
小道具さんがまた味のある電話帳を作っておりますね。
「あぁあ〜すんまへん、長野工務店?」
おっ?
何をするのかな?
と思ったら大工さんの登場です。
「どうぞどうぞ、こっちこっち」
ジョーは三月末仕上げ予定の工事を頼んでいます。
三月末!
遅うても四月だってよ!
娘の結婚に間に合わせると聞いて、大工さんはこう言います。
「そらめでたいことでやよ。はよしてやりたいけど……」
これまた味のある、昔の大工さんは言う。
工事の期間は、天気にも左右される。今は冬場。厳しい。
よそから職人呼んできて通常の倍の人数で取りかかったら三月末、できないこともないけどよ、お金も倍かかるで。
そう言われるのです。
なんかものすごーく、嫌な予感がしてきたぞ!
【悲報】本作のカス要素、納期の把握が杜撰
八郎はコーヒー茶碗でやらかし気味でしたが、相対的にジョーの方があかんのでマシになる流れでしたか……カスで張り合わんでええのに。
ジョーは別の相手に電話をしています。
「長距離運送できる若いの探してる? ええのおったで! うん、俺! まだまだ若いて。そこらにおる若いもんには負けへんて、日本全国遠ーくへビャッと行くから!」
川原家の電話はよかったのでしょうか……。
これ、大野家に借りていたら、忠信や陽子が止めたかもしれません。
火鉢運びをやめて、オート三輪も手放して、長距離運送を始めるつもりらしい。
これはもう最悪の展開待ったなしや。
マツは雇われるのは向いていないと止めます。
ジョーは丸うなったと返すのですが、マツはこう返します。
「丸うなったの体だけちゃう?」
マツなのに割と暴投気味というか、視聴者の心に刺さることを……。
だって、不安になりますもんね。
マツは長距離はつらいんじゃないの、無理して倒れたらどないすんの? そう心配しています。
ジョーがここで腕立て伏せを見せるのも、悲しくなってきた
張り切って足首捻挫して、喜美子を呼び戻した失敗から学ばなかったんか! おお、もぅ……これはマイナス展開あるで。ジョーのカスさに限りがなくて、めまいがしてくる。
こういうこと『なつぞら』の柴田家ならやらないと思うんですよね。
剛男「増築するなら素直にはじめからそう言って、結婚式と調整すればいいしょや」
泰樹「内密増築ならぬかりなくやる。金? そこも心配せんでいい。年寄りの冷や水で無理をして、体を壊すなぞ愚の骨頂よ……」
こんなのさ、素直に打ち明ければ無理しなくていいでしょ。
なんなんだよ、ジョーは本当に、なんなんだよ!
愛があろうが、許されないし、洒落になってない。
短絡的で愚か。
もうちょっと考えてくれ。周囲は被害甚大だ。
そんなお父ちゃん像を精密に描く本作は、おっとろしいと思う。
職人芸を尽くしてダメなお父ちゃんをリアルに描くの、洒落になってない!
まぁ、無事に計画が行くかもしれませんけどね。
幼なじみはじゃれあう
そのころ、丸熊陶業商品開発室には信作が来ております。
脳裏には、よし子にふられた「あかまつ」の夜が浮かぶ。
ほなどう思うてんのん? はっきりして欲しい。
そう問われ、こいつはこう答えおったのです。
※続きは次ページへ
コメントを残す