昭和40年(1965年)秋。
川原常治、永眠――。
位牌が置かれ、葬式が終わったと語られます。
直子は間に合わなかったってよ。
親の死に目に会えないだけじゃない。いろいろ大変な葬式に参加しなかった罪は重いぞ!
このあと、香典返し、手続き云々で、喜美子が大変な目に遭うわけでして。
仏事指導もつけて、そこはバッチリや。
アホだからなんやねん
「かわはら家のさくひん」
そう八郎が、皿の上に貼り付けます。工房で夫婦が揃うのです。
喪主は八郎でした。
その挨拶が、お父ちゃんのことをかっこええと褒めたそうです。
お義父さんのおかげだと言うたのは、前に言わされたからだと八郎は言います。
ここも、ちょっと表情が不穏というか。
松下洸平さんの表情の作り方がもう凄すぎる。
「仲ようせえ。言われたな、お義父さんに」
八郎はそう言います。
仲ようしてないように見えたんやろか。そうふまえつつ、最近ゆっくり話していないといいます。
「最近やないよ。武志が生まれてからや」
照子もそういえばそんなことを言ってたっけ……。
本作の女性視聴者は敏春派か八郎派に割れているという記事も見かけましたが。
最終的に、全ての派閥が「鉄馬のおばちゃん」結成して、男の砦に襲撃をかける。そんな朝ドラ『マッド朝ドラ もうあかんロード』疾走するのような気もするんやけどな。
※うちらはモノやないで!
そんな不穏な流れのまま、二人はこうや。
「そんなことないよ!」
「ほらな。ズレがあるやん。うちはそう思うてたよ」
しょうもない。お父ちゃんからすればしょうもないことだ。そう言う喜美子。
そうそうそう!
これやな、この前指摘したやつ。
ズレの正体を考えると、しょうもない話なんです。暴力虐待とまではいかんのね。
八郎はお義父さんが言っていたとふまえつつ、こう返してきます。
世の中の男は大概アホや。アホやからわからへんねん。何に腹立てたりしてんのか。
ジョー……おお、もぅ。カスの片鱗を植え付けていきおったわ。カス打線の継承いらんから。
もう、「バースの再来」ならぬ「ジョーカスの再来」が見えてきてつらいわ。
なんやねんこの、男はアホやから、て。
「男はいつまでも少年の心持ってんねん!」というのも、そやけど。どちゃくそムカつく開き直りやんか。それ、お前、同じこと上司に言えんのか?
男同士か、女相手に甘える時だけの定番カスの極みやんか。
喜美子は説明します。
たとえば、武志が寝てしまって喜美子が運ぼうとする。それを八郎が「僕がやる」と言う。
「それの何があかんの?」
「いっつもそうや。大概そうや。やろうとする、やるつもりでもやろうとする。そういうものが積りに積もってる」
喜美子も、言っててびっくりするくらいしょうもなかったと認めます。
あ、だからこの間のコーヒー茶碗電話のことで怒ってたんですね。
八郎のズレ
その1「自他の区別が曖昧」
本当にしょうもないけど、自分が今やろうとすることをやられるとつらい。
この場合は「まぁええか」なる。むしろ好意とも思える。
でも、これってどうなんでしょう。
一例として、「レディファースト」がある。
かつては紳士の嗜みとされ、幕末に西洋諸国を訪問した日本人は「女尊男卑!」と仰天したそうですが。
「レディーファーストってな。本来弾除けにするために女使とったゲスな風習やで」という、真偽不明トリビアはさておき。
あれは2019年になるとむしろ性差別だとして、批判されかねない行為です。
「そんなんドアくらい自分で開けられるわ」
「コーヒー奢ったくらいでドヤ顔せんといてや」
みたいなことになりかねん。
筋力だけでなくて、女性は判断力、自発性、決定力が劣るという前提が根底にあるという解釈もできるわけでして。
八郎はそういう【むしろイラつく親切男】に突っ込みかけているようです。
そしてこういうことに終わりはない……積りに積もっていく。
甘すぎる優しさ
忙しくて武志の洗濯物をパパっと畳んでしまうと、それを八郎が畳み直す。
嫌味か!
優しければ優しいほどやさしいほとつらい!
八郎のズレ
その2「甘すぎる優しさ」
砂糖一個でよいところに、二個も三個も入れると嫌気がさしてきます。
八郎の優しさも、ズレてきちゃっている。
そういう片鱗はあった。
ジョーに陶芸を諦めろと言われた時、喜美子は優しすぎるから八郎は受け入れかねないと突っぱねました。
そういう加減が難しい!
どないすればいい?
わからへんから喜美子も黙っていた。そのうえで座り、こう言います。
「ちゃう。今は何となくわかってんねん。仕事や。うちが仕事少しやめたらええねん。茶碗60個の所30個にしたらええ」
「それは僕もそう思うで。お金やったら僕かて少しは……」
「金だけやないで。仕事は仕事。うち、やめたないねん。うち、仕事が好きや。働くんが好きや」
はい、どう出るかな?
八郎は、こう言い出します。これからも忙しいで。
百合ちゃんのことも。お義母ちゃんのことも。なかなか帰ってこない直ちゃんのことも。武志も手が掛かる。
なんやかんやで忙しいのは変わらんで。
ほんでこうしていちいち向き合うて話し合う、そんな暇ないで。
そんでまた、積もり積もっていくで。
地獄かッ!
はい、ここから先、地獄みありのこれやで。
【NHK東京のなつとNHk大阪の喜美子、どうして差がついたのか? 理解、環境の違い……】
ここから先、八郎はこう言い出します。
「仕事が好きいうのはわかってるからな、もう一つの方もいつもわかってたらええ。喜美子のこと好きやで。好きや」
「ありがとう」
「言えや、喜美子も」
「うちはあんたしか考えられん、ほんやまで。あんたおらんと生きていけん、嫌われたくない……」
こうしてキス寸前になる。そこへ武志が入ってきて、あの皿の前に花を置きます。
目隠しするようにして、指の間からそんな親の様子を見て走って行く。
「ええ子に育ったなぁ」
八郎はそう言うわけです。沼の民、おめでとうございます。
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