僕と喜美子はちゃう――。
そう言ったあと、次世代展応募作品を作るよう促す八郎。
笑いながら、あかんと言いながら、喜美子は作品を作ってゆきます。
怒ってやったら、怒った形になる。めちゃくちゃやんと言いつつ、作り上げてゆく喜美子。
真面目にやれと言われ、遊んでへんわと言いつつ、作り上げてしまうのです。
「ちゃんとしい」
そう言われつつ。喜美子は取り組む。
作りながら笑い出してしまう。ヘンテコな形になってまうといいつつ、作ってしまいます。
八郎は横に腰掛け、こう言います。
「集中してやりぃ」
子どものようにニッコリと笑いつつ、作ってゆく喜美子。
一旦集中すると、喜美子は喜美子の世界へ深く入り込みます――。
バイオリンの音が響く中、喜美子は作品を作り上げてゆくのです。
賢い女は平凡さを見せつけなあかん
喜美子が出品する作品が出来あがりました。タイトルは「春のお皿」です。
「なんや平凡やな」
柴田はそう言います。
気をてらわないほうがええ。そんな意図を喜美子が説明すると、こう来ました。
女性の応募は珍しい。控えめな方が好感持たれるってよ。
うーん、高度なドラマやなぁ。
これって女性クリエイターあるあるやろ。
女性が斬新なことをする。ジョークを取り入れる。
そういうことをすると、どんだけ生意気だよ、とみなされボコボコにされるか小馬鹿にされるか。朝ドラレビューをしていても痛感するところです。
男性だけが革新的とされがちという、そんな思い込みの背景に、何があるんでしょうね。
柴田はこういう偏見の背景を投影した人物像として秀逸です。
このあと、これですからね。
「金賞狙ってます!」
「それはありえへん。結果をお楽しみに」
この柴田と佐久間が八郎に向かって、奥さんのことをどう語っていたのか考えていきましょうか。
喜美子の意図がここで語られます。
応募したのは八郎のため。
喜美子のがんばりが八郎のがんばりにつながればいいと思ったから――。
しかし、八郎の新作作りはうまくいっていない。
フカ先生の絵葉書を見ながら、悩んでいるのです。
ミッちゃんの皿はまだやろか
そして二ヶ月が過ぎました。
マツは食卓でこう言います。
ミッちゃんの卵焼き、何が入ってるのかな?
赤く刻んだニンジンだってよ。
武志が嫌そうな声をあげますが、三津は卵焼きに入ったらニンジンじゃないと言います。
喜美子は好き嫌い言うたらニンジンだらけにされると言います。食育やなぁ。
百合子はご飯を変えたかと尋ねます。喜美子が、いつもより一段上の高いお米にしたと答えると……。
おいしいもん!
百合子は嬉しそうですが、ここで八郎がこう言います。
「ゆりちゃん、嘘やで」
変わったのは茶碗。喜美子の作った新しい茶碗だって。
百合子は続けて喜びます。
茶碗変わっただけで、こんなにおいしく感じるなんて!
「百合子のその顔、額に入れたいわもう!」
喜美子は喜んでいます。
これがものづくり原点の喜びなんでしょうね。
朝ドラは朝食時に見るとされてきた。朝ドラの作り手も、放送を見ながら食べておいしくなれば本望でしょう。
本作はなかなか激辛でむせそうになりますが……。
いろいろ伸び悩んでいて、地味だのなんだの言われておりますが……。
ヘビーなところがあるから、避けられても仕方ないのだと私は思います。
いわば、朝っぱらから激辛カレーなのよ。
川原家の食卓は、喜美子と八郎の「かわはら工房」の作品だらけ。
卵焼きを載せたお皿も、あれもこれもそう。
マツはうれしそうに言います。そのうちここに、ミッちゃんのも入るのかな、って。
ミッちゃんはマツからもすっかり気に入られていますね。
その三津は、頭でっかちで実践できてないと言います。喜美子と三津って、そういう意味では真逆ですね。専門教育を受けた三津と、自己流の喜美子です。
ほんで、往々にしてこういう組み合わせは、緊張感が漂ったりして。
『なつぞら』のなつが自己流タイプ。農業高校出身で、本人のせいではないものの試験にも落ちた。
技術は未熟でもセンスがあって、美大卒のエリート・マコは焦燥感を漂わせておりましたっけ。
『半分、青い。』の鈴愛も、少女漫画すらろくに読んでこなかったタイプです。
フィクションの王道といえばそうですが、そういう奴が周囲にじんわりと悪影響を及ぼしかねないと、朝ドラチームは痛感しているのかもしれませんね。
この場合、複雑になりそうです。
三津の指導を八郎は忙しいと断って、喜美子も無理だといったんは断るものの、結局受け入れるのです。
「やるからには厳しゅうやらせていただきます!」
かくして弟子になった三津に、喜美子はフカ先生流の体操を教えます。ぶつかっちゃったりして、今のところはいい感じではありますが。
ちなみに、次の朝ドラ『エール』主人公モデル・古関裕而氏は、商業高校出身でありながらいきなり作曲家になりました。
何かを見ているだけで脳内に音楽が浮かんできたとか。
インパール作戦にも深い関与があります。
朝ドラでインパールに突っ込むと、本作どころじゃないことになりそうです……。
【朗報】信作&百合子が決着した模様
はい、今朝の信作&百合子タイム。
「あかまつ」で、所沢という上司に絡まれる、そんな信作です。
「合併になったら役場のお前の椅子もなくなるでぇ」
「そら困ります」
ナゼか、信作でなく百合子がそう相槌を打つ。
「危機感持てや! もっと若いお前が危機感持て!」
なんやこの生々しい上司は。
本作は、おっさんの鬱陶しさにリアリティがありすぎて、身に覚えのある方には嫌われるとは思う。
はい、信作は店を出て百合子に愚痴る。
若いお前が危機感持てって、どないしろっちゅうねん。ここで、信作がズレ始める。
どうしたらええんやろな。そういう流れからこれやぞ。
「人口増やす。家庭築くんや。いっしょに築くか!」
「信にぃ……」
「いや、じょ、冗談や!」
うーん、これはもう。大野夫妻の反応を見たくらいアホすぎる。
普通に
「ゆりちゃん、俺と結婚してくださいッ!」
では、あかんのか?
人口増やすとか、そういう役場の考え方に結びつける必要あったんか?
何しとんねん!
「『なつぞら』のイッキュウさんプロポーズ、あれは迷走しとった。NHK大阪も、迷走プロポーズで違いを見せな(アカン)」
そういう謎の対抗心を燃やしたのか?
八郎が予想外に綺麗だったから、信作はぶっ壊す流れか?
百合子はここで、ハンドバッグ殴打女との違いを見せます。こう誘導するのです。
うちがなんで「あかまつ」に行くようになったかわかる?
おっ?
模範解答例:「俺に会いたかったとか?」
以下、信作迷走します。信作は気づいていたと語る。
「ほんまに気づいてたん?」
「気づいてた」
この後がもうさぁ……。
おじさんがよう行ってた店やから。
お父ちゃんが「あかまつ」でどんなふうに飲んでたんやろ。お父ちゃんと一回「あかまつ」で飲んでみたかったな。
そんなこと思いながら行ってた。
お父ちゃんが恋しくなると行ってる。
末っ子で甘えん坊やからな、百合子は。
うーん、何を言っているんだこいつは……。
ジョーはそんな振り返りたくなるような父だったっけ?
それに、自宅で酒瓶抱いて寝転がれば、思い出せるんちゃうか……いや、いや、そうじゃない!
普通は、このへんで「うわっ、なんかめんどくさっ。関わるのやめとこ」ってなりかねんと思う。
そこは天使・百合子だからさ。
「ごめんごめんごめん!」と甘えん坊指摘を謝る信作に、こう来ました。
「うち、人口増大に貢献してもええよ。家庭を築いてもええよ。結婚前提におつきあいする?」
「してくれるん?」
「多数決や。ええ人! はーい」
「はい、はーい!」
念のために指摘しておきますが、童顔とはいえ信作は三十路過ぎやから。
昭和の三十路でこんなん嘘やん!
そういうツッコミは正直もっとあってもええとは思う。
こういう人はいるし、いた。いないと言い切れるのは、接したことがないからかも。
それに、信作だって、上司相手には世間体を考えた対応はできるんですよ。一番近くにいて欲しい相手に、ズレてしまうだけでして。
林遣都さんだけに胸キュンする反応はあるだろうけれども、こういうズレと迷走につきあいきれるかというところは大事です。
横におられんのは、しんどい
喜美子は三津の指導をしています。
ちょっとずつ進んできた。
そう指摘し、できあがったものをいきなり潰す。
三津が「あ〜!」と声をあげる。
基本が大事、もう一回やってみぃ。そう告げて、喜美子はおむすびを作りに向かいます。
八郎は三津を見つめています。
「ほんまに不器用やな」
そう八郎は言いつつ、思い出しています。
喜美子は最初に教えた時から器用だった。
どうしても作りたい。そう言われて、しゃあないから教えたったら徹夜してやってた。
それが初めてお金になって、はしゃいでた。
そっからあっちゅう間や……。
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