スカーレット99話あらすじ感想(1/29)泣かず!追わず!リヤカー引っ張る!

未知への旅は、心のままに向かうこと

※冒険にはもううんざり……していると思いたかったけれど

このあと、縁側で喜美子と八郎はミカンを剥いています。

「なんで泣いたん?」

「わからへん」

そう話しつつ、穏やかにミカンを食べ始めます。ここで八郎は、喜美子と自分の皮の剥き方が反対であることに驚きます。

何気ない会話に、罠を仕込んでいるから恐ろしい本作。もう、このドラマは美濃の蝮が心を込めて出してくる、そんなお茶みたいなモンだと思ったほうがよいかも……。

八郎は、結婚して初めて喜美子のミカンのむき方を見たと驚く。そのうえで、自分は普通やと言う。

喜美子は、八郎のむき方が普通とは限らないと言う。ハチさんはそうやけどな。そう言います。

喜美子 魔王への道

その3「普通の基準が周囲と違うかもしれない」

ただのミカンの皮。それをひとつとっても、普通であるかどうかは、解釈次第やで。そう喜美子は投げてきおった!

でもな喜美子、それやると嫌われるで。

世の中の基準そのものに異論を唱えると、普通の基準に意義を唱えるとそうなる。

ボコボコになるのはあのグレタさんもそう。【#KuToo】運動もそう。ミカンの皮だから流しそうになるけれども。

「やだぁ〜ハチさんはそうなん? そのほうがええなぁ〜、これからはハチさんと同じむき方にしますぅ〜」

何の異論もないまま、ここでニコニコそう言い切る。グネグネしながら、口の中を開けてミカンの食べかけさらしつつも、笑顔でそう言う。

どちらが可愛いと思います?

知らんことあるんやな。結婚して十年経っても。そう八郎は感慨を深める。

でも、そういう未知への旅は危険なんだな。

ここで喜美子は『今だから言うけど大会』を提案します。

信作と照子と遊ぶ、あの罪のないゲームです。けれども、罪がないかどうか、わかりません。

八郎も無意識下で感じていたのか、シリアスでなくてもよいのか、オチをつけるのか確認して始めます。

八郎は、ニンジンが嫌いだと言う。しょうもないことにびっくりだわ。かくして、喜美子へ。

「うちは今やから言うけど、穴窯やりたい。穴窯やりたい! 辞めたくない、次は成功させる。次こそは!」

喜美子の本音に、八郎は愕然とする。
わかってくれてたんちゃうか。

「次はどうだったらええかも考えてんねん!」

「また同じこと繰り返すで」

「もう一回だけ! お金はなんとかするから!」

「借金はあかん」

八郎は喜美子の責任感で止めようとする。喜美子はお金のことにずっと悩まされていた。コーヒー茶碗の時も、八郎は無償、喜美子は有償で引き受けると主張していた。

金のやりくりが苦手だった八郎は、喜美子に任せてきました。「めおと貯金」のこともある。金は愛の象徴でもあった。

喜美子は、そんな八郎を振り切る。

薪を拾ってでもやる。拾える量やないと否定されても、何度でもやると喜美子は言い切る。

「なんでわかってくれへんねん!」

「わかってくれへんのは、ハチさんやん。なんでうちの気持ち、わかってくれへんの!」

喜美子は顔を緋色にして、八郎に反論します。ここの戸田恵梨香さんの顔がほんとうに綺麗で。

穴窯の口に火をつけて、燃えてる、あの向こうで燃えてる火!

もっかい見たいねん、次こそはうまくいく、やらせてください、お願いします!

そう頭を下げる喜美子は、緋色の炎に取り憑かれた存在になってしまった。彼女自身が焼き上がってしまった。

八郎はここで、やっと最終的な答えを見出しつつある。

「感情で突っ走ってもどうにもならへん!」

かつて八郎は、喜美子自身か、それとも喜美子に惹かれる自分自身か。その感情を真っ赤な陶器にして、新人賞を獲得したものですが。

あまりに熱い炎に、彼はもう、ついていけない。

割れてしまった……。

コントロールができる電気窯向きの人間であり、心の持ち主。それが八郎ならば、喜美子は?

「お金やあらへん。ハチさんに足りひんのは、信じる力や! 信じてください、お願いします、やらせてください!」

喜美子は頭を下げる。信じる力は美しいにせよ、それは状況次第。愛する夫の感情を燃やして、喜美子はそう言う。

通帳を差し出し、積み立ては全部使わへん、薪は山で拾う、ほんの少し、一部だけ使うと説得します。

喜美子 魔王への道

その4「地獄めいた理詰め」

喜美子は物的証拠である通帳をかざし、理屈の逃げ道を先回りして塞ぐ。

問題解決で共闘できればよいものの、目の前に立ち塞がったら悪夢。

ジョーのように「あかんもんはあかん!」と理詰めを無効化するのがむしろいいかもしれません。

ですので、八郎も彼なりのちゃぶ台返しを習得します。

「武志連れて出てくわ……」

追い出すのではなく、家出。婿とはいえ、本当に出て行ってしまうのです。

喜美子は泣かない。追いかけもしない。

父のようにリヤカーを引っ張り、薪を拾うのです。

彼女が魔王だったらどうする?

また『麒麟がくる』を持ち出します。

冗談でもなんでもなく、【喜美子vs八郎】の構図は【信長vs光秀】になるんだと思います。

魔王のやり方、感情を燃やす高熱に耐えきれず、本能寺や……。そしてクリストフだけではなく、喜美子もエルサに突っ込んできている。

『アナと雪の女王』は文句なしのヒットコンテンツですが、主に男性層からのバッシングもひどいものがありまして。

◆‪「アナと雪の女王」のクリストフはなぜ業者扱いなのか? 夏野剛×黒瀬陽平×東浩紀の3氏が男性視点で新解釈

これについては、これで終わりやで。

「姉妹愛(=女同士の絆)最高や! 王子(=男)なんて最初からいらんかったんや!」

「いかんでしょ!?」

ほんでこれは新解釈でもなんでもなくて、手垢がべっとりついた話やで。コーラスで喉潰すほどがんばるマツもこれや。

※亭主元気で留守がいい!

それを、今まで「王子様最高!」という価値観を女性と男性に植え付けていたディズニーがやるから、混乱してしまうわけです。

といっても、ディズニーはクリストフを断崖絶壁から突き落とすような真似はしていない。別に男は全部消えろとは言っていないわけですが。

その続編ですが、喜美子はそこまですっ飛んでいく。
そんなここ最近の流れ。家庭に収まって、続編やアプリでもアナ(百合子かな?)と仲良くしてきた、まったりエルサ。

何処からか、謎の声に導かれ、未知の旅へ突っ込み、我が道をバリバリに進んでゆく――。それが続編です。

あの話にはショックを受けた方も多い。家族愛に感動していた自分を全否定されたようで、ついていけない。

初めからすっこける人も少なくない。

「なんでや! そもそもあの声ってなんなん? エルサはわがままやろ! 他の人と違っても生きていけや!」

そう言いたい気持ちはわかる。けれども、エルサはつらいわけです。

幼い頃から我慢、我慢で。それを解放したらこうだ。

「アレンデール凍結するから、我慢して生きていけや」

「お、おう、せやな……」

それで無害なスケートリンク作って、雪だるま作って。それでも自分のやりたいことをずーっとセーブして。無害なフリをして、違和感を我慢していきていけ。

それでイライラがたまらないと思ってるのか? そういうツッコミはあった。

「ありのままに、力を開放してはいかんのか? ありのままに生きていける道を選ぶで。家族イベントにつきあうからええやろ。業務引継ぎするしな!」

そこまで自分を丸めたエルサは、偉いと思う。

喜美子は、このエルサの数歩あとを追いかけている状況だと思うのです。このあと、なんとか丸めるから。八郎はかわいそうだけれども、彼女に気持ちを抑えろと私からは言えない。

喜美子はもう、何かの声を聞いてしまった。自分の心の底からの声を、聞いてしまった。

視聴率低迷について、こういうニュースは出てきた。

◆‪朝ドラ「スカーレット」視聴率苦戦…視聴者はどこが不満なのか

陶芸がわからないとありますが。お笑いと日本映画史を数十年単位でずらして出した一昨年。中華麺にかん水すら入れなかった昨年よりははるかにマシです。比較するのも失礼なほどです。

信作の役割は散々突っ込みました。もう繰り返しません。

じゃあ私の見解は?

「朝ドラのヒロインが、織田信長、曹操、デナーリス・ターガリエンの同類だったら視聴者困惑するやろ……」

これやで!

喜美子やエルサの主張は、曹操や織田信長、それにデナーリスとそんなに変わらないかもしれない。乱世か、そうでないかという違いはあるけれども。

曹操はこう宣言します。

「わしは、自分が天下の人にそむこうと、天下の人にそむかれることは我慢ならんのだ」

※八郎=袁紹だと考えるとこれも……

いままでの喜美子は、家庭のために自分自身の欲求に背いてきた。

後半戦は、むしろ自分の欲求のために家庭はじめ世間に背く――。こんな天下布武宣言をされる。しかも、信楽の普通のおばちゃんがやらかす。

燃えるわこんなん……。

喜美子は、朝ドラヒロイン史上、最強にして最恐、最凶になりかねんと思う。応援しとるで!

なお、こういう傾向を持つ作品が並ぶということは、偶然の一致でもないでしょう。世の中がそういう方向、いままで抑圧していた声を拾う方へ向かったということでもある。

『半分、青い。』もそうでしたが、本作は年齢層による評価も割れるとは思う。

それは、世界の進歩の反映でもあります。

大丈夫ですか?
本作は、視聴者の価値観がアップデートできているかの判定でもあるのです。

※再放送あるで!

そうそうNHKのアニメですが。『映像研には手を出すな!』がおもしろいと評判ですね。

女子が色気なしに取り組む。そういう作品。何かのバイアスを、破っていく。そういう気概を感じるで!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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