別々の脚本家で、ここまでミッチミチにしてくるということは。脚本家さんのお仕事を過小評価するつもりはありませんが、何らかの組織的なサポートもあるのかなと思います。ええんちゃうか。
もうひとりの眼鏡の少年は、永山大輔くん。
ここでマツが、永山さんの家は永山陶業という大きな会社だったと言います。
大輔は「おばあさんは、俺が来るたんびに言うてはります」と返すのですが……。
重要かもしれない。
丸熊はまだ出てこないけれど、ナンバーツーの永山は縮小か、あるいは倒産か。信楽の陶器生産はどうなったのでしょう。
やっぱりなんだかんだ言って、陶器のタイルやインテリア、家財道具は減ってゆく。
武志あたりはタイルのお風呂に入っているでしょうけれども、彼の息子世代はそうじゃないもんなぁ……。
うーん、喜美子の周囲だけでなくて、信楽、滋賀県そのものが気になってしまう。
やはり朝ドラと大河って偉大だな。
こういうこと、他のドラマではそうそうできない。ただし駄作は別やで! 企業宣伝はせんでええからね!
ここで喜美子が帰宅。ぶっきらぼうに「ただいま」と言い、高校生たちが「お邪魔してます」と挨拶するのです。
「来てたん」
そういうサバサバおばちゃんになった喜美子。
うーん、このそっけなさ。織田信長の「で、あるか」みたいだ。
この口癖は創作物由来とかなんとか言いますが、ここは注意しましょう。智勇あふれる、しかも男性に多いんだな。
「初歩的なことだよ、ワトソンくん (Elementary, my dear Watson.)」
なんてのも典型例ですね。原典にはないのに、有名になったアレやで。
※そんなんアレやん、ワトソン
無愛想でぶっきらぼうであってもカッコいい、クール! そういう男性にありがちな要素を、喜美子は習得したで!
その背後には、住田という男もいた。
「先生、先生!」
「先生、やめてください」
喜美子は疲れたという。テレビ、顔出し、もう堪忍してください。この前のあれも疲れたでえ、講演会。
そう喜美子がぼやくと、住田は講演会あればこそこれだけのお土産があると言います。
そんな住田に、喜美子ではなくマツがお茶を勧め、彼は断るのです。
この貫禄がええねぇ。
ジョージ富士川の仏徳とも違う。
フカ先生とも違う。
名声にちょっと戸惑っていた八郎とも違う。
慣れきった上で、利用した上で、疲れているとぶちまける。
露骨にふてぶてしいぞ、おい!!
しかし、すごいな。カッコええな。
卵を入れたお粥をすすっていた、あの川原家に、お土産がバンバン届く。喜美子はほんまに強いわ。
それに喜美子は清濁併せ呑むからね。不倫の誤解から橘を経由して来た、絵付け小皿の依頼も引き受ける。ちや子の報道力も利用する。
世間をどう動かすのか、利用できるたくましさと強さがある。
昨年のアレな。
「テェレェビィやあああ〜〜!」は、思いつきでしかないとわかってキッツイもんがあった。
けれども、喜美子の場合は、先の大阪でちや子の発信力を確認した上で、手紙を出してまずそこを使いましたからね。
金賞を取るまで足踏みしていた八郎よりも、喜美子は巧み。流言飛語スキル(マスコミ対策)の使い方が抜群で、知勇兼備にもほどがある。
でも、予兆はありましたよね。
マスコットガールミッコーや、新聞記事に怒り、戸惑っていた八郎。
そんなもん利用するまでと、ふてぶてしかった喜美子。
ここまで武将めいた朝ドラ人物は、『なつぞら』の柴田泰樹(前世・真田昌幸)くらいしか思いつかん。あの夕見子でもここまでではない。
※喜美子を敵に回すのは得策ではない!
喜美子はここで、この前のアレを見たか?と大輔たちから聞かれます。
サインもろといたとあっさり認める喜美子。サインとは、ピンクフィーバーズでした。
アレやな。モデルはなんか見えてきたで。
※コレやろなぁ
「最近の若いもんはAKBだのなんだの……」
なんて言うおっさんかて、若い頃はこういうんに夢中でな。
そのおっさんのじいさんのじいさんも、女義太夫にハマっとったし。その御先祖も、笠森お仙にヨダレだらだらしとったし。
戦国時代は、今度の大河『麒麟がくる』に出る伊呂波太夫みたいな女芸人にウハウハやし。
そんなもんやで!
住田は「好きなん?」と聞く。学と大輔は真似をする。
「ピンクフィーバーズ!」
ええんちゃうか。この昭和のアホな男子高校生、話題さらうわ。
歳月が流れた家と工房
マツはもう歳ではあるとわかります。
老眼鏡になって、編み物をしながらウトウトしてしまう。
老眼鏡の使い方、加齢演技といえば、『なつぞら』の高畑淳子さんのとよは見事でしたねえ。
老いて盛んな猛将っぷりでしたが、マツはマツの老い方があるのです。富田靖子さんは流石にうまい。この、ウトウトしてしまう首の動かし方。絶品やないですか。
「NHK東京の加齢演技、ええと思います。泰樹もとよも、勉強になりますわ。ほやけど、NHK大阪の本気と違いを見せな(アカン)」
というわけで、期待してます。去年の武士の娘は、忘れよか……。そして、若い世代もな。
どこかなんか暑苦しい長髪。
高校時代の信作とは世代の違う背伸びのある、そんな武志ですが。
彼の机には、進路希望の願書があります。
親の頃とは違い、高校進学が当然となったこの世代。人生の岐路はこの時期にあるのです。
灰と土が反応してできる自然釉の作品は、陶芸家・川原喜美子の代名詞となりました――。
そうナレーションで語られる中、喜美子はひとり、工房で作品に向き合っています。
彼女は一人。
その姿はやはり、美しい。
焼き上がったこのドラマ
喜美子の作品が焼き上がりました。
本物の自然釉を利用していて、その美しさにはハッとさせられる。
そんな作中の登記だけではない、もう一つのものが焼き上がったと思います。
【ミラーリング】やで!
男女の役割を入れ替えると、何か今までわからなかったものが見えてくる。
その代表例が、Netflixの『軽い男じゃないのよ』。
※入れ替わりといえば……
男女入れ替わりといえば、あれやこれやを思い浮かべるかもしれない。
「女はええなあ。笑って愛嬌振りまけばなんでも通るんやろ」
そんな愚痴を豪速球で打ち返す作品。男と女が入れ替わった世界に行ったら、ピチピチの服を着ないといけないわ、道ゆくだけでセクハラされるわ、地獄だった……というものです。
といっても、こんなもんを朝ドラで流したら、視聴者阿鼻叫喚になる。
そう考えたと思うんだな!
第一弾として、まず準備であれやこれやをしてきた『なつぞら』。ヒロイン夫・イッキュウさんの家事育児は、女性ならして当たり前のことですが、大絶賛をされたものです。
孫娘を見守る泰樹。娘の大学進学を許す剛男。彼らも素晴らしいものがあった。
第二弾や!
「女が男のように天下布武してはいかんのか?」
そう宣言するかのような、喜美子の熱すぎる焼き討ちの数々。
喜美子はわがままだと袋叩きにあいそうですが、これは男女逆転したらありえることでして。昨年のヒロイン夫がそれ。連続収監されないだけ喜美子ははるかにマシ。
人間としてあまりにゲスな昨年のヒロイン夫あってこその、喜美子爆走だと思えば、やっとアレに感謝できるような気がしてきた。ハセヒロさん背水の陣という意味でもありやろな。
ついでにいうと、甘っちょろいと言われる八郎の特性も、ヒロインとしては最善最良ではあるのです。
見通しが甘いとか。
配偶者に簡単に許可を出したとか。
名声に戸惑うとか。
過剰な潔癖性とか。
甘えん坊なところとか。
喜美子が迫っての結婚であったとか。
その魅力は、甘ったるく描かれてきたけれども。それがメラメラと焼け落ち、あの色を出した現場に立ち会えなかったのです。
喜美子の夢が叶ったことはうれしい。
しかし、その横に八郎はいないし、誰も困っていないことは悲しくはある。
八郎がマツの代わりに、水を持って駆けつけて見守るようにはできなかったのか?
物理的な問題ではありません。
むしろ八郎の方が体力的には消火向きでしょう。不器用ですけどね。
何かが心理的な壁になってできない。そこにいないけれども、悲しい話だとは思った。
けれども、そう思えるのはどうしてなのか?
八郎が女だったら、芸術を理解できないで別れた馬鹿な女。
あとで泣いてろ、ざまあみろ!
そうなりませんか?
本作はしみじみと奥が深いで。
さて、せっかくだから、もうちょっと考えてみたいと思います。
人間の心理ウォッチャーとして朝ドラ周辺をみる
こんな報道がありました。
◆スカーレットで不倫描かれなかった訳…東出の影響説は本当か
◆「東出と八郎はここが違う」 朝ドラウォッチャーが東出の不倫騒動を「スカーレット」から読み解く
いや、そんなことは第一回の冒頭場面や、序盤の喜美子による「意地と誇りはあるんや〜!」というセリフ、そして展開をつなげていけば「そういうものじゃない」とわかるかと思いますが。
なんだか意味不明な引き伸ばしやテコ入れのせいで、放映時期のプロットがガタガタになる朝ドラはわかるもんですよ。
人気キャラ五代様の死を後に倒して、後半が崩壊気味だった2015年下半期『あさが来た』とか。
テコ入れに無理矢理親子共演をねじ込む。あの前後放映時、ヒロイン父俳優が民放でも親子アピールしていて何がなにやら……。そういうことをした結果、モデル企業の開発秘話がすっぽ抜けた昨年の放送事故とか。
水橋氏は妥協しないし、そんな彼女を内田P始め周囲が固めている。そういう盤石な体制が見て取れる。
『半分、青い。』の作風も、北川氏を防衛する周囲あってのものだと聞いております。そういう団結あってのものです。
でもどうしてこういう記事が生まれるのかな?
「アクセス数を稼げるから」
これやな。
一秒でバレるような嘘でも、アクセス稼げるのであれば正義や!
ほんでな。
「どうしてアクセス数を稼げるのか?」
やっぱり不倫が見たいんやろなぁ。
一日中不倫のことを考えて、興味津々で、覗きたい気持ちがあるから、嘘を見抜けなくなる。目の前の朝ドラと実在の事件をガッチリ絡めて、無駄な推察をして時間を使いたくなる。
三津と八郎がほんまにできとったら、一日中アンチタグで投稿して憂さ晴らしできたのに……そう思ってへん?
数字を取るために、そういうゲスな仕掛けをすればええことくらい、NHKならわかっとるやろなぁ。
◆ファンは、ハッシュタグをつけて萌えを投稿し続ける。作品を楽しむことは良いこと。
ただ、純粋に味わうだけなのかどうかは考えましょう。
これはあるドラマのネットニュースがダダ漏れですごかった。
見続けた自分は勝ち組。そういうマウンティング材料にするつもりが満々で、びっくりしました。
昨年の放送事故も「私はヒロインそっくり!」「私の夫はヒロイン夫そっくり!」と、聞かれてもいないのにアピールするファンがいた。
ヒロイン夫妻の愛が詰まったインスタントラーメンを食べているだの。
その反証が出ると激怒するから、心理状態丸見えでもうちょっと取り繕ってくれと思ってしまった。
◆アンチは、叩くことで自分の気持ちを慰撫し、見せつけたい。
ドラマ通自認者は、こんな朝ドラに騙されないという気持ちがある。
女性(出演者、キャラクター、スタッフ)を叩き、自分は違うと優位に立ちたい気持ちがある。
『半分、青い。』がまさにこれよ。
『なつぞら』も、女優の些細な言動をあげつらい、ボコボコにして一致団結してました。
◆どうでもええ、そもそも見ていない人。彼らはネットニュースや投稿を見聞きして、無責任に作品の話題を消耗する。
『半分、青い。』の時、これが圧巻でしたよ。
「朝ドラ? 見ていないけど、舐め腐った態度の女性脚本家が、しょうもねえバカ女の話書いてるんでしょ? うちの会社の人も、キモいクソドラマって言ってたよ」
「えっ……見ていないのにわかるんですか?」
「私が? どうしてそんなクズみたいなドラマ見なくちゃいけないの? 私だよ? この私がだよ!」
なんで見てもいないのに、テキトーな話をするのか?
謎は解けましたね。そういうことですよ。
褒めるにせよ。
叩くにせよ。
できるだけ脳を使いたくはない。だから、ネットでハッシュタグを見て、自分に合うものを探して、そこを投稿すればスッキリできると。
でも、こういう流れって安全でしょうか?
結局、自分が一番気持ち良くなることしか考えていないのでは?
ドラマやキャラクターの話をしていても、結局ドラマはどうでもよいのでは?
その手は見破られた……NHKドラマ班にはそういう誰かがいる。そのうえで、情報をリークしていると念頭に置いた方がよいのかな?
いや、関係ないですね。
アクセス数が正義ですからね。
読み手としてはそれでよろしいのでしょうか。
罠に引っかかり続けて、それでよろしいのでしょうか?
そこは考えんと!!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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