スカーレット133話あらすじ感想(3/9)お母ちゃんいう生き物や

武志は高校入ってすぐ、喜美子に陶芸を習いました。

「う〜!」いう感じやった。なんか、なんていうやろ。すぐにはできひんで。すぐにはうまいことできひん。ちょっとうまいこといったら、手ぇが、なんか魔法使えるような気がして。おもしろうて、おもしろうて。

そう思いを語る武志。喜美子は何時間もやってたな、と振り返ります。

近道はないで。あっても近道はおすすめせえへん。なるべく時間をかけて歩いたほうが、力がつく。歩く力は、大変な道の方がようつく――。

八郎は思い出します。深野先生の言葉だと。

「決めたで! 今年の目標一個め! 俺は大変な道を歩く!」

「ええなぁ」

「ええなぁ、ちゃうやろ。“ええよぉ”や!」

そう深野先生の言葉を思い出す親子三人。和気あいあいと笑いに包まれながらも、喜美子の顔はふっと曇ります。

武志は選ばなくてもいい。運命がもう武志を選んでしまっている。大変で、そしてあまりに短い道へ行くようにと。

このあと喜美子は布団を敷いています。そこで映し出されるものがあります。

幼いころ、武志が作っていた粘土、まるまるくん。教科書。美大受験の赤本参考書。ハンガー。ファンシーケース(※昭和に流行した衣装ケース)。

何気ない昭和の部屋のようで、武志の人生の軌跡で、そしてこのまま時間の中で凍結してしまうものがそこにはあります。

武志は八郎から、ろくろの使い方を習っているのでした。

武志にも予感はある

喜美子は食器洗って、八郎は武志にフカ先生の葉書を見せています。今年のものではなく、八郎がかつて工房に飾っていたあの絵です。深野先生がご存命なのか、不明です。

「ええなあ思うてな。うん、こういう色を出したい思うてなぁ」

釉薬のこと?
そう聞かれて「こういうイメージな」と八郎は返します。

「なかなか難しうて、うまいこといけへんかった」

「大事にしてたんやなぁ。ありがとう、見せてくれて。あっ、もっかい見せて」

「ふふっ、ええよ」

「ありがとう!」

この短い会話にも、奥深い世界があります。

かつて八郎は、喜美子への愛を真っ赤な大鉢に込めました。あのとき、あの幻想的な世界を表現できたら、二人の愛も違っていたのかもしれないけれど。

芸術と愛が続いている人間ならではの、悲しさと美しさを感じる……。

「武志、今週もアルバイト? いつやったらいい? アパート行きたいんやけど。行くゆうたやん。武志のたこ焼き食べたいんやけど。紅生姜少なめでな」

武志は嫌そうな顔になる。

ここで気になるのが、親子でどれだけ、あの病気のことをわかっているかということです。

自室へ戻ると、武志は家庭用医学書を見ています。この当時、分厚いこういう書物が各家庭にあったものです。

見ているのは、血液の病気。彼なりに何らかの予感があるのでしょう。

ますます見逃せない時が来た

なんでしょうね、信作と百合子のサニーディがはるか彼方にあるようだ。

この気持ちを予測してのあの展開ならば、おそろしいとしか言いようがない。

水橋氏は、クランクアップ後に種明かしを始めておりまして。

◆‪「スカーレット」武志は白血病だった 試練の展開にネット涙 脚本・水橋文美江氏「覚悟を決めて」執筆

◆‪「スカーレット」最終章へ “ヤマ場”7年飛ばしたワケ 喜美子の陶芸家としての成功は描かず「潔く」

ええ時代になりました。
『カーネーション』では、尾野真千子さんからの交代であることないことを発信されて、その訂正のために脚本の渡辺あや氏がSNSアカウント投稿をしておりましたね。

‪◆#カーネーション 脚本家 渡辺あやさんのTwitter降臨とその反響 – Togetter

叩きはできるわけですが、何か意図があるとは思えるのです。最近のNHK看板はおそろしくて考え込んでしまう。

こういうことを言うと何ですが、難病とその母なんて【鉄壁の守り】ではありますよ。誰も叩けない。しかも、稲垣吾郎さんまで出てくる。

先週からはバッシングができない。そこを踏まえたうえで、スピンオフとその反応を観察するような余裕すら感じてしまう。

深く考えずに、パーッと楽しめばいいじゃん!

そういうことは言われますが、深読みした方が楽しい人間もいるし、それが向いているコンテンツだってあると思えるのです。

ラストスパートが本当に大変。作る側の味わった苦労の、ひとかけらでも追体験するために、このドラマと向き合います。

医学情報を得ること、人を助けること

今週もきっちりと、医学考証がついている本作。

ラストシーンで、家庭の医学書しかない昭和の方がよい部分もあったのかもしれないと思いました。

今はなまじインターネットがあるわけです。

病気名で検索をすると、正しい情報が出てくるわけでもない。これが怖いところではある。

代替医療を信じ込むような誘導がある。SNSでも、間違った情報を共有してしまう。フォロワーを選べば、その情報がぐるぐる回って危険に陥りかねないわけです。

テレビとか。広告とか。不安を煽ってお金を得るシステムもある。

情報をどう見抜くのか。そこも大事だと、こんな時だからこそ思えるのです。

献血関連の投稿が増えており、私も先日書いたわけですが。

善意だけでは人は救えない。情報を得ることも大事。

だからといって「もう助からないですね」と心理ケアをぶん投げたら、世の中崩壊しかねません。

こんな時だからこそ、本作の喜美子や大崎を見て、どうすれば人を救えるのか、デマに踊らされないのか、人と協力できるのか。考えていきたいと思える。そんな誠意を感じるドラマです。

ここで考えたいのが

「賢い人は騙されへん!」

ということでして。

それを言うのであれば、あれほどキレものだったジョブスが、どうして代替医療にハマって手遅れになったのか、説明がつかないわけです。

カウンターカルチャーとか。彼の経歴とか。そういう分析はあるのですが、結構きっちり、説得力のある答えが見出されつつあります。

彼は自分の【感情】に溺れたのでしょう。

【理屈】よりも、治せるという【感情】があったと思うんですよね。

この状況下で、

「マスクなしでがんばる!」

というのは、こういう【感情】に溺れ【理屈】をぶん投げた典型論ではあります。

そこで、

「アホちゃうか!」

と言っても、相手は説得できないどころか、頑なになるかもしれない。

アホだという気持ちはグッと堪えて、

「まぁ、その気持ちはわかる……せやけどな」

と、理解からスタートすることも大事ちゃうか。

【感情】も【理屈】もどちらもこういうときこそ大事なはず。

NHKは、受信料とドラマ枠を使って、そういう試みをしていると思えます。

逆に、そういうことをやらんで手癖で勝ちに行くものは、破滅あるのみです。

ほんで、そういう破滅の風を感じとるんや。その分析は、一ヶ月以内には出すから……。

クソレビュアーかて弱いもんで。

【理屈】こねくりまわして、不安という【感情】を共有したい……。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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