前回(第10話)までの『西郷どん』は……。
江戸に出てきた西郷吉之助。
郷中仲間の大山格之助(大山綱良)と有村俊斎(海江田信義)に連れられていった品川宿の磯田屋で「ヒー様」と出会う。
ヒー様とは、一橋慶喜のことであり、後の15代将軍・徳川慶喜のこと。
主君の島津斉彬に、その慶喜とお近づきになるよう命じられた西郷であったが、再び出向いた磯田屋では
「将軍になる気などはないと伝えておけ」
とつれない態度を取られてしまう。
その頃、芝の薩摩藩邸では、篤姫に、実父・島津忠剛の死の報告が届けられた。
「もう一度会いたかった」として失意の底に沈んでしまい、思わず失踪してしまう篤姫。
品川の海にいるところを吉之助に発見され、事なきを得るが、いざ藩邸に戻ってからは御台所として、つまり徳川将軍の妻としての特訓が始まった。
教育係に選ばれたのは、幾島。
もともと薩摩出身の老女で、かつては島津斉興の養女にして近衛忠煕に嫁いだ郁姫について京都にいた。
幾島の厳しい教育で、徐々に江戸の言葉も覚えていく篤姫。
一方、西郷は、福井藩の天才・橋本左内と出会い、現在の政局を指南してもらうが、その内容をさっぱり理解できずに呆れられてしまう。
アタマに引っかかったのは、次の将軍として一橋慶喜を島津斉彬も推挙していることだった。
ナゼかと言えば、今まさに篤姫は徳川家定への輿入れ準備をしており、いずれその世継ぎを産むことが期待されているはず。
なのになぜ、それを飛び越えるようにして、次の将軍など決めねばならないのか。
思い余った西郷は、島津斉彬に意を決して質問するのであった。
「篤は不幸になる」
崇敬する主君から返ってきた言葉は、やはり悪い予感の通りだった。
斉彬vs直弼 静かなる戦い
篤姫の付用人になった吉之助。
斉彬の息子・虎寿丸と相撲を取るなどして穏やかに過ごしていた。
しかし、どうしても「篤は不幸になる」という言葉がアタマから離れない。
むろん、それでも輿入れ準備は着々と進んでいる。
その準備に対し、警戒心を強めるのが井伊直弼であった。
徳川幕府は、親藩や譜代が中心となって政治を進めるもの。
薩摩などの外様は邪魔である――そんな心持ちであり、静かな権力闘争が始まっている。
篤姫を御台所にして、次代の将軍を一橋慶喜に推挙する――。
そんな目論見も井伊直弼には当然の如く読まれている。
直弼らは、まだ若い紀州藩主の徳川慶福を推挙しているのであった。
斉彬に対し、
「怖いのは異国船だけじゃないのぅ」
とプレッシャーをかける直弼。
そんな折、斉彬の息子・虎寿丸が突如亡くなってしまった。
【関連記事】徳川家茂(徳川慶福)
異国に備えて勉強をすすめる久光
虎寿丸の死により、薩摩藩は再び揺れる。
お由羅騒動の蒸し返しとばかりに、疑惑の目を由羅と島津斉興に向ける有馬新七などの郷中仲間たち。
大久保利通(正助・一蔵)は「待て」となだめつつ、それでも慌ててしまう。
吉之助はすでに江戸にでて活躍を始めているというのに、自分はこのまま薩摩で終わってしまうのか。
そんな悩みを抱えながら記録所で働いていると、ふと、島津久光がやってきて、
「宝島事件の資料が見たい」
というではないか。
何かと思えば、異国に備えて勉強をすすめている様子。
意外な一面を実際に見知って、尊敬の念を抱く大久保であった。
一橋派の会合では
そのころ江戸の薩摩藩邸では、
・島津斉彬
・松平慶永(松平春嶽)
・徳川斉昭
・一橋慶喜(徳川慶喜)
が揃って会合が開かれようとしていた。
慶喜は、松平のそばにいる橋本左内を見て驚く。
以前、品川宿の磯田屋で病人に対し「瀉血(血を抜く治療法)」をしていた医師だと気づいたのだった。
その橋本と西郷を呼びつけ、酒を注がせる慶喜。
斉彬たちの会合は、篤姫の輿入れとその次の将軍に関する話であった。
他のメンバーは、篤姫に世継ぎを産ませて、島津による発言力を強めようとしているのを危惧しているようで、斉彬はアタマからこれを否定する。
そもそも徳川家定では子供が作れないだろう――そんな言葉が聞こえてくると、途端に吉之助は「なんだと!」と立ち上がってしまう。
「場をわきまえよ」とキレる左内。
慶喜は呆れるように西郷に告げる。
「公方様は大うつけ。世継ぎはつくれん」
これに対し怒る西郷。しかし、斉彬たちの会合は進み、場は一致で終結しようとする。
と、そこで立ち上がったのが慶喜であった。
「悪いが、私はそなたらが思うておるような人物ではない。異国と互角に渡り合うなど、考えただけでも逃げ出したくなるんだよ」
弱気な発言をするも、そういう風に現実を考えられることこそ大事と周囲はプッシュする。
慶喜は、もう呆れるしかなかった。
斉彬が突如倒れる! 膳に毒が盛られていた!?
会合で疲れ果ててしまったのか。
その晩、島津斉彬は突然倒れてしまい、三日間も寝込んでしまう。
しかし原因は疲れではなかった。
気になるところのあった西郷が、斉彬の膳を左内に調べさせると、毒が盛られていたことが発覚したのである。
瞬時にキレる西郷。
藩邸を飛び出し、島津斉興と由羅が暮らしている高輪の屋敷へ出向いていった。
彼らの仕業であると決めつけての行動である。
島津斉興は、意外にも西郷の目通りを許した。
西郷が事前に嗅ぎ回っていたことを気づいており、証拠もなくやってきた吉之助に対し
「二度と顔を見せるな!」
と叱りつけたのである。
そしてその行動は、今度は斉彬にも筒抜けとなっていて、いきなり殴られる。
「西郷、お前をなぜ、わしのそばに置くか分かるか? わしも、お前も同じ大バカ者だからじゃ。お前も民のために、己の命を捨てられる男であろう」
あらためて斉彬の真意を知った西郷は、再び涙を流した。そして自らも覚悟するのであった。
第12話へ続く
文:編集部
【参考】
徳川慶喜(一橋慶喜)
橋本左内
島津斉興
島津斉彬
徳川斉昭
篤姫
徳川家定
西郷隆盛(西郷吉之助)
『西郷どん(前編)』
『西郷どん(後編)』
『西郷どん完全読本』
『西郷どん ガイドブック
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