時は日中戦争の激化する昭和14年(1939年)。
好きな映画を作りたい――そんな見果てぬ夢を追い続ける栞は伊能商会を追い出されてしまいます。
彼に救いの手をさしのべたのは、北村笑店のてんと風太。
共に、笑いあり、恋愛ありの『忠臣蔵』を作ろうと、奮闘するしますが果たして……?
もくじ
史実では国定忠治でしたが
風太は、通天閣の模型を眺めています。
模型ではなくて本物を映してもよいとは思いますが、最近全然出てこないのです。
通天閣以外も、本作って大阪のランドマークや名物料理が全然出て来ないんですよね。
たとえばトキの作りすぎる料理はただ漠然と「煮物」。
どて焼き辺りを出したらもっと雰囲気出るでしょうし、冬はてっちり鍋なんかつついていればいいのになあ、と思います。
『あまちゃん』のまめぶ汁なんて、愛着湧きましたもんね。
そういう大阪らしさを軽んじているんですよねえ。調べたくないだけなんでしょうけど。
その風太は「映画法」で検閲が厳しくなったと言います。
そこで作るのが『お笑い忠臣蔵』。って、これ、ミスチョイスでは?
史実では、当時、エンタツとアチャコが出た演劇は『国定忠治』だそうで。
国定忠治は、江戸後期、幕末前夜のアウトロー、博徒ですね。そういう経歴の持ち主なら、お笑いと組み合わせられても納得です。
行く先々でドタバタしても、まぁアリですよね。実際そういう演劇が作られたわけですし。
切腹だらけの『お笑い忠臣蔵』って?
一方で、『忠臣蔵』。
こちらは最終的に関係者が軒並み切腹というバッドエンドです。
主君の仇討ちとお笑いって、どう考えても不謹慎過ぎて相性最悪だと思います……。
いくら恋愛を絡めると言ったって、『お笑い忠臣蔵』というタイトルを付けるのですから、どうしたって整合性が危うい。
もうね、神経を疑うレベルなのです。
おそらくや
「どっちも時代劇だし~、知名度なら『忠臣蔵』だし~、まぁこっちでいいか!」
そんな文化祭ノリで作られたんでしょうか。
昨日、忠臣蔵と言えばということで『47 RONIN』を引き合いに出したことを反省しています。
アノ作品は、確かにジャイアントゴーレムサムライとか、中身は相当ぶっ飛んでます。
しかし、ストーリーの根底には【復讐の絡んだ悲劇である】と、制作側も認識しているんですね。
少なくとも上っ面だけ掬い上げるような横暴なことはしていない。
本作と比べたりして申し訳ありませんでしたm(_ _)m
本物の「わらわし隊」は戦地で何を見たか?
亀井が率いる地方巡業も、戻って来ました。
リリコ・アンド・シローの外地報告も大好評だそうです。
本当に無神経だなあ、と思います。
ナゼ彼らを内地巡業にしたのか。要するに戦争になるべく接触させたくないのでしょうけど。
本物の「わらわし隊」に参加した横山エンタツが、外地で何を見たのか。
今年に入って、彼の日記の写しが発見されました。
以下の記事では、実際の「わらわし隊」の活動内容もコンパクトにまとめてあります。
◆日中戦争に派遣の漫才師、横山エンタツの日記写しを発見:朝日新聞デジタル
一部を引用させていただきましょう。
「その当時は敵の死体で一ぱいだったそうだが凡(すべ)て我軍の制理であとかたもなし しかし川にはあちこち浮んで居る」(原文ママ、以下同)
「砲台の上に沢山(たくさん)の支那の死体がある 日本軍が(死体砲台)」
リリコさんも笑顔で「リリコの外地報告やで~~! 日本軍が……」とか言っていたんですかね。
記事の掲載日が1/20です。
本放送のロケ日がいつだったか私にはわかりませんが、もしも私が脚本家だったら顔真っ青になって、必死に書き換えてます。
あるいは実際にできるかどうかわかりませんが、その場面だけでも撮り直しを懇願しますね。
いずれにせよ安易に台詞をつないだたため、ヘタすりゃ炎上スレスレの展開になってしまいました。
いや、ほんと、怖いっす。他人事ながら青ざめてしまいます。
朝から高橋一生さんがコスプレしてステキー!
ここから先は、リリコとシローも加わったリハーサル。
【わらわしたい場面用】BGMが流れます。
リリコ:堀部ほり(安兵衛の妻)
栞:堀部安兵衛
シロー:堀部弥兵衛
さりげなく栞が出演することになっていて、口あんぐり……。
って、これは単に、練習用ってことでイイですよね?
要するに、おてんちゃんの妄想で、高橋一生さんをコスプレさせたいだけなんでしょうけど。
杜撰な設定に目をつぶれば、
「キャー! 朝から高橋一生さんがコスプレしてステキー!」
ってなりますかね?
昨日、調理中にケチャップをあざとく舐めた場面もそんなかんじでしたけど、私みたいに「うおっ、舐めてる、きったね!」と反応する人は、本作の鑑賞には不向きなんでしょう(´・ω・`)
白黒で赤を表現する難しさよ
栞や楓は、「帰って来て欲しい」と妻の台詞があからさまで、検閲に引っかかるかも、と浮かない顔です。
と、ここでおてんちゃん、地蔵スマイルでこう言います。
「赤いしごきや!」
赤いしごきは、妻が夫に「無事に帰って来てね♥」と思いを託したラブアイテムなんだそうです。
だからそのラブアイテムを出せば、
「おなごなら意味がわかるはずっ!」
なんだそうです。栞も納得しております。
けど、すんません、全然意味わからんです。
んで、ですね……。
一つ大切なことを忘れてらっしゃるようですが……。
当時の映画はモノクロやで!!!!
赤いかどうか台詞で説明せんと、観客はわからないでしょうに。
それのどこが、
「台詞がなくても伝わる」
って、アホかーーーーー!!
もしかしたら、この設定ミス、ネットニュースを駆け巡ってもおかしくないですね。
日本初のカラー映画は昭和26年
映画でも確かに、キーアイテムやビジュアルを色で表現するということは、あります。
しかし、それが可能となったのはカラー映画全盛期から。
日本でも昭和19年(1944年)にはカラー映画がやっと作られましたが、普及はずっと先でした。
※実質的な日本初のカラー映画は昭和26年(1951年)『カルメン故郷に帰る』。吉本せいの死の翌年公開です
もう、この赤いしごきのせいで脳みそ活動停止しそうです><;
あえて、突っ込んでおくと、
「男にはわからないけど、女にはわかっちゃう!」
とか、全面否定されたエセ脳科学みたいな価値観やめてくださいよ。
単に調べるのがめんどいのか。
あるいは「どうせ視聴者は深く考えんだろ」とナメているのか。
◆第5回 「男脳」「女脳」のウソはなぜ、どのように拡散するのか | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
NHKはせっかく最近、トランスジェンダー女性の生活を描いた『女子的生活』、セクシャルマイノリティとの共存や差別について考える『弟の夫』といった、社会問題や既存のジェンダーに斬り込む良作を放映しているのに。
看板である朝ドラが後ろ足で砂をひっかけるようなことして、何を考えているんですか。
ともかくこのリハーサルと妄想画面は痛々しさの極致。
イケメンである栞を露骨にチヤホヤし、間違ったガールズトークをいい歳こいたおてんちゃんたちが繰り広げ、自分たちはすごいと自画自賛。
なんでこんなもん見せられなきゃならないんだorz
いい場面でもなんでもない それがキャリアだ
風太は、てんに通天閣を買えと念押しします。
北村笑店には、伊能のもとにいたスタッフが押し寄せます。
感動的な場面にしたいようですが、私はまったくそうは思えませんでした。
この人たちは、栞が本当に困っていた時はどこで何をしていたのだろう?
北村に引っ張り挙げられたら、ノコノコ顔を出しているけど、今まではドチラに?
露骨なおてんちゃんスーパー棚ぼたタイム。
映画を作りたいなあ、と言えばスタッフというネギをしょった栞という鴨がやってくる。
そこには何の苦労もない
というか、ですよ。
伊能栞を北村笑店の映画部に引き込んだのなら、その人脈を活かして当然でしょ?
いい場面でもなんでもない。
それがキャリアっていうもんで、現代の一般的な転職組だって十分にありえる場面ですよ。
それを感動的に仕上げて、恥ずかしい><;
栞様の性格が決定的に悪い件
この後、あざとく栞の居眠りする姿を見せます。
おいしそうなお饅頭も。
本格的な物資不足はまだ先とはいえ、史実ではエンタツがあんな日記を残していたこの時代に、何の緊張感もなくスイーツをパクつく展開にあきれ果ててしまいます。
栞がいなくなったあとの伊能商会は、新世紀シネマに吸収され、国策映画作りに乗り出したそうです。
ここで、栞のモデルである小林一三の映画会社「東宝」の、1940年代ラインナップを貼っておきます。(Wikipediaより引用)
『支那の夜』
『熱砂の誓ひ』
『ハワイ・マレー沖海戦』
『加藤隼戦闘隊』
『雷撃隊出動』
ここでドヤ顔で
「こういうことになるとわかっていたよ。ぼくは間違っていなかった。好きな映画を作れてぼくは幸せだ」
という栞に、嫌悪感があふれてきます。
顔を曇らせて、
「そうか……残念だ。自由な映画作りを奪われる嫌な時代だ」
くらい言えばいいんですけど。
だって、かつての仲間もいるわけですよね?
にもかかわらず、栞の態度は、
「あいつらざまあw 俺がいないと所詮国策映画しか作れないもんね! 惨めだなあ! あいつらと違って恋愛映画を作る俺ってサイコー! 幸せww」
っていうような。
まぁ、ちょっと言い過ぎかもしれないんですけど、自画自賛的オラつきがひどいです。
一言で言えば、性格悪いだろ、と。
高橋一生さんをそんな風に仕立てて、ほんとにもうor
そもそもこういう態度って、モデルとなった人物も馬鹿にしていますね。
本作は初期から、てんの言動を通して、史実で吉本せいが行った行動を批判させるようなことをしていて、本当におかしいと思っていました。
何の苦労もないチートキャラ、メアリー・スーの分際で、実際に汗水流した人物の行動を批判するって最低じゃないですか。
【関連記事:メアリー・スー(GIGAZINE)】
外部からの批判に対して怒ってどないすんねん
ここで栞を批判する記事が入ります。
栞が暴走したから映画部潰れたという内容。その通りとしか思えませんが、おてんちゃんは「ヒドイ!」と言い出します。
またこのパターンか。
正論としか思えない批判を受けているのに、受ける側がまったく反省しない。どころか批判側に対して怒る。
本作って、こんな展開が本当に多いですね。
もしかして、本作の制作陣自身が、そんな思考で動かれると?
自分たちをチヤホヤしない、褒めない側は全員敵、的確な批評であっても知ったこっちゃない――。
その暗喩だったとしたら、もう何も言いようがない(´・ω・`)
私はすでに頭がクラクラして止まりませんが、回想シーンへ突入してしまいます。
「ぼくの作った活動写真で日本中を感動させるんだ」
「うちは日本中を笑わせます」
そうか、私たちはあのときから崇高な思いを抱いているのね、と自己陶酔。
もう、なんもいえねー!
おてんちゃんはこのあたりで通天閣を買うと決めるのですが、その動機もどうせ「キラキラ光る通天閣で感動を与えなきゃ!」みたいな話でしょう。
なんとなく、昨年末に大炎上していた本件を連想しました。
◆神戸・世界一のツリー、樹齢150年の大木を伐採して「考えて」→炎上
自分が目立ちたいだけとしか思えないのに、震災鎮魂を後付して、大炎上した案件ですね。
今日のマトメ「志あるクリエイターに学んで欲しい」
一昨日と昨日で、もう、書きたいことは書き尽くした感がありまして。
本作に対して抱えていた違和感を、登場人物を通して全部ブチまけてくれる親切設計ですから、今更付け足すこともない感じはあります。
要約すると、
「努力も嫌い、苦労も嫌い、お勉強も嫌い、反省も嫌い、批評も指摘も受け付けない。だけとチヤホヤされたい!チヤホヤされて楽しいことをしている自分が大好き! だから私のSNSにも、いっぱい“いいね!”押してね」
っていう欲求のダダ漏れですよね。
よいものを作ることじゃなくて、チヤホヤされている自分が大好き――。
おてんちゃんや栞の言動を通して、そんな主張は十分わかりました。
今日の締めくくりに、本作で描かれている、駄サイクルで回り続ける駄目クリエイターとは真逆の、志ある方のインタビューを引用させていただきます。
◆「日本は、義理チョコをやめよう」 働く女性の気持ちを掴む広告は、こうして生まれた。
メッセージを発信する時には「どうすれば共感されるか?」をいつも考えています。
大事なのは「正直さ」と「勇敢さ」なんですよね。
正直さというのは、お客さんをバカにしないで誠実に、言いたいことを言うということ。
広告って本当に「嘘」が多い。非現実的なかっこよさを演出したり、過度に誇張されることもしばしばです。ありえないロマンチックな状況で愛の告白をするバレンタイン広告を見せられてもね…。それでお客さんが釣れると思っている時点で、バカにしていますよね。
企業だって極論、人間と同じです。愛されたり、尊敬されたりするには、正直でいないと。
それから、メッセージを言い切る「勇敢さ」も大事です。
主張するにはリスクも伴う。企業が意見を表明すれば、今の時代、ソーシャルメディアなどで必ず一定数のアンチが出てきます。それを覚悟の上で、声をあげられるか。
特に本作の作り手は、
【非現実的なかっこよさを演出したり、過度に誇張されることもしばしばです。ありえないロマンチックな状況で愛の告白をするバレンタイン広告を見せられてもね…。それでお客さんが釣れると思っている時点で、バカにしていますよね。】
という部分を、百万回ぐらいノートにでも書き写して欲しいです……。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
ヤフーコメントにデタラメと入れたら、バカ呼ばわりされた。もうあそこにはこのドラマのネタは書きません。
モノクロで色に語らせるのは面白いw
おなごには意味が伝わったとして、勲章をもらった北村が「恋愛表現が素晴らしいわぁ」と評判の映画をやっているとなったら内務省とか出て来ないのでしょうか?
二夫にまみえずの覚悟もなんだったのか。
いくつになってもおなごには恋愛エピソードは必要、劇中劇ならセーフ二度おいしい!って感覚でしょうかね。
モノクロ映画の赤いタスキ、本日のツボです、面白い!〈ドラマは見ていません)