わろてんか141話あらすじ感想(3/20)高橋一生さん退場でホッとする日が来るなんて

日中戦争が泥沼化し、国際情勢も日々厳しくなってきた昭和14年(1939年)。
映画業界にも「映画法」が施行され、北村笑店でも思うような創作活動に取り組むことができない――。

そんな最中、伊能商会を追い出された栞は、北村笑店で映画作りに励み『お笑い忠臣蔵』製作に挑むものの、検閲に引っかかって頓挫してしまいます。

栞は、アメリカでカラー映画を学びため、渡米を決意。
てんはそんな栞を、北村笑店役員として送り出すことにしました。

二人の別れが近づいています。

 

ついに栞様が退場で

栞の旅立ちを迎えて、北村笑店では別れの杯が交わされます。

「祝杯や」
突然そう言い出す風太に対し、性懲りも無く検閲ジョークを飛ばす栞。
自分のせいで検閲通らなかったのになぁ……。

トキは名曲『ムーンナイト・セレナーデ』のレコードをかけます。

風太とトキ、そしててんと栞が踊り出すのですが、背景に藤吉の写真があるのがなんだかなぁ。
今更そこを気にしても虚しいだけですが、なんだかいろいろとモヤモヤしてしまいます。

栞が『あさが来た』の五代様+『おんな城主 直虎』の小野政次の劣化コピーであることは簡単に推察できるんですけど、しかし! その魅力が全然反映されてない。
それがどうにも切ないのです。

あさはあくまで夫を愛していて、五代は結局そこに踏み込みませんでした。
直虎と政次は、男女間の恋愛感情や友情、上司と部下の信頼関係も含めた、いわば「同志」といった間柄でした。

それに引き換え、てんと栞の場合はズブズブダラダラした気持ち悪い腐れ縁という感じがしてしまうのです。
しかもそんな気持ち悪い絆が、藤吉との夫婦愛(これもしょうもなかったけど)よりも上位にあるように思えて仕方ない。よって魅力が全くない。

この場面で何が素晴らしいかというと、しばらく栞を見なくて済むようになったことです。
まさか高橋一生さんが出なくなってホッとするとは思いませんでした。

 

面白いと大評判の映画 検閲入って良かったやん

『お笑い忠臣蔵』がついに公開されました。

普通は撮影風景なり、完成映像なりを見せるはずなのですが、ポスターだけ。
ホワイ? 先週は妄想で、栞のコスプレまで入れたじゃないですか。

『わろてんか』“高橋一生祭り”にファン歓喜! 調理姿に侍姿、涙目まで登場

映画というのは、
【原作・企画、資金集め、キャスティング、撮影、編集、宣伝、公開】
までを持って一つの作品となります。

そんな製作過程のうち、本作では
【脚本を練るところだけやたら詳しく、冗長なまでに、やる】
という流れなんですね。

例えば、寄席での演目も常にそっけなく流し、ナゼか万丈目や楓が脚本を書く時だけ非常に丁寧に表現する。
こういうところが、脚本家の過剰な思い入れが反映されているようで、違和感を覚えてしまいます。

脚本はもちろん大事ですけど、演者、観客あってのものでしょう。

そして、盛大にズッコケたのが、ナレーションです。
「台本を検閲で直したのに、面白いと大評判」
って、おいおい。

先週、あれだけ
「検閲で削られたら面白くなくなる!」
と大騒ぎしてましたよね?
んでも、仕上がった作品は結局面白くて好評なんでしょ?

おてんちゃんが報告婦人会に啖呵切ってまで守りたかった恋愛要素はドコ行ったんや。
こりゃあ検閲官に感謝しなければならない事態ですよ。

まぁ、これが今日の【わろ点】なら、ええセンスしてはるということで。

 

カタカナ=外来語じゃないっすよ

映画は無事に公開。
しかし、今度は「芸名を変えろ」と当局から注意が入ってしまいます。

・キース→舶来屋喜助
・アサリ→潮浅利
・キース&アサリ→喜助と浅利
・ミスリリコ→秦野凜々子
・ミス・リリコ・アンド・シロー→凜々子と四郎

ここでも凡ミス発生してるのがなんだかなぁ、と(´・ω・`)

アサリが「カタカナ」を漢字にしろ、と言われております。
もしかしたら脚本家さんの感覚だと
「カタカナって外来語だから駄目なんでしょ」
というものだったのかもしれません。

しかし、当時のカタカナは外来語だけに使ったわけではありません。
実際、リリコのモデルである「ミスワカナ」の場合は「玉松ワカナ」に改名しており、カタカナは問題視されていません。

ちょっと調べればすぐわかる表記を、修正しないでそのまま放送してしまうのはナゼなんでしょう。
本作が終わったらさっさとお蔵入りにして、さじを投げ、次に挽回しよう。
現場にそんな空気でも流れていたんじゃないか?と妄想してしまいます。

 

栞様、収容所送りの可能性も否めないのでは?

昭和16年(1941年)、太平洋戦争開戦。
昭和17年(1942年)、夏。
おてんちゃんとリリコは、栞はどうしているか話しています(啄子さんは?)。

「あの人のことや、涼しい顔しているんとちゃう」
「せやろか……」

って、んなワケないだろ。
何の期待もしていませんでしたが、ノーテンキ過ぎて腹立ってきました。

例えば以下の画像は、当時、日系人を排斥しようと訴える新聞を写したものです。

日系人排斥を訴える新聞紙面/wikipediaより引用

そして以下の動画が
BBC『「ここでも起き得る」日系人強制収容所の写真展 米シカゴで』
です。

 

日本サイドで「鬼畜米英」と叫ぶ一方、
アメリカでは「Japs not welcome anymore.(ジャップどもに居場所はない)」
と罵倒しあっていたのですね。

そんな時代に、単身渡米しておいて涼しい顔だなんて、どこまで他人事、どこまで暢気なのでしょう。

知らないんだったら触れなければいいのに。
日系人なら収容所送りってことも十分あり得る状況です。

まぁ、栞様のことですから
「現地で映画話で意気投合した友人のチャーリー君に良くしてもらってね」
とかウンタラカンタラ、簡単に済ませてしまうのかもしれません。

 

「お国のため、立派に戦ってくるんやで」とは言わせない?

亀井は、芸人2名が出征することを告げます。

出征する芸人に、てんは餞別と羊羹を渡します。
配給でろくに甘い物すら食べていない――それを実写の描写ではなく、台詞だけで描くあたりが、実に本作らしい手抜きです。バブリーパーティは大好きでも、戦中下の生活難には興味ないのでしょう。そういう意味では一貫性あるなぁ。

それにしてもおてんちゃんの台詞が……。
「立派につとめ果たして、高座に帰って来なさい」
ダメやん。慰問隊と阿久津少佐、川西検閲官とのやりとりでは「無事戻って来るように言うのは駄目」とあったのに。全然わかっていないのです。

現代目線のヒロインに、
「お国のため、立派に戦ってくるんやで」
とは言わせたくないのでしょう。

プライベートな場所だから、何を言っても大丈夫と思っているのでしょうか。
戦時中の言論統制、密告、憲兵、もろもろを甘く見過ぎです。

 

夜分に親子三人で踊っていたら普通に迷惑やろ

場面は川崎に変わり。
相変わらずシャンプーしたてのような髪型の隼也です。

イケメン男性を坊主頭にするなんて嫌なのかもしれませんが、2013年『ごちそうさん』でも、菅田将輝さんはじめ、若い男性役は坊主。女性も前髪チョロリとしていないひっつめ髪やおさげですよ。
いちいち名前をあげませんが、むしろそれが朝ドラでも当たり前です。
本作は、何を甘えているのでしょうか。

この後、隼也とつばきと藤一郎は『二人でお茶を』をハミングしながら、夜だというのに踊り出します。

そこへご近所さんが怒鳴り込んで来ます。
「アメリカじゃなくてドイツのワーグナー」と誤魔化す機転で、【ナイス、隼也!】とか【戦時中って嫌だよねぇ】とか言わせたいのですかね。

しかし、突っ込ませてください。
【長屋のようなところで、夜分に親子三人、ハミングしながらウキウキと踊ったら、普通に近所迷惑やろ!】

※そういえば冒頭でおトキちゃんが流した名曲『ムーンライト・セレナーデ』は1939年作曲とのことですが(wiki)、同年、日本でレコードを入手できたんですかね

 

万丈目はんが高齢なら、亀井はどうやねん

北村では『笑ひの総進撃』といった国策演目を演じています。
このあたりも、実に見苦しいです。

まっとうな作品なら、自分たちの愛するものが、じわじわと戦争に蝕まれる様を描くわけです。
それが、検閲への抵抗です。

そうではなく、本作における「検閲への抵抗」は、削ったところで特に影響のない陳腐な恋愛描写を守るための攻防、脚本家の言い訳にされました。

そして一気に年代ジャンプして、史実の整合性をつけてしまったため、
【主人公たちは、陳腐な恋愛描写を守る為には本気になりましたが、国策演目にはコロッと屈しました】
という、最低の、ショボい印象を与えてしまったわけです。

芸人が出征していく中、風太はボヤいています。
万丈目は必死で仕事をこなしていますが、過労気味です。

万丈目は頑張りすぎて倒れます。
それでも書き続けようとするのですが、歌子が訴えます。
「うちらも、もうトシや。休ませたって」

万丈目と歌子はいい味を出していますが、退場させたい意図が見え見えすぎて。
栞とのダンスなんか全部削って、こちらの描写をもっと丁寧にしてくれればいいのに。

それと、これだけは言わせていただきたい。
【戦時中で減ったとはいえ、300人抱えた大所帯の台本を実質ほぼ一人で書かせたら、過労でぶっ倒れるのは当然やろ、このひとでなしーーー!】

そしてもうひとつビックリしたのが、
「うちらはもうトシや!」
という台詞です。

本作の登場人物って、歳をとる設定でしたっけ?
それならば亀井さん、ヤバすぎませんか?

 

今日のマトメ「神視点からの太平洋戦争」

今更突っ込むのもばかばかしくて、ゲンナリしますが……。
北村関係者の皆さん、涙の名台詞集に注目してみたいと思います。

おてんちゃん「立派につとめ果たして、高座に帰って来なさい」
隼也「アメリカといつまで戦うんや」
万丈目「わてが台本を書いた芸人は、みーんな兵隊になる。なんでですやろ」
風太「いくらのお国のため言うても、こないに芸人取られたらかなわんわ」
風太「戦争のせいや! 戦争が終わったら、また書いてくれ」

全員アウト!
憲兵さんに密告されたら、ボコボコのヘタすりゃ死のルートです(動画は3:50からご覧ください)。

 

こうした発言の何が問題か?って。

・憲兵に聞かれたらアウト
・人が出征して、犠牲が出ているのに他人事に聞こえる(万丈目はまだよいとしても)
・戦争が終わることを予知している「神視点」になっている(風太)

一番ヒドいのは風太の台詞です。

「戦争が終わったら」
という仮定の表現はまずい。
「終わったら」ではなく「戦争に勝ったら」であればアリでしょう。

何を細かいことを……と思われるかもしれませんが、作り手から見れば非常に重要なことだと思うのです。

というのも、風太のこの台詞は
「あと数年で戦争が終わって(負けても)、自分たちは生き延びているはず」
という未来人バイアスがバリバリにかかっているからです。

当時の人にしてみれば
「いつ戦争が終わるのか」
なんて、まるで予測もつかない日々なわけで。
絶対に言わせちゃいけない文言でした。

前述した通り、恋愛VS検閲にかまけて、北村関係者の思想がおてんちゃん以下空っぽだとわかったことも、マイナスの影響を感じさせます(わろてんか138話あらすじ感想(3/16))。

慰問隊の時は、兵士を思って涙ぐんでいた風太、感極まった様子だった芸人たち。
しかし、今日の描写を見ると、自分たちの足下に火が付かないと気がつかない、鈍感で自分勝手な人たちに見えてしまいます。

今さら即席の反戦的な台詞を入れて来ても、感動どころかしらけてしまいます。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

5 Comments

匿名

カタカナと外来語の区別もつかないのか、脚本家は。小学校出てるんですかね。

匿名

『笑ひの總攻撃』の看板の横に『人気落語家競演会』というポスターがあったのですが、
よく見たら「喜楽亭文鳥」「月の井団吾」と。
まだ生きてるんでしょうか!? 特に文鳥師匠100歳近いんじゃ???
それとも襲名した2代目3代目???

匿名

「しかし、当時のカタカナは外来語だけに使ったわけではありません。」
そうですよね。当時の国民学校の教科書なんて全てカタカナ表記ですし。
“サイタ サイタ サクラガサイタ” “オカアサン イッテマヰリマス” など。
“ミス”や“アンド”がダメなのは分かるけど、“アサリ”はれっきとした日本語です。
キースは本名を洋風にもじっているからアウトかもしれませんが、リリコもシローも日本人の名前でしょう。

pippi

風太(トキも?)は未来からタイムスリップしてやって来た、で決定。
証拠は「ムーンライトセレナーデ」のレコード。この時点で手に入れるのは無理です。
単純なタイプスリップではなく、何度でもやり直すタイムリープです。
おてんちゃんを後世に名を残す立派な女太閤にするのが目的です。

栞様の好きそうな、1930年代のたわいないロマンティックコメディの定番、ガーシュインやコール・ポーターにしておけば未来人とばれなかったものを・・・・。

「二人でお茶を」は戦前の作曲ですが、渡米経験のない一般的な日本人には知られてはいなかったでしょう。隼也とつばきなら、ということでセーフ。
戦後、アメリカのポピュラー音楽が日本でも流行るようになり、その頃の代表的な曲でもあります。
今日、曲のタイトルが大きくテロップされましたから、ドラマの戦後シーンでもう一度使われると予想。平和になった日本で、つばきさんがこれを聴きながら涙を流すところまで見えます。むしろ、そういった使われ方をしないと、この曲をチョイスした意味がないと思います。

時代物のドラマや映画で使われる音楽や、街中シーンで流れるBGMは、時代の雰囲気を伝える小道具でもあるはず。
ムーンライトセレナーデはアウトですね。SFミステリーならありですが。(笑)

匿名

本当に怖いのは、「憲兵」というより「特別高等警察」即ち「特高」ですね。今までの各回のレビュー全てにおいてです。
もちろん憲兵も実に怖いのですが、日常のあちこちに網を張って監視していたのは特高のほう。特高に比べると憲兵はまだユルユルな面がありました。
小林多喜二を拷問して殺害したのも特高です。

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