わろてんか142話あらすじ感想(3/21)隼也の徴兵検査はいつドコで?

太平洋戦争開戦の翌年、昭和17年(1942年)。

北村笑店からも芸人が出征し、一人、また一人と減ってゆきます。創業時から在籍していた万丈目夫妻も、ついに休養することになりました。

ますます悪化する情勢の中、てんたちの顔から笑顔は消えてしまうのでしょうか。

 

買ったとオモたら即座に燃えた

昭和18年(1943年)。
なんと! いきなり通天閣が炎上しました。

1920-1943年の通天閣/Wikipediaより引用

この炎上は史実通りではあるのですが、時系列をいじったばっかりに【買ったと思ったら即座に燃えた】という残念な展開です。

次の場面は昭和19年(1844年)。
検閲(と見せかけてコイバナを巡る攻防)は長かったのに、クリックすれば次の場面に移るかの如く、サクサクと進んでゆきます。

府庁の役人から食料買い出しを咎められるかと身構える北村関係者に、役人は建物疎開をすると告げます。

思い出の寄席が壊されてしまう――その時おてんちゃんは!?

ザンネン、いつもの地蔵顔でした。嗚呼orz

インド映画『バーフバリ』のシヴァガミ様レベルの顔芸を、微塵も期待してはいないんですけど、さすがにどうなのよこれって。

※国母シヴァガミ様:動揺すると目をカッ!!と倍くらいの大きさに見開く演技がインパクトを与える登場人物(10秒前後から出てきます)

 

「勲章もらっているし、慰問隊も派遣しているし」

キースとアサリ、シロー、背後のモブ芸人の衣装が未だにタキシードやスーツです。
そこはクレーム入らないんでしょうか。

ここで、芸人たちが動揺し始めます。
「クビになるんやろか?」

「そんなことはありえへん」
と、即答するおてんちゃんですが、貫禄がないなぁ。こればっかりは仕方ないですね。

ここでトキは、
「社長は勲章もらっているし、慰問隊も派遣しているし」
と発言するのですが、これが本作らしさかもしれません。

社長の人格面での頼もしさではなくて、権威に頼っているような。細かいところで、いろいろと残念な部分が垣間見えます。

検閲には反抗的な態度を示すくせに、自分が国の権威を貰えるとなったら途端にヘーコラするって一番ダサくありません?
パンクバンドで「アナーキー!」とか叫んでいた人が、公務員試験に受かって大喜び、みたいな。

 

隼也の長屋も建物疎開

てんは建物疎開を回避しようとします。
が、うまくいくわけもありません。

一方、川崎では、シャンプーしたてでサラサラヘアーの隼也。
国民服にサラサラヘアーという無茶苦茶な組み合わせに、誰も何も言わないんでしょうか。

昨日も突っ込みましたが、似合わなさすぎるでしょう。

国民服/Wikipediaより引用

要するに手抜きなんでしょうけど、演じる役者さんまで、覚悟が足りないように見えてしまう。

茶髪やパーマも何かと批判されがちですが、地毛の色が薄い人やパーマの人もいますから、私はそこまで厳しくなる必要はないと思います。
しかし、隼也はどこからどう見ても駄目。

どうやら隼也の長屋も建物疎開の対象となるようです。
が、隼也が一瞬抵抗してしまい、「この非国民めが!」と罵倒されてしまいました。

 

思った事を誰もがペラペラ喋る

仏壇前で、藤吉の遺影に頭を下げる風太。
結局、疎開は覆りません。おてんちゃんはやはり地蔵顔をして後ろにいるのですが。

いっそのこと、あのアイテムで藤吉の亡霊を呼んだらええやん。
と、思わず考えてしまうから、「鳥の鈴」の亡霊召喚システムは罪作りなんだよなぁ。

もう、仏壇前に誰かが座るだけでギャグになってしまうのです。

もしかして本作の「一日一回、必ず笑わせます!」ってこーゆーこと?

おてんちゃんは「寄席がのうなっても、北村笑店は記憶に残る」として、疎開を決意します。

亀井は、芸人の札を返しながら、
「これは出征、これは戦死、これは疎開……」
と、悲しげにつぶやく。

「戦死しなければ、スターになれるはずやった」
「ほんま悔しい」
思った事をそのまんま口にする、風太、おてんちゃん。

戦時中でなければただの陳腐な演出ですが、壁に耳あり障子に目あり状態の戦時中だと、
【ガードがゆるゆるのアホ】
にしか見えないので困ります。

本作の短所【思った事を誰もがペラペラと喋ることでしか表現できない】という弊害が露になっているんですね。

もうすぐ再放送の『カーネーション』では、物語の骨格である服飾を通して、戦後晴れやかになった人々の心を描き出します。
『マッサン』では、主演二人が言葉を口に出さない演技表現で、ドラマを表現します。

是非、本作とのレベルの差を味わってください。

 

どこが芸人を大切にしてるのよ

寄席の後片付けをする芸人たちは、「文鳥」や「団吾」の名前が入ったものを見かけてしんみり。
たぶん彼らは亡くなったのでしょう。
本作は、藤吉を除いた人物の死に向き合う気が皆無なため、フェードアウト確定でよろしそうですね。

これのどこが【芸人を大切にしてる】のよ。
ほんま穴だらけの脚本やなぁ(´・ω・`)

楓は台本を引っ張り出してきて、自分が預かるとしんみり。
おてんちゃんとリリコはまた「戦争が終わったら」とヌルくて危険な言動をしております。

3人んとも物資が欠乏する大変な戦時下を生きています。

リリコはストラップ付きのヒールに色鮮やかなスカート。
おてんちゃんはつるつるつやつやの顔。
かなり余裕があるように見えますが、ドコで苦労しているんですかね。

 

全部の寄席が閉鎖になるのかと思ったら

ここで、しつこいほどに【盛り上げたい場面用BGM】が流れます。
過剰なほどに大きな音で鳴らしながら、あの額を外すおてんちゃん。

『始末・才覚・算用』
『人は財』

この家訓を見て、やっとおてんちゃんもお義母様の名前を出します。
アメリカと開戦しても栞のことしか心配してなかったので、啄子のことはスッカリ忘れているのかと思いました。

かなりの高齢であるはずの啄子さん。
存命であれば、強制収容所で辛い日々を送っていることでしょう。

「笑いの灯は、決して絶やさない……」
そう誓うおてんちゃん。

こうして南地風鳥亭は閉鎖、取り壊し。
他の寄席も終焉を迎えるのでした。

と、ナレーションしたあとに、すぐ残りは天満と他4軒とつなげるのはどうかと。
てっきり全部閉鎖なのかと思ったじゃん!

そんな中、おてんちゃんの元に、隼也の赤紙(召集令状)が来ました。

いやぁ、いくら駆け落ちしたからって、戸籍も置きっぱなしだったんですね。
変だなぁ。結婚や藤一郎誕生の手続きはどうしたのでしょう。

つーかですね。

居住先で徴兵検査を受けて合格しないと赤紙届きませんよ!

一体どういうこっちゃ?
なんだこの凡ミス?

要するに、赤紙を受け取る母親という画が欲しかっただけでは……(´・ω・`)

 

今日のまとめ「建物疎開はドコから持ってきた?」

検閲をダシにしたコイバナ擁護にはフルスロットル。
しかし、吉本の歴史にも戦争の歴史にも全く関心がない、それが本作の脚本家さんです。

周囲のスタッフは知ってか知らずか、チェック機能も完全停止。

今日は建物疎開が描かれましたが、実際に吉本興業の寄席が立ちゆかなくなったのは、昭和19年(1944年)の「決戦非常措置要綱」のせいです。
要するに、この非常時に遊んだり、自由にしたりするなということでした。

その中に、「高級享楽の停止」がありまして。
それまでは国策落語やら何やらできていたのですが、一切禁止となるわけです。

ですから、本作で芸人たちが「クビになるんやろか?」と言っているのはおかしくて。
北村が寄席を続けようが、演じたら捕まるような状態です。
どこに行こうが、芸人は芸を見せて金をもらうことはできなくなっていたわけです。

「もうあかん! 芸人はおまんまの食い上げや!」
が、正しいのです。

おてんちゃんは笑いの灯りは絶やさない、とかなんだかんだ言いますが、実質的に国の方針で消滅。

吉本も事業継続ができなくなって解散し、どうしても残りたがった花菱アチャコ(アサリのモデル)しか、残りませんでした。

その後、閉鎖された寄席はほとんど焼け落ちています。
つまり、ドラマのように疎開せず、建物は残っていたのです。

しかも吉本は、戦後もすぐに笑いを復活させてはおらず、焼け跡からの上方落語復活にも絡んでいないのです。
むしろ戦後しばらくは、米軍相手にキャバレーを展開しております。

では、ナゼ建物疎開なのか?

建物疎開は、大阪NHK制作の2013年『ごちそうさん』で描かれました。

この作品では重要な意味を持っており、
【空襲での被害拡大について、嘘ではなく真実を述べたヒロインの夫が、逮捕されて満州に送られてしまう】
というプロットでした。

史実の発掘に手腕を発揮する脚本家の森下氏は、建物疎開にからめて当時の政策の不条理さを描いているのです。

本作は、そういう作品を臆面もなく真似したんでしょうね。

娯楽取り締まりの法令なんて調べる気もないのか。
それとも歴史をねじ曲げてでも、おてんちゃんに「笑いの灯りは絶やしません」と言わせたかったのか。

今後、本作は疎開する展開になりますが、今度は『べっぴんさん』と同じですね。
過去の朝ドラから臆面もなくツギハギするあたり、本当に「戦争を描くのが嫌でめんどくさくて調べるのもいや」というボヤキが聞こえて来そうです。

NHKでこんな放送してよく炎上しないもんだなぁ。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

3 Comments

匿名

建物疎開ごときで非国民呼ばわりされるはずもありません。また、ご指摘のように、徴兵検査で甲種合格(この時期だとぼちぼち乙種合格も)でなければ赤紙はもらいません。さらに、赤紙の印刷がきれいすぎです。ほんとにデタラメだらけですね。

匿名

イヤイヤ、昨日の放送で寄席の入口のポスターに「文鳥」「団吾」の名前がありましたよ。
だからまだ生きてるか、もし死んでいたとしても昨日から今日にかけてワープした間でしょう。
つい最近まで活躍してたんですねー。いったい何歳だ。
戦争が終わって会社再建時に何食わぬ顔でいたりしても驚かないですね。
啄子さんも栞と一緒に帰って来たりして。歳も取らずに。

匿名

大阪人としては、通天閣、もっと大事に取り扱ってほしかった。
おてんちゃん、急に老けましたね。一瞬、もう戦後にワープしたかと思いました。

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