ワンレンボディコンのお姉さんたちがディスコで踊り狂っていた、1990年。
岐阜出身の楡野鈴愛は、人気少女漫画家・秋風羽織に「メシアシ=食事準備担当のアシスタント」として雇われました。
羽織は鈴愛にペンを握らせるつもりはなく、五平餅を作らせたいだけだったということが判明。
鈴愛は話が違うと激怒します。
一方、同時期に上京していた鈴愛の幼なじみ・萩尾律は、モテモテの大学生・朝井正人と意気投合していました。
もくじ
窓から捨てられたら、さすがにリカバリは無理だ!
「原稿を捨てる!」
腕を窓からつきだし、そう脅す鈴愛。
菱本は野良猫を呼び寄せように、なだめようとします。
落ちたら車に踏まれてしまい、流石にリカバリできないだろうと想像する秋風羽織。
「散英社の前でビラをばらまいてやる! 未成年なのに秋風羽織に騙された、セクハラされた!」
昨今何かと話題のセクハラ。
問題として認識されるようになったのは、ちょうどこのころからでした。
「セクハラなんてしていないぞ!」
「嘘には嘘で対抗してやる!」
「短期は損気だよ。原稿は、神様のもの」
ボクテは軽やかにそういうと、鈴愛から原稿をひょいっと取り戻すのでした。
田舎娘を潤滑油のように便利使いしようとしていた
「炭水化物要員にとはなんだ!」
原稿を取り戻されても、詰め寄る鈴愛。
実は五平餅は二の次なんだ、と羽織は種明かしをします。
羽織の主催する「秋風塾」は、全国から8名(羽織は5名と勘違いしていたものの菱本が訂正)の優秀な若者を集めました。
しかし、エッジィな感性のためぶつかり合い、ボクテとユーコしか残らなかったのです。
卵がぶつかりあって割れてしまい、雛にかえらないと。
そこで岐阜の山奥から、『アルプスの少女ハイジ』のような、鈴愛を入れて潤滑油にしようと。
才能ある若者が高級和牛ならば、きみはパン粉。
ハンバーグならつなぎ、いずれにせよ炭水化物だ、と、トンデモナイことを言われる鈴愛でした。
それが嫌なら岐阜県に帰れ、と言われるものの、鈴愛は絶対に帰らないと決意を新たにします。
漫画家になりたい、初めて読んだときから秋風羽織の世界にやられている、胸のときめきはもう始まっている……と、羽織の代表作『いつもポケットにショパン』麻子のモノローグを引用しながら熱弁を振るう鈴愛。
「今度は情に訴える気か」
冷淡な羽織です。
「漫画家は大変過酷な世界だ。一歩も土を踏めない日がずっと続く。お前にその覚悟はあるのか?」
「ある!」
「そんなにいうなら仕事をやろう、ここの背景の【かけあみ】を1週間以内に描け! メシアシもやるんだぞ。できなければ岐阜の山に帰れ! 猿山のボスも待っているだろう」
おっとぉいきなりきましたね!
羽織は今日の仕事はここまで、あとは飲みにいくと宣言。ユーコと菱本、ボクテまで去ってゆきます。
「ただの人のいいかわいいゲイだと思っていない?」
「あみかけ?」
「かけあみです」
呆然とする鈴愛はボクテを引き止めます。
「かけあみの練習につきあってくれ!」
「ちょっと、ぼくのことただの人のいいかわいいゲイだと思っていない?」
そう返すボクテ。
これは結構鋭い台詞かも。
特に海外の作品では、ゲイはおしゃれで、ヒロインを性的に見て来ない、よい相談相手として重宝されるキャラにされがちです。
ただ、それも便利でステレオタイプなんじゃないかと、最近は言われておりまして。
「ハイリスクなことを頼んでいるってわかってるの?」
「ハイリスク、ハイリターンだな! なんでもする!」
「ぼくって、見かけによらず大食いでしょ」
そう言ってボクテが見せて来たのは、ホテルのスイーツバイキングのチラシ。
男一人では行きづらいから、つきあってね、と持ちかけます。
「そんなことか」
安堵する鈴愛です。
オネエさんのタイツまでかけあみに見え
こうして、かけあみ練習が始まります。
結構めんどくさいんですよね。
スクリーントーンでの代用が増え、デジタル作画全盛期の昨今、あまり見かけなくなってきた気がします。
1から4までのかけあみ、縄かけ。
練習に夢中になるあまり、お姉さんのあみタイツまでかけあみに見えて、思わず観察してしまう鈴愛。
そんな鈴愛に菱本はちゃんと寝ているのかと聞きます。
「一応、2時間は寝てます!」
ナポレオンか、野口英世かよ!
というか、若いっていいですね。オールナイトもできるのが若さの特権ってやつですよ。
犬の肖像画を見ながら、先生も犬には愛情を注ぐんですね、とつぶやく鈴愛。
菱本は、本当は秋風も犬が飼いたいのに、死ぬのが怖くて飼えない、しゃべらないから好きなんだ、唯一の友達なんだ、と説明します。
そこで鈴愛は、亀のフランソワしか友達がいない律のことを、100万年ぶりくらいに(彼女の感覚ではそうなのでしょう)思い出します。
そういや彼はどうしているんだ……?
喫茶「ともしび」を思い出させるレトロなお店へ
律は、隣人の、今風にいえば、ゆるふわイケメンの正人くんと意気投合して、友達となっておりまして。
この律の大学デビュー感がねえ〜。
京都でブッチャーとつるんだらこういう感じにならないだろうな。
美少年で文武両道。それでいて亀と「梟会」でつるんでばかりだった律。
自分の可能性にある意味気づいていたなかったのかもしれません。
そのタガが外れたらまずい、素朴な岐阜の若者であってくれと和子さんは思っていた、と。
そんな律が、山手線にビビったなんて田舎者っぽいことを喋れるのも、相手が北海道出身の正人だからこそ。
モテて青春エンジョイしそうな二人が、軽いノリで話しています。
「東京なれねえ〜っ!」
本音トークですね。
二人はそのまま正人が気に入ったという、ナポリタンのお店に行きます。
そこはてっきりバブリートレンディなイタ飯屋かと思いきや、あの「ともしび」を連想させるレトロな喫茶店でした。
当時は、都内にも、特に学生街周辺にはまだ結構残っていたんですよね。
懐かしがる律。
とはいえ、中はおしゃれな店でした。
お好み焼きも出していません。
席に座る二人の背後では、構想を練っている秋風羽織の姿が……。
今日のマトメ「タメ口で渡り合っても程よい感じ」
五平餅要員と見せかけて、つなぎという結構ひどい役割だった鈴愛。
楡野鈴愛と秋風羽織の会話がかなり面白いのです。
アドリブも入っているんですかね。
神戸牛と松坂牛に対するパン粉とか、比喩が面白いんですよね。
周囲から敬語になっていないと言われても、ガンガンとそのまま岐阜弁のタメ口で迫る鈴愛もいいと思います。
日本語の性質上、女性的な言葉遣いは控えめになりがち。
鈴愛は興奮すると女性的な言い回しを一切しなくなるので、強気な性格が出ていると思います。
それでいながら演じる永野芽郁さんは天然ぽさがあるので、バランスが取れています。
気の強そうな女優さんが同じ言い回しをしたらかなりきつく感じてしまいます。
女優さんの個性を生かした脚本と演出がなされています。
鈴愛は冷静になると結構ひどい言動をしているし、されているのですが、それでもギャグっぽくまとめているのは、このへんがちゃんとしているからですね。
噛み合っていないとただのいじめに見えてしまいます。
そういうバランスをうまくとっている印象。
過去の朝ドラと似たような展開とみせかけて、ちょっとづついい感じでひねっていると言いましょうか。
そしてこれまた気になるのが、チャラ方面に引きずられそうな律です。
モテキャラに開眼して黒歴史を爆走しそうでヒヤヒヤ。たぶん一度は痛い目にあうはずです。
聡明な美少年から愚かなイキリ大学デビューチャラ男になってしまうのでしょうか。
ボクテ、ユーコ、正人ら新キャラの個性も光って来ました。
東京編も楽しいですね。
【編集からの補足】
当時は「インカレ系サークル」というのが流行ってて、一つの大学に収まらず、複数の大学が集ってイベントなどをやってました。
今で言えばイベサー(イベント系サークル)ですね。
各校の遊び人が集ってパーティーなどを開き、そりゃもう実態はヒドイもので。その極めつけが後に事件を起こした『スーフリ(スーパーフリー)』ですね。
律の時代より少し後ですし、本人の性格からどっぷり浸かることもないと思いますが。
それと当時は、学生運動の名残でそういった団体にスカウトする人々や、あるいは宗教団体が仮面をかぶって勧誘活動するなど、サークルは魑魅魍魎な一面もありまして。
友達ができない大学生の受け皿になりがちでした。
朝ドラで、そこまで突っ込むことはないにせよ、正人と打ち解けた律は大丈夫かな……。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
>「炭水化物容易にとはなんだ!」
私は見ていないのでわかりませんが、炭水化物要員(よういん)かと思いました。
よくよく見たら、コメント欄でビーチボーイ 様が五平餅要員か何かの名目で…と書かれていたのですね。
同じことを指摘するようで大変申し訳ありませんが、どこかにrのままだった箇所があったな…ちゃんとコメントしたっけ?なぁんて思いました。
あ、ココでした。
>菱本は本当は犬が飼いたいのに、死ぬのが怖くて飼えない、しゃべらないかr好きなんだ、唯一の友達なんだ、と説明します。
もし、もしもですよーorz orz
五平餅要員か何かの名目で校正係を雇われ るようなお話がありましたら、ワタクシ立候補します。笑って下さいませ。(わろてんか)
それから睡眠は大切です。御自愛ください。
>ビーチボーイ様
いつもご意見ならびにご指摘ありがとうございます!
編集サイドでいったんリライト入れておりますが、
急いでいるためどうしても見落としが多くなってしまいまして。
今後も同様のミスが起きると思いますが
今後もご愛顧よろしくお願いしますm(_ _)m
さてドラマ内容ですが、
優しいおじさまと思われていた羽織センセイが前週土曜のラストシーンで突如残忍な牙をむき、(でもヒロイン鈴愛も負けじと即座に過激アクションで対抗し)高齢者や主婦層の視聴者の目を丸くさせて週越えになったわけですが、
行動が予測不能な奇人羽織も、週明けのセリフはとても良かった。「漫画家は過酷な仕事なのだ。何日も空を見ず、土を踏むことなく描き続けなければならない」非常に厳しいけれどもやはり一流のクリエイターだけが口に出来る、芯の通った言葉だと誰もが納得したでしょう。このあたりのバランスの取り方や緩急自在な展開の仕方が、この脚本家、本当に上手いと思います。やはり北村笑店の大将や御寮さんの支離滅裂なお説教とは比較にもならない。
今週も面白くなりそうです!!
武者殿、ちょっと入力ミス目立ちますよ。「一歩も土を」が一歩持つ地をだったり、からの「ら」がrのままだったり。
もしかして2時間しか寝てないんじゃないですか。羽織の真似ですか?
五平餅要員か何かの名目で校正係を雇われたらいかがでしょう 笑