半分、青い。28話あらすじ感想(5/3)夢を見れるだけでも贅沢じゃないか

岐阜県東美濃に暮らす、マイペースな高校三年生・楡野鈴愛。
彼女は正念場を迎えていました。

憧れの人気漫画家・秋風羽織から、弟子として「秋風塾」に入らないかと誘われたのです。
アシスタントとして働きながら、デビューを目指せるよい話です。

ところが母の晴は大反対。左耳が聞こえない鈴愛を心配しているのです。

 

競争の世界ではない それは夢の種なのだ

漫画家になる!
そう宣言する鈴愛。

心配を隠せない晴。
漫画家志願者の競争で勝ち抜けるのか。

強く迫る母親に対し、鈴愛は言い切ります。
「漫画は競争の世界やない、夢の世界や! 私は、夢の種を手に入れたんや!」

一方で、菱本から報告を受ける秋風羽織は、食堂だから美味いのか、と五平餅に納得しています。

「この味は本物です」
と、ホメる割には五平餅の名前をど忘れする羽織。

コンサートホールの音響について語り出し、菱本が遮ります。

「五平餅でなくて、楡野鈴愛。本物なんですか?」
「どうでしょうねぇ……」
奥深いんだか、何も考えていないのか、わかりません。

菱本は、コワモテの母親が無言だった、どうなるのかと懸念をあらわします。

「面白いことになりますよ」
そう不敵な表情を見せる羽織です。

 

このバカチンがキタ━━(゚∀゚)━━!!

萩尾家では、和子が鈴愛の漫画を読んで噴き出しています。

「スケッチブックに鉛筆で描いていることはびっくりしたけど、おもしろい! 才能あるし、勇気もあるわ」
和子はそう褒めながら、この町から上京するような女の子なんていない、と鈴愛の意志を尊重するような態度です。

彼女の横に座る晴は、それでも不安だと言います。
鈴愛は中学時代、自転車に乗っていて左側から来る自動車の音が聞こえず、事故にあったことがあるのです。

そういえば鈴愛は、こばやんが自転車の二人乗りを勧めた時も断りましたし、自転車ではなくバス通学でした。

和子や律をはじめ皆が鈴愛の左耳についてわかっているこの町は、やさしいところ。
そんなところを離れてどうやって生きていくのか?

そう不安を抱える晴に、和子はまた金八みたいになったらごめんなさいね、と断ります。
「このバカチンがぁ~」

そう前置きをしておどけてから、和子は続けます。
「子供には、SOSを出したときしか立ち入っちゃいけんのかなって。もう大人になってまった。この前まで、子供やったのに」
そう寂しげに言います。

親は立ち止まってばかりなのに、子供は進んで行く。そうナレーションが語ります。

 

男だらけの家族会議で仙吉バツグンにいいこと言う

「ともしび」では、仙吉、宇太郎、草太の楡野家男性陣が家族会議中です。

まず仙吉は賛成しました。
「この歳になると先がわかる。わからんということはよいことだ。夢を見る、それだけでも贅沢なことだ。たとえかなわなくとも」

なかなかいいことを言いますし、若い感覚の持ち主だと思います。
嫁に行けなくなるとか、そういうことは言い出しません。

こういう若くて物分りのいいダンディなおじいちゃん役に、中村雅俊さんはぴったりですね。

意見を求められた草太は、「なら語るよ」とクリームソーダを飲みます。
彼は個性の強い姉に押されて、楡野家では自己主張しないおとなしめの良い子なんだとか。

「行くべきだよ! あの秋風羽織が住むところも食べるものも用意して、デビューまで面倒見てくれるなんて大チャンスだよ。宝くじが当たったようなものだよ!」

宇太郎は、わからんと一言。
そこへ、お好み焼きを持ってきたまさこが、こう言います。

「これが宝くじなら自分で引いたんだよ。鈴愛ちゃんはずっと電話していた。手が震えていた。緊張したんだろうね」

これも運命かな……。家の中で話をしていたら、こうはなりませんでしたよね。
まさこから聞いた健気な話に、皆心を動かされるのでは。

 

どんな説教よりも母の涙は心に刺さる

晴は、鈴愛が作ったゾートロープ(第2週)を見つめています。

左耳失聴という障害を、小人が踊っていると表現した鈴愛。そんな幼いころのことを思い出したのでした。
そこへ入ってきた宇太郎に、晴は思いを打ち明けます。

就職試験に落ちるとわかっていても、左耳について書いていた鈴愛。

「そんなこと私にはできん、負けたと思った。鈴愛なんて名前をつけたから、飛んでいってしまう」
「そんな飛行機じゃあるまいし」
宇太郎に慰められる晴……。
こうして、やっと家族全員が賛成になりました。

お茶の間家族会議でそう聞いた鈴愛は、大ハシャギ。
「農協には、一緒にお詫びに行くからね」
晴はそう鈴愛に言います。ちなみに仙吉は、すでに話をしているそうです。

「じゃあ律に電話していい?」
「秋風先生でなくて律くんなんだ」
そうからかう草太です。

「いや、秋風先生は逃げたりしないし」
「律くんだって逃げないよ」
「うるせえっ!」
微笑ましい姉弟のじゃれあいですね。

ここで晴は涙をこぼします。
「鈴愛は楽しいことばっかりでいいね。お母ちゃんは寂しいことばっかり。あんたは18だけど、お母ちゃんの中には、3つのあんたも、5つのあんたも、13才のあんたも全部いる。まだいる。大人やと言われても……」

どんなお説教よりも、母の涙が心に突き刺さる鈴愛でした。

 

今日のマトメ「負けたと思う複雑な感情に涙を誘われ」

もうすぐ母の日というタイミングですが、それにぴったりな母心を描いた週になりそうです。

前作『わろてんか』で、ヒロイン夫妻の夢を阻む最大の難関として出てきた、義母の姿が思い浮かびました。最大の難関というより、ただ難癖つける意地悪おばちゃんでしたね。

現在、再放送中の『マッサン』も全体的によい出来とはいえ、主人公の母だけは難癖と差別感情で立ちはだかる強情な女性でした。

本作とプロット的に共通点がある『まれ』のヒロイン母は、娘を思うようで束縛するタイプで、これまたどうしたものかと。

上記のような作品は、いくら人情だのなんだの言われても、記号的なただの壁で何も心に響かないものです。

その点、本作は、晴の切ない親心の描写に時間が割かれていて、よかったと思うのです。

いつまでも子供だと思っていた鈴愛の成長を感じて、負けたと思いながらも、心の中にはいつまでも小さな子供がいる。
そういう複雑な感情が台詞にこもっていて、思わずホロリとした視聴者もおられるのでは。

あとよかったのが、クリエイターとしてのライトサイド、明るい部分が垣間見えたところです。

競争ではなくて夢の世界という鈴愛。
叶わなくとも夢を見る時間こそ贅沢と語る仙吉。
脚本家さんの、創造への綺麗な思いがよく出ていたと思います。

現実はそんな綺麗事だけじゃないことくらい、脚本家さんもよくわかっているはずです。
それでも原点回帰、初心に戻ってものづくりって楽しいと宣言するような、そういう台詞は気持ちがよかったです。

前作の『わろてんか』では、ウダウダした作り手側の言い訳のような、
「私の書いたコイバナの何が悪いっていうのよ」
という開き直りにげんなりしたので、なんだか浄化された気分です。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

3 Comments

みみみ

今週の半分、青いは毎回涙が出ます。
親の心 子供の心 とても描写が繊細で思わず涙が出てしまいます。毎日楽しみです。

ヒグタツ

「まれ」には、ついていけなかったですが。
今回は行けそうな予感。
やっぱり朝には前向きなお話が。

しおしお改め、七歳上

3才のすずめも、5才のすずめも、13才のすずめも胸のうちにある、の母心には涙、涙でしたが、子供としては、たまらんのですわ。胸が痛いね。

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