アイルトン・セナが大人気だった、1990年(平成2年)の東京。
岐阜県から上京した楡野鈴愛は、マシュマロみたいでやさしく掴みどころのない朝井正人相手に大失恋をしました。
そしてその正人は、萩尾律に「鈴愛が好きなはずだ」と告げるのです。
伊藤清と交際し始めたばかりの律は動揺しますが……。
【58話の視聴率は21.3%でした】
もくじ
「律はやっぱり鈴愛ちゃんなんでしょ」
律の背中で泣いていた鈴愛はやっと涙が止まりました。
そこで鈴愛の目に入ったのが、律の指についた、すみれ色のマニュキア。
ただの清の小悪魔な背伸びかと思ったら、こういう役目があったんですね、ひゃ~。
色で誰かへの思いを表現する本作では、どうしたってこれは、鈴愛は清の存在を意識してしまうわけです。
実際、鈴愛はここで気がつきます。
律が、自分以外の女の子を名前で呼んだのは初めてだということに……。
正人は引っ越しが終わっていました。
ちゃんと恋をしろよと釘をさす律。鈴愛だけに絞ってこの結果なわけです。言いたくなるのも無理はありません。
なんでも正人は、寂しがりやできちんと恋ができない性格でした。
親友も律くらいしかいないようですし、人とのつきあいがちょっと苦手なのかも。
「さみしいよ。俺、弱いことあるから」
たぶん正人の背景を深く掘ったら面白いだろうし、スピンオフも待ったなし感があるのでしょうけれども。彼は脇役なのです。
「律はやっぱり鈴愛ちゃんなんでしょ」
正人は、律の目を正面から捉えて言いました。
「あいつは俺の世界の扉を開けてくれる」
そう聞かれた律は、あれは俺にとっての『ドラえもん』だと言います。
ドラえもんがいるから話が成立するけど、しずかちゃんのような恋愛対象ではない、と。
正人はそうだとしても、話の重要性ではドラえもんが上だといいます。確かにのび太にとってはドラえもんがいなければ話が成立しないからです。
「あいつは俺の世界の扉を開けてくれる」
左耳が聞こえなくなったとき、鈴愛は小人が踊っていると言いました。
そういうみずみずしい感性の輝きが必要で、一緒にいたいのだと。
うん、だから、そういうのが一番大事な気がします。
顔や外見より、ずっと大事。
律がいつそれに気がつくのかな。
「でも俺は恋だってしたいし、人並みにそういうこともしたいし、子供も欲しいし。まだわかんないけど」
朝ドラの限界的な欲求吐露のセリフです。
本作の妙な生々しさがあるというか、こういう若者青春ど真ん中のモヤモヤをよくやってくれるぜ、という気分です。
「きみたちは離れられないよ、予言する」
正人は律に、そういうのでした。
「おい、猿!」
鈴愛は涙が原稿にこぼれないよう、特製のなみだマスクをつけて仕事中。
これに羽織が気がつきます。
「五平餅のじいさん死んだか?」
殺すなよー! 菱本が誰も死んでいません、失恋です、と突っ込み。
羽織はニヤニヤしながら、「おい、猿!」と呼びかけます。
おいおい、岐阜の家族の前で名前で呼ぶ宣言したでしょ!
興味津々の様子でいつから泣いているのかと聞く羽織。
振られた日からと答え、あわてて訂正するボクテ。
三日前からです。ボクテは脱水症状が心配だから病院で点滴を受けた方がいいと言います。
ユーコがすかさず、涙はどんなに泣いても数ccにしかならないと突っ込み。ボクテがボケで、ユーコが突っ込みですな。
脱水症状しそうなくらいの失恋に、ますますニヤニヤする羽織でした。
いろいろ聞こうとする羽織を、ペン入れがあると叱咤する菱本でした。
「まるでどこかに行きたくてたまらない感じ」
律は大学からオフィスティンカーベルに電話。ちゃんと鈴愛が仕事をしているのか確認します。
電話ボックスから出ると清がいて、律の様子をちょっと気にしている様子です。
「友達だよ」
清に対してそう流す律。嫉妬を無意識のうちに警戒したのかな。
律と清は宇佐川研究室へ。
予算の都合で、ロボヨ演奏は今日はお休みです。
それでも清は興味津々です。
彼女が理工学部ではなく文学部(一文と付け加えたのは、モデルの早大文学部がかつて一文と二文に分かれていたから?)だと知っても、宇佐川はロボットの可能性は無限、ロボヨも『源氏物語』を覚える日が来るかも、と前向きです。
露骨にガッカリしないあたりいいですね、宇佐川先生。
しかし律は心ここにあらずといった風。
宇佐川も不思議に思い、清も「まるでどこかに行きたくてたまらない感じ」と少し追及するような表情を浮かべます。
「雲の上で寝たらふわふわで安心する」
秋風ハウスに帰った鈴愛は、一人ベッドに突っ伏し泣き始めました。
そこへやってきたのが、清に釘を差されたばかりの律。
秋風ハウスの台所で、手際よくベーコンを炒めています。
香りにつられて、ユーコとボクテが様子を見に来ました。
和子さん直伝萩尾家のスープ。
律は、ちゃんと料理を習っていたんですね(※レシピ)。
律はボクテとユーコも誘いますが、二人は鈴愛のために作ったんだから、と遠慮します。
鈴愛は律のスープをおいしそうに飲み干し、お代わりを欲しがるのでした。
「鈴愛は変わんないよな。落ち込んでも飯は食える」
そう言いつつ嬉しそうな律。
東京だろうと梟町だろうが、調子が変わりません。自分自身が強いのです。周囲に流される律とは対照的。
しかし、それを否定するでもなく、流れる雲のようだと表現する鈴愛。
「雲の上で寝たらふわふわで安心する」
いや、もう、それ、愛ってことじゃん。
律が雲なんだから。しかも律はあのマニキュアを隠しておりました。清の存在感が薄くなっているのかなあ。
「迷惑をかけたからおごるよ!ただし千円まで!」
鈴愛の涙はやっととまり、マスクも不要になります。
そして、ボクテとユーコと、ボール遊びやカラオケを満喫。
ボクテは中森明菜の『難破船』を歌い。
ユーコはリンドバーグの『今すぐKiss Me』を熱唱してました。
二人の友情に支えられ、鈴愛の心に刺さった棘は、まぁるくなってゆくのでした。
そして1週間後。
「おもかげ」で三人が食事しています。
ナポリタン、ホットケーキ、チョコパフェを食べるという鈴愛。「迷惑をかけたからおごるよ!ただし千円まで!」と元気です。
しかし……。
そこへ律と清がやってきました。さあどうなる!
今日のマトメ「付き合おうが、そうでなかろうが」
今日もじれったいというか、もう好きなんだろつきあっちゃえよ!という流れでニヤニヤが止まりません。
つきあっちゃえよ、という気持ちと。
そういうんじゃないよね、という気持ち。
両方あってこれまた『半分、青い。』なんですよね。
交際をしなくても、人生においてかけがえのない存在はいるわけで、少なくともこの二人はそうです。
つきあおうが、そうでなかろうが、特別なんですよね。
そういえば、大事な喩えに用いられたドラえもんの配色も「半分青い」なぁ……って、考え過ぎ?
今日は律のスープがおいしそうでした。
真似して作る人も多いでしょうね。
コンソメベースで、具には豆腐やお揚げという、和洋折衷が良い感じですね。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
あのスープは人々を恐怖のどん底に陥れた「鈴鹿スペシャル」(あまちゃんに登場)のようなもので、正気の人間が思い付く料理ではありません。「鈴愛のために作ったんだから・・」は絶対上辺の理由ですよw
今さら…とは思いましたが、ずっと残るものですから…
>「さみしいよ。俺、弱いことあるから」
弱いこ⇔と でしょうか?