日曜日にも『半分、青い。』!
担当編集の私・五十嵐利休が、毎日のレビューの中で触れられなかった、されど気になった部分に注目します。
レビュアー・武者震之助氏の見解と異なる箇所もあるかもしれませんが、オマケ番外編ということでご承知くださいm(_ _)m
今週は61話から!
61話 二人きりの15分
律が、鈴愛に対し「離れよう」と決断するお話。
日曜日の今となっては、なんだか、遠い昔のように感じられますね。
鈴愛の傷をほじくり返すようでなんですが、この61話の登場人物はほぼ2人だけで、とにかく切ないもんでした。
二人が離れ離れになってしまった理由は……言わずもがな清ですね。
律を独占したい――そんな清がエキセントリックな性格にも感じられましたが、振り返ってみれば、若い女性には少なからずそういう一面ってあるのかなぁ、と。
優しさにつけこまれる男も、少なからず存在しました。
イケメンで性格もいいのに、どうしようもないオンナ(清はそうじゃないと思いますが)にばかり引っかかって、友達関係までおかしくなっちゃう人。
66話が終了した時点で、あれから2年が経過しています。
この美男美女カップルはどうなったんすかね。
就職後、2~3年以内に別れる――その確率8割ぐらいかと!(てか、そうじゃないと結婚ってことですもんね)
62話 身を削るように昇華
二週間で2度もフラれる――ハタチ前の女性にとっては絶望的過ぎる大事件。
それを作品にして昇華せよ!
という秋風羽織と鈴愛のヤリトリ、個人的には『明日のジョー』でした。
立て、立つんだジョー、でお馴染みのやつですね(本レビューの同日サブタイトルも『描け!描くんだ鈴愛~!』となってます)。
秋風はクズな一面もあるけれど、マンガに対してだけはとにかく真摯。
面白いものを世に出す!というプライドは誰よりも高いはず。
それがわかってるから、弟子たちに対する叱咤激励も響きますよね。
気難しい職人タイプ――と同時に緊張感ある場面では、ふっと漏れ出る関西弁の柔らかさも絶妙で。
鈴愛に面白いものを描かせようとする、そんな62話のヤリトリを見ていると、
「秋風が編集者じゃん!」
と思いました。
※後の64話で、秋風が担当編集者に恵まれてこなかった経歴が披露されますね。だからこそ弟子たちにマジメな漫画づくりを教えているのかもしれません。
63話 制作過程がリアル過ぎて吐きそうだ!
せっかくナイスなアイデアがあっても、それをきっちりカタチにできない。
『月屋根』のネームを何度書き直しても秋風からOKが出ず、鈴愛は無限ループにハマってしまいました。
ほんと、そうなんですよね。
アイデアを具現化するって、慣れないと無茶苦茶難しい。
僭越ながら、漫画や物語を作る才能(能力)とは2種類から成っていると思います。
①根本的なアイデア
②そのアイデアをカタチにする技術
昨今流行りの「0から1にする作業」が①で、その「1を10にも100にもする能力」が②という感じですかね。
現段階での鈴愛は①に恵まれていて、②はまだまだ。だから何度もネームを作り直すことになっている。
ユーコやボクテは、①は不明ながら②についてはかなり揉まれて上手になってきているのでしょう。
しまいに鈴愛は、
「先生は人の心がない、ロボットだ」
と詰め寄っていましたが、実際は真逆ですよね。
秋風は、むしろ人一倍センシティブ。
だから気難しい。
彼自身が傷つきながら鋭い観察眼で事象や心情を汲み取り、それが作品に活かされているのでしょう。
そうでなければ
「リアルがすべて」
なんて結論にならないと思うんすよね。
ただ、鈴愛の焦る気持ちもわかる。
結果が欲しいのだろう。辛い><;
と、思っていたら、その黒い影はボクテに迫っておりました。
64話 けなるい
この日は、秋風が担当編集に恵まれてこなかったこと。
ユーコのデビューに鈴愛が「本当はけなるい(非常に羨ましい)」と告白したこと。
そして焦ったボクテが散英社ではなく他誌の編集に会いに行ったこと。
とまぁ、色々と辛い回でした。
レビュワーの武者震之助は、それでも根っからの明るい鈴愛をしてこう評しました。
『周囲に楽しさを増やすこともできるが、悲しさも増幅させてしまうアンプのようなものだ』
確かにそうなんすよね。
どんなときでも前向きな人を見ていると、
「いや、理屈はそうかもしれんけど、現実、見てくれよ。結果が出てないうちから、そんな素直に割り切れねぇんだよ!」
という気分になったりするコトありません?
それにモロ影響を受けたのがボクテであったと……。
65話 ロンバーに目を眩まされ
ロングバケーションならぬロングバージョンが劇中ドラマとして登場!
度肝を抜かれた方は多かったと思いますw
なんせ北川さんの代表作とも言える超人気ドラマのセルフパロディですからね。
それをブッチャーとナオちゃんに演じさせるというのも遊び心が満載で。
思わず笑ってしまいましたが、主となるストーリーでは、ボクテの裏切りがあり、『アモーレ』編集部の黒崎が胡散臭かった~!
「なんやコイツ!」
と不快に思われた方、大多数でしょう。
当時は、紙媒体でしかマンガの発表舞台はなく、それこそ編集のチカラはむちゃくちゃ強かった。
しかし、昨今は事情が変わりつつあります。
ネットや通販など、同人作品を発表する場はいくらでもあり、それだけで生活できる漫画家さんも存在するほど。
個々の作家に深いファンが付くようになり、ジャンプやマガジンなどのメジャーどころでなくても年単位でスケジュールを押さえられたりする漫画家もおります。世間的には無名な方が、です。
それとともに引き抜きも激しくなっています。
せっかく育てた漫画家が簡単に移籍してしまうため、かかったリスクやコストを考えると割に合わん!と嘆く編集も。
こればっかりは仕方のない流れでしょう。
最近は、大手誌の編集でもコミケ会場に出向き、掲載を断られてしまう――なんて話もあると聞きます。
出版社や編集者の必要性がどんどん薄れていってるんですね。
66話 皆様のコメントまとめ
ボクテの裏切りが発覚した66話。
「西はまたうどんを食いに行く」とのことで激怒した秋風は、鈴愛やユーコらの必死の謝罪にもかかわらず、「安易なエロ化で作品を殺したこと」を最後まで許しませんでした。
2丁目の友人を頼るというボクテ。
母親のいる実家にはやはり戻りませんね。話して理解を得ようだなんて土台ムリな時代です。
2丁目は、ボクテが自然に呼吸できる数少ない場所でしょう。ティンカーベル以外では。
今後も漫画を描き続けるのか?
と言ったら、それはやっぱりムリな気がしますね。
彼自身の裏切りによって傷ついた彼自身のハートはもう元には戻らない……そんな気がしてなりません。
秋風に言わせれば、
「キミは、作品を殺したと同時に、君自身の感性も殺してしまったんだ。私はそれが悔しいのだ」
そんなセリフになりそうな。
勝手な想像でサーセン。
ぜんぜん違う展開だったらどうしようw
つーことで、ラストにコメントをピックアップっす!
62話◆itoさん
いつも楽しく読ませていただいています。
今日の秋風とよえつ先生の
「描け、描くんだ!すずめ!」
のところが
「たて!立つんだ!ジョー!」
とダブりました。あしたのジョー好きな自分としては
グッときたシーンでした。
これは、もう本当にそうでしたよね。
私は小学校2年生のときに、教室の学級文庫に『あしたのジョー』全巻が並んでいました。
先生が置いてくれていたのです。今考えると、なかなかできないっすよね~。いい先生でした。
63話◆たうらさん
秋風先生に当たって、酷い事を言ってしまう鈴愛。まだ20歳くらいの、もともと思った事を言葉に出してしまう(よくも悪くも)性格としては、さもありなんの展開。自分も相手を傷つけている事に気がつくのはいつになるのか。
でも、そこをフォローするボクテとユーコのシーンがよかった。きっと鈴愛よりも人間関係に傷ついてきただろう分だけ、哀しい気持ちへの繊細さと優しさが発達してるんでしょうね。
二人の真っ直ぐな笑顔とセリフ、秋風先生の素直な嬉しそうな表情に、いいものを見た気がしました。
ボクテとユーコは、きっと岐阜には存在し難いキャラクター。
というかオフィスティンカーベルだからこそ出会えたんですよね。
厳しいけれど、充実した職場だと思います。
64話◆ヒグタツさん
「半分、青い」の「、」は「だけ」なのか「も」なのか・・・
あとの「半分」は何色なのか・・・
その色や割合は日々揺れ動いている
鈴愛がもっと大人になったとき。
そのときの色も気になりますね。
65話◆清えんどうさん
「半分、青い」、かなり意味の深いタイトルですよね。
左耳の失聴、半分雨が降っとるし…、
登場人物の長所と短所…、
プロとあまちゃん、
人の明るい部分と暗黒面(ダークサイドかっ!)、
散英社も半分合っとる(笑)、
半分青いドラえもんもネタに、
あ、そう言えば、登場人物の清の名前も半分青いなぁ…。
ホント、遊び心を持ち、登場人物を丁寧に描く本作品、素晴らしい出来ですね❗
「清」さんも確かに半分っすね!
気づかなかったw
66話◆匿名さん
秋風先生の羽織っている糞カーディガン、だいぶ前の回で後ろにもカタカナで「クソッ」て書いてあるのを見ました(笑)!!
トヨエツが着るとかっこいいですけどなんちゅう服。ボンボン飾りついてるし。衣装さんノリノリで攻めてますよね。面白プリントTシャツとかじゃないところがまた洗練されたおふざけですね(笑)!
「クソっ」もあったんすか~、くぅ~。
秋風羽織さんは、やっぱり大阪芸大の設定だと思うんす。
幼馴染が通っていて、一度、遊びに行ったことあるんですが、それはもう独特で強烈な世界でした(ただし20年前)。
最後に。
66話のレビュー公開後に、恐れ多くも脚本家の北川さんからいただいたツイートを。
おおおっ。すごい批評。感想。さて、では、少し私、私を守ります。助言をありがとう。わりと回りは誰も言わないので読んで気がつきました。半分、青い。66話 感想あらすじ視聴率(6/16)羽織の揺るがぬ創作論 https://t.co/UHDwVs6GRl @@bushoojapanさんから
— 北川悦吏子 (@halu1224) June 16, 2018
嗚呼、月曜日が待ち遠しいっす!
文:五十嵐利休
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
>いししのしし様
ご心配おかけして申し訳ありませんでした。
皆様ご存知の通り、昨日は大阪北部地震が発生し、
その影響で本放送も延期となり、
著者の武者も視聴ができませんでした。
著者本人に地震の影響はありませんでしたので
少し遅れましたが、改めてレビューを再開させていただいております。
また、今回の地震で被災された皆様
ならびにそのご家族・ご親族の皆様へ、お見舞い申し上げますと同時に
一刻も早い安全と復興をお祈り申し上げます。
武者さま、今日はどうされたのでしょう?何事も無ければ良いのですが。毎日楽しみにしている読者のひとりです。
はじめまして
土曜日の「この作品は攻撃的」という批評に大きく頷きました。私は「半分、青い。」は今までの朝ドラで一番好きな作品になりそうだと思っています。(朝ドラ歴27年位です)
脚本の攻撃的な点も、演出・美術他のスタッフの冒険も、今までの作品には無いものばかりで、本当に毎日が楽しみでたまりません。
そして、こんなにも切なくて涙が毎日止まらない朝ドラも初めてです。
アンチがたくさんいるのですね?私今作のアンチ(特に前作を何とも思わずに今作を悪く言う方々)とは、感性が全く合わないので、近寄らないようにしています。
このサイトに、前作から出会いたかったです。
これからも、毎日楽しみに読ませていただきますね
毎日朝ドラのおかげで起きるのが楽しみです。
だからこそ、アンチの放つ悪意の矢から、脚本家先生に身を守って欲しくもあります……。
好き嫌いが分かれるのはわかるものの、あまりに見当違いの批評ばかりでポカーンとしてしまうのです…。この感覚、「直虎」を「女が書いてるから」「女が主人公だから」「題材がマイナー過ぎるから」という理由で貶していた連中に感じる虚脱感に似てます…。
せめてもの救いは、オフラインでの友人知人は、このドラマを絶賛してハマってることでしょうか。
「実在人物の一代記じゃないから高齢者は見ない」とか言ってる自称コメンテーターに、どハマりしてる70オーバーおじいちゃんの話を聞かせてやりたい。