『ひよっこ』が終わってしまいましたねえ。
このドラマは地味なようで、静かな変革者であったと思います。
『あまちゃん』のような派手さもなく、どぎついイビリやイジメもなく、ヒロインが大成功をおさめるわけでもなく……。
ないない尽くしではあるのですが、それでいてあたたかく丁寧な作り。じっくりとダシをとったお味噌汁のような味わいがありました。
ちなみに私のイチオシは、お米屋さんのお嬢さん・さおり(米子)さんです。どうでもいいですね。
さて、そんな静かながらも芯の強い『ひよっこ』のあとが『わろてんか』です。
こちらはサイトや番宣を見るに、NHK大阪のギラついた野望を感じさせます。
あっさりとした関東の『ひよっこ』。
そして朝から串カツをどーんと出してきそうな、ギラつきを見せる関西の『わろてんか』。
『ひよっこ』から最高のかたちでバトンを受け取りました。
NHK大阪の野心を感じる
公式サイトから受ける印象は、NHK大阪近年のヒット作『ごちそうさん』や『あさが来た』と似た雰囲気です。
特に後者には意識して似せているのではないかと思いました。
これは歓迎すべき点でしょう。
NHK大阪の前作『べっぴんさん』はパステルカラーを基調としていて、あまりに地味でした。
こちらに求められるものは、シナモンティーとクッキーではありません。
元気なヒロインの疾走感、料理ならば串カツのような、豪快でワクワクする作品です。
「かに道楽」の看板のように真っ赤なサイトは、露骨に勝ちを狙いにきた感があります。
『あさが来た』同様、ヒロインの幼年期役に大河でブレイクした子役を起用。
ヒロインの衣装の色も同じレッド系。共通点を探せばまだまだ見つかりそうです。
とりあえず第一週は、NHKおてんばヒロインのお約束「幼少期のヒロインが木(または高所)に登る」があるかどうか。そこに注目したいと思います。
私は、登る方に缶ジュース一本くらい賭けてもいいですねえ。
「政次ロスの皆さん! こちらへどうぞ!」
そして何といってもギラつきを感じるのが、高橋一生さん推しですね。
『おんな城主直虎』で好演していた小野政次が退場し、心にぽっかりと穴が空いた視聴者を誘導するかのような番宣。露骨です。
しかしこのギラつき、嫌いじゃありませんよ。
しかも高橋さんの役所は、主人公に恋心を寄せつつ見守る役であります。
小野政次ともかぶりますし、ディーン・フジオカさんをブレイクさせた「五代さま」を彷彿とさせる役所です。
これはやっぱり露骨に勝利を狙いに来たな、と感じさせます。
既に公式Instagramでは、高橋さんの写真が他の写真をはるかに上回る「いいね!」を獲得しています。
こちらの高橋さんは間違っても磔にはなりませんし、モデルとされる人物は五代友厚のように短命ではありません。
安心してウットリできますね。
綺麗ごとばかりではないエンタメの世界をどう描く?
NHK大阪といえばしょうもないお笑い要素を入れる傾向がありますが、本作はお笑いモチーフだけに堂々とそれができるという強みがあります。
『べっぴんさん』ではやたらコケる執事が浮いていましたが、本作では浮くことなくバナナで転ぶレベルのギャグを入れられるのではないでしょうか。
しかし、明るい笑いだけではおさまらないのもエンタメの世界です。
戦前の芸能界は、アウトローとの黒いつながりがあったものです。
ヒロイン夫妻もそのあたりは当然あるわけで、これをどう誤魔化すかがポイントでしょう。
もっとも、これは実在の人物がドラマ化される際には必ず行われる作業ではあります。
例えば『花子とアン』ではヒロインの戦時協力がぼかされました。そこは逃げてもやむなし、ではないでしょうか。
ただし、逃げて欲しくない部分があります。
ヒロインが真剣に取り組む「お笑い」への熱意です。
ヒロインの本業そっちのけで脇役の恋愛を延々と描くパターンにならないよう、お願いします。
好きなものに本気でぶつかるヒロイン像に期待しています!!
ヒロインの口癖は不要かなぁと
そしてこれは私の完全な願望です。
「ヒロインの口癖はやめよう」
『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ!」以来、朝ドラヒロインの口癖が流行しました。
『あさが来た』の「びっくりぽん」まではともかくとして、『とと姉ちゃん』の「どうしたもんじゃろおのぉ」と『べっぴんさん』の「なんかな、なんかな」は完全に滑っていました。それを作る側も気づいたのか、『ひよっこ』では口癖は消滅しました。
本作でも不要だと思います。
弾けるようなヒロインの笑顔だけで、もう十分雄弁です。
朝からさわやかな笑顔が見られるだけでいいんです。
今日も朝から頑張るぞと思えて、串カツのようにワクワク感がある、そんな朝ドラになることを期待します。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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