半分、青い。136話 感想あらすじ視聴率(9/6)不器用で、子供っぽくて、それでも滲む愛情

時は2010年、楡野鈴愛と萩尾律は東京におります。
しかも両者とも、夢には破れておりました。

律は、勤務先の菱松電機がロボット製造部門を閉鎖してしまい、転職も視野に入れている。
鈴愛は、事務として働いていた【ヒットエンドラン】があっさりと倒産し、その後なんとか【おひとりさまメーカー】を起業したものの、鳴かず飛ばずで、屋台を引く始末。

そんな鈴愛は、弟の草太から母・晴がガンになったという電話を受けるのでした。

【136話の視聴率は21.8%でした】

 

宇太郎だって盲腸の手術をしてるんだ

岐阜県、楡野家。
晴は草太に向かって、癌のことは鈴愛に言わんでよかったのに、と告げます。

しかし草太は姉の性格を知っています。
後から知ったら怒る。間違いない。

晴は晴で、初期だから手術すれば治るとお気楽な様子です。

「せやけどうちには一大事や」
梟町のご近所にも罹った人がいれば、秋風羽織も克服した癌。騒ぐことはないと気丈に振る舞う晴です。

そうは言っても、手術はちょっと怖い。
晴にとって手術は初めてのこと。鈴愛の時も、帝王切開はしていないのです。

ここで宇太郎、盲腸の手術をしたと明るく自慢します。彼なりに気遣って明るくしているのかな。

晴は歳をとって丸くなった。
昔ならばビキニを着られなくなると嫌がっただろう。

と、こういう冗談に紛らわせるところが、不器用で能天気な、彼なりの励まし方という気がします。
鈴愛の性格は、父親に似たのかな。

 

「今でも美人やろ」「正しい夫や」

「昔は美人やった」

そう言う晴に、
「今でも美人やろ」
と返す宇太郎。

これには草太も「正しい夫や」と感心します。

そうそう、正しい夫や! あ、でも律は鈴愛をおばさん呼ばわりしちゃたっけ。

「鈴愛、帰ってくるやろ」
ここで一同が鈴愛の話をし出すと、固定電話が鳴り始めます。

「あー、もうめんどくさい!」
晴は鈴愛からの電話だと察知し、草太に出るよう頼みます。

やはりそうでした。
いきなり、お母ちゃんにかわって、と言い切り出します。
しかし、晴は出たがりません。

「泣いとるか? 泣いとるんやったら出たない」

鈴愛は泣いているどころか、花野を風呂に入れて寝かしつけてやっと電話を掛けたのに、と言います。
草太は鈴愛に「(晴の)お腹が傷つくからナーバスになっとる」と報告するのでした。

 

大丈夫?ではなく怒りの表明から

しばらく草太とヤリトリし、ようやく晴に代わります。

「もしもし」
「なんですぐ電話してこん!」
そうムッとしている鈴愛に、晴は慌てさせたくないから遅れたと言うのです。

この鈴愛も、彼女らしい。
お母ちゃん大丈夫?ではなく怒りの表明から入るのです。
鈴愛は、癌の話をここで打ち切り、「律に会った」と伝えます。

癌のことを聞かないのか?
と問われると、既に草太から図面入りFAXで連絡してもらった、と。

こういうところなんですよね。説明を受けたことを、二度させない彼女なりの気遣いです。そのために、草太から聞いておいたと。つか、草太もやっぱりマメさがすごいな。

このあと、まぁくんにも会ったと続ける鈴愛。
晴は、スッカリ、まぁくんを忘れており、上京した時、帰りの駅まで送ってくれた人だと説明してようやく気が付きます。

このときの説明で、鈴愛は、自分が引っ張っている屋台で会ったと言いそうになって、慌ててごまかします。
「屋台みたいなタイ料理屋で会った!」

まぁ、そうかぁ。岐阜へ帰ってから初めて離婚を告げるような鈴愛ですしね。そりゃ屋台引きなんて内緒にしときますわな。

 

癌に触れたくない晴を気遣っていた!?

苦しい誤魔化し方で、どうにか乗り切る鈴愛。

「どちらかに再婚してもらえんかね?」

そうしみじみと言う晴に、鈴愛は、私はアラフォー、もう39だからなかなかな、と冷静に返すのでした。

晴は電話を終えたあと、鈴愛は勘がよいのかもしれない、と振り返ります。
関係ない話をガーッとして切ったのは、わざとではないか? 晴は、手術が怖くてあまり触れたくないのです。

晴は【チヤホヤ粉】や【まぁあかん袋】といった鈴愛の発明について話だします。
宇太郎は「まぁあかんと言いたいなら俺の胸に叫べ!」と告げます。

「まぁあかん袋、私にはいらんな」
微笑む晴です。

弥一の和子への態度とは違いますが、宇太郎も気遣っていることがよくわかります。
妻が病気になると、「俺の面倒を誰がみるんだ!」とキレる夫もいるとかなんとか聞きますが、本作には出てこないので安心します。

和子と弥一の時も書きましたけど、病に倒れた妻を夫が気遣うことって、朝ドラではあまり見かけない気がします。

 

6人家族がいつの間にか二人きり

夫妻は二人で布団に入りました。

「この家も、寂しなったな。人口密度減ったな」

放送時は、仙吉、廉子、宇太郎、晴、鈴愛、草太。
それが今では二人きりです。

これも朝ドラとして珍しいかも。
タイムスパンが長い成功マダム系朝ドラは、子孫や大勢の従業員に囲まれて、家庭は巨大化しているものです。

しかし、本作の場合は、ヒロインの親も、ヒロイン自身も二人だけの家庭です。
これが平成のリアルではあります。

「ほやけど、何かあると帰ってきてくれるのもいいよね」
そうしみじみと言う晴。

「おやすみ」
「命賭けてと♪」
歌い出す宇太郎。

 

「なんや」
「子守唄や。仙吉さんみたいに歌うまないしな」

この宇太郎の、照れながらの晴への気遣い。仙吉や弥一とは違う、彼なりのものを感じます。
ふふっと微笑む晴。宇太郎の思いが伝わっているのでしょう。

 

あかん袋に「おかえり」と一言

鈴愛は花野を寝かしつけ、
【まぁあかん袋】
に叫びます。

まずは晴のこと。
「心配やー、神様頼んだぞ!」

やっぱり心配なんですよね。
その次は、津曲への怒りをシャウト!
おのれ津曲、債権者への土下座は辛かったんだぞ!

「なんでこれ売れへん?」
そう感情を、一通りぶちまけた鈴愛。

「律、おかえり」
袋には向かわず、そう言う鈴愛。

「再婚がした〜〜い!!」と絶叫するようなことはしません。この距離感というか、なんとも言えなさ。

このとき、鈴愛の携帯電話が震えます。

【大丈夫か鈴愛 晴さん大丈夫か?】

気遣う律に、鈴愛は【大丈夫だ】と返信します。
律は寝ているだろうからメールしたと返信して来て、さらにこう書いております。

【なんでもできることがあったら言えよ】

鈴愛は、このメールを握りしめて眠るのでした。

初めて上京した頃は公衆電話に硬貨を積み上げ、2010年は携帯電話でメールを打ち合う。
時代や手段は変わっても、誰かとのやりとりにときめき、力をもらうことは変わりません。

廉子さんは、楡野家の人々を上空から見守っています。
よく眠れますように、よい夢を見られますように。

 

ロボットとの再会!?

日が変わって。
鈴愛のシェアオフィスで、オープンオフィスが開催されることになりました。

花野はエプロンをつけて、フリーマーケットでカニのおもちゃを売ろうとします。
鈴愛はこの日、実家へ帰省するため、花野を律と正人に預けることにしたのです。

二人と一緒に花野がフリマへ。

みぃバァバこと光江も花野を預かることは出来そうなんですが……。

「律と正人の間に寝たい!」
と花野は主張したのです。
鈴愛が思わず魔性か、と呟いてしまうほどでした。

三人がオープンオフィスへ行くと恵子が登場!
今日も緑の惑星から来たと自己紹介しております。

内部へ案内されて行く律が、思わず立ち止まりました。

【マニオン】という小さなロボット。
ペッパー君タイプでコンパニオンタイプの小型版ですね。

って、そういえばPepperくんの発売は2010年代前半!
律〜〜〜!!
あと数年経てばロボットにも光が当たんぞ~~!

そこは、ロボットブースでした。
気になった律が会場へ入って行くと、何やら見覚えのある南村という男がおります。

自動車メーカートンタ(トヨタとホンダっすね)に就職しながら退職。
もともとは律と同じ研究をしていたのでした。

「覚えていないですか? 同じ研究仲間!」
そう語りかける律に、南村も気づいたようです。

 

今日のマトメ「不器用で、子供っぽくて、それでも滲む愛情」

晴の癌は、初期で手術をすればよい。
とはいえ、全貌がわかるのは、明日の鈴愛帰省以降ですね。

鈴愛は実家に帰省する一方、律はロボットと運命的な再会を果たします!

あの【マニオン】を見てハッとした方もおられると思いますが、そうなんです。
このあと、コンパニオンロボットが日本でも普及します。

Pepperくんは今、多くの施設で見かけますもんね。

そんな二人の進路が見えた中、今日気になったのは宇太郎の晴への愛情です。

弥一のように、気の利いたお茶を淹れるタイプでもなければ、仙吉のように歌がうまいわけでもない。
そんな不器用で、子供っぽさも残っていて、シリアスになるよりふざけてしまう宇太郎。
それでも彼なりのやり方で、晴への愛と思いやりを見せていました。

このちょっと子供っぽい、大人になりきれなくて、時々ふざけてしまうけれど、愛が伝わるやり方。
そして草太に「正しい夫や」と言われる、咄嗟の返し方に滲む誠意。
それを受け止める晴さんともども、エエ夫婦やな〜、と思いました。

そんな父親に似たと思わせる、鈴愛。
晴も光江も、再婚をせっつくのに、本人はそうではない。【まぁあかん袋】に再婚したいと叫ぶこともない。

「律、おかえり」
とつぶやくだけ。
一方で律も、思いやりを込めたメールを返してくるだけ。

この二人は、互いがどれだけ素敵かとか、好きかと、そういえば言っていません。
もうそんなことはわかりきっているから、言うまでもないように。
素晴らしくて、好きだということはもうわかりきっているから。そういうことを伝えてエネルギーを消費しなくてよいから、気遣いだけヤリトリしよう。

そんな風にも見えてしまいます。

 

殴るにしたってやり方あんでしょ!

私のスマホには、本作についてのニュースが届きます。
中には、見出しを見ただけで舌打ちして、閉じたくなるものも多い。

その大半は、脚本家氏のSNS利用を「調子に乗っている」と叩く内容です。

ナゼ本作の脚本家が叩かれるのか?
理由はシンプルです。

・自分の意見を持ち、SNSアカウントを持っているから
・女性だから

「生意気な女は黙りやがれ!」という差別直球としか思えません。
どんな言い訳をしようが、これについては証拠があります。

オンラインでの顧客対応には、「ブロンド女性」より「猫」が向く? ハラスメントに走るユーザーの心理 @wired_jp
BBCニュース – 「スター・ウォーズ」出演のアジア系女優、差別被害でインスタ投稿を削除
DCドラマ「バットウーマン」主演のルビー・ローズ、ツイッターを削除 ― 批判派からの嫌がらせ受けて

女性のアカウントの方が、嫌がらせが増えるのです。
大半は眉をしかめて無視していましたが、これはあまりに酷いと思った記事がありますので、敢えて晒します。

『半分、青い。』正人の“彼女の正体”に飛ぶ推測、「北川悦吏子が彼女役!?」のブーイング@wezzy_com

本作の脚本家が男性でも、この記事は書かれたでしょうか?
掲載したでしょうか?

こういうゲスの勘ぐりが出来て、しかもウケると思って記事にするのは女性脚本家だからではありませんか?
「年配の女性脚本家は、自分のことをゲスい投影をするハズ!」というゲスの勘ぐりの他に根拠はありますか?

ナゼこの記事を取り上げたかというと、このWezzyというサイトの記事を読んでみたところ、女性差別に抗議する趣旨のものを多数見かけたからです。
女性差別に反対するスタンスを持つサイトが、オンラインで女性をゲスの勘ぐりで叩く典型記事を掲載するとは一体どういうことでしょう?

かくいう私も『わろてんか』はじめ多数の作品をブン殴っておりますけどね。
確かに勘ぐりを書いていますけどね。

一例として、前作の伊能栞を挙げましょう。
『あさが来た』と『おんな城主 直虎』の人気キャラクターを合成した、二番煎じの合成ではないかと思ったわけですが、当然これには根拠があります。

伊能栞のモデルである小林一三と、ヒロインモデル・吉本せいの関係は、ドラマとは大幅に異なる。
ドラマでの二人の関係は、『あさが来た』のヒロインと五代の関係に近い

『わろてんか』は『あさが来た』を模倣した点がある。
ヒロインの幼少期をモデルの生い立ちから大幅に変更し、出生地を大阪の貧困家庭の出身から『あさが来た』のヒロインと同じ京都の富裕な出身の娘にした

それ以外にも、戦時中のエピソードが『ごちそうさん』、『べっぴんさん』といった他の朝ドラの焼き直しのようだった。
このように、この作品は他朝ドラの模倣を多用している
伊能栞役の高橋一生さんは、『おんな城主 直虎』の小野政次でブレイクしたばかりだった。政次の立ち位置は、伊能栞と同じく独身でヒロインを見守るというもの。

勘ぐりではありますが、一応そこに至る理由を提示しました。

作品内容は叩いても、脚本家の性別だの年齢だの、そういうことを根拠にしては叩きません。
今年の大河は、女性原作脚本家だからショボいと批判されますが、それに対してはきっちりと反論しております。

本作の批判記事って、鑑賞して頭を使ってひねり出すものではなくて、SNSを流し読みしてアンチの意見を拾ってまとめたもの、関係者のSNSアカウントを叩くものばかりです。

批判、上等だわい!
作品をみちっと鑑賞して、意見をマトメて、真正面から殴りに来いやっ!!

◆著者の連載が一冊の電子書籍となっています。

この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

3 Comments

roko

ここで一番気になった言葉は「みちっと」です。
初めて聞いた言葉でしたから…。秋田出身の人に訊きましたが知らないと言う。
ネットのどこにもない、というわけではないので、想像しますが、著者さま教えていただけると幸いです。

あと、私が書くのは失礼かと思いますが…
ウィキペディアの「Pepper (ロボット)」によりますと、ペッパー君は 2014年6月5日に発表され、その後設置、販売等展開されていったようです。
その年生まれの子どもが、お店でペッパー君を見て怖くて泣いたという話を聞いた覚えがあります。
大変失礼いたしました。

同年代(*^^*)

ソウタのファックス!図は正確で丁寧、文字はヘタウマなところが、いかにもソウタらしくリアルで感心しました。和子さんの育児日記もそうでしたが、小道具さんの誇りの高さを感じます。

さつき。

今日も愉しいレビューありがとうございました。弥一さん和子さん夫婦も晴さん宇太郎さん夫婦も、それぞれに素敵!
ほんとですね。若夫婦なら、ブッチャーなおちゃん夫婦がどんなふうにいい感じになるかが楽しみです。

今日、ひとつ気になった点が。

もう、ドラマ舞台は2010年です。だからひょっとするともうペッパーも生まれているのかも…(*^^*)

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