半分、青い。151話 感想あらすじ視聴率(9/24)全て並行して動いている

時は2011年3月。
40年前の7月7日に岐阜の梟町で生まれた楡野鈴愛と萩尾律は東京におりました。

2人は【スパロウリズム】という会社を立ち上げ、肌に優しい風を生み出す「そよ風の扇風機」を作ります。

数ヶ月に及ぶ試行錯誤の末、奮闘して、ついに納得のいくものができた二人。
投資家を集めてのプレゼンを始めたところ、大事な場面で、そのとき大きな揺れが日本に襲いかかりました。

【151話の視聴率は21.6%でした】

 

ユーコの携帯が全然通じない……

3.11から三日後。
あのプレゼンテーションの直後から、仙台を含めた東北地方は連絡がつきにくくなりました。

仙台で看護師をしているユーコ。まったく連絡がつきません。

震災について、テレビは緊迫したニュースを伝えて来ます。
オフィスの【イコイノバ】でも流れる各種報道。鈴愛は食欲すら失ってしまいます。

律はそんな彼女を見守りながら声をかけます。

「こういうときは食べた方がいい」
「食欲ない」

こんな状況の中でも、花野ちゃんは泣いたり、おどけたりしていつも通りなのだとか。
地震の後に迎えに行っても、一人で帰れると強気だそうです。
強がりか、本音か。どちらなのでしょう。

鈴愛は携帯電話を取り出します。掛けたばかりなのに、またユーコに掛けようとするのです。
心配しても仕方ない、信じようと鈴愛に語りかける律。

「海が見えるって言ってたんだよ、ユーコ。病院の窓から海が見えるって」

そう、確かにユーコはしみじみと語っていました。
そんなユーコから生きる力とまで言われた鈴愛。落ち着いてなんか、いられるはずはありません。

 

「ママちっちゃい、パパ大きかった」

震災の後でも日常は続きます。
アパートで花野がテレビをつけると、震災のニュース流れ、思わず鈴愛はテレビを消します。

「ニュースは見なくていいよ」
余震で揺れる中、花野を抱きしめる鈴愛。

「ママちっちゃい、パパ大きかった」
そう言う花野。涼次と会っているんですね。

ここで鈴愛は、もう少しおばさんになればドーンと太ってでかくなるよと言うわけですが、花野はかわいいママの方がいい、と言います。

「やったー、カンちゃんにかわいいって言われた」

そんなふうにはしゃぐ鈴愛。震災のショックは二人共にあるはずです。
それでも、ここは笑ってはしゃいで、日常生活を送ってゆくしかありません。

美味しいモノしりとりをする母子。鏡餅という回答を面白がる鈴愛です。

学校から東北が大変なことになったと聞いた花野。東北はどこなのか聞いてくる花野に、仙台や福島だと伝えます。
仙台はユーコの住んでいる場所。花野も心配しています。

「きっと大丈夫」
娘を抱いてそう言う鈴愛ですが、目は虚ろです。
こういうセリフのない時の永野芽郁さんの目力、本当にすごい。

 

投資家の資金は、こんなときだからこそ動く

岐阜では、晴と宇太郎も心配しておりました。

そわそわする、二人。
ここで宇太郎は祈るしかないと言い出します。神様とおじいちゃんおばあちゃん、どちらかと尋ねる晴に、宇太郎は両方に祈ろうと返します。

「なんと言ったらわかりませんが、なんとか、なんとか」
祈りを捧げられた廉子は、そう声を絞り出します。

津曲は、こんな状況でも
「プレゼンは成功、資金は集まった」
と報告します。失敗したと思っていた律は驚きます。

こんな状況でも【逆張り】する人、こんな状況だからこそ今後扇風機が動くと見る投資家もいるのだと語ります。
なんだよ、津曲、結構頼りになるじゃん!!
そして、いそいそと岩堀の工場へと出かけてゆきました。

 

日常を送らなければいけない 待つしかない

鈴愛のもとに、ボクテから電話が入りました。

ユーコの家族は全員無事とのこと。
しかし、ユーコとは連絡がついていないのだとか。勤務先の病院への道が瓦礫で遮断されていて、避難所にいることもあるはずだと、ボクテは推察します。

「鈴愛ちゃん大丈夫? ユーコちゃんは絶対大丈夫だから」
「うん、わかってる」

そう答える鈴愛の顔、張り詰めています。
信じるしか、ないんだよ……。そんな鈴愛を抱き寄せる律。

「どこかにいるよ、信じよう」
「うん」

こういう描写、やっぱりうまいですよね。
下手な作品だと、オロオロしてともかくパニックになっているヒロインにしてしまうかも。

それができなかったのです。

あのときは、日常を送らなければいけなかったのです。
遠い東京から、日常を送り、東北からの知らせを待っているしかなかったのです。

 

花野が漏らしてしまったのを運悪く

そのころ津曲が訪問していた工場では、岩堀が「部品調達できない」と言い出しておりました。
東日本の工場は操業できず、物流も止まっているのだとか。

茶を啜り、
「影響出ちゃってんですねえ」
と、やや暢気な対応の津曲。いえいえ、岩堀からすればこれは死活問題なのだそうです。

「資金あるし、突破口ないですかねえ」
そう言うしかない津曲。そうだよ、なにやってんのよ、今週こそが最終週だよ!

そんなある朝。
花野が突然テーブルに突っ伏し、「学校へ行かない」と言い出します。
教員から話を聞くため鈴愛が学校に行くと、事件があったことが判明します。

一体なにがあったのか――花野はそのころ、律のところでトランプをしていました。
そこで彼女自身が語ります。
震災の日に机の下から出てきたとき、怖すぎておもらしをしてしまったのです。しかも、運悪くイジメっ子に見つかり、バカにされてしまいました。

「うわきったね!」
この、クソガキめ~!

と、そこに現れたのが同級生の灯(あかり)ちゃん。
床を拭いてくれて、更にはイジメっ子の顔面にパンチを入れ、最終的に花野を保健室まで連れて行ってくれました。

花野は、灯みたいになりたかったのだと語ります。

母親の鈴愛に語れない理由があるのかな。おもらしについて聞いて、俺も風呂やシャワーで気持ちいいとおもらししたくなると同意する律です。かばっているんですね。

「カンちゃんはもう終わりだ」
「もう終わりか」
クスッと吹き出す律。

「律、笑うところじゃない」
花野は真剣です。
灯のようになりたかったのに、なれなかった花野なのでした。

 

今日のマトメ「すべて並行して動いている」

3.11の震災で最も大きな被害をもたらした津波。
その被災地ではない場所では、ニュースに胸が潰れそうになりながら、知らせを待つしかありませんでした。

大ダメージを負った沿岸部のことは誰もが心配です。
それでも、日常を送らなければいけない。

被災地のユーコのこと。扇風機のための材料調達。そして花野のこと。
全て並行して取り組まねばなりません。

平気なふりをしていても、心はどこかおかしい。
セリフの合間に挟まれる、鈴愛の目の力。
本作は、コミュニケーションツールの進歩と人間の距離感を描いてきました。

鈴愛とユーコが出会った頃は、硬貨をピンク電話に積み上げて、掛けていたものです。

それが2011年、携帯電話になっています。

昔よりずっとスンナリと繋がることができる。
その電話がぱったり!
通じない。その不安がどれだけ大きなことか。本作からは感じられます。

なんだろう。
この日常が、いろいろと平行して進んでゆくのに、何かが引っかかり続けるざわざわした気持ち。

あの日、あれからのことを思い出して、落ち着かない気分になった方もおられるのでは?
私もそうで、今朝から、心が重たくなって落ち着きません。

でも、こういうことがないと、あのときのことを忘れてしまうことにつながりかねません。

時代によりそって描かれて来た、このドラマならば、東日本大震災を避ける選択肢はありません。

津曲と岩堀の温度差なんかも、リアルなんですよね。
津曲はトレンドには敏感な業界人なんですけれども、岩堀みたいな工場長の事情には疎いのかもしれません。

それにしても今週で最終週なのか。

ここまでみっちりとは……。
ユーコ、扇風機、花野のこと。どこまでもみっちりとストーリーが詰まっていて、よくぞここまでと頭を下げたくなるほどです。

もう心に隙間風が吹き始めているような、そんな不思議な気持ちになってきました。

◆著者の連載が一冊の電子書籍となっています。

この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

9 Comments

ひろぶ

先日震災停電について投稿した者です。
舌足らずでうまく伝わらなかったようで申し訳ありません。

私が経験したのは、揺れの直後の送電停止です。
送電線の切断と、発電所のトラブルによるものでした。
その後数日は電気の無い生活を強いられ、突然常夜灯が光ったのを見た時の安堵感は今でも覚えています。
それだけに、先頃の北海道震災の被災者の苦労を、多少は理解出来るつもりです。

出先で地震にあい、急いで自宅に帰ろうとしたものの、信号が停止している為、普段の10倍強の時間を掛けて帰宅した後の出来事でした。
ニュース映像の場所の近辺には身内親戚が多数おり、居ても立ってもおられずあわてて飛び出したのです。
その後数日間は反射ストーブでの暖房と採光、定期的に車のエンジンを掛けて充電した携帯で連絡と情報収集をしていました。
夜、外に出た時の異様な静かさと暗さは例えようがありません。

これ以上は、ドラマから逸れすぎるので、最後にします。

本当に最後の1週まで大イベントが続くこのドラマから目が放せません。
本当に今週末で終わってしまうのでしょうか?(泣

まべ

申し訳ありません。23区内にも関わらず、かなり長時間に渡って計画停電の対象となった区に住んでいたので、反射的にコメントしてしまいました。(郊外部です。区長が怒りの会見を開いていたのを思い出します。)

関東に住んでいて直接的な被害は大きくなくても、これをきっかけに人生を変えた人が多くいたことを思い出します。私もその一人です。

こちらのレビューは毎日楽しみにしています。ドラマも残り僅か。いつも楽しみをありがとうございます。

まのすそ

震災を扱わないほうが良いとは思いませんが、やはり短い時間で扱うのは難しいなと感じています。ドラマを見ていて、そういえば、23区は計画停電がなかったんだということを思い出しました。

ひろぶ

いつも共感を持って拝見させて頂いてます。
これまで朝ドラは「あまちゃん」ぐらいしか視聴してなかった私が、今作だけはなぜか見続けてました。
こちらのサイトを拝見して、その理由がわかった次第です。(笑

あの年代の物語を語る上で、避けては通れない震災。
その扱いについて、軽々しく扱うな等の批判が出ているとの事。
恥ずかしながら、此方の記事で知りました。

その様な批判をあげている方は、現地被災者なのでしょうか。

あの日、停電の中、携帯電話で見たテレビニュースの映像で自宅から10数分の漁港に外洋船が打ち上げられ、水産加工会社に激突している状況にショックを受けました。
すぐさま車で現場の確認をと飛び出したのですが、信号が動いて無い為渋滞にはまり、現地確認出来る高台に着けたのは波が引ききった後でした。
車道に山積みとなった様々な瓦礫や、一階が抜けてしまった建物、ホウキで掃き寄せたように集まった車等、今でもハッキリ思い出せます。
今更ながら、災害があった際には最もとってはいけない行動だったと反省しております。
私の他にも大勢の方が同じ場所でその様を見ていたのですが、皆、声にならない声、会話にならない会話をしていました。

確かに、苦しく悲しい事象です。
忘れてはならず、記録や記憶に残さなければならない。
それは、被災者にとって厳しい事も事実です。

ですが、生きています。
これからも生き続けて行くのです。
時間がそれを手助けしてくれるのも事実です。
いつまでも悲しみを引き続けてる訳ではなく、次のステップに進んでいるんです。

長々と書き連ねてしまいましたが、要はこう言う事です。
現地被災地に住んでいる人間すべてが、ドラマで取り上げる事を批判している訳ではない。
逆に、当時の他の地域を知る手がかりとなる。
そう考える事が出来るだけの時間が経っていると。
津波に船を破壊された漁師が、今日も雇われて乗った船で漁をしていると。
少なくとも、私の周囲の方々は、波の映像が怖いとか、瓦礫の映像を見るのは嫌だと言っている方はいません。
あった事実を淡々と受け止め、日々を生き続けています。
結局は、その取り上げ方なのです。

「あまちゃん」の時もそうでしたが、震災地そのものからは、そう言った批判はあまり無かったのではないでしょうか。
逆に、復興の足掛かりにと盛り上がっていた記憶があります。
ムキになって反論するのもどうかと思ったのですが、現地の人間の考え方も知ってほしくて、つい投稿してしまいました。

此方のサイトは、「武将」きっかけで閲覧する事になりました。
現在進行中の大河のレビュー共々、共感しつつ拝見しております。
特に、大河のレビューについては、東北人目線で激しく同意しております。(笑
「半青」も残り1週となり、非常に寂しくもありますが、此方共々楽しく拝見させて頂きたいと思います。
永野さんの演技に感動しつつ、東北訛りを交えて「すずめんこい」と思いながら視聴しています。(笑

最後に、病み上がりの武者様には、お身体をご自愛されつつ、激熱レビュー御執筆に期待しております。(笑

ビーチボーイ

訂正します。29日の土曜まであるんでしたね。私が書いたよりもう1回ずつ多いですね。ごめんなさい 笑

ビーチボーイ

本当に、こんな朝ドラは初めてでしょう。最終週のスタートなのに、この重苦しさ!あのスズメが食欲が無いなんて、このドラマ始まって以来の緊急事態です。漫画が書けずパニック状態で缶詰めのあの時だって、食う暇が無かったのであって食欲不振とは違いますからね。
通例の朝ドラなら、ファイナル5回なんてもう全登場人物が次々にお別れ挨拶よろしく出て来て、みんなそれぞれハッピーになって笑顔笑顔、だけですもん。
半分青いのこの斬新さ、凄いチャレンジですよ。しっぽまであんこの詰まった鯛焼きという北川氏の言葉がずっしり心に響きます。
スズメにとって一番はもちろん律だけど、同時に、やっぱりユーコがいかに切っても切れない大切な存在であるか、そのユーコが東北で安否が分からない、スズメの心の叫びが聞こえて来て胸が締めつけられます。あと4日間、もうたまりません。毎朝、片時も目が離せない15分間になるでしょう。

miyuki

本当にこの段階で、日本中の人が辛い経験を持ってくるのは凄い事だと私も思います。
このドラマは恋愛ドラマではありません。人生ドラマです。誰もが同じように嬉しいこと、悲しいこと、失敗したことなどが一杯あるけれど、どれも無駄ではなく全ては繋がっている。なので鈴愛に起こった事は全て描かなくてはいけない。避けてはいけないと…北川先生はたいへんだったと思います。あと5話…終わるとなると本当に寂しい気持ちでいっぱいです。

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