お侍さんと激突!ピストルが……
大阪でそれぞれの許嫁に会うこととなった今井姉妹。
活気溢れる街の雰囲気に、あさはすっかり浮かれます。
浮かれるあまり、猛然とダッシュ!
遠景はCG、近景はロケをしたと思われる大阪の街並みはなかなか綺麗です。
大河が最近は屋外シーンでもスタジオ撮影ばかりなので、正真正銘、太陽光で昔の街並みが見られるのはうれしいです。
あさの目に映る“新鮮な活気”を表現するにはこのぐらいがいいんですね。
あさは縦横無尽に駆け回り、ぶつかって叱られると即座に謝る常識はあります。
そして、曲がり角の先では侍に激突!
ここで入るBGMのエレキギターがちょっと面白い。瞬間、宙を舞うのはなんとピストルでした!
おいおいお侍さん。
ちょっと不用心とかそういうレベルを超えてませんか。
侍の急ぐ様子からして、逃げているのか、あるいは誰かを追いかけているのかもしれません。
ピストルはすっぽりとあさの袖に入ってしまいます。
実力はあれど知名度まだまだ それがイイ
ここで侍の名前が表示されます。
「五代才助(のちの五代友厚)」
演じるのはディーン・フジオカさんです。
香港や台湾、日本国外で活躍してきた俳優で、当時の日本ではまだ知名度が低かったのです。
しかしまぁ、このキャストが実にうまいんだなぁ。
実力はあれど、人気知名度はまだまだ。
そんな役者さんを、これまた偉業を成し遂げたのに無名に近い歴史人にあてる。
『独眼竜政宗』における渡辺謙さんですね。そんなキャスティングを本作は見事に五代友厚でやってのけるのです。
以前、『西郷どん』レビューで、
【とりあえず知名度のある豪華な美男美女をかき集めてきているものの、面白みがないキャスティング】
と評したことがありますが、その点、あさが来たでは上手にこぼれ玉
さらにこのフジオカさんの海外で培われたグローバルな雰囲気が、これまた五代にあっています。
初期キャストのポスターで一人だけ洋装。
京阪商人中心の中で薩摩藩士だし、初登場でいきなり英語混じりと登場人物の中で異質な個性を放つ――。
実にうまく役者の個性と役柄がリンクしています。
このキャストの妙味、
「民放の幕末ドラマで人気だった役者さん引っ張ればいいだろ」
とイージーにやらかしたダメ大河やダメ朝ドラのスタッフは爪の垢煎じて飲んで欲しいです。
それが日本男児のすることですか!
さてこの五代、やっとピストル紛失に気づきあさを追いかけ始めます。
木登り自由なあさは駆け足も早く、苦戦する五代。
行き止まりでやっと追いつくと、壁に押しつけて身体検査を始めます。
そして目的のピストルをゲット。
おさまらないのはあさです。
泥棒呼ばわりされるなんてひどい!と追跡し、ジャンピングアタック(スロー入り)してピストルを再度奪うのです。
五代に「世間知らず呼ばわり」されたあさはムッとして言い返します。
「いきなりぶつかって逃げて、世間知らず呼ばわりして、それが日本男児のすることですか!」
と、一歩も退かずに正論をビシバシと決めます。
汗をかいて上気して、本当に頑張って走ってそのまま台詞を読む梨央さんのかわいらしいこと。
五代が「はあ!?」と一瞬険悪になり、あさは「お武家様に失礼なことを言ってしまった」と謝ります。
先ほど人にぶつかった時も即座に謝りましたし、最低限の常識や礼法はきちんと身につけているわけです。
なんだろう。最近のドラマで、ハタチ前後なのに何かが欠落しているヒロインを見てしまったので、あさちゃんがめっちゃ輝いて見える!
どこかユーモラスな英語&薩摩弁
頭を下げるあさを見て五代は反省しきり。
「いや、もっともな言い分じゃ! 申し訳ごわはん」
英語混じりな上に薩摩弁で、果たして会話は通じているのか?
それともちょっとおかしいのか?
どこかユーモラスです。
急いでいるのに、あさが呼びかけると振り向き「なかなか楽しかった、グッバイ」と答える五代。
子ども相手にも見下さない好青年ではありませんか。
あさにとっては英語も薩摩弁も等しく、チンプンカンプンな言葉。確かに当時の薩摩弁は、別の地方の人にとっては外国語です。
今後、しばらく五代の出番はなさそうですが、この少ない場面に彼の情報はみっちりと描きこまれていました。
ざっと以下の通りですね。
・薩摩出身
・ピストルを持参、上海帰りで英語ができる(=グローバル)
・せっかちだが悪い男ではない
・相手が子どもでもきっちりと一人の個性として扱うフェアな性格
これはなかなか、再会が楽しみになりそうな好キャラぶりですね。
『マッサン』では会津藩、本作では薩摩藩。
『花燃ゆ』で実態不明な悪の秘密結社のようにされてしまった幕末の雄藩を、朝ドラできっちりとフォローするNHK大阪。このころは秀逸でした……この頃は……。
ありがとうございます。
やっぱり、武者さんの楽しそうなレビューを読みたいです。
あさがきた放送時にはまだこのサイトを知りませんでした。
改めて再放送を見ようと思います。