あさは正吉に銀行開設を相談します。
一方、京都今井家では、東京引っ越しの時を迎えておりました。
そうそう、正吉から「三男がもう十六才」という会話がちらっと出てきました。
そろそろイケメンの本役になりそうですぞ。
加野屋前では、雁助、亀助、弥七、うめらが炭坑をめぐってコント。
なぜだか炭坑をパントマイムで表現するようなことになぜかなってしまい、雁助がキレ気味に止めます。
どうやら雁助は、名門の両替屋がなぜ炭坑業務をしているのか――と、不満のようです。
亀助や弥七は楽しそうに話しておりますが、雁助の悩みは深い。
この場面の会話で、散切り頭=断髪の話が出てきました。
天皇陛下も断髪したとか、何とか。
明治天皇の断髪は明治6年(1873年)春とのことです。
この断髪ネタは『タイムスクープハンター』の「走れ!散髪ポリス」でも取り上げられました(リンク先)。
新次郎にも断髪をすすめる忠興
あさと新次郎は五代友厚の寄合に参加し、銀行について話を聞いています(新次郎はいっこも聞いていない、と言いますが)。
そこへ訪れたのは、断髪洋装の今井家・忠興と久太郎改め忠嗣でした。
この服装の方が現代人に近いのですが、ちょんまげ和装に見慣れていたせいか、びっくりぽんです。
場面が変わったら皆断髪になるよりも、こうしてジワジワと変化していく方がリアリティを感じられて面白いですね。
思い切って断髪した忠興は新次郎にも勧めております。
実際のところ、鬢付け油から解放されるとかなり楽になったらしく、もっと早く切ればよかった、思い切って断髪してよかった、と思う人も多かったそうで、実感のこもった台詞ですね。
眉山家も今井家の出立を話題に食事をしております。
しかし、はつはなかなか和歌山行きの話を出せません。そのせいか懐妊と勘違いされてしまいます。藍之助の時には憎まれ口を叩いた菊も、すっかり大喜びなのは微笑ましいのですが。
政府とのパイプはどうしても弱い
一方で加野屋の炭坑も業務が停滞中。サトシの組が掘らないようです。
しかも動機が「大阪人が嫌い」とか「あさのために掘るのが嫌だから」とか。
一体どんな事情があったのでしょう?
銀行業務の方も、実は正吉が首を縦に振らないようです。
どうもまだ時期尚早ではないか、タイミングがピンと来ない。
タイミングというより、現時点で銀行設立にどーんと乗れるのは、今井家レベルでなければ無理なのではないかと思います。
炭坑という新規事業に手を出し、ローンも残っているような状況で、さらに新しく何かを始めるというのはリスクが大きすぎます。
闇雲にはねつけず、やんわりとユーモアを交えてあさに説得する正吉はやさしいですね。
史実ネタですが、今井家のモデルである三井家があれだけ勢いがあるのは、何度か書いているように
【いち早く新政府に味方したから】
です。
加島屋(加野屋)はそこまではっきりとした態度を取っておりません。
ゆえに政府とのパイプはどうしても弱いんですね。
本拠地が東京と大阪に別れてしまうのも大きいわけで、どうしても今後ビジネスの規模でも差がついていきます。
しかしそれが物語としてはマイナスになるわけではなく、むしろプラスで根底にあるテーマ「大阪の意地を見せる!」がより鮮明になるかと思います。
初の日本産ビールは大阪・堂島で
そうして話していると、また五代が何かを持って来ます。
なんと日本初のビールだとか。
あさが開けるといきなり泡が出てびっくりぽん!
「日本初のビール」と曖昧に呼ぶとややこしい話になります。
江戸時代からオランダ人が自家製のものを作ったり、化学の実験として取り組んだりした蘭学者がいたそうですので、それが厳密には日本初でしょう。
しかしあくまで自家製や化学実験の産物です。
産業用のビールとなりますと、明治3年(1880年)にアメリカ人が横浜で作ったものが初となります。
そして明治5年(1872年)に、堂島で大阪商人の渋谷庄三郎が作成しました。五代が持ってきたのはこのビールですね。
ややこしくなりますが「日本人の手によって作られた産業用ビール」は、この堂島産が初。
『マッサン』では国産ウイスキーの誕生が描かれましたが、本作では国産ビールの黎明期が出てきたわけです。
それにしても、幕末はおもしろいけど明治がつまらないなどと誰が言い出したのでしょうか。
日本で初めてのことがこんなにたくさんある。
散切り頭に洋装、丁髷に和服が入り混じるなんて、無茶苦茶で面白いではありませんか!
明治がつまらない時代なのではなく、作り手が面白くできないだけなんです。
明治はおもしろい!
改めてそう感じました。
今週の総評
突っ走る展開にちょっとブレーキがかかったような印象。
これは決して悪いことではないと思います。
中だるみしているわけではなく、あさのビジネスの流れが今までほど順調でないからそう感じるだけでしょう。
また今週は今後の伏線となる描写が多くありました。
ふゆの思わせぶりな態度。
新天地に踏み出せないはつ。
そして何かを秘めているサトシ。
そしてあさを真ん中に、互いの間にバチバチと火花が散り始めた新次郎と五代もいます。
次週から、果たして彼らがどう行動するのか。楽しみですね。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
※あさが来たモデルの広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます
【参考】
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