朝ドラにおける障害描写について
本レビューおよびSNSに、
「『まんぷく』のおかしな箇所は批判するのに、『半分、青い。』のおかしな部分、特に鈴愛の片耳失聴について批判しないのはどういうつもりか?」
という問い合わせがあったとのことです。
編集さんは「その人、結局、まんぷくのおかしな箇所を認めてるってことだよね♪」とニヤニヤして、同時に「どうせなら反論しておきましょう。ただし、しつこくなりがちなので一度だけ」と言っておりました。
なのでこの場を借りて対応させていただきます。
正直、今までドラマのレビューをしていて、こんな経験をしたことはありませんでした。
一体、前作と本作は何なのか?
本作が好きになると、自動的に前作を貶めてしまうのか?
あるいは前作が嫌いだから本作を好きになるのか。
言いたいことは唯一つ。
誰も彼もが同意見にならないと気が済まんのかい?
まったくもって理解できない。
ここで終わってもよいところですが、せっかく忠彦で色覚の話が出てきましたので、もう少し書きましょう。
前作『半分、青い。』で片耳失聴の描写が存在しないという意見についてを検証したところ、筆者が鑑賞した範囲では片耳失聴の描写は存在しています。
1.高校時代の鈴愛が、ブッチャーから名前を呼ばれて方向性や距離感がわからなくなる場面
(他にも遠距離で呼ばれるとわからない箇所がある)
2.鈴愛のつけ耳の場面
3.律は常に鈴愛の耳が聞こえる側に座っていること
4.就職差別
5.家族、特に母の晴は鈴愛の障害を気にしている
6.鈴愛が漫画家としての道に挫折し、お見合いを断られた際、左耳のことを口に出す。日頃口にしないだけで、鈴愛の脳裏には障害のことがあったとわかる
等々。
鈴愛は性格的に障害のことをあまり表に出しません。
また障害をテーマとしたドラマではないため、常に聴覚障害が前面に出ているわけではありません。
年がら年中片耳障害を語らない鈴愛はおかしい、という意見については、それは彼女の性格だとしか言いようがありません。
また、障害の受け止め方には当然のことながら個人差があります。
筆者の知り合いにも、聴覚に障害がある者がおります。
その人に聞いてみたところ、
「特に違和感がない。障害の出方や感じ方は、その人の数だけある。だから、一概には言えないが、私は違和感がなかった」
「むしろ障害を取り上げてもらって、感謝している部分がある」
とのことです。
なにより脚本家氏が片耳障害の当事者です。
彼女と見ている側の意見が違っても、それは個人差としか言いようがありません。
障害を持つ者は常に同じ状態になるという考えそのものが、問題があると私は考えております。性格と同じで、障害の出方、感じ方は個々人の数だけあるのですから。
ムンプス難聴についての考証も、きちんとしていたと確認しています。
これと比較すると、本作咲の結核描写なんて有害なほどでした……。
車椅子バスケをテーマとした漫画に『リアル』があります。
主人公は、片足切断という障害です。
しかし作中でも描かれるように、障害の程度は人によって異なります。
主人公は腕の力がありますが、全身の筋力が低下する選手はそうはいきません。
そういう個別の障害を描き分けることができるのは、あの漫画に複数の選手が登場し、かつ車椅子バスケがメインテーマであるからです。
『半分、青い。』のテーマは障害だけではありません。
そのレベルまで要求するのは筋違いです。
色覚異常で悩みましたっけ?
はい、ここで本作について突っ込みましょうか。
鈴愛の片耳失聴と比較して、忠彦の色覚についての描写はいかがですか?
主役と脇役という違いはありますが、具体的に悩んでいる場面はありますか?
信号機の色で悩んだりする場面はありましたか?
忠彦が悩む場面は、常に同じです。
白いキャンバスの前で、難しい顔をしているだけ。そこに色覚が関わっているかどうかも判別できません。
どちらかというと、新たなテーマが見いだせないために悩んでおりました。
だからこそ周囲にアイデアクレクレ攻撃をするわけです。
そんな色覚で悩む描写がろくにないまま、若い美人モデルの前でデレデレして終了しましたね。
忠彦の色覚については、プロットにさほどからみません。
突っ込む気力すらありませんでしたが、『半分、青い。』との比較に出してみました。
結果的に、より酷いと再確認できましたね。以上です。
最後に、これが一番言いたいことですが。
もしもこうした描写が足りないと主張したいのであれば、ご自身でまとめてレビューを書かれるなり、まとめるなり、なされたらいがかでしょう?
このレビューはあなたの意見と一致させるため、あなたの代弁者となるため、あなたに忖度するために書いているものではございません。
もしも一致すれば、それは幸運なことです。
一致しないようであれば、こちらのレビューをご覧になっていただく必要はまったくございません。
私があなたの意見に一致させる気はございません。
以上です。
ファイナルオヤジファンタジー
はい、これが今日最大の突っ込みどころ。
それは本作の存在そのものがセクハラタイムに陥ったことです。
名付けて【ファイナルオヤジファンタジー】!
以前は【ファイナル上司ファンタジー】だったっけ?
せっかくだからサブタイトルもつけようか。
【ファイナルオヤジファンタジー 子作りクロニクル】
パンチラだの子作りだの、再三に渡っていい加減にしろと突っ込みましたが、今日はその最悪の継承場面がありました。
神部夫妻です。
神部夫妻が浴衣で布団を並べてゴロゴロし、妻が子作りを迫る。
必要あります?
そもそもこの夫妻の恋愛なんて、ろくに描かれていませんよね。
二人の関係を辿ってみればボタン連打しかありません。
不法侵入してきた泥棒に惚れる未成年タカ、警戒心ゼロ
↓
神部を筆頭としたロリメンにチヤホヤされるタカ
↓
東京ラーメン屋美女と神部が恋に落ちる? そんなことはありませんでした……
↓
東京で、ロリメンがタカのブスいじり
↓
忠彦、タカの婚期を遅らせるため大学進学させる。そうかと思いきゃ、こんな娘でも貰ってくれるか?と神部に言い出す。意味わからん
↓
名門難関大学、当時はごく少数の女性しか行けない大学に進むタカ。しかし、特に勉強する場面はありませんでした……
↓
八年ジャンプで結婚していた。そして子作りを迫る
なんかもう『ず~~~っとボタン連打していたね』という印象しかない……。
こんな思い入れもないカップルの子作り場面を見せられても、不愉快でゲスとしかいいようがありません。
子作りクロニクル
だいたい本作って、ダメな【ファイナルオヤジファンタジー】そのものの出産育児観念ですよね。
子作り=アレ、で終わり。
出産はイベント扱いだわ、数日程度の出産予定日ズレをおかしいことだと描くわ、育児にはノータッチだわ、子役の成長はおかしいわ。
一番嫌われ軽蔑される、子作りはいやらしくてキモチイイことしていりゃいいでしょ〜、っていう発想しかないパターンです。
こういう古いファンタジーどっぷりの人々には、育児に関わり、我が子の将来を考える萩尾律なんて、そりゃ理解できなかったことでしょう。
この辺で見えて来たものがあります。
本作は、女性を人格で評価しない。
若くて性的に魅力があるかどうかだけで判断します。
女も、男に性的な魅力があるかどうか、男から自分をそう思ってもらえるかどうか、そこだけを気にしているようにいつも思っているのだと。
だからこそ、子作りがらみで、
「克子がおばあさんになるなんて、まだまだ早いでしょ」
「鈴さん、ひいばあちゃんになってもいいんですかぁ」
みたいなクソセリフが出てくるんですよ。
なんで女性だけ?
忠彦がおじいちゃんになると出てこないのはナゼですか?
男は歳をとらないか、歳をとっても魅力的で、若い女は常に俺たちにうっすらと好意を抱いているとでも思っているの?
このあと、前述の克子嫉妬場面が入るのもそうですよね。
『福子のセクシーシーンなんて、もう需要ないよなあ。あれもババアだし。やっぱり若いタカが子作り迫らないとダメでしょ』
そういう意識で、布団で子作り迫る要員を切り替えたようにしか思えないんですわ。
タカが歳をとったら、今度は妹の吉乃、幸、源の妻あたりがごろ寝セクシー要員になったりして?
そうだとしても、さすがにもう驚きませんわ。
やっぱり本作を見ていると、『半分、青い。』に対する理不尽な批判の正体も見えて来ます。
そんな価値観の人からすれば、イケメンが離婚を言い渡されることはありえない。
だから鈴愛とより子が許せない、40近い鈴愛と律のラブシーンなんていらない、と言い出すわけだ。
人物や場面の意味あいより、【ファイナルオヤジファンタジー】としてエロくてウッハーとさせてくれるかどうか、そこだけ重視している。
そういう【ファイナルオヤジファンタジー】は絶滅危惧種だと、『SPA!』の炎上あたりから学びましょうね。
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↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!
※コメントにつきましては、
・まんぷくここが好き!
・まんぷくここがアカン!
という意図でご自由に記述してください。
作品に関するものについては全て掲載しております。
攻撃的な書き込み等については、こちらの判断で削除させていただきますので、あらかじめご承知おきください。
本作はもうほとんど観ておりませんので、こちらのレビューも「今はそんなことになってたんだ。相変わらずしょうもないドラマだな」という感じで読んでいます。
それよりも『あさが来た』のレビューの更新が年明け以降止まっていますね。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。
人それぞれの感覚、気づき、感想を楽しみにドラマを共有しているつもりの自分です。故水野晴郎さんの、映画作品には必ず良いところがある。脚本、演出、演技、音楽、美術、カメラ、等々。ですからTVドラマも同じように楽しみたいのですが今作はアキマヘンでした。良い所もあるかも知れませんが、それ以上に不快な事が多すぎて見ていられません。提灯記事や絶賛レビューは置いといて、駄目なものは駄目、ならぬものはならんとキチンと書いてあるココに辿り着いて少しホッとした次第であります。過去記事や再放送あさが来たの記事も楽しく読ませて頂きます。
このドラマを見ているうちに、大分前に炎上した
『男は皆五歳児。そう思って女性が母性で包んであげれば全て上手く行く』
というDressの記事を思い出しました。
「俺達は永遠の五歳児なんだ―!だから女はありのままわがままを受け止めて徹底的に甘やかせ―!!!」
というプライドもクソもない哀れな主張が透けて見えて腹が立つより
「誰か男性学を!(オバマ元大統領はじめ多くの男性からも指示されている)最先端のフェミニズムを!大ベストセラー『サピエンス全史』の差別についての記述を!この作品を産み出した哀れなスタッフ達に教えてやってくれー!!」
と叫びたくなります。
どうせならサブタイトルに付け足して
「ファイナルオヤジファンタジー コヅクリクロニクル クソガキモンペアダー」
くらいにして貰いたいところ
年が明けて、わがTLではこのドラマのことは、とんと話題に乗らなくなりました。武者さんのレビューを見つけて、ドラマもレビューも続いていたんだなあと。