あさのいた店は牛鍋屋です。
そろそろ作中の舞台があの『るろうに剣心』と同じ時系列になってきたことにわくわくしている方もおられるでしょう。
あさが画面の外で、剣心や薫とすれ違っているかもしれない、と想像すると面白いものがあります。
あの作品にも牛鍋屋「赤べこ」が出てきましたね。
噂をすれば忠興が!
あさがここで待ち合わせていたのは弟の久太郎こと忠嗣でした。
あさは千代を置いて東京まで来たことが後ろめたいようで、弟とだけ会うことにしたようです。
忠嗣はアメリカ留学の経験談をしたくてたまらない様子。
そこへ見覚えのある姿が……噂をすれば忠興でした。
忠興は息子の様子がおかしいと感づき、後を付けてきたのでした。
再会早々お説教タイム。
あさは土産の粟おこしを差し出しますが、忠興は土産とかそういう問題やないとこれまた怒ります。
あさはめげずに、おなごにも勉学が必要と、福沢諭吉本人の前でその教えを暗唱し出します。
それを聞いて反応する福沢。
たまらず「その通り! ザッツライト!」と立ち上がり、あさの席にやって来ます。
福沢が熱弁!栗おこしを食べながら
ここから福沢諭吉先生の男女平等論開始。
男と女は同じだ、しかし現実では男が女に忍従を強いているのではないか、と語ります。
日本の婦人は「三従の教え」を教えられているが、そんなこと男であれば従えますか、と熱い福沢。
女性の自立には経済的独立が必要だ、と語る福沢。
ここで福沢はあさに女社長になれと激励します。
しかも粟おこしの包装紙をバリバリと破り、勝手に食べてしまうという。
この有名人が出てきてヒロインをやたらと褒めるというのは、一歩間違うとメアリー・スーと言いますか『江』や『花燃ゆ』現象を起こすのですが、本作の場合この粟おこしを食べるようなギャグを入れることで、うまく中和していると言いますか。
ギリギリで嫌味にならないよう、保っていると思います。
これから七年後、福沢は『日本婦人論』を刊行します。
それとこの福沢の「女の自立には経済的な後ろ盾が必要」という台詞は現在にも通じるものがあります。
あさの時代から随分立ちますが、現在においても男女の賃金格差は解消されず、女性の社会進出もまだ十分とは言えない状況です。
ビーフシチューっぽい牛鍋が
ここで福沢が去り、一瞬牛鍋の中身が映ります。
これが現在のすき焼きよりも、ビーフシチューに近い外見なのが興味深いところ。
これはこれでおいしそうですね。
あさは大久保に会ったと忠興に報告します。
そういえば以前、ちらっと忠興と大久保が並んだショットが映っていましたね。
それにしても最近、波瑠さんの台詞の読み方が上達していて、あさの成長とかぶって見応えが出てきました。
忠興も何だかんだで、娘の成長ぶりに感心した顔になっています。
そして忠興は、娘と別れたあとで忠政の「あさは男として育てたい」という言葉を思い出すのでした。
国家を作るのに必要な三十年論
一方、五代と大久保は二人並んで、五代が英国から持ち帰ったウイスキーを酌み交わします。
きっとスモーキーフレーバーがポイントなんでしょう。
大久保は「姑息な政治家」だと思っていないか、と五代に聞きます。
この台詞哀しいんですよね……。
大久保は、世間から慕われた西郷隆盛を西南戦争で死に追いやった姦悪な陰謀家と思われていました。
特に同郷の薩摩人から嫌われました。
大久保とて同郷の同志を追い詰めたことは痛恨の極みでしょう。
だからこそ薩摩出身の五代に、そんな台詞を投げかけたわけですね。
五代は全力で否定。
この言葉に大久保は力づけられたのか、国家を作るのに必要な三十年論を語ります。
史実で大久保はこの時期これを語った相手は五代ではありませんが、この程度の創作はありでしょう。
大河の「新しい日本」は中身がないのでさっぱりでしたが、大久保と五代は具体性があるのでうなずけます。
さりげなく、これからの国作りには女性が必要ということも出てきます。
このコンビ、もっと見たいなあ。
スピンオフやらないかなあ。
2018年の明治維新150周年大河は、この二人にさせてもよかったんでは?
しかし、このあとの展開を考えると……。
紀尾井坂の変
その数日後、あさが大阪に帰る日となりました。
五代はあさを見送る準備中。
ここで五代の側近・三坂の台詞にちらっと渋沢栄一が出てきます。そして急報が!
あさが受け取った新聞の号外には、衝撃のニュースが。
そこに書かれていたニュースとは、大久保利通暗殺(紀尾井坂の変)でした。
『るろうに剣心』について先ほど書きましたが、作中で大久保を暗殺した瀬田宗次郎のことを思い出した人もいたようです。
こういうフィクションとフィクションの交錯を脳内で味わうのも、歴史ものを楽しむ上での醍醐味ですね。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
※あさが来たモデルの広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます
【参考】
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このふたりのシーン、いまでも胸に残ってます。さりげないようで細やかな映像。切なかった。