じいちゃんのことを芝居にしたい。
取材して、状況を深く知ろうではないか。
演劇部顧問の倉田から、そう言われたなつ。
これは波乱の予感がします。
柴田兄妹の恋心
その晩、なつは柴田家の食卓で、演劇のことは伏せて、「雪月」について語ります。
さすが「雪月」、喫茶店としてどんどん繁盛おりました。
単に主人公と近いという御都合主義じゃないのがいいですね。
雪之助は実際に、実力がある。
知恵もある。
経験もある。
なにより発想豊か!
牛乳とバターは柴田牧場直送ですからね。
そりゃあ繁盛しますわ。
ここで、
「相変わらずのとよ無双」
的なことを言われて、周囲が納得しているあたり、やはりあのバァさんは強い!
出番がなくとも強さは伝わって来ます。
ただし「雪月」の土産は、明美が全部食べちゃったそうで。
ちょっと恨めしそうな、泰樹がめんこいですね。甘党ですもんね。
軍師・夕見子は、こう分析します。
「雪次郎は演劇なんかやりおって、女の子にモテたいのか」
すかさず、なつが「焼き餅を焼かなくても」と言われると、否定します。
この先が、軍師の軍師たる口上です。
「だいたい雪次郎って名前おかしいし」
それは父親が雪之助だからでしょ、と、突っ込まれたってめげません。
そういう例はありますね。父が長男扱いで、その息子が次男扱いになるケースです。
しかし、軍師の分析は容赦がありません。
跡取りはモテないから、偽装しているんでしょ、だってさ!
するともう一人の跡取り・照男が暗い顔に……。
そんな兄を無視して、これからの【自由を求める女には跡取りはモテない】と持論を語ります。
この会話に、柴田家兄妹の恋心も詰まっていますね。
跡取りはモテない。
照男が動揺するのは、好きな子がそうだったら困るから。
夕見子も、雪次郎を意識しているのでしょう。
ただ彼女の場合、それを認めるとは「不覚!」という発想が湧いてくるのです。
軍師だからさ。
こういう理詰めでカチカチのタイプは、自分の心の中にあるものであっても、恋には弱い。
先の読めない、コントロールしにくい感情と状況は、戸惑ってしまい認めたくないものなのです。
そんな夕見子相手に、雪次郎よ、頑張ってくれ!
農協の話も聞いてみよう
翌朝、牛の世話をする泰樹。
この日の放課後、倉田ともどもなつは農協に向かったのでした。
剛男はじめ、職員たちがいます。
建物の雰囲気がいいですね。
なつが来たことに驚く剛男に対して、なつは倉田を紹介します。
何か問題でも起こしたのか?
とあわてる剛男に、農協の問題を知りたいと切り出す倉田です。
すると上司の田辺組合長が「何でも聞いてください」と反応するのでした。いい人ですね。
なつはズバリ、単刀直入です。
「じいちゃん(泰樹、知略99)に手を焼いているんですか?」
ストレートな質問に、思わず苦笑する田辺。
彼女はさらに続けます。
じいちゃんが主張している、農家が直接メーカーに牛乳を売ることははおかしいのか?
いいえ、おかしくないと田辺は説明します。
確かにかつてはそれが当たり前のことでした。
しかし、乳牛メーカーが増えて、競争状態になってしまったのです。
牛乳の価格を左右する脂肪検査は、メーカーが行なっているのです。
その検査が適切なのか。
結果は正しいのか。
酪農業者には把握できないようになっている。
そこで、メーカーがごまかせないように、農協が牛乳を集めて検査をする。そういうシステムにしたいわけです。
なるほど、それはよいことです。
しかし、検査以外にもう一つ問題がありました。
メーカーはまとまった乳量確保のために、大きな牧場ばかりを贔屓します。
そうなると、山田家のような中小農家はが追い詰められ、不利になってしまうのです。
そこで農協としては、酪農家の規模に関わらない共存を目指している。
十勝全体を、日本一の酪農王国にしたい――そう語る田辺です。
これは実にわかりやすい説明ですね。
検査の問題点も、中小酪農家が不利ということも、よくわかりました。
柴田家のような開拓一世は有利。
しかし、山田家のような後発組は不利ですものね。
田辺もいい味を出してるなぁ。
リーダーシップを感じます。
彼が直接、泰樹を説得できないものですかね……なんて、ここはやっぱりなつがキーパーソンですな。
「奥様封筒」の是非
帰り道で剛男は、なつに「演劇をやりたいのか?」と尋ねます。
そうではなく、じいちゃんの問題を知り、考えるために演劇をするのだと返すなつです。
彼女は、農協の考え方が正しいと納得していました。
しっかりそこを説得しなくちゃ、そう微笑むのです。ただし、相手は知略99ですからね……。
それにしてもこの年代モノの自転車をよく確保しますよね。
『いだてん』でも驚きました。
そうそう、自転車の歴史と言えば。
『いだてん』のスヤが乗るころは、高級品です。
なつの頃には庶民の足ですが、それでも昭和33年(1958年)までは所有税がかかるほどでした。
二人が柴田家に帰ってくると、見慣れぬ車が一台。
誰か来ている様子です。
中には見知らぬスーツの男がいて、「感謝の印だ」として富士子に封筒を押し付けています。
中身は金銭ですね。どうやら乳業メーカー担当者のようです。
その様子を見つけた剛男は憮然として言います。
※続きは次ページへ
>ガブレンツ奮戦様
ご指摘ありがとうございます!
修正いたしました^^
ならびに、いつも貴重なご意見ありがとうございますm(_ _)m
第16話のレビューが、何故か非分類になってしまっていて、「感想あらすじ一覧」に載らなくなってます。
「乳業メーカーに対して不利になりがちな中小酪農家を含め、極力大きな単位でまとめることで、乳業メーカーと対等に取引できるようにする」
これは、まさしく「指定生乳生産者団体制度」の趣旨でもあります。
その通り、この制度自体は一定の機能を果たしてきたもの。
ただ、あくまでも「弱い立場の酪農家の保護」が制度の趣旨であるので、競争力のある高品質乳などを生産する酪農家が、出来の悪かった分を売るのにだけこの制度を使うというのは趣旨が違う、それで、「出荷義務付け」があったり、補助金交付対象もこの制度を使う酪農家が対象となるようになっていた。ということだったようです。
このあたり、農水省や各団体等もWebに公開している資料があるようですので、ご覧になってみられるとよろしいかと思います。
その上で、規制改革会議の提言・答申や関連報道等を見ると、より理解に資するのではないかと思います。いずれの立場にせよ。
(※個人的な理解です)
農協の建物。武者さんの仰るように、とてもいい感じで、昭和20~30年代の農協の雰囲気がよく出ていると思います。
その後合併が進んで、今なら「支所・支店」レベルとなりますが、当時の単位農協はこんな感じだったことがわかりやすく描かれていると思いました。
農協側の考えが明らかになりました。
正に、共同出荷の目的はこれ。変に悪く決めつけた形にせず、正当に描いたことは好感が持てます。
泰樹の方はと言えば、むしろこちらの方が、開拓期に乳業メーカーから支援を受けた経緯、恩義…悪く言えばしがらみ? を無視できないのか?とも取れる姿勢。
とは言え、「綺麗事だけで家族が守れるか!」の言葉に、言い難いことが全て含まれていることを強く感じます。
表面的には理解しにくく、まだ消化不良感があります。明日このあたりが明らかになるでしょうか。
剛男さん、なんか真田丸の秀次様っぽい空気も出てきた気がします。繊細で風雅を愛するところ、優しいところ、娘に「父は強い人ではない」とか言われちゃうところ…
こじれにこじれて「切腹」とかなりませんように!!
このドラマは、敵側を一方的な悪にしていない点がいいと思います。
【両者の言い分それぞれに理屈がある】
武者さんの仰るように、なつぞらの脚本に信頼が置けるのはこういうところですね。
『無実の罪』で主人公を逮捕して拷問したり、あくどい手口で商売の邪魔をしたりの完全なる悪者が出て来ない。
登場人物たちそれぞれの考え方に理由があり、共感したり、考えさせられたりしています。
そして、家族にも隣人にも、愛情に溢れた人々を毎日見ることができて幸せです。