なつよ、話す時間が長すぎる。
この続きはあとにしよう――。
ポポロは納得できない、倉田も
これにはポポロも反発!
そんなシーンから演劇部の稽古は始まります。
主役は雪次郎。
ポポロは、ペチカを犠牲にするくらいなら戦おうと村人に呼びかけます。
しかし、病気の家族がいる村人は戸惑うばかりです。自分のことばっかり考えているんじゃないのか、って。
そうか。
ポポロ=泰樹じいちゃんってことかな?
ここでペチカは、自分のことばかりを考えていてはいけないとポポロを諭します。
その考えこそが間違っているのだ、って。
しかし……。
「奥原、何考えてんだ! ちゃんとやれ!!」
倉田がそうダメ出しします。
「ペチカ様は、あんな奴の嫁になりたいのか!」
「それを望まないのは……」
何度も何度も、ともかくダメ出しされるなつ。
どこがどう駄目なのか、戸惑いなつに倉田は具体的な指示を出しません。
「駄目なのはわかる。自分で考えれ」
「私は下手なんです!」
「下手というのは、何かをやろうとしてできるもののことだ。何もやろうとしていない、下手以下だ!」
容赦なくそう言い切ってしまう倉田。
なつは傷つき、ボロボロになって帰宅するのでした。
重たい食卓、軍師の思いやり
柴田家は、夕食の真っ最中でした。
着替える前に食べろと促す富士子ですが、なつは自室へ向かいます。
ここでイジワル軍師・夕見子がこう言います。
「ふっ、天陽殿と喧嘩でもしたのであろう」
「そういうことを簡単に言うな!」
軍師からすれば、一言で二人(なつと照男)が動揺させられる格好の状況です。
それにしても天陽ってば。
照男といい、門倉といい、なつに恋する男から嫉妬バチバチですね。
「重くなるより軽くなる、簡単に考える方が、よいではござらぬか」
「夕見子ねえちゃんには無理だよ」
明美が悟りきった口調でカットインしてきました。
夕見子よ、あんたどんだけ憎まれ口叩いてんのさ……。
しかし、この軍師も、異変を察知。
暗い寝室で膝を抱えるなつを見に行きます。
「悔しい、悔しいよ。何もできないよ! できないよ。もう駄目なんだって……くやしい!」
そう悔しそうななつを、夕見子はじっと見つめます。
ほらね、やっぱりただのイジワル軍師じゃないんだ。
優しいんだよ。
魂って何だ? どこにあるんだ?
翌日も、なつはダメ出しをされています。
「あー、駄目だ! 魂が見えてこないんだよ! もっとちゃんと気持ちを作れ!」
するとジッと見ていた天陽がこう反論します。
「魂なんて、どこにあるんですか? 魂なんて、作れませんよ!」
おおっ、天陽、言ってくれたな!
これが本作のテーマなのかもしれません。
魂は、作ることができない
週のど真ん中、奥深いバトンを投げるそんな水曜日。
今日は魂問答が挟まれました。
天陽が切り出すというのも、興味深い。
ロジカルに魂を求める倉田や、芸術を学校で学ぶ陽平と異なり、天陽はうまれながらにして魂を表現できる。
そんな天性の持ち主に思えます。
彼は誰からも絵を習っていない。
それなのに、倉田を惹きつけるほどの魂を絵で発揮しているのです。なつがそこにたどりつけない境地へ、彼は一人でもう到達している。
だからこそ、魂なんてそんな理屈でできるものじゃないとサラリと言えてしまうのかもしれない。
きっと彼のモデルである神田日勝も、そういうタイプでしょう。
倉田の天陽へのざっくりした指示。
なつとの魂問答。
これを見ていて、
「ざっくり説明しすぎなんだよ! 具体的に言わんかい!」
となる視聴者もきっといることでしょう。
【情】ゆえに【理】が飛ぶ
ただし、倉田と天陽、それになつもこの【情】タイプであることは説明されてきました。
・倉田は、魂が好き。教師としてだけではなく、芸術に親しみたいからこそ、演劇部顧問をやっている。なつに対して「女子がいないから」といった理屈ではなく、魂で入部しろと迫っている。雪次郎と比較するとわかりやすい。
・天陽の「絵を描くことは便所に行くようなこと」。感性のまま、生きることと同じように描き、それを言葉で緻密に説明できない。そういう性格だとわかる。
・なつは、絵を描くことでストーリーを掴もうとする。
こういう【情】で生きる情熱家、アーティストタイプといえば、『半分、青い。』の秋風羽織が典型例です。
秋風塾で彼が語ったこんな言葉も、具体性とは遠いものです。
創作という魂の饗宴の中で、私は、しばしば病を忘れる。私は思うのです。人間にとって創作とは、神の恵みではないか、と
こんなん「何が言いたいねん!」ってなりかねない。
魂の饗宴って、なんやねん。
本レビューコメント欄でも、あの作品は鈴愛を筆頭に説明が足りないだの、行動が唐突だの、だから叩かれると言われたものですが。
脚本家の技量不足でそうなっているのか。
それとも、脚本家が理詰めで語れないキャラクター描写として、そうしたのか。
全く次元が異なります。
本作はまさに後者で、倉田にせよ、天陽にせよ、雄弁なようで理屈をすっ飛ばす話法を使ってしまうのです。
天陽としては、
「いいから具体的に何をするか言えよ!」
ではなくて、こう言いたいのかもしれない。
「魂とは、訓練や理屈じゃない。こんなことしても無駄でしょう」
そういうことを明日彼が言うとすれば、そりゃあなたは魂をうまれながらにして表現できるからですよ、ってことですね。
天陽くん、きみは本物の才能を持っているんだ。
【情】と【理】の描きわけ
はい、ここでちょっと【情】と【理】について。
脚本家の技量不足か?
それとも敢えて理屈をすっ飛ばすキャラを描いた結果、視聴者が誤解するのか?
この見分け方はあります。
【理】で武装しきっている人物との比較でわかるのです。
【情】にどっぷりの世界で、完全に【理】の住人でありそこに君臨しているのが、イジワル軍師・夕見子です。
自分の読みが正しいかを確認するため、人の心を引っ掻き回す。
戦国時代なら、きっと微笑みながら城に火をつけているね。
「もう姉は、趣味で謀略をしていますから」
と、明美が投げ出す軍師っぷりですわ。
夕見子なら、もっと違った食ってかかり方をすることでしょう。
「魂なんてそんな具体性のないことじゃなくて、演技論のどこが駄目なのか教えてください。昨日読んだ『俳優修行』によれば……」
こうなりかねないでしょ?
このタイプを描き分けているからこそ、わかってやっているんだな、とわかります。
脚本家さんのタイプで言いますと、
『なつぞら』:両者を理解して、意識的に使いこなす【理】上位タイプ
『半分、青い。』:両者を把握して、無意識のうちに使いこなす【情】上位タイプ
ではないかと思います。
ちょっと脱線気味ですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』は、【情】上位のデナーリスを、【理】の軍師ティリオンが制御してきたのに、それが通じなくなってちょっと混乱してきたという構図ですね。
じゃあ、それができていない脚本の作品例は何か、って?
「片っ端からエビを試すんだー!!」
という【無能かつ勤勉】一色でキャラを塗りつぶした****っすね。
そこには【情】もない。
【理】もない。
あるのは【エロ】と【コネ】だけの世界……。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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倉田のダメ出し。
舞台演出家あるあるですが、思えば、言葉だけ見ればトンデモナイ罵詈雑言の数々。
「どこが具体的に悪いのかくらい、そんなもの自分で考えろ」
「『下手』のレベルにすら達していない」
普通の職場で浴びせたら、完全にパワハラですね。
でもドラマ上の舞台稽古のシーンで、ここまで描くことも最近は少なくなって来たようにも思います。マイルドになってきたというか。
今日の『やすらぎの刻~道』でも、劇中劇『道』で、有力者の息子の不良共が、どう見ても卑怯極まりない形で主人公の兄を暴行。浅井しのの薙刀の技での反撃や、本家の兄ちゃんに締め上げられる等で辛くも助かったものの、ひどい怪我。なのに、主人公の父らが相手の親に詫びを入れに行き、床に額を擦り付けねばならない屈辱。
これも、昔の社会の理不尽あるあるですが、やはりマイルド化した最近の作品は、こういう描写を避け、あまり描かなくなりました。
両作品とも、こういうことを避けたり逃げたりしない。
脚本家はじめ制作陣の本気度が半端でない今年の朝ドラ&昼ドラ。
両巨頭作品の今後は本当に目が離せません。
ぺちかさまと同じ疑問を持ちました。
なつと夕見子は高3だったはず。だったら照男兄ちゃんはとっくに高校卒業しててもおかしくない。
そんな描写はありませんでしたが、高校へ進学しなかった描写もなかったはず。
たしかに武者さんの想像通り中学を出て家業を継ぐため働いているのかもしれない。
でも農家の跡取りなら農業高校に通っていたと考える方が自然ではないでしょうか?
全てを書かなくても何があったか、視聴者が思い描くことのできるようなお話を書く脚本家さんですから。
どうでもいいことかもしれませんが、決め付けが気になったので。
内村父さんにナレーションで止められた所で笑いました。
最近は登場する人達それぞれの個性が光っていて楽しいです。
脚本家の方もノッて書かれていそうな感じがします。
門倉君とよっちゃん可愛いですね!夕実子&雪次郎と共に先が楽しみです。
青春編だ!イケメン揃ってるし恋愛させとけば受ける!な作りじゃないのが良いです。
(もしそれならよっちゃんも夕実子も天陽君にいってる筈)
夕実子の優しさは一緒に育ってきた姉妹らしい優しさでますます夕実子大好きになりました。
倉田先生がなつの為に何を引き出したくてあそこまで駄目出しをしているのか、
明日先生と天陽君がどんな会話をするのか、
なつがそれを聞いて何をどう感じるのかが今から気になって仕方ありません。
登場人物がみんな好きです。
キャラクターが生きているドラマって、だから面白い。
ところで、照男は高校に行ってなかったんですかね?
もう卒業したものだと思って見ていました。
夕見子ちゃんが子役の時から大好き。
かっこいい。
大きくなってどうなるかドキドキしましたが、夕見子ちゃんっぷりは変わらなくてますます大好きになりました。
2ページめの夕見子ちゃんのイラスト、子役の時のになってます。
今日は、倉田先生の演技論が炸裂でしたね。
「考えろ、感じろ!」って事でしょうか?
それにしても、広瀬すずさん、良いですね~。
いきなり満点の完璧演技でなく、セリフ棒読みの大根でもない。
素人なりの抑揚を付けた、演技ってこんな感じ?
そんな表情に取れました。
演技指導の賜物でしょうかね。
面白いと思って観ていると、演者を贔屓目に視てしまうんでしょうか?(笑
個人的に、アシタカのモデルはアテルイの末裔かと思っていました。
東北の蝦夷で、真っ先に思い付いたもので。
「かつて朝廷に敗れた」とのアナウンスも有った様な無かった様な?
東北在住の贔屓目でしょうかね。(笑