なつぞら22話 感想あらすじ視聴率(4/25)天衣無縫

母はじめ、多くの人のお世話になったから……。

「何かの役に立ちたいわ」

これも、孤児らしい悲しさかもしれない。
駄作では、主人公夫の孤児設定がまるで生きてこなくて、義母や実子相手にも冷酷だったものです。周囲への感謝もない。孤児ならではの悩みがまるでありませんでした。

なつの場合、そんな性格ではない。

番長門倉の計略を、よっちゃんはわかっている

後日、舞台は再び演劇部。部員たちで練習に励んでいます。
と、軍師ではない猛将タイプの門倉が、計略を見せます。

なつの演じるペチカが、村同士での争いに心を痛めているのです。
そこに、高木演じる村長との会話になるわけですが。

「貫禄が足りねえぞ!」

村長役の部員にケチをつけ、無理やり交代。
発声もよくて、確かにさまになってはいます。

しかし、よっちゃんにはお見通しです。

「自分がやりたかっただけね」

このよっちゃんの、番長にめんこさを感じている目。たまらんものがあります。
ヒグマから鮭を取ったっていうから、どんな怖い人かと思っていたけど、めんこい❤︎

そんなよっちゃん本人が、めんこいんだあっ!

やっぱり、本作での演技論。大事です。
役者は見た目じゃない。演じる役に魂を込めることで、魅力が出てくるのです。

よっちゃんはまぎれもなくめんこい。魂ごとめんこい子です。

妙子「この私に相談かな?」

はい、今朝の軍師三人目。
本多正信系の知将・妙子も出てきますよ。

富士子は、帯広の「雪月」までやってきました。
何かあれば軍師に相談する、これは当然のことでしょう。

富士子は、なつの演劇観客への酪農アピールを相談するのです。

「牛乳でできたお菓子を配ったらどうかしら。アイスクリームとか」

そう言いながらアイスクリームを美味しそうに口へ運ぶ富士子。
ジッとみつめる妙子の顔が、完全に軍師です。

「アイスクリームとな? それでは溶ける……となると、必要な備品と経費は」

そこまで考えている顔ですぞ、これは!

富士子は、なつを応援したいと語り出します。
そこで、妙子はこう返すのです。

「富士子さんはもう十分応援しているしょ」

これも励ましなのか、軍師の策なのか?
「雪月」が菓子を提供するとして、富士子が途中でやめたら損害すら出かねません。動機をつかみたいところです。

この妙子といい、夕見子といい、女性がいちいち軍師顔になるところが、いいと思います!
台本を読み、軍師をつかみ、その魂を演技で吹き込んだからこそ、こうなっているのでしょう。

実の母にはなれないけれど

富士子は語ります。
なつは、母に親切にされていると語ったと。実の子ならばそうはならないはず。遠慮を感じてしまうのです。

妙子はみんなに対してそう言ったのでは?とは言うものの、富士子は感じているのです。

なつの疎外感、心理的な距離感を。

それでもいい。実母にはなれない。それならば、応援するだけでもいい。
あの子を応援する人でいたい。

そう語る富士子です。

この母の願いを受けて、妙子はどう出るのでしょうか?

魂を解き放つ

このあと、再び演劇部の稽古へ。
ペチカを演じるなつは語り始めます。

村人は家族。血は繋がっていなくとも、家族。
大事な家族が、争いに巻き込まれて命を落としたら。その悲しみに耐えられない。

だからこそ私が、家族を守る――。

太平洋戦争で、血の繋がった家族を失った少女。
そして血の繋がらない家族を見つけた少女。
恩返しばかりを考えていた少女。

そのなつが、自由に自分の感情を使ったと、ナレーターである父が語ります。

なつよ、下手でも伝わるものがあったぞ――。

演劇は、表現は、芸術は、この一人の少女を解放したのです。

奥原なつが自分のために生きること。
その道が、示されました。

天空の太陽

本作は核心に迫るような演劇論にたどりつきました。

あ、その前に。
昨日、天陽が【魂は作るわけじゃない】的なことを言い出すと予測したんですけれども。ほぼ正解かな?

やはり、倉田と天陽、そしてなつは同じタイプ。
アーティストでした。

そこにある魂をそのまま出してしまう。
天陽は現時点で、この三人の中でも一番高いところにいるのでしょう。

天陽は空気が読めない、人の感情を無視した言動も目立ちます。

・自分を起用した倉田に、後先考えずつっかかり、あとであれはまずかったかなと心配する
→つっかかること。心配すること。空気を読めるのであれば、順番が逆かも。

・具体性軽視
→データや、名声を得るためのルートを考えていない。だから具体性のある助言もできない。名選手になれても名指導者になれないタイプ。

・マイペースだが、感情が暴発する
→日頃の天陽は、おっとりとしていて微笑みを欠かさないタイプ。それなのに、スイッチが入ると前置きもなく感情が暴発するため、周囲は驚いてしまいます。倉田に食ってかかったところは、まさにこれです。

・悩むなつの芝居にイライラしたと、さらりと言ってしまう
→下手すれば、なつをより傷つけかねないわけです。

・人を苛立たせることは、意図していない
→夕見子と比較するとわかりやすいかもしれません。計算通りに心を引っ掻き回す夕見子と違って、彼は無自覚なのです。

彼は『半分、青い。』の鈴愛と似ていますね。
唐突で、説明不足な言動が見えてきます。時代背景や男女差があるため、受け取り方によってはかなり違いがあるでしょうけれども。

ついでに言うと、なつはここまでエッジが効いていない。
周囲を見ているタイプ。

天陽の性格は、父譲りなのでしょう。
泰樹への恩義よりも、不正への怒りがまず先に湧いてきてしまう正治です。

恩人である秋風にたてついた鈴愛は、さんざん非常識だのバカだの、叩かれたものです。

すべての人にこういうタイプを理解しろとは言いません。
わからない人は、わからないまま人生を終えてよいと思います。そこは好きになさればよいでしょう。

賢愚ではない。
思考プロセスや生まれもった性格ゆえに、空気を絶望的なまでに読めない人は存在します。

天衣に、縫い目を求めるな

そうしたタイプは、得てして組織からドロップアウトした生き方を模索しているもの。

彼ら彼女らを邪魔しないであげてください。
そういうタイプの成果を、横からかっさらわないでください。
わざわざ押しかけて、叩かないでください。
悪口を言わないでください。

天陽とはその名の通り、天空で輝く太陽なのでしょう。
見ているぶんには、美しくて恵みがある。

あなたの周りにいる彼のような人に、雲をかぶせるようなことはしないでください。
言いたいことは、それだけです。

こういう人物を表現する言葉は、昔からあります。

【天衣無縫】
です。

天から授かった何かを持つ人は、縫いあとがないように思える。
子供のように、飾らないように見える。
天陽にせよ、鈴愛にせよ、言動や精神年齢が実年齢よりかなり下に思えます。

縫い目がないこと。
それは空気なんか読まない、ってことです。

ボロっちい着物で高座にあがり、師匠に食ってかかる。
『いだてん』の古今亭志ん生も、この一人ですね。

そしてその作品がらみで、彼もそう。

◆東国原英夫、AAAは石野卓球より「常識的な人達」

グループメンバーが逮捕されたからって、別に彼は連帯責任を取らなくてもいいのです。
彼のファンは、彼の音楽における天衣無縫ぶりを愛しているのだから、常識なんかどうでもいいのです。

それなのに、外野が叩く。イジメのようです。

常識を考えろ、空気を読め。
それだけのこと。
常識や空気という縫い目を捨てたからこそ、彼らは美しい作品を作り上げているのです。

そこを理解しないで、ナゼ、彼らの邪魔をするのでしょうか。
天からもらったものを、私たちに届ける彼らを、理解しないのでしょうか。

魂の旅路は続く、創作も

ちょっと天陽語りが楽しくなって長引きましたが。
なつはちょっと怖いのかもしれませんね。

自分の感情と向き合うこと。
そのことを忘れていた部分もあるのかも。
そんななつだからこそ、天陽の刺激もあって自己解放できたのかもしれません。

なつにせよ、倉田にせよ、本作の脚本家の大森氏にせよ。
天陽ほど天衣無縫ではないのでしょう。

本作は極めて、計算づくしです。
細部まで、どこをどうすれば効果的か、ミッチミチに考え抜かれています。

だからこそ、頭で考えないとならないのです。

本作と『半分、青い。』の違いはまさにここだと思います。

これで思い当たったことがあるのですが、大森氏の大河ドラマ『風林火山』、大好きではあるのですが、由布姫関連だけはいただけないものがありました。
彼女は魅力が不足していました。
平蔵もそうでしたね。

彼女にせよ、勘助の彼女への思いにせよ、平蔵の言動にせよ。
それはまさに【情】の世界だったのかもしれない。

【理】の軍師である勘助が、非合理な【情】に迷う、それがあの描写でした。そこが勘助と同じく【理】の大森氏には苦手だったのかもしれませんね。ご本人は、とっくにお気づきでししょうけれども。

https://bushoojapan.com/theater/2017/04/09/97753

あと少しだけ。
ナゼ、『半分、青い。』の脚本家があそこまで叩かれたかって?

そりゃ、石野卓球氏と似たような理由でしょうよ。
そこは違うという反論はある。けれども、先に言っておきます。

気に入らなかったんですよね?

朝ドラ放映中に、天衣無縫なことを投稿する。
そんな空気を読めない奴は、嫌いなんですよね?

縫い目のない脚本を病床でも書いてしまう。そういう才能もむかつく。
空気を読めばそれでも許せたのに、それすらしない。

ただノリで生きている――雑でむかつくタイプに見えた。そうではありませんか?

私自身は、天衣無縫タイプではない。
それはわかっちゃいます。

ただ、天衣無縫を見抜く目は持ちえたい。
そして、理解し、見守りたい。
あなたと私の意見が違うとしたら、それはそのあたりです。

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】なつぞら公式HP

 

1 Comment

塩ラーメン好き。

本日の終盤のなっちゃんの、
気持ちの入った演技に、涙が出ました。
頑張れ!!なっちゃん。

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