なつぞら156話最終回 感想あらすじ視聴率(9/28)世界を開拓するには

昭和50年(1975年)8月――。

水害に襲われた山田家のジャガイモ畑を、なつと泰樹は手伝っています。

大地の開拓者魂も続いてゆけよ

泰樹はなつに、こう語りかけます。

「なつ、わしが死んでも悲しむ必要はない」

「じいちゃん、何言ってんの」

「天陽と同じじゃ」

「どういうこと?」

「わしの魂もこの大地に染み込ませておく。寂しくなったらいつでも帰って来い。お前が大地を踏みしめて、歩いていればそれでいい」

「わかった」

「それに、わしはもうお前の中に残っておる。お前の中に生きている。それで十分じゃ」

「おまえはよくやったななつ、おまえはよく東京を耕した」

なつぞら41話 感想あらすじ視聴率(5/17)それでこそ、わしの孫じゃ!

送り出した泰樹の言葉とともに、アニメを開拓し続けたなつ。
そんななつに、泰樹は告げます。

「いつでも東京へ帰れ。わしはいつでも、お前とともにおる」

なつぞら5話 感想あらすじ視聴率(4/5)私も怒っているべさ!

幼い頃のように、なつはこう言います。

「じいちゃん、大好き」

「ええ?」

泰樹は、ここでひっくり返ってしまいます。
なつが心配すると、子供のように無邪気に笑うのでした。

なつもつられて、「もぉ〜」と笑い転げ、隣でひっくり返っています。

次回作も続いてゆけよ

イッキュウさんは、洗濯物を干す富士子にお礼を言いつつ、電話を取ります。

電話してきたのは、マコさんでした。
マコはいつまでそちらにいるのかと聞いてきます。

またいつまでいるか決めていない。そう返すイッキュウさんにマコさんは少し慌てた様子。
というのも、次回作の企画が、同じ時間の同じ枠で決まりそうなのだとか。

『クオーレ』(『母をたずねて三千里』、『愛の学校クオレ物語』原作)の本を片手に、マコは相談したいと言います。

なつと相談して、なるべく早く帰るというイッキュウさんに、マコもなっちゃんにもよろしくと告げます。

本当に小さなことですが、本作の夫は妻に無断で物事を決めません。

マコは、なつとの東映時代を思いつつ、ニッコリ微笑んでいます。

そんなイッキュウさんに、仕事の電話かと尋ねる富士子。イッキュウさんは、なつを休ませたいと言います。

「イッキュウさんもでしょう?」

「いやあ、僕はもう、退屈で」

「えっ?」

「あっ、いやあの、ここがっていう意味じゃないです」

最終回でも出たぞ、残念なイッキュウさんだ!

本音と建前の区別が絶望的に苦手で、こういう余計なことをポロリと言ってしまう。なつはそのフォローをしてきましたね。

義父・一直のである妻・サトもおそらくそうなのでしょう。泰樹の妻もそうだった可能性が高い。

富士子は流して、一通り笑います。
寛大なのです。まぁ、家族のフォローで鍛えられたのかもしれんね。

「イッキュウさん、これからも、なつをよろしくね」

この夫婦も続いてゆけよ

照男と砂良は、牛舎建て替えの話をしています。照男は、復旧をしてからだと告げます。そしてアイスクリーム屋をどうするのかと砂良に尋ねます。

照男は、母と妻の小遣い稼ぎだとアイスクリーム屋を見下さない。そういう男だべな。

砂良は、ちゃんと宣伝から考えてやり直すと言います。

義妹・夕見子の強烈なダメ出しを反省点にしているんですね。あの嫌な女、気取った奴とは思っていないと。寛大だべした。夕見子の濃い性格を理解しているんだな。

「まだまだ、私らも先は長いもね」

「そうだ」

猟銃を嫁入り道具にすると宣伝した日を思い出す、そんな夫妻です。

「これからもよろしく頼む」

「こちらこそ、お願いします」

二人は協力して、後片付けをするのでした。

なつぞら60話 感想あらすじ視聴率(6/8)嫁入り道具にそれちょうだい

柴田家訪問も続いてゆけよ

明くる日、千遥と千夏は帰ることになりました。

空港までの送迎は夕見子。
なつと千遥、千夏と優は、東京での再会を誓います。

それだけでなく富士子と剛男とも、来年の再会を誓うのです。

照男と砂良は毎年来るよう念押しし、菊介も会いに来いと言います。高齢の悠吉はこうです。

「わしが元気なうちに来てくれ」

これはちょっと切ないけれど、それも自然現象です。
千遥は挨拶し、泰樹にお礼を言います。

「気ぃつけてな」

「さようなら。いこっか」

あと何回、こういう見送りができるのかわからない。だからこそ、大事にしたい別れです。

「来年必ずね、必ず待ってるからね!」

なつと富士子は車に手を振ります。

千遥はこうして東京に帰りました。

なぁに、すぐに私を超える料理人になるでしょう――。
父がそう見送ります。

ここでの皆の顔が素晴らしい。
特に富士子。歳月を感じさせる顔です。

松嶋菜々子さんはこれからも名女優になってゆく。ただの綺麗な女優さんではなくて、母として、導く女性としてたくましく、そしてますます美しくなる。
そう感じさせる表情でした。

風車プロダクションも続いてゆけよ

東京の風車プロダクションでは、電話が鳴っています。

事務所も大きくなっている。
アニメや声優ブーム、スターを送り出すと父がナレーションで告げます。

思えば咲太郎は、そういう男だった。
自分が前面に立つというよりも、誰かを支えるプロモーター。適材適所です。

光子も新文化を送り出す姿を見せています。

川村屋は文化を支え、背中を押す伝統。運命的な夫婦でしたね。

松井と島貫は、泥棒だという新作にお互い向いていると言い合っています。

そうそう、こいつらは盗品騒動で咲太郎逮捕のきっかけを作ったんだった。あのおっさんが今や売れっ子声優です。

世の中にはセカンドチャンスがあるし、咲太郎はそれを作った。感無量ですよね。

なつぞら30話 感想あらすじ視聴率(5/4)抱えたまま生きていく戦災孤児たち

魔女なら私だとここで言う蘭子も、かつてはレッドパージでくすぶっていたっけ。

なつぞら51話 感想あらすじ視聴率(5/29)コネなど不要、実力で勝負だ

レミ子は何をやればいいのか? と言いますが、さっちゃんが、売れっ子で予定がびっしりだと言います。少年役のスターなんですね。

レミ子は咲太郎に片思いしていたこともあった。さっちゃんも。
二人とも恋には破れたけれど、幸せそうですし、咲太郎のもとで自分の人生を生きていますからね。

そういうカタチで支え合う。そんな人間関係がある。
恋愛だけでなくて、もっと大きな関係が本作にはあります。

光子は、新作も決まったからお祝いをすると言います。

「おお〜、いいね!」

そう言う咲太郎、決まってます。すっかり兄貴分です。

タップダンスを踊っていた浮浪児が、経営者になった。こういう成功ってあるんですね。

「じゃあ、母ちゃんの新しいおでん屋に行きましょう!」

そう来たか。
亜矢美さんの新生ムーランルージュ、スピンオフで見られるかな?

すごく気になります。

なつぞら153話 感想あらすじ視聴率(9/25)【普通の家族】という呪縛

アニメの世界も続いてゆけよ

なつとイッキュウさんは、十勝にいます。
雄大な大地を歩きながら、イッキュウさんは、いつか奥原三きょうだいの戦争を描きたいと言います。

過酷な運命に負けずに生きる子供たちを、アニメーションで描くこと。
「テレビ漫画?」となつにと聞かれ、イッキュウさんは映画になると見通しを語るのです。

およそ12年後、その夢は叶うとナレーターの父が語ります。

ここで、なつが空襲に遭い、信哉に手を引かれて、プールに飛び込み助かる場面がアニメで入ります。全編が見たくなる、そんな出来です。

あの小さな女の子。

あの夜、焼けて命を落としても、そういうものだと語られたであろう、そんな女の子。瓦礫と骨の中に混ざってもおかしくなかった女の子。

しかし生き残ることができた。
だからこそ、なつはここにいるのです。

アニメの世界もあるのです。

なつぞら1話 感想あらすじ視聴率(4/1)タンポポ食べるヒロインに期待♪

そのころ泰樹は、十勝の大地を見渡しています。

「ここからまた、始まるんだね。私たちの開拓は」

なつはイッキュウさんにそう語りかけます。

泰樹は十勝の大地に横たわり、風を感じています。それから目を閉じるのでした。

その表情は老人のようでいて、無邪気そのものの少年のようでもあります。

十勝の風を浴びてなつは語ります。

「私たちもまた、何もない道を歩いてゆきたい」

「きみと出会っていなければ、僕の未来はきっとつまらないに違いない」

「もお、いいこと言うねえ」

「率直な感想だよ」

「私もきっと、あなたと出会っていなかったら、こんなに面白くなかったと思うわ」

カチンコすら鳴らせない。ちょっと変わった青年だったイッキュウさん。
彼との出会いが、なつの運命でした。

ありえないようなことを、本当のように描く。

ありえないことのように見せて、本当のことを描くこと。

なつぞら78話 感想あらすじ視聴率(6/29)本物と見せかけは表裏一体

そんなアニメ論を語ったこと。そこからのプロポーズ。農場で転んだシーン。優をいつくしむ場面。

大変でした。
これは何度でも言いたい。

イッキュウさんは結婚後、家事育児をこなす【普通ではありえない夫】とされています。

でも、だからこそ、結婚まではいろいろあったでしょう?
ちょっと気持ち悪いと思いませんでした?
そこでなつがキモいと思っていたら、ああはならなかったのです。

「なつと優と、家族になれてよかった」

「これからよ。これからも一コマ一コマ、家族の夢を、描いていきましょう」

「また大変なことが待っているかもしれないけれど」

「それでも、また始めましょう」

「……うん」

そう語り合う両親に、優はこう言い、間に収まります。

「ママとパパ、ソラとレイみたい。それはだめぇ〜優ちゃんも!」

「じゃあ、行こうか」

彼らを見ながら、奥原家の父がこう語ります。

日本のアニメーションが、世界に誇れるほど成長していくのはこれからです。

その未来に向かえよ、なつよ。

なつよ、朝ドラよ、101作目に続けよ――。
※続きは次ページへ

4 Comments

まるいと

アニメにできることとして、

ありえないことを本当のように描く、
そして、
ありえないことのようにら本当のことを描く

この言葉は、アニメに限らず、多くの創作活動に通じると思い、特に後半がとても好きな言葉だったのですが、その後ドラマ内で取り上げられるときはなぜか前者(あり得ないことを本当のように)の言葉ばかり引用されてて、その都度軽くフラストレーションを感じてました。

こんなに共感できる物語なのに、肝心のこの部分で製作者と意識がずれてるのかと残念に思ってたのですが、最終回の最後の最後に満を持して後半の言葉が出てきて本当に感動的でした。

コラムも楽しませていただきました。
お疲れ様でした。
ありがとうございました。

あしもと

武者さんへ
この度の半年感もありがとうございました。

私は、なつぞらは、アニメの世界をアニメのままで終わらない構成に希望を感じました。

かつて宮崎監督は、子どもはアニメばかり見ずに外へ的な発言をしていたように思います。※うろ覚えですみません
現実逃避としてのアニメではなく、現実と影響し合い、力を与え合うアニメの姿が描かれたと思います。

第1話の空襲のアニメは、なつと一久さんの作ったアニメでした。それが最終話から12年後なら、そのアニメはまだ未知のものなんですね。モデルとなった火垂るの墓をさらに進めたアニメになるかもしれません。それを作るのは、2019 年以降の朝ドラかもしれないし、私たちかもしれません。

なつぞらが、アニメの果たす役割に対し、ただの激務天才礼賛やジャパンクールの壺の中に留まらず、未来に続く伸びやか視点で描いてくれたことに感謝します。

また、なつぞらをより深く楽しませてくれた武者さんにも感謝いたします。

総評も楽しみにしています!

匿名

半年間、ドラマと共に楽しませていただきました。心からお疲れ様でした。総評楽しみにしています。

一視聴者

武者さん!!一日も欠かさず!!!本当にお疲れさまでした!!!
優れた作品をともに鑑賞できた喜びを多くの方が味わっていることと思います。なつぞらの世界にひたり、ワクワクしながらレビューを待つという半年間でした。武者さんひとりで毎日これだけの量と奥行きのあるレビューを続けられたこと。偉業だと私は感じます。心から、ありがとう!!!!

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