「できるわけない。アニメーションなんて」
そう否定するなつを見る天陽の目は、複雑です。
そこで紅茶とコーヒーを持ってきた妙子。
雪之助と雪次郎も続いてやって来ます。
バター煎餅「開拓者の郷(さと)」
手にしているのはバター煎餅です。
ミルクバケット(牛乳を入れる缶)の形をしています。
「よく気づいたねえ」
そう嬉しそうな雪之助に、気づかなければ意味がないと言い返すなつです。
こういうやりとりを聞いていると、なつは賢いことが伝わって来ます。
「すごぉぉぉ〜い!」
「やだぁ〜〜きゃあぁぁ〜〜!」
この手の、中身がないというか、夜のお店のお姉さんスキルじみたことを、本作の女性はしませんよね。
バター煎餅は、学校で作ったものを使ったそうで。雪之助は、新銘菓への思いを語り始めます。
ここで生きているからこそ、作れるものにしたい。
すると、とよがデザインした缶を出して来ました。
あのじいさん(=泰樹)ならわかるはず。
デザインは、依田勉三(よだ べんぞう)の率いた開拓者団体「晩成社」へのオマージュです。
とよ自身は知りませんが、バター作りに憧れてきた泰樹ならば知っていても不思議はない。むしろその通り。その缶に詰めて、じいちゃんに持って行ってあげて、と渡して来ます。
名前は「開拓者の郷(さと)」でした。
こんなの絶対うまいに決まっているじゃん!
雪之助は、バターはこれからなっちゃんに相談すると言っています。
息子の雪次郎は東京で修行がありますからね。
その帰り道、天陽はなつに言いました。
東京に行くことは、じいちゃんに相談しろって。
「どうして?」
「自分で考えろよ」
「行きたいなんて、言ってない」
「だったら、行くなよ」
おっ、これは珍しい。
本人ですら自覚していない、彼の本音かもしれませんね。
こういう天陽の表情って、本当に難しいと思いますけれども。吉沢亮さんはいいと思います!
開拓者も納得の味
土産のバター煎餅を食べ、じいちゃんだけではなく戸村父子も納得。
しかし、菊介は突っ込みます。
おそらくや父のとぼけた発言に突っ込み慣れているからかもしれない。
「煎餅なの? ビスケットでいいべえ」
うん、まぁ、そこはね。
なつは、こんなふうに帯広中でバターを使えば、流通が軌道に乗ると言い切ります。やっぱりなっちゃんは賢い。色々と考えています。
とはいえ、「雪月」は、
「変わっているからねえ」
という指摘も。
普通の菓子屋はまだまだ小豆だべさ。
それに、みんなそういうのを売ったら「雪月」が怒るんじゃないの?って、それはどうかな?
ここで泰樹は重々しく言います。
「そういうことは、なつと照男に任せる」
うわっ、知略99の知将にとって既定路線だぞ、どうする、なつ!
話を変えるかのように、なつは天陽がスキー大会に出ると言い出しました。
指導者魂を持つ菊介は、指導しようかと目がキラキラ。
天陽は、金具を持っているけど、板は自分で作らねばなりません。
さすがの菊介も、作り方までは知らないようです。
と、そこへ雪道でコケてから、富士子が登場。
「いつまで休んでるの!」
すかさず泰樹が宣言します。
「(スキー大会に)照男を出す。照男、やるべ」
こうなっては、菊介も照男の指導と応援に回ると言い出します。
「天陽くんは敵じゃないよ」
と、なつが指摘していると、続けて富士子に牛が待っていると急かされる。
知略99が何かを企んでいるぞ……。
照男のこと、なつのこと
その夜、針仕事をしながら富士子は剛男に照男のことを切り出しました。
針仕事という、こんな小さな仕草や演出ひとつとっても、本作の健全性がわかります。
当時の女性が、いかに仕事をしていたか。理解があります。テレビを見ながら煎餅ボリボリの場面ばかりだった駄作とは違いますね。
照男にその気があったらあったで、両親としては複雑です。
富士子の考える最悪のこと。
照男にはその気がある。
なつは、柴田の家族のためだと断れずに、結婚してしまう。
それこそが二人にとって、残酷なことではないか――そう心配しているのです。
注目すべきは、富士子がなつの気持ちを重視していることでしょう。
照男がよくても、私たちがそうでも、なつがそうでなければ意味がない。
これはかなり重要です。
なつを引き取っていても、女はそういうものだと一切見下してはいません。これも、世代の違いでしょうし、泰樹の教育もあるのでしょう。
かつての結婚は、当人の気持ちなど重視しなかったものです。
北海道の開拓者は、全国的に見てその傾向が一層強かった。
富士子はちょっと違うのです。
そうなると気になること。
なつは天陽に恋をしているのではないかという点ですね。そうでないなら、照男を好きになるかもしれない。
まぁ、兄のようなもので今更かえって難しいのかも。
可能性はあるのか?
もうそうなったら反対なのか?
剛男と話しても、もはや答えなど出てきません。
富士子は、今のままの家族でいたいのです。
そんなことは無理だとわかっていても、そう願ってしまう。
これもまた、悲しい話です。
なつがどういう選択をしても、この家族は崩れてしまう。
崩れてしまうから美しい――そんな家族像がそこにはあります。
雪のような、花火のような。
儚い美しさです。
※続きは次ページへ
あのバター煎餅、実に美味しそうでした。
見た感じは、今でいうサブレーにも似ていましたね。食べたいなあ。
農家の産品をもとに、地元ならではの名産加工品を作る、というのは、まさに現在の「六次化」の取り組みそのもの。作中の時点から60年余を経て、農業も原点回帰の取り組みを進めているということでしょうか。
この六次化は、農協も含め様々な団体や個人が取り組んでいるのは周知のとおり。農協もそれぞれ特色を活かした取り組みをしていますが、私見ながら、小規模なところほど小回りも効いて、生産者側からの提案や消費者側の要望に素早く対応しているように思えます。もちろん危機感もあってのことでもあるでしょうが。
私自身も、割と近くに、県内で最小の農協があるのですが、その農協の特産品を活かした六次化商品が気に入っています。
天陽がスキーの板の裏を削っていた道具は「とくさ」でしたね。
紙ヤスリが無い時に使うんですけど、
植物の柔らかさが木の表面を優しく削るのでとても相性がいいんです。
小物をさりげなく出してくるセンスがイイですね。
残念ですが、あの作品はマスコミを味方にしてますから、批判なんてありません。逆に、『いだてん』は、もうヤバいレベルです。新聞のサブタイトルの見出しが色々と変わっていますので、圧力におちるのは、時間の問題の様な気がします。
そう言えば、最近、携帯電話のd社のCMも、以前から出演していた俳優H氏演じるキャラを、どういうわけか**さぁんに寄せたバージョンを作って流してますね。
あんなの見たって不快なだけなのに…
私は他社(CMをパクられた方)ユーザーだから関係ないけど。