そんな兄・咲太郎が帰ってきた
さて、そんな兄・咲太郎。
風車の暖簾をスッと慣れた調子で推して店に入って来ます。
演技指導がいいのか、演じる岡田将生さんの努力とセンスか。
暖簾を推す仕草ひとつとっても綺麗ですね。
『いだてん』の森山未來さんの和服での所作にも驚かされましたが、こういう演技指導ができる人、それをこなせる役者さんがいると思うと、ホッとします。
「ただいま」
この動作と口調だけでも、こいつは近寄ってはいかん男臭がプンプンして来て、もうっ!
「相変わらずシケてやがる。神武景気もここには届かねえのか」
そう憎まれ口を叩きながらの“母ちゃん”という呼びかけ。この野郎!
江戸前のいい男になっちまいやがったな。
これは神田の祭に行こうと誘い、軍隊ですらお調子者として人気を集めて来た、そんな父譲りなのでしょう。
こういうね、憎ったらしい言葉。江戸前っぽい言い回し。そこから母ちゃん。
そして
「ここしか帰る場所がねえ」
と甘えてくる。
江戸っ子だ……。こいつはタチの悪い江戸っ子だ。
『いだてん』の美濃部孝蔵といい、こういう江戸っ子を今年のNHKは使いこなすつもりらしいぞ!
ツンデレとかいう概念がありますが、そんなもんとっくに江戸っ子が通過済みであるときっちり示してきます。
こういうのうまいなぁ。
最近の大河や朝ドラで、こういう「ツンデレ」みたいな比較的浅い概念を雑に取り入れることがあるんですが。
そんなもん頼らなくとも、ずーっと昔からそういうのはあるから!
結局、脚本家の蓄積なんです。
平成のアニメ由来の概念なんかなくても、蓄積があればパパッと、もっと古くて歴史あるキャラクター像くらい、TPOにあわせてささっと出せる。
亜矢美はメロメロです。
クールなようで、このタチの悪い江戸っ子にメロメロです。
そして今何をしているのかと聞くと……。
なんでも新劇の劇団を手伝っているんだとか。西洋流の演劇を演じる劇団ということですね。
ちらりと出てきた舞台には、ロココ調の衣装を身にまとった役者が映っておりました。
妹が兄を探している
「昨日は千秋楽だった。役者はいいけどもうからねえ」
そう語る咲太郎を見て、亜矢美は納得します。
まだ知らないから、戻ったのだろうと。それで帰ってきたわけじゃないんだ、と確認します。
亜矢美が、妹・なつがあんたを探していると告げるわけです。
こっちで暮らすつもりだとも。
「なんで俺なんか!」
「あれは追い出されたんだね」
亜矢美はしみじみとそう語ります。
雪之助の酔態が誤解を生じさせているぞー!
まぁ、それだけではなく、当時はそういうケースが割とあったということでしょう。
街から戦災孤児が消えた。だから終わりか?
そうではありません。孤児たちはずっとその悲しみと寂しさを抱えて生きてゆくのです。
前作****では、そういうことがなかった。
確かに、戦災に遭った母子がわざとらしく抱き合う場面は入り、主人公夫妻は心を痛めたように見えました。
しかし、年代的に戦災孤児でもおかしくない従業員への気遣いはゼロ。
金儲けばかりを考えて、病人なら味に文句を言えないからと価格を釣り上げる――これを極悪非道と呼ばずして何と呼ぶのか。
きょうだい再会はもうすぐ?
そんな中、雪次郎はついに修行開始です。
一方で咲太郎は……。
「俺のせいか? 俺のせいで、一人東京へ?」
「北海道では苦労してきたらしいからね」
昨年の夏は幸せそうだったし、同行していた人(富士子)も親切そうだったと不思議がる咲太郎に、亜矢美はこう返します。
「お前がそう言わせたんだろうが!」
なかなか厳しい母ちゃんです。
そのころ、なつは皿洗いを休憩して食事を取りつつ、雪次郎の動きをスケッチしています。
なんだか勘違いをしているなつと咲太郎。
もうすぐ会えるかもしれないよ――。
そうナレーターである父が語る中、明日へ!
新宿は要注意だぞ!
十勝編からテンションが下がらないか?
と不安もあった新宿編。
いやいや、そうでもないようですよ。エンジンかかってきましたねぇ。
新宿編の人物描写がよいと思えます。
十勝ほど開けっぴろげではなく、本音を隠す。それでいて、心を開けばそうでもない。
ここが大きなポイントになることでしょう。
誰も彼もが、察してほしいという言動をしています。
だから十勝で育ったなつは誤解しっぱなし。
空気が読めない子になるかもしれない。
そんな予感がしてきました。
レミ子にせよ、佐知子にせよ。
なつが意味がわからないと言い切ったら、
「なんなのよぉ、この子!」
「鈍感すぎるわ!」
って怒り出しそうでしょ。
そういう不穏感も出てきました。
このあたり『半分、青い。』の鈴愛とユーコを思い出します。
あの岐阜の山猿と、都会育ちで洗練されていたユーコ。
がっつりぶつかって喧嘩になりましたよね。生まれ育った環境によるテンポの違いが、対立へとつながりました。
北海道育ちで苦労人のなつは、岐阜育ちで織田信長魂を持っていた鈴愛よりは丸い。
ぶつかり合いにはならないと思いますが、どうなるのかな?
俄然興味が湧いてきました!!
あ、ついでにお願い。
こういうテンポのズレた人が周囲にいたら、どうかあたたかい目で見守ってあげてくださいね。悪気はないので……。
魔性の江戸っ子・咲太郎とその父
そして咲太郎。彼は魔性ですよ。
幼い頃からそういう片鱗があって、きっとマダムはそこにころりと参ってしまった。そういう後ろめたさがあるんでしょうねぇ。
これぞ艶ってやつだ。
パンチラ、褌尻、入浴シーンで出す色気なんて、ただのくだらない萌え投稿狙いの露出じゃないですか。あー、本当に前作****ってなんだったんだろう。
そうじゃない。
所作の美しさや、ひねくれた言い回し。それでいて、心を開けば甘ったれてくる。
咲太郎、こいつぁ魔性の江戸っ子ですわ。
よくもこんな人物を、朝ドラで出してきますねえ。やりますな!
おもしろいのが、ナレーターである父が、咲太郎についてはちょっと及び腰になるところでして。
伝わってくる性格からして、父にも覚えがあるのでしょう。
俺が思春期になるまでは育てていないのに、どうして似ちまったのかな。そういう戸惑いや、若い頃のやらかしが思い出されているんじゃないかな。
そう想像するとちょっと面白くなってしまいます。
彼だって、戦死したことだけが人生じゃない。
やんちゃもした。暴れもした。そういう人間だったんだな。
ナレーターと子供の姿を通して、彼のことを考えさせてくれる本作って、素敵だと思います。
朝ドラの変革
さて、そんな朝ドラも変革の波があります。
◆NHK朝ドラ、土曜除く週5に 働き方改革で来春から:朝日新聞デジタル
これは良いことではないでしょうか。
働き方が変わるのであれば、何らかの対策をすべきです。
変わるとわかっていて無策であること。それはただの無能。
赤子の理屈で話にもなり申さぬ。
ありましたっけ。
主演女優の育児だの、働き方改革を言い訳にした最悪の駄作が。****ですね。
本作は撮影を前倒しにして、そこをふまえつつ鉄壁の布陣に思えます。
あっぱれですな!
◆視聴率好調の朝ドラ「まんぷく」“安定感”カギは働き方改革!? 演技巧者集め撮影時間短縮
大河についても、こんなものは何の言い訳にもなりませんからね。
理由を探すにせよもっとましな方向に行かなければ、言い訳する側の無能を強調するだけです。
◆『いだてん』ワースト視聴率は「働き方改革」のせいだった!?|ニフティニュース
そして、出ました。
来年の大河に関連した、こんなニュースが。
◆明智光秀役・長谷川博己の変革!朝ドラ“萬平さん”を「忘れる」 – SANSPO.COM
6月に東京都内のスタジオで始まる撮影を前に、光秀の片鱗をつかめた。お茶の間では、まだまだ即席ラーメンを発明した萬平さんの好印象も根強いが、「まったく違う世界なので、なるべく忘れないと。できるだけ過去のことは切り離して。もう片足は(大河に)入ってます」とキッパリ。朝ドラから大河へ。長谷川の大変身まで待ったなしだ。
これには期待しています。
あの**さぁんはもう、なかったことにする。
そりゃそうですよね、パンチラと入浴とセクシー拷問でさんざん痛めつけられた屈辱なんて、一日も早く忘れたいに決まっています。
条件付きとは言え、出演者に忘れたいと明言される****。
どれだけ酷い作品かわかるってものです。
いいですか、****信徒のみなさん。
「セクシー拷問でほっこりきゅんきゅんしましたぁ!」
っていうのは仲間内だけにとどめましょう。なにより出演者自身、深く傷ついているんですから……。
それはさておき、ここまで宣言されるとなると、ワクワクしますね。
期待しています!!
※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
夏の短期上京でも仄めかされていた、咲太郎に好意を寄せる女達。早くもなつを味方にしようと躍起になっていますね。
そこでニヤリとさせられて、後半の本人登場で業とも言える魅力が炸裂。
なかなか好感触です、新宿も。
904型様
私もお社に手を合わせる姿にほっこりしました。夕見子の取材に泰樹が紋付袴だったりクローズアップされない所に「らしさ」が感じられて好ましいです。
だからこそ幽霊電車は残念ですね。交通事情に詳しく無い私ですが、関心の高い分野だったらと思うと…甘い考証よりもアニメーションでというご提案、とても素敵です。
働き方改革とクオリティを両立させる工夫によって、作品の可能性が広がって欲しいものです。
鉄拳さんのパラパラ漫画、新鮮で楽しかったなぁ。
亜矢美の店・風車の隣には、小さなお稲荷さん?が。
カスミに連れられたなつたちが、店に入る前、そのお稲荷さんの前を素通りしそうになりつつ、気づいて一礼。
亜矢美のほうも、朝、店先を掃いていたのか創作ダンスをしていたのか?不思議な動きの中で、やっぱり一礼。
こういう習慣は、やっぱり昭和中期頃には普通のことでした。
東京編、やるねえ。
それに
出会う女性のことごとくが、咲太郎には何やら口にしにくそうな「何か」が…
亜矢美の、何か腹中に隠しているかのような様子も。
これらがどうつながり、結びついて行くのでしょうね。
…あの幽霊電車、もう出すなよ!(←まだ言ってるし…)
『スカーレット』までは、今まで通りですよ。
平日は、このレビューを読んで、展開を楽しみにしながら土曜日の昼に観ているのですが、次からは残念になります。まあ、今回のドラマを楽しみす。
長谷川さんは、ただ新しい仕事に対して切り替えたいだけだと思いますが。それに、また何年か後に別の朝ドラの時に、件の某作がよかったと思われてしまう可能性がありますから。