机の上に置かれたなつのラフスケッチをマコは見てしまいました。
そして大興奮。
マコは空気なんざいちいち読みません。勝手に持ち帰り、井戸原に見せています。
彼も、これはなかなかのものだと納得しております。
このラフを描いたのは誰だッ!
マコは、てっきり堀内のものだと早合点しておりました。
もともとそのシーンのダメ出しをしたのが彼女です。
発破をかけられ、描き直したのだろうと喜んでおります。
「どうして捨てたの? いいと思う。私はこれ、すごくいいと思う!」
マコは意地悪なだけではない。褒める時は褒める。貶す時は容赦ない。
こういうタイプは必要なんですよ!
「こんな風にしていいのよ。一瞬振り向いて、戦う目をしてみせる。これが中割に入る! 恨みが伝わる。許仙に会いたい思いがにじみ出ている。ただの中割じゃないッ!」
これこそが感情表現。こういうのを望んでいた。マコは大興奮です。
この場面、演じる側も乗っていますね。
北海道編のとよババアが筆頭ですが、大森氏の脚本は、結構ガーッとしゃべらせますよね。
覚えるだけでもかなり大変かもしれない。そこに感情を込めて、かつ視聴者にセリフが聞き取りにくくならないようにする。
高難易度ですし、貫地谷しほりさんを新しいものを引き出す、そんな意気込みを感じます。
大森氏の貫地谷さんといえば、『風林火山』のミツやんです。
あの素朴な言葉で、勘助と視聴者の言葉をつかんだ。そういう境地とは真逆ではありませんか。
これはすごいことになっている!
朝から見入ってしまいます。
しかし堀内は、混乱しています。
彼はこんなものを描いてはおりません。
作画課のセットで、元警察官のアニメーター下山役・麒麟の川島明さんと、貫地谷しほりさん演じる麻子とよく言い合いをしている堀内役・田村健太郎さん。作画課には川島さんの“いい声”がいつも響いています。#朝ドラ #なつぞら #川島明 #田村健太郎 pic.twitter.com/XLuZwa5QI5
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 4, 2019
むしろ、稚拙な絵を描いたと思われ、傷ついてしまうほど。
そこには、ラフを取り戻すため作画課に来ていたなつがおりました。
「まさか……」
「それは私が描きました」
今までの気持ちを絵にこめて
作画課の目線がなつに集まります。井戸原もすっかり感心しています。
仕上げなのにどうして描いたのか?と訊かれ、勉強のためだと答えます。
「どうしてそうしてみたくなったの……」
マコにそう問われ、なつは演劇部の経験を語り始めました。
白蛇の姫を演じて、その経験から辿ったこと。
白娘子の気持ちを想像したこと。
倉田に習った、魂で動かすこと。
自分はただ、彼のことが好きなだけなのに、どうして?
そう思うと、怒りが湧いてきた。
誰を傷つけたいわけでもないのに――。
彼女のこれまでの経験が、そこにはあります。
名前を出されなかったけれども、倉田や泰樹もそこにはいるはずです。そして、天陽も。
彼らのことも思い出してしまいます。
もっと怒れ――あの泰樹の言葉が、ここで生きてくるとは!
女の子は怒らない方がいい。いつもニコニコしていてこそ。
それが男にとっては気持ちいい世界です♪
「もぉぉぉ〜むぁ*ぷぅぇぅいさぁぁん〜」
「もぉぉぉ〜おかぁさぁんてぇばぁ〜」
そういう顔芸と奇声を用いて、前作****が描いてきた――そんな馬鹿げた価値観を本作は緻密な積み重ねで一蹴します。
マコの動揺
マコはしかし、ここでこう言い切るのです。
勝手に勉強していたことはわかった。それでもういい。それ以上はいらない。
これはただ、マコの性格が可愛くないだけなのでしょうか――。
嫌な女、生意気で可愛げがない。それで片付ける人は、そうすればいいでしょう。
人生でいろいろなものを得て、そして失いながら生きてきて、これからもそうすればよろしい。個々人の自由ですからね。
しかし、それだけでは決して見つからないこともあるはずだ、と思うのです。
結果、なつのラフスケッチは堀内が仕上げる、そういう方向に持っていかれました。
これはすごいことではありませんか。
そのことに、マコは動揺しているッ!
彼女がそこに気づかないわけがありません。
「これ使ってもいいよね?」
「勝手にすみませんでした! よろしくお願いします!」
井戸原がなつに許可を取る。こういう細かいところもいいのです。
部下の功績を奪って、自分のものだと威張るみみっちい奴って実際おりますからね。まぁ、みなまで言うなってやつですが。
それに対するなつも、喜ぶどころか緊張している。
いい関係だ。
「それが仕事なやらやりますよ! それでいいのなら」
マコと違って素直なところのある堀内は、ちょっとムッとしていて、それが出ているのかもしれません。
マコは難しいんだ……自分の予想が外れたこと。侮った相手が猛者だったこと。
それを見抜けず、混乱しているのかもしれません
無駄なことなんてひとつもない、ただし人による
なつは仕事場に戻り、仕上げに取り掛かります。
今は仕上げが仕事ですから、不満は見せません。
戻る時には嬉しそうな顔を見せましたが、それはそれ、これはこれなんです。
戻ると富子は、なつを叱ります。
動画を勉強して、仕上げをやりたくないのか? そう問われてなつは否定するのですが。
いいな!
なつは真面目です。自分の適性以外でもこなす。そういう律儀さがあります。
発明家だからって、大事な塩の運送を他人任せにするなど、雑用その他もろもろをやらない言い訳にしていた****の**さぁんとは違います。
が……ちょっとここで、夕見子のことを思い出してみますと。
「ハッ、受験勉強という大志があるそれがしに、家事なぞ無用……」
こうでしたよね。
あいつはそういう奴よ。
日常生活に必要なこと。堅実性。それをバカにしかねない。
そういう煽りがある軍師だからさ。
負けず嫌いというところは共通していても、なつのほうがそういうところは真面目なんです。
あ、もちろん夕見子も悪い子じゃないんだよ!
ただ、まぁ専業主婦への適性はゼロですし、そうなることは社会的損失になりかねないと思います。
彼女みたいにね。
◆医学部不正入試、元受験生が3大学を提訴 「絶望と諦めの気持ちが大きい」
意欲のある彼女たちの翼を折らないで欲しい、と切実に願います。
なつに話を戻しますと……彼女は寄り道をプラスにする才能があるのです。
酪農経験も、演劇部のことも。そして孤児だった悲しい日々も。
全てが彼女の中で調和して、プラスに変わっていく。
ただ、繰り返しますが、夕見子タイプにそこを押し付けないようにすべきかと思います。
優先順位が違うだけです。なつからすれば勉強にしか見えないかもしれない。そんな夕見子の読書は、彼女の頭脳の栄養なのです。
****の**さぁんは、雑用も読書もろくにしないから、スタートラインにすら立っていません。
威張りちらすだけの怠け者でした。
なつの影響はよいもの
集中しなさい。
そう言われて作業を始めるなつ。
そんななつに、モモッチが話しかけて来ます。
「塗り絵かと思ったけど、そうじゃない!」
なつを見ていたモモッチは、仕事が面白くなる、そんな可能性に気づきました。
隣の同僚に刺激されて、もっと勉強したいと思い始めたのです。
スタジオ前で、仕上課のなつとモモッチの2ショット。#朝ドラ #なつぞら #広瀬すず #伊原六花 pic.twitter.com/ejqgaishO2
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 3, 2019
楽しそう。
初めて楽しさが少しわかった気がする。
今は作業に集中しているけど、思えば絵を見るのも描くのも好きだった。そう気づいたのだと。
美術部に在籍したことすらないのに、仕事にできてうれしい!
だったら自分にも何かできることがあるのかも!
そう思えて来たんだって。
※続きは次ページへ
捨てられてたラフ画を勝手に持ってきたことについて、仲さんらのことを一言も出さないなつの潔さや覚悟に感銘。
そんな姿勢が時に反感を買いながらも、結果的にももっちや、堀内、マコまでをも、三者三様に奮い立たせている(作業に入った堀内のちょっとはにかんだような笑顔や、マコが気合いを入れて髪を結ぶ姿は良かった)のに、(当時の?)この業界自体の、クリエーター集団としての健全な向上心みたいなものを感じて嬉しくなります。
なつが手を加えた動画を、堀内が書き直したものと早合点するマコ。
褒められたのに、「こんな稚拙な絵は描かない!」と、変なところでプライドを傷つけられて言い返す堀内。
マコの「どうしてこの絵を描いた?」のニュアンスが伝わらず、答えが迷走しかけるなつ。
これらズレ具合が、何とも絶妙。ツボにハマってしまう。
面白いですねえ。
それに、
今回の出来事は、せいぜいマコの記憶に強く刻まれるくらいで、なつにはまた修行の日々が続いていく…のだろうという程度の感じで見ていたら、何とまさかの「再試験」。
予想もつかない展開。
次回がまた期待されます。楽しみですね。
そういう感じ方も、一つの感じ方としてもちろんありでしょうが、
しかしあの鈴愛のシーンは、そこにばかり狭い視野で焦点を当てることに意味はない。
鈴愛と秋風先生の間で繰り広げられた駆引きの中の出来事に過ぎない。
それに、様々な漫画家の人達のエピソードには、原稿にとんでもない扱い方をした逸話も幾つかある。
ある一つのエピソードだけをもって、あの鈴愛のシーンを一方的に非難するのは、正当な評価とは言い難い。
漫画家の藤田和日郎先生のお名前は武者さまもご存じかと思います。
あの方の原稿は、何度も何度もホワイトで修正した上から書き直すという事を繰り返すため、完成した際にはずっしりと重くなっていると、以前Eテレの番組で語っていらっしゃいました。頭の中にあるイメージを、ケント紙の上に忠実に再現するための試行錯誤の結果と言えるでしょう。
理想とそれを具現化するための行為なり行動なりは、表現者にとっては車の両輪といって良いものでしょう。
そういう意味で、やはり楡野鈴愛のあの原稿を盾にとった脅迫は、表現者としてはよろしい事ではなかったと思うのです。
まず自分の頭で考えるべき。答が見つからないならそれまでのこと。
幸はピンク基調のセーターに緑のパンタロンで亜矢美は緑のカーディガンにピンク基調のスカートでした。
上下が逆になっただけで色使いは同じなのにどう意味が違うのでしょうか。
亜矢美のキャラクター上、意味のある色使いだから、何ら問題なし。****のは意味なくヘンな色使いだったからダメなだけ。
****の幸の補色ファッションに苦言を呈されていた武者様は
亜矢美の緑×ピンクやなつのターコイズのネックレス×ピンクのカーディガン等の
補色ファッションをどう思われているのか気になります。
いやあ、昨日から面白過ぎて、この作品で初めて録画を繰り返し観ています。芸術家肌で、感じたことをズバズバ言ってしまうマコ、周囲との軋轢は気にしません。このトンガリ方、好きですねー。貫地谷しほりさんの繊細な演技が素晴らしいです。
昨日のラストからは、今日マコがなつに直接問い詰める展開を予想したのですが、実際の脚本は巧みでした。そうしないと、なつの絵を生き生きと褒めるシーンは生まれません。
良い作品だと武者さまの解説もますます冴え渡りますね。いちいち頷き読ませていただいてます。鈴愛のあの名シーン、総集編から外されてました。忖度したのか、あれはガッカリしました。