なつぞら67話 感想あらすじ視聴率(6/17)ずしりと重い芯からの悲しさ

昭和32年(1957)年8月15日、船橋――。

なつと咲太郎は、12年前に生き別れとなった千遥らしき女性に、こう呼びかけました。

「千遥?」

「千遥か?」

「千遥なの?」

「違います」

足が不自由な男性を支える少女は、どこか申し訳なさそうに、そう告げます。

「私は違います。あなた方は?」

姉と兄で、千遥に会いにきた――そう告げる二人でした。

千遥はいない

なつと咲太郎は、女性の遺影に線香をあげます。
母方の親戚・川合としでしょう。

いきなりの来訪を詫びる二人。
チリンチリンと風鈴の音が鳴っています。

としは2年前に病死していました。
千遥と間違えたのは、下の娘・幸子だと、としの夫・俊一が紹介します。

幸子は千遥の2歳上だったと、思い出す咲太郎。
19だと幸子は告げます。千遥の世話をしてくれたことに、礼を言うなつと咲太郎です。

そして、千遥はどこかと聞くのですが……。

「申し訳ない!」

俊一はいきなり頭を下げました。
千遥はもういない、と。

「許してください!」

衝撃を受けつつ、咲太郎は呆然としながら、死んだのかと尋ねます。

そうではありません。
昭和21年(1946年)に千遥は家出してしまい、警察に捜索を依頼しても、手がかりはなかったのです。

「そんな……そんな前に」

「どうして教えてくれなかったんですか!」

二人は愕然としていますが、俊一も、何もしなかったわけではありません。
千遥がいるであろう孤児院に行ったところ、孤児院そのものがなくなっていたのです。

咲太郎が出した手紙を、千遥は持って家出していました。
そこには、なつのいた北海道・柴田家の住所が書いてありました。

それさえあれば、いずれきょうだいと再会できるだろう。そう思うしか、なかったのです。

あれは人が変わってしまった

なつは、かつての自分のように、千遥はきょうだいと再会したくて家出したのかと口にします。

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ここで幸子が、ポツリとこう言うのです。

「母から逃げた……」

としは、千遥にきつく当たっていました。
千遥にばかりきつい仕事を押し付け、実の子である幸子とその兄よりも、粗末で少ない食事ばかりを与えていたのです。

千遥は、そんな差別と虐待に耐えかねて、逃げたのではないか。
幸子は暗い顔でそう告げます。

咲太郎は混乱しつつ、否定しにかかります。
おばさんはいい人だった――母にとって唯一の姉妹のようなもので、疎開も一緒にしたがった。

俊一が、苦しそうに亡妻の変貌を語ります。
あれはもう、本来の何かを失ってしまったのだと。

足を悪くして復員してきた夫。
そして三人の幼い子供。
それを支えるために、精神の均衡を失ったのです。

そのストレスのはけ口が、千遥へのいじめに向かってしまった。

「だから千遥をいじめたんですか」

「千遥は苦しかったんですか」

そう問いかけられ、幸子はこう絞り出すのです。

千遥は、むしろ笑っていたのだと。
幸子ですら、平気なのかと誤解するほどに、嫌なことがあると作り笑いをしていたのだと。

それで、余計にとしはイライラしてしまった。
バカにしているのか怒鳴っていた。

「ごめんなさい、私たちのせいなんです!」

「本当に申し訳ない!」

なつはその場を立ち上がり、外へ走り出てしまうのでした。

※ドラマ版『火垂るの墓』で松嶋菜々子さんが演じた役のような……

私はもう、そちらに帰れない

なつは、千遥を思い涙を流します。

なんて辛い日だ。
私はもう、そちらに帰れない。
千遥はどうしているのか、もう話してやれない。

この日は、なつたちにとっても、特別な日だったのです――。

そうナレーターである父が語ります。
そうか、彼は千遥のことを知っていてもおかしくはありません。それでも、そのことを告げられない。

このナレーターの人選で、千遥の生死がますます混沌として来ます。

同じシステムであった『半分、青い。』では、仙吉がなくなったあと、一時合流しました。

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つまり、千遥は生きている?

帰れない父とは違い、妹は再会できるのでしょうか?

なつは自分を許せない

風車に帰った咲太郎となつ。
その口から結果を聞き、待っていた亜矢美と信哉は衝撃を受けています。

本作のすごいところは、ちゃんと戦争をくぐり抜けてきた経験が、登場人物にあるところだと思います。

前作の****は、路上の戦災者母子を、初めて見るかのようにびっくりするわ。

『わろてんか』でも、戦争被害者に思いやりゼロで、わけわからんお笑いを続行するわ。

現代人がそのまんなタイムスリップしたような、不気味さは常に漂っていたものです。NHK大阪はどうしちゃったのでしょう。『カーネーション』はこうじゃなかったのに。

本作スタッフには、戦争の直接体験はないでしょう。
それでも、ちゃんと話を聞いて、関心を持って、調べて、なるべく近づけようという誠意を感じます。

亜矢美は、本心かどうかはともかく、知らせがないのは良い知らせだと慰めます。

しかし、なつは違う。

「道で暮らす子も、亡くなる子も、街でたくさんいた頃だよ……そんな奇跡を信じろって言うの? どうして連絡来ないの? 千遥はまだ6歳だったんだよ。どうやって一人で生きていくの!」

「俺たちが生きられたのだって、奇跡だろ!」
たまらず咲太郎がそう言い返します。

言われてみれば、奇跡です。
亜矢美に、リンチから救われた咲太郎。まさに奇跡の女神でした。

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剛男に十勝まで連れて行かれ、知略99泰樹の愛弟子となったなつも、フォース後継者レベルの奇跡の子。

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そんななつは、自分が許せないのです。

あの恵まれた環境の中。
十勝の朝日を自分が見ていたころ。
風に吹かれていたころ。
牛と一緒にいたころ。
あたたかい愛情と友情に包まれて、生きていたころ。

千遥は、苦しんで一人さまよっていたのかもしれない。

それを知ろうとしなかった。
そのことが、どうしても許せない。そう苦しんでしまうのです。

千遥の絶望。
悲しみを知らないまま、ずっと生きてきた。千遥のことなんか探さずに――。

「お兄ちゃん、奇跡なんて、ないんだわ!」

なつはそう叫び、自室へ戻るのでした。

八月十五日に生まれたなつ

自室の机の上には、ラッピングをした贈り物らしき箱と、ハガキが置いてありました。
北海道から届いたものを、亜矢美が置いていたのです。

ハガキは富士子からでした。

20歳の誕生日、おめでとう。

 

東京に出てからもう一年半だね。

 

仕事には少し慣れたかい?

 

なつのことだからきっと頑張っているんだろうね。

 

プレゼントは、お父さんと選んだ成人祝いの万年筆です。これで手紙を書いて欲しい。みんな喜びます。

「千遥……ごめんね……」

なつよ、20歳おめでとう。
どうかその夢が、その道が、いつまでも続きますように――。
父がそう祝います。

なつの誕生日は、終戦記念日でした。
もしも再会できていたらば、最高のプレゼントであり、彼女の戦争も終わったかもしれません。

しかし、そうはなりませんでした。

なつは、名前からして夏生まれということは想像ができました。
しかし、まさかこの誕生日とは……。

考えに考え抜いた、そんな本作の世界観がつくづくおそろしく、見事だと思います。
※続きは次ページへ

2 Comments

でんすけ

営業スマイルは東京焼け野原を生き抜く知恵だったのに、まさか裏目に出てしまっているとは。千遥も兄姉を探しているけれど、手紙をなんらかの事情で紛失していると思いたいです。世話をしている子供と一緒に見た漫画映画に「原画・奥原なつ」を見つけるとかいう胸熱展開こないですかね~。

P.S.
祝、日本のアニメーションを築いた人々 復刊!!!

なんと、単なる復刊ではなく増補改訂される模様。新たに池田宏さんらのインタビューが加わるようです。東映動画の小田部さんの同期にして、任天堂に動画技術を持ち込んだレジェンドです。

904型

まさかの、あまりに重い真実。

そして
ドラマ版『火垂るの墓』の再現のような悲劇。
予告編での二人の涙の意味はこういうことだったのか。

重すぎて、言い表す言葉が見つかりません。

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