昭和32年(1957)年夏――。
東洋動画長編アニメーションの映画第二弾、『わんぱく牛若丸』は制作快調!
と、昭和映画予告編っぽく言いたくなる。
そんな本日です。
霊感です……どう解釈しても結構です
なつたちは、ライブアクションに参加しています。
日をまたいで入る説明が親切仕様。
難解だけれども、視聴者を突き放さない本作です。
今日は、亀山蘭子の出番。
彼女の演じる常盤が、牛若丸を突き放す場面です。
ここで新人こと、演出助手・坂場一久がまたカチンコで失敗しています。
「ぶきっちょだなぁ」
周囲から、そうこぼされる坂場。
なつは不器用な彼を見てフフッと笑い、その動きをスケッチするのですが。
父が、こうナレーションをするのです。
本日の放送から登場した坂場一久役・中川大志さん。上手に鳴らせなかったカチンコと一緒にパチリ♪#朝ドラ #なつぞら #中川大志 pic.twitter.com/S6UpMPiDQu
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 19, 2019
この不器用な青年が、アニメーターとしてのなつに、大きな影響を与えるかもしれない。
霊感ですーー。
おおっと、霊感だぁ!
霊感と投げるところが、本作の巧みさだと思います。
亡くなった近親者のナレーションは、ある意味超常現象的とも言えなくもありません。
じゃあ、そんな父が何でも知っているかって?
そうでもありません。
千遥のことといい、実は彼にも制限はあると示されています。霊感というのも、すっとぼけていてただのヒントとも見なせるし、そうでないとも取れたりします。
仏壇前セーブポイントでお告げをもらうとか。
夢で守護霊が正解をいきなり示すとか。
そういう使い方とは違うのです。
「アニメーターとしての」と説明するところも巧みでしょう。
運命の相手といえば、どうしても恋愛対象を想定する。女性ならば特にそう。
【女性の運命=結婚】という刷り込みもありますよね。前作****はそれしかなかったものです。
そうではなくて、あくまで【職業上の運命】だと示されるわけです。
これは、昨日から引っかかるところでした。
同じ日に恋愛感情を持っていそうな癒し系・信哉が出てきたからです。
茂木は模擬恋愛、レディとしてなつを扱っていました。
あの二人と坂場の態度や言動が異なれば、ロマンス候補からは除外できると思います。
めんどくさい奴が来る
なつたちは「三穴タップ」で作業をしています。
実はここから採用されたもので、作画上画期的で革新的なものだったそうです。
そういうアニメ創世記の試行錯誤を説明する本作は丁寧です。
台湾にあった伝統食文化にかすりもしなかった****とは違いますよ〜!
アニメーターの机には、鏡があります。
顔を写しながら、それになりきって描くそうです。たとえ馬でも。
そんな作画が佳境に入った日。
やって来ました……坂場です。
「あっ、カチンコくん」
なつがそう微笑むのはここまでです。
彼は『動画がおかしくないか?』と下山に言いに来たのです。
指摘した場面は、牛若丸が馬で急斜面を駆け下りるところでした。
「おかしくないですか」
そう続ける坂場に対し、下山は、動画を担当したなつに任せることにしました。
めんどくさい新人助手・坂場vsやる気まんまん!新人アニメーター・なつ
全然ロマンスじゃなーい、そっちなのか〜。
「馬が降りていて、怖がっているのであれば、前につんのめるのではなくのけぞるはずでは?」
「そこは表情で表現しています!」
「表情で説明すれば、それで済むのでしょうか?」
「表情とは、説明でなく表現です! ストレッチ・アンド……」
「ええ、ストレッチ・アンド・スクオッシュ(※茂木プレゼントのディズニー教科書にありました)ですよね。動きにリアリティがないと、ただの説明です。どうしてこうなるのでしょう?」
「牛若丸の性格です! 後ろに引かないから!」
「その前のめりが“鵯越の逆落とし”につながると。しかし、馬はどうでしょう? 馬は怖がりませんか。どう思います?」
「そうかも……しれません」
ここで下山が、助け舟を出します。
露木もそう思っているのか? と……。
そうでした。責任者は露木ですね。
しかし、最初にそう思ったのが坂場だったので、彼が来たそうです。
下山はあっさりと認め、露木に「直す」と伝えるように言うのでした。
「ちょっと待ってください! リアリティって、何ですか? 本物の動きをそっくりに描いて、それで子供が楽しいのか。アニメの動き、アニメだけの表現をするから、楽しいのではありませんか?」
「子供が見るからリアリティを無視してよいと?」
坂場はここで、爆弾発言をします。
彼もわかっていないのだと。
リアリティか? アニメ独自の表現か? どこに向かっているのか。
「すみません、新人なもので、これからも教えてください」
そう言い残し、嵐を巻き起こしたまま、坂場は去るのでした。
あいつは何なのか……。
この場面では【ストレッチ・アンド・スクオッシュ】の出し方が絶妙でしたね。
理論武装ガチガチの軍師マコが、なつがそうしたことを悟り、ショックを受ける流れかと思っていましたが。
もっとあくどく、興味深い使い方をしおった!
※続きは次ページへ
「何でもできるってことは、何もないのと同じだよ」
芸術家としての覚悟が出来ていた天陽くん。なつと一緒にファンタジアを観たあとのセリフでしたっけ? 天陽くんは既にこの時点で、いま東洋動画が抱えている問題点が見えていたのですね。さすが!