なつぞら74話 感想あらすじ視聴率(6/25)雪月三人衆

「あんたの劇団受けたんだってな」
「誘ったのか?」

「それは違う! 店が大事でも、夢があってもいいだろ」

そう語る咲太郎ですが、相手はあの無双のとよババアです。

「夢が幻であったらどうするつもりだ。いやいや、褒めたつもりではないぞ。雪山を登って、生きるか死ぬかを試す。そういうことであろうがぁ!」

強ぇえ!
どうしてこんなに強いんだよ……もうこんなの、泰樹(真田昌幸、知略99)でもなければ勝てないだろ。

無駄に話のスケールをでかくして、こいつはまずいと思わせること。
強い武将がやるテクニックです。

しかし話が大きくなり過ぎて、煽るところがこの総大将の欠点でもあります。
そこを雪之助が押さえます。

「雪次郎の夢は菓子職人よ!」

「親が決めたけど、幻ってことだろうがぁ!」

昨日も指摘しましたが、この夢と夕見子への初恋がセットなところも、罪深いですね。

なつぞら43話 感想あらすじ視聴率(5/20)本当は凄い雪次郎

雪之助は、咲太郎対策もバッチリです。

「借金まみれで逮捕されておいて、こやつめ、ほざきおるわ!」

「俺と雪次郎は違う。親なのに、そんなこともわからねえのか! 雪次郎のことを信じてやればいい!」

おっ、咲太郎、果敢に反撃しているぞ。
逮捕を持ち出されても、負けちゃいねえ。

なつぞら30話 感想あらすじ視聴率(5/4)抱えたまま生きていく戦災孤児たち

「信じてるから来た。これ以上、あいつの人生を狂わせないでくれ、頼む!」

雪之助はそう頭を下げます。
ここでなつが戻って来て、こう言うのです。

「雪次郎君は一人で決めました! どこにいるのかも……」

ここで咲太郎が、ぼそっとなつに囁きます。

「それは知ってる」

「知ってます。あっ!」

どうにも、ちょっとドジななつ。
うっかり知っていると言ってしまうのでした。もぉ〜、この子ったら!

目標の居場所を確認したぞ

咲太郎は観念します。
親に会う前に逃げろと告げたのは咲太郎だということも、ここで明かされます。

そしてこう言うのです。

「雪次郎は劇団の研究生に合格したんですよ! 素質があるんだ、倍率十倍なんだから」

これに対してズッコケそうになるのが、とよの反応です。

「ほほぉ〜。東京には役者志願者がそれほどいるのか」

いや、そういう話でなくて……。孫の才能や情熱には感銘を受けないんですね。

亜矢美が咲太郎に突っ込みます。

「言うタイミングが違う!」

そうなんです。
それどころじゃない。

「どこに雪次郎を隠した!」

そう問い詰められる咲太郎。って、そりゃそうなるでしょう。

レミ子と同じアパートの隣室だと白状しました。
たまたま空き部屋があったそうです。

「ここはまず、川村屋に挨拶をせねばならん!」

雪之助はそう決意を固めています。
そこは忠義の男だからね。雪次郎説得の前に、まずは挨拶です。

川村屋で土下座する雪月三人衆

かくして、雪月三人衆は土下座をするのである――。
と、有働由美子アナウンサー口調で言いたくなる、謝罪タイムです。

マダムは戸惑います。
北海道からはるばる来たのに、会わせてあげられなくて悪かったと言うわけです。

いわば監督責任違反でもあるわけでして。
これで雪月がそこを突こうと思えばできなくもないわけです。

しかし、雪月三人衆は土下座を続けるのです。

杉本は雪次郎を褒めます。
真面目な勤務態度で、いなくなるのが惜しまれた。だからこそ、きつい言い方をしてしまったと反省します。

杉本も偉いものです。マダムと自分の立場をわかっています。
監督不十分であり、やる気のない若者だと責められないと理解しているのです。

その上で、これも真面目な道の外れ方だと語ります。
楽をしたいわけではない。そう理解を促すのです。

妙子は、川村屋の皆さんに迷惑をかけてこなかったかと心配しています。

「やる気がないと思ったことはありません」

杉本はそう言い、マダムは流石雪之助の子だと思っていたとも告げるのです。

ここで、ちょっと分裂気味の雪月三人衆。

「それならば何故……」

「そなたが甘やかしたのではないか!」

「何をっ!」

なつもこう言い切るのです。

「雪次郎君は本気だからこそ苦しい。それはわかります」

かくして、川村屋の挨拶を終えた雪月三人衆。
向かう先は――。

雪次郎の運命やいかに

それは雪次郎の隠れ家でした。
咲太郎が先に来て、三人衆の来襲を伝えると、雪次郎は困惑します。

「それはないでしょう、咲太郎さん!」

まぁ、そうなるよね。
結果的に咲太郎は匿うどころか、居場所を白状しているのですから。

うーん、咲太郎のトラブルメーカー感。
雪次郎に逃げろと言い、それを明かす。逃したことでより悪化したことは、紛れもないわけでして。

「あとはお前が説得しろ」

そう言うのです。
この頼りなさ……。いや、咲太郎は頑張りました。相手が悪過ぎただけでしょう。

「本当に家族を捨てる覚悟はあるのか? やる気があるなら、正面から向き合え! じゃ、そういうことだ」

そう喝を入れる咲太郎。
よい話……なのかな?

雪月三人衆を前にして、退くしかない。
まぁ、そうなる。私だってこんなのは無理だ。

雪次郎は押入れに逃げ込むものの、すぐに開けられるのでした。

「雪次郎!」

「元気かい!」

「雪次郎君、黙っていなくなるなんてないっしょ」

そう雪月三人衆となつに迫られる雪次郎。

ああ、雪次郎の運命はいかに――。

そう嘆く父のナレーションも切ない。
明日は本作名物、激動の水曜日です。

北海道十勝の菓子店親子が、ナゼかくも乱世感で溢れているのか?
もう、それは仕方のないことなのです。

川村屋の労働環境

本作は、ビジネスドラマとしてもなかなか秀逸だと思います。

マダムと杉本は、預かった雪次郎出奔について、自分たちの対応を反省しているのです。

2019年現在でも、矛盾した人材を求める事例はあとを絶たないもの。
イノベーションと従順さを求めるような、御都合主義があるものです。

◆人手不足を嘆く地方の組織が陥る「4つの矛盾」 変化しない職場や地域に「明るい未来」はない | 地方創生のリアル東洋経済オンライン

1. いい人材がほしいけど、給料はあまりあげたくない
2. 終身雇用はしないけど、会社には忠実でいてほしい
3. 即戦力になってほしいけど、教育投資はやりたくない
4. 積極性がほしいけど、自分には従順に従ってほしい

無茶言ってますよね。
そんな時代だからこそ、刺さるものがあります。

杉本の指導は、昭和らしい粗さもあります。
それでも彼は根性が真っ黒けに染まっているものでもないと、きっちりと示しています。

東洋動画も、柴田牧場も、農協も。
職場としては昭和の雰囲気や弊害はあったものの、人を踏みつけにするところはないとわかる。

それが本作のよいところです。

昔は酷かったと正当化することはできるものの、それだけではない。
そんな誠意を感じます。

御家騒動を超絶技巧でコミカルに

今日の雪月三人衆襲撃は、熱かった!
コミカル『なつぞら』の本領発揮ではないでしょうか。

大森氏は狙ったギャグはない。シュールでもない。
それでもどこか面白い。そういう個性があります。

これがなかなかレベルが高いんですね。

キャラクターの個性をきっちり踏まえた上で、練りに練ったやりとりと個性で、爆笑ではなくジワジワ来るものを提供します。

見ている時は、そこまで爆笑しない。
あとで思い出して、なんだかニヤニヤしてしまうセンスですね。

演出もそこを踏まえています。

1. 顔芸、動作、シャウトに頼らない

役者さんが変な顔をする。あやしい動きをする。いきなり絶叫する。
そういうことをすれば、シュールなギャグにもなるところで、それを敢えてしていません。

今朝だって、雪之助や咲太郎が叫ぶとか。
雪次郎が押入れを開けられた瞬間怯え泣き叫びながら転がり出るとか、やろうと思えばできます。

しかし、本作は違うのです。

2. 適材適所

本作は役者の使い方が適材適所です。

高畠淳子さんは滑舌が良く、長いセリフでもクリアに発声できるという大きな特徴があります。
とよがこんなに味があって、弁舌が豊かであるのは、彼女のスキルあってのものでしょう。

長いセリフが得意な人はそうする。
無言で味が出る人はそうする。

そういう特性を理解して動かすからこそ、ユーモアが生まれて来ます。

3. 北海道弁の使い方

『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ!」以来、朝ドラではキャッチーな言葉が定着した感があります。
それそのものの是非は、脇に置いておきましょう。

他はさておき、「じぇじぇじぇ!」は方言という設定でした。
実際のものからはアレンジしてあるそうですが。

本作でも、なつが北海道由来のフレーズを使ってもよいところですが、そうでもない。
北海道弁は使うけれども、使う側は訛りだと意識できていないかもしれない。
そう思えるところがあります。

なつは仕事場でも「いかった(良かった)」とか割と頻繁に使っておりますが、それ自体が引っかかるような使い方でもないですよね。
これも北海道弁の特性でしょう。

方言コスプレという概念がある時代。
火付け役でもある朝ドラですが、本作はなにかが違います。

そこも、厄介で面白い、そんな個性であると思えるのです。

◆『方言萌え』SNSで加速する、方言コスプレとは何か? – HONZ

本作は、瞬間風速が生まれるSNS受けを狙うというよりも、じっくりじわじわと気合をこめて戦う――そんな軍師特性を感じます。

これが山本勘助を『風林火山』で描いた、そんな大森氏の世界か……練りに練った展開に、今週も唸らされる火曜日です。

明日はどうなっちゃうんだよ!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

【参考】なつぞら公式HP

 

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