『ヘンゼルとグレーテル』の作画は大詰めです。
しかし、その作画にいちいち坂場が疑念を抱くという、鬱陶しい流れで、職場に不穏な空気が漂っておりました。
デモをする鳥
「この鳥は何をしたいんですか?」
逃げたヘンゼルとグレーテルを救うカラス。
何をしたいのかって、そりゃ主人公を救うことでしょうよ。
しかし! 坂場はそこで納得できないのです。
文句をつけられて、ムッとしてるマコ。
鳥は、森に魔女がいることそのものに不満があったのではないか? その不満が見えないと坂場は言うのです。
うーん、只者じゃない。
鳥の不満ってどういうことでしょうか。
坂場はここで、具体的な指示を出します。
「鳥のデモのようになりませんか?」
マコはますます困惑します。
「そんな思いつきで言われても困ります!」
「何がダメか、思いついているだけ……ともかく描き直してください。お願いします!」
坂場が去ったあと、イライラが止まらないマコ。
「何なのあの人、腹立つ!」
「ムカつくだけ無駄ですよ。冷静に考えると、なるほどとなる……」
なつがなだめていると、かつてのマコもそうだったと堀内がチクリ。
そして神地はこう来た。
「俺の原画は褒められましたけどね」
なつはあくまで冷静にとクールダウンをさせようとしますが、マコはおさまりそうにありません。
才能は認めているんですけれどね。
堀内が突っ込んだ気持ちも、わかります。マコだって曖昧な指示で、容赦なくダメ出ししていましたからねえ。
大変です。

樹齢は何年? だから何なの
一方、なつは、ラストに出てくる木の怪物に四苦八苦しております。
坂場はこう来ました。
「木がこんなふうに動くのはナゼですか?」
「なんとなく……木は歩きませんから、根拠はありません」
「じゃあ樹齢は何年ですか? 森で何年過ごしてきたのでしょうか?」
「そんなこと言われてもわかりません……」
なつもこうして、坂場のダメ出しにイライラ。
マコが、ちょっと意地悪な顔して、
「落ち着いて、怒ると余計にムカつくよ」
と自分が諭されたことを言い返すのでした。
うーん、この状況よ。モモッチのような優しさはありません。
「ともかく描き直してください」
「そんなの無理! 無理です!」
なつは嘆きつつ、廊下で木の動きを考えつつ歩いて考えてみます。彼女なりのやり方なのでしょう。
試験でも、身振り手振りを見せていましたよね。

あるいは馬の動きを、階段で再現していたこともあった。

こういう一連の動きを指して、
「広瀬すずさんに天然ぽい動きをさせて、受けさせたいのミエミエ〜」
みたいなトンチンカンな指摘をされる方もおられるようですが……。
創造性と身体の動きが直結するタイプであれば、十分にありえることですね。
動きを掴みつつ、自分を納得させつつ、なつはひたすら描くしかありません。
坂場が認めた彼の絵
行き詰まったなつは、背景を描いている陽平の元へ向かいました。
森の絵を見て、イマジネーションを得たいのでしょう。
陽平は、なつの様子に気がつきます。
「何か悩んでるの?」
「悩むどころか、イッキュウさんについていけない……」
怪物の樹齢だとか。
生き方が見られないとか。
説明がざっくりしすぎ問題ですね。
陽平は、坂場は美術にもうるさいと賛同します。
「どれだけ手間がかかるか、わかんないんですよ」
しかし、なつがそう愚痴ると、陽平は反論します。
彼は相当勉強をしているのだと。
坂場は天陽の絵を褒めていたそうです。
天陽が受賞したときの小さな記事から彼の絵を知り、陽平に「弟ですか?」と聞いてきたそうです。その絵に感動もしていたとか。
まだ坂場の演出力とは何か――陽平もはっきりとはわかっていません。
それでも、絵描きの持つ魅力を見抜こうとする貪欲さがあるのかもしれない。そうしみじみと語るのです。
「頑張っていい作品にしよう!」
陽平にそうまとめられ、なつもなんだか納得したようです。
人の趣味には合わせない
そのころ、風車ではグレン・ミラーのレコードを亜矢美がかけていました。
夕見子も「いいですね」とニッコリ。
「いいの? モダンジャズが好きな彼を取られちゃうかもよ」
亜矢美はいいます。グレン・ミラーはちょっと古いと。
夕見子はここで、こう切り返します。
「はっ、人の趣味には合わせませんぞ!」
ん? これはどういうことかな?
亜矢美も何かを察知したのか、さりげなく聞いてきます。
「して、同志・高山殿は今何をしておられるのかな?」
夕見子も、警戒心が低下気味なのか。
それとも親密度があがっているのか。
素直に語るわけですな。
『スイングジャーナル』という雑誌に持ち込んでいるものの、うまくいかないそうで。最近は喧嘩ばかりだそうです。
お金持ちのお坊ちゃんで、苦労しらず。
自立には時間がかかるはずだと夕見子は言います。
牧場の娘、しかもあの泰樹を見てきた夕見子からすれば、そうなるでしょうね。
「それでもお互い好いておる! お互い強くならねばなるまい!」
そう言い切るのですが……。
ここで電話が鳴ります。咲太郎の仕事かな?と亜矢美が出ます。
「音問別4141からです」
「間違えましたぁーッ! すみません!」
交換手の時点で、切ってしまう亜矢美。
「えっ、間違い? こっちから?」
夕見子が戸惑う中、なんとか誤魔化す。
電話機の向こうでは、富士子が困惑しているのでした。
亜矢美と富士子が電話で話す
夜になって、なつが風車から富士子へ電話をかけ直します。
こうして、朝ドラアベンジャーズ同士の電話を通した会話が実現します。
画面が分割されて、左右に出るわけですよ。
※続きは次ページへ
夕美子と雪次郎は、お似合いですよね。雪次郎が夕美子と同じ地平線に上がってきた観があります。
一方で咲太郎も少し面白い感じなんですよね。長男気質で女性に優しい咲太郎ですが、夕美子に対しては距離が測りづらいように思えます。夕美子も、一見咲太郎とは相性悪そう。そこが逆に面白いなあと。
それにしても、夕見子は面白いですね。素直で一途でかわいいです。