昭和41年(1966年)、北海道の十勝では、引き続き不穏な気配が迫っていた――。
そんな有働由美子アナの『真田丸』ナレーションを追加したい今朝。
さぁ、110話、行ってみましょう。
十勝酪農王国をめざせ
泰樹の夢であるバターを、柴田牧場どころか、農業全体で作る。それこそが夕見子の野望でした。
酪農家がメーカーを通さずに、直接乳製品を売る。
そんなシステムを導入するわけです。
夕見子の主君は、田辺組合長です。
いわばその軍師として、通訳も兼ねて夕見子はヨーロッパを視察しました。
唐突に誰かが外国語を喋り始めること。
前作****のように雑なドラマでは無茶苦茶な整合性を感じるものです。
しかし、幼少期から知略が高く、北大も出ている夕見子ならばそれも納得できます。
なるほど、ヨーロッパか。
修道院がバターやビールを作り販売することは、あることでした。そういう歴史に基づくシステムを参考にしたのであれば、納得できます。
日本の北海道は、明治政府の御雇外国人から始まっていますしね。スタート地点から特殊であった。
そういう歴史をふまえていると、おもしろいかな?
酪農家自らが乳製品を作る、いわば十勝酪農王国――。
そう本編でも語られます。話がデカくなりおったーーーーーー!!
「素晴らしい考えですね!」
この一連の流れを聞いて、坂場の目がキラキラしております。
この目をキラキラさせる中川大志さん、ほんとうにうまいなぁ。周囲も上手に演出しているのでしょう。
まぁ、ある意味、不穏で、彼が発言するといささかドキッとしてしまうんですが……。
野望のせいか、結婚どころではないと富士子はこぼします。
駆け落ちして新宿ジャズ喫茶計画。
未婚で王国建設を貫く。
夕見子は振り幅がでかぁぁぁい!!
「ごめんね、ゆみより先に結婚して」
「大丈夫、全然うらやましくないから」
なつがそう言おうと、気にしていないとあっさりと認める夕見子です。
納得感しかないもんな。強がりというよりも、いつもの素直さなのでしょう。
でも、ちょっと待って。
結婚を始める相手にそんなきつく言い切って、なつと坂場相手だからよいもの、相手によっては恨まれるよ?
そう言いたくはなるのですが、坂場も気にしておりません。
弥市郎にお酌してもらってニコニコしています。
全く悪意のなかった仲に「嫌われたか……」と疑う一方で、泰樹の不謹慎ジョークや、夕見子の毒舌を気にしないでニコニコする坂場。
その辺の感覚が彼らしさの一つでもあるんですね。
ここで、視聴者がモヤモヤしているツッコミを、代表して明美がやってくれます。
「姉上はあれほど牛乳を毛嫌いし、バターなぞどうでもよかったはずではござらんか?」
すると、【表裏比興】枠の泰樹が話をさっくりまとめます。
「新しいことをしなければ、十勝の牛飼いは、牛飼いの喜びを感じられなくなっているんだ」
再び注目したいのは、坂場がものすごく嬉しそうにニコニコしていること。
本日の【表裏比興】枠をまとめておきますと。
夕見子:「城の規模は問わずとも、一国一城の主たらねばならん。そういう志の前では、結婚なぞ些細なことよ……」
→これと決めた主君を見つけて仕官した軍師気分でウキウキワクワク。結婚どころじゃない。
泰樹:「牛飼いの牛飼いたる喜びとな? あの若造の言葉から閃くとはのう」
→昨日の坂場のスピーチをふまえていると、わかる台詞回し。
坂場:「なんだかわかりあえる人がいる気がします! 酪農王国をアニメにもいかせるんですね!」
→ぶっ飛んだ発想をしているようで、泰樹と共振しあっている。
そのおかげでニコニコ。気持ち悪いと言われようが、上機嫌であることを隠せないのです。
独自の思考で進む彼らは、彼らなりの道を張っていますね。
暖かく見守ろう!!
雪月四天王、粋な出迎え
なつと坂場は、あの場所へも報告せねばなりません。
帯広の雪月です。
そこにいたのは、役者から菓子職人に戻った雪次郎でした。
二人をみた雪次郎は、嬉しそうにこう言います。
「俺はこうなると信じて待っていた!」
そうそう。雪次郎の目はなかなか鋭いんだな。
あっぱれさすが、総大将。とよの孫にして知将・妙子の子。
いや、まぁ、モモッチはじめ気づいていて、本人たちだけがなんだかズレていたっけ。私も二人の仲を見誤っていたことを今一度謝っておきます。
なつは雪次郎に、東京のお菓子を渡します。
もちろん研究材料ですね、フッ。
妙子も出迎え、坂場になんでも好きなものを食べていいと勧めてくるのです。
すっかり菓子職人になった雪次郎は、自分はこちらに向いていると言い切りました。
迷ったおかげでしょう。あの回り道は、無駄ではなかったのです。
役者として別の道をみたからこそ、菓子職人への適性を確認できた。
ケースに並ぶ菓子を、雪次郎は作ってはいる。
ただ、元々のアイデアは父・雪之助のもの。
「自分の菓子を作れねえと、一人前とは言えねえ」
すっかり三人衆が四天王になったんだなぁ!
雪次郎は野望をメラメラと燃やしております。
演じる山田裕貴さんは目に強い光があって、それが情熱的に見えるのです。蘭子への愛でもギラついていましたが、今度は別の輝きがありますね。
雪次郎は、なつに亜矢美と咲太郎のことを聞きます。
二人とも元気で、咲太郎の会社は順調だって。そう聞かされて、ちょっと寂しそうな雪次郎です。
ここで坂場がこう来ました。
「実は僕も、会社を辞めたんです」
げえっ!
シレッと、申し訳なさそうでもなく、言い切る坂場よ……。雪次郎もびっくりしているってば!
そして奴が来るのです。
ゴゴゴゴゴゴゴ……。
「なっちゃん、おめでとーーーーー! どれどれ、なっちゃんをもらいに来たってのはあんたなのかい? なっちゃんの親戚みたいなもんだよぉ!」
総大将・とよババアだーーーッ!
この、待ってました感。
妙子が雪之助ともども呼びに行ってはおりました。
総大将が出てくると、場の空気まで変わるから凄いぞ!
とよは距離感がおかしいというか、坂場の額を孫のようにポンポンと撫で始め、雪之助があわてております。
「坂場一久と言います!」
坂場、がんばって頭を下げます。
こういうとき、ともかく頭を激しく下げると。極端なんだよなぁ。
「座って、座って!」
そう勧めつつ、とよはこう来ました。
「柴田のじいさんに殺されなかったのかい? ヤキモチでなく」
まぁ【抹殺パンチ】持ちだから、そこはね!
前世はいろいろ気に入らない奴を謀殺したし。
※被害者代表はいつもの室賀さん
なつぞら95話 感想あらすじ視聴率(7/19)夕見子となつのレリゴー♪「お前か……抹・殺☆」
そういう過去の悪行(?)もありました。
昨日も、猟銃ジョークをサラリとしていましたし。
「銃を貸せ……撃ちたい奴がいる」
きっと、若い頃から、その手の抹殺系不謹慎ジョーク(※トリカブトを飲ませてやる、ヒグマと戦え等)をかまして、
「あいつは、なまらやばいべさ……」
と思われてたんでないかい?
ここで、坂場が会社を辞めた発言もでます。
常識のある妙子は、それはなっちゃんではないのかと困惑しています。まぁ、そうなりますよね。
すかさず、
「それでよく来たねぇ!」
つ突っ込むとよ。
容赦ないんだわ。
昨日の柴田家では、それとなくかばう流れになっていたのに(※それを坂場本人が壊す)、とよは容赦がない。
すぐに見つけるという坂場に、
「こんなの、なっちゃんの苦労のうちに入らないからねぇ〜」
とニヤニヤ。
なつは、その苦労に耐える力をとよから習ったと言います。
確かになつは苦労をしてきた。それに雪月は、ある意味、精神鍛錬道場ですからのぅ。
すると雪之助が最高の結婚祝いを提案します。
「世界一のウェディングケーキを作る! 安いもんよ、おめでとう!」
うわあぁぁ、これは楽しみだなぁ!
カットする部分だけを作るものではなくて、全部本物のケーキでしょう。早く見たいぞぉ!!
と思っていたら坂場が唐突に立ち上がります。
「あのっ、仕事、なんとかしますんで!」
「大丈夫、一久さん、慌てないで」
話が飛んでいるぞ。
とよの嫌味はこたえなかったのに、雪之助のケーキには感激した。そして気合いを入れようとして、何かがズレたのでしょう。
そして、ここにもう一人やって来ます。
倉田先生です。
※続きは次ページへ
田辺組合長らの工場設立構想の波乱。
モデルと思われる よつ葉乳業の公式サイトの「沿革」では、事実が淡々と述べられている感じ。
この経緯を他のサイト等で見ても、「酪農家による生産工場設立を認める方針を農水省が示したことにより…」といったことが記されているくらい。
しかし、そこに至るまでには、利害が相反することとなる乳業メーカーとの間で相当な確執があったであろうことが想像されます。
本作は、もちろんドラマ作品としての脚色が行われたもので、実際のいきさつとは異なるところも恐らくあるでしょうが、それでも引き込まれて見てしまいました。
酪農家の取引地位強化のための力の結集としての工場設立。
その延長上に、生産者の生乳出荷取引安定のための制度の設定があります。